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なみだを超えた先に広がる本当の豊かさ

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人間物語・とね しゅんじ

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2019.09.17
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カテゴリ:いのち の 智慧
◇人間物語のメール講座NO13◇





あなたが 
20歳なら20年前 
30歳ならば30年前
40歳ならば40年前
50歳ならば50年前に
60歳ならば60年前に
70歳ならば70年前に
 
あなたは 母親の 胎内で 
途方も無い安らぎと安心感の中
それ以上無い 大きな幸せ感に包まれて
満ち足りて眠っていた。

それなのに 
この世に産まれ落ちた時から

それまでは
あなたの物であったはずの 
あの途方も無い安らぎも
 
居心地の良かった安心感も 
あなたを包んでいた それ以上はない大きな幸せ感も全てが壊されてしまう。

そして そんな物が何処かに消え去ってしまった時
あなたは その日から暗闇の中を歩き出す・・・。



母親の 胎内に居る時
そして 産まれ出てからの
ほんの ひと時のあいだ
全ての赤子は1枚の真っ白な紙の様に 
いいや それよりも更に美しい 透明感と
透き通る程の純粋さに包まれている。

あなたも かっては そうだった・・・。

あらゆる条件付けは まだ一切 成されていない

だが 親によって 近親者によって
赤子の あなたに あなた以外の全ての人達の手によって
ひとつ ひとつの条件付けが 成され始める
真っ白な紙の上に 様々な人達が
様々な色を塗り付けて来る

その時 あなたは無抵抗 無防備
そして何が起きているのかも解かる筈もない。

やがて あなたは育ち 学校 社会と 通過し
更に多くの条件付けが成された中に成長して来た あなたは
確固たる者に出来上がる。

今 此処に この話しを聞くあなたは
その様な過程を経てきた あなたであって
本来の純粋無垢な 透明な あなたでは無い・・・。

だから どうか
一切の条件付けを それらから得た知識を
ちょっとだけ どかしてから
この話しに耳を傾けて欲しい。

私は あの生まれたての
一枚の真っ白な紙に向かって話したい・・・。 


私は 
本当の あなたを知っている。
あなたでさえ 知らない 
本当の あなたを知っている。

あなたが どこから来たのかも
そして 何処へ消えて行くのかも 知っている。

何故なら
私は ある一人の人間が
産まれてから死ぬまでを
その人間の誕生の瞬間から
死への瞬間までを この目で見た。
その人間が この世の中に現れてから
その人間が この世の中を去るまでを・・・。

その人間を通して
あなたに 本当のあなたを 
あなたとは一体誰なのかを伝えよう。



この彼は幼い頃に母を亡くしている・・・・・。

丁度 彼が5歳になったばかりの頃に
彼の母は4人の子供を残して この世を後にした。
だが まだ5歳の彼には 
何がなんだかわからなかった

母が静かに息を引き取った ベッドの周りを皆が囲んでいて
彼の父親が その母にすがる様にして泣いている
そして その周りの人達も
何やら 悲しそうな顔をしている

彼が判断出来たのは
「これは決して嬉しい事じゃない だから僕も悲しそうに
しなくちゃいけない」と
幼い彼には これくらいにしか映らない。
まだ幼さの残る あどけない彼には
それくらいでも 精一杯だった。

やがて 通夜が行われ 葬儀が行われて
その上 火葬場で母親の遺骨を拾うことまで
彼は父親に言われるまま 懸命にやった

それでも彼には まだ何が起きているのかが
理解できていなかった。

全て その場の中を通っていて 
実際に自分で 全部を体験しているのにもかかわらず
自分が何をしたのかは 全て憶えていて 
その意味の理解が出来ていない。

だから彼にとっては その事が別にショックな事でも
悲しい事でも 無かった。

だが・・・もしも彼に死と言うものが理解出来ていて
母親が もう二度と帰って来れないと解かっていたら・・・

この拾った骨は まぎれもなく 
自分の大好きな あの母の
変わり果てた姿なんだと解かっていたら 
彼は5歳であっても号泣した事だろう それどころか
狂っていたかも知れない・・・。

けれども それらの事を理解するには 幸か不幸か
彼は 余りにも幼かった・・・。



その日を境に彼の生活環境は急変して行った。
彼は ある孤児院に入る事になる

彼の父親は 母親の死後 サラリーマンを辞めて
ある程度は 時間の自由がきく 職人と成って働いたが
4人の 幼い子供達を 育てて行く事は 
並大抵の大変さでは無かった。

そこに不幸は続き7歳に成る長男が小児結核と
兄弟は 嫌でも離ればなれに孤児院で暮らす事になった。

彼の体験する孤児院での生活
これは彼にとって 良い意味でも 悪い意味でも
大きく影響を与えた。

孤児院での生活には様々な事が有ったが
中でも より大きく影響を与えたのは
彼の父親が 彼に面会に来てくれた時に起きた事だった。

彼の父親が面会に来てくれるのは
丁度1年に1度だけ・・・。
5歳の子が 親と離れて暮らさなければいけない時
その子は 一体 どうやって 自分を保護するかと云ったら
遊びや その他の色々な 目の前の物事に熱中することだ。
目の前の物事に埋没してしまう事だ。
独りで居れば 当然のごとく 寂しさが襲ってくる
その寂しさを紛らわせるには 他には何も無い
今ならゲームだけれど その頃にはゲーム機など無かった。

誰に甘えたくても 
父や兄弟と云った家族に会いたくなっても それは叶わず
自分で全てを解決しなければ いけない日々
こんなに幼い頃から 人は悲しさや苦しさの中を歩いて
行かなければならない。


その苦しさの中には 親が知らず知らずの内に
与えてしまっているものが沢山有る。
親が未然に防いで上げられるものが沢山有る。

愚かな事に その親自身が幼い頃に
似たような体験をしていて「俺が あたしが 親になったら
こんな思いだけは絶対にさせない」と誓って育てたのに
かかわらず・・・。

これが世に有る 最も 愚かしい事実
まさしく カルマ(業・或いは繰り返し)

そして彼も又 その業を受け継いでしまう事になるのだが
その事は 後に話そう。

さあ そうやって寂しさを懸命に遊びに熱中することで
誤魔化していた彼に 
年に1度の 父が面会にやって来た。

いつも自分の気持を我慢をし押し殺していて
胸の奥で いつも いつも逢いたくて仕方が無かった人が
待ちに待っていた父親が やっと逢いに来てくれた。

この孤児院は 男女合わせて100人位の子供達が
入園している とても広い孤児院だった。

だから 家族が面会に来たことを園内の放送で知らせる。
「たかしちゃん お父さんが面会に来ていますから
正面玄関まで 来て下さい」

さあ もう 彼は たまらない
その一言で 一生懸命に押し殺して来た 今日までの辛い想いが 
込み上げて来る 涙で目が潤んでくる



彼は 夢中で 正面玄関を目指して走る
その途中 彼の胸の中では 何度となく呟いている
「お父ちゃんが来た お父ちゃんが来た 僕 ずっと我慢
してたんだ。お父ちゃんに逢ったら抱きついて ずっと
寂しかったって言うんだ もう我慢なんかしないで
泣いたって良いんだ 誰にも怒られないんだ・・・」と
そして正面玄関に着いた彼

玄関には
待ちに待った父親の姿が有る。





今日は ここまでで 終わりにしたいと思います。
明日の人間物語のメール講座を どうぞお楽しみに 








自分の心の育て方
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Last updated  2019.09.17 07:34:15
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