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離人症の器

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凪2401

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2012年09月14日
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カテゴリ:読書メモ。
“大好きだ”と言ってやったら、
クソみたいな私の夫を殺してくれた。

レズのバカ女。





冒頭から、こんなモノローグで始まるこの作品は、漫画本です。
もうですね、私、いたく感動しまして、未だにかなり引きずっています。

私、今年で三十になるわけですが、この三十年間、触れてきた様々な物語の中で、
これ以上の作品はなかったんじゃないかと思っているぐらいです。

それだけ、心に響いて、刻み込まれて、身動きとれなくなってしまうぐらいの物語でした。


ストーリーはですね、モノローグそのままです。

夫から酷い暴力を日々受けている女性が、
同級生で自分に片思いをしていた友人に、夫を殺させます。

ただ、ここで語られる物語は、
「愛しているから何でもできる」なんてきれいな物語ではありません。

モノローグが示すとおり、DVを受けた女性は同級生を利用しただけだし、
同級生も、相手が本当は自分のことなんて思っていないとわかっています。

わかっていたのに、同級生は言われたとおりに片思いの相手の夫を殺し、
そのうえ証拠を隠滅したりもせずに、
「犯人が分かったほうが疑われないでしょ」と自首しようとさえする。

けれど、DVを受けた女性は、なぜか利用したに過ぎないその人の手を取って、
共に逃げることを選ぶ。その二人の逃避行の物語です。

でも、この逃避行の物語を紡いでいくのは、愛情とはとても思えない言葉や行動ばかり。

DVを受けた女性にとって、その同級生は利用しただけだし、
幼い頃のトラウマや同級生だった頃の出来事も重なって、恨みとか憎しみすら抱いている。

同級生の方からしたって、急に電話をよこして、人殺しをさせられて、
もちろんそれを選び取ったのは自分なのだけれど、全てを失ったには違いないく、
後悔したり、もう嫌いだと思ったり、うらんだりもする。

そんなふたりのやり取りは、お互いがお互いの心をめった刺しにするような、
そんな、相手の一番触れられたくない傷をえぐっていくような、そんなことばの暴力で。

でも、だからこそ、私は、この物語には「ほんとう」しかないのだと思いました。

もちろん、主人公たちはウソもつきます。虚勢もはります。
でも、それもひっくるめて、ここには人間の心の「ほんとう」しかないんだと思ったんです。

もう、お互いが相手を憎らしかったり、我慢できなかったり、恨んだり、
「なんだよこいつ!」「なんでこんなやつ!」って思って、
実際もう、立ち上がれないぐらいに傷つけあったりするんです。

でも、そんな剥き出しの魂のやりとりの根底に確かに流れているのは、
人間という存在のベースにある「さみしさ」に苦しんで、
「どうせ救えないし、救われない」とあきらめそうになりながらも、
それでもやっぱり「ひと」を求めてしまう、
そんな切実な愛情で結びついたふたりの絆だったのだと思います。

ほんとうに、このふたりはどん詰まりです。
どうしょうもなく行き止まりなふたりです。
でもやっぱり、二人を結び付けていたのは獣が咆哮するような、愛情を求める叫びでした。

最後の巻の帯に、
「泥の中をかきわけていたらダイヤを見つけた気持ち」的なコメントがあったのですけども、
別に、ダイヤじゃなくてもよかったんだと思いますね。

もうほんとうに、すくいようのないぐらいどろどろでぐっちゃぐちゃなんですけれども、
その中をかきわけてかきわけて進んでいった先にあるものが、
例えば本物じゃなくてイミテーションだったとしても、いいんだと思います。

きらきら、光ってさえいれば、本物じゃなくても見失わないから。



なんだかまだまだ感情が落ち着かず、いっきにばーっと書いてしまいました。
もう少し落ち着いたら、もう一回読んで、ちゃんと書きたいです。

ちなみにですね、タイトルの『群青』、本当は、羊の上に君が乗って、「ぐん」なのです。
変換で出なかったうえ、手書き入力もできず、ひとまず『群青』としました。



最後に、片思いされていた方の女性がですね、
30年間、ずーっと言えなかった思いを、ようやく口にすることができるんですね。
主人公ふたりは、29歳なんですけれども。

もう、そこで、号泣もいいところでした。

この女性は、30年生きて初めて、心のうちをことばにして伝えることができたけれど、
私にはきっと無理だろうから、余計に泣けたのかもしれません。

私はきっと、あと30年経ったって、
こころのなかのほんとうのことなど言えないだろうなあ……






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最終更新日  2012年09月14日 20時31分27秒
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