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ななこのくつろぎカフェ

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まさかの告知 

~まさかの告知 2004年10月25日~

私は昔からとても心配性なところがあって
自分の体にちょっとでも異変があると、すぐに病院へ駆け込むタイプでした。

そうは言っても、自分の胸に初めてしこりを見つけたときは
(あれ?)とは思ったものの(きっと生理前だからいつもよりも
胸が張ってるんだ。生理が終われば元に戻るよね?)と
自分を安心させていました。

PMS(月経前症候群)の症状は、人によっていろいろ違うと思いますが
私の場合は

・胸がパンパンに張る
・猛烈に眠くなる
・体温が平熱時よりも上がり、微熱っぽくなる
・食欲が倍増する
・水分をたくさんとりたくなる

主にこんな症状が出ていました。
特に胸の張りはとても顕著に現れて
下着のサイズが合わなくなるくらいでした。

生理が終わるのを待ち、自分で触診してみましたが
しこりはまだ残っているような気がしました。

本当に(おかしいな…)と思うようになったのは
9月に入ってからも、しこりが消えなかったからです。
(これはもしかすると、もしかするかもしれない…。)

そう思いつつも、どこの病院へ行こうか、いつ行こうかと
考えているうちに10月末になってしまいました。

当初は自分でネットで調べた、女性医師の多い
都内の某クリニックへ行こうと思っていたのですが
看護師をしている妹にそのことを伝えると
早速看護師仲間からの情報を教えてくれて
「あの病院は評判がよくないから、やめたほうがいいって。
それよりも、○○大学病院がおすすめだよ。
私の看護師仲間の☆☆ちゃんが、卵巣の手術をしたのもあの病院だけど
スタッフも設備もよかったって言ってたよ。」

○○大学病院は、同じ年の6月に私が子宮筋腫を発見された病院でもあり
そのときの医師がとても感じがよかったことを思い出し
私にももう迷いはありませんでした。

かくして2004年10月25日、私はいきなりこの病院の乳腺外科を予約無しで訪れ
診てもらうことにしたのでした。

診察に当たってくれたのは、温厚そうな30代後半の男性医師。
いや実際は40歳くらいなのかもしれないけど。
名前を呼ばれて診察室に入ると、まずは問診をされました。

普通は地元の小さな病院とかから紹介されて
最終的にこの大学病院へ来る人が多いらしくて
(私みたいに)「最初からいきなり来る人は珍しい」というようなことを
まず言われました。

そして「どんな症状がありますか?」と聞かれたので
まず左胸にしこりを発見したこと、そして私の家系には
がんの経験者が多いので「もしかしたら自分もその可能性が高いので
今日は徹底的に調べてほしくて来ました」ということを告げました。

問診のあとは、ベッドに横になって
左右の胸の触診を受けました。
男性の医師だから、恥ずかしさもあったけれど
しこりの正体がわかるのなら…とそちらのほうが重要でした。
それにしても乳腺の専門家の触診はすごい。
マジックハンドみたいな、微妙で繊細な手つきで触診しながら
確実にしこりを探しあてていく、という感じでした。

「う~ん、何かありますね。」ということで
今度は超音波室で、エコーの検査。
医師と一緒に画像を見ながらの検査ですが
「やはりしこりはありますね。これだけだと確定できないので
 次回はマンモグラフィーをやりましょう。
 日程はいつがいいでしょうかね?」と聞かれたので
「できれば今日検査していただきたいんです。」と食い下がると
「マンモは予約がいっぱいのことが多いんですが
 お仕事してると、また次に来るのも大変ですものね。
 今日検査できるかどうか、今問い合わせてみますから
 しばらくお待ちください。」とのこと。

そのまま、同じ日にマンモも受けられることになりました。
マンモグラフィーとは乳房のレントゲン検査のこと。
乳がんの診断の際に、極めて正確に判断できるという優れもの。

マンモの技師さんは、私と同じくらいの女性。
いくら検査とはいえど、乳房をこの技師さんにつかまれて
ぐいぐい引き伸ばされたり、挟み込まれたりするので
また違った意味での恥ずかしさがありました。
できればもう2度と受けたくない検査。

撮影が終わると技師さんが「5分くらいでできますから
外でお待ちください」と声をかけてくれたので
言われたとおり、外で待っていました。

すると5分が過ぎた頃、先ほどの技師さんが飛んできて
「ななこさん、左側だけ、乳腺が張っているせいか
 うまく撮れなかったので、もう一度撮らせてください。」と言われて
再度、あの痛いのをすることに…。

左乳房をまたまたグイグイされるときに
技師さんが「ごめんね~、痛いよね~。」と言いながらも
気を遣ってくれているのがわかりました。

それから5分後、今度はちゃんと画像がはっきりと取れたらしくて
「ではこれを、先生に渡してください。」と言われました。

画像を持って、医師のところへ戻ると
たった今撮ったばかりの、マンモの画像を計4枚、見せられました。
左右2枚ずつの写真。

私が普通に座っていると、その医師はなぜか「もっと前に来て
一緒に画像を見ましょう。」と言いました。
私はちょっとだけ椅子をずらして、画像に近づきましたが
医師はさらに「もうちょっと、前に来てもらえますか?もっと前です。」
この時点で(あれ?)と思いました。

「まず右乳房からですが…。
 こちらには特に石灰化が見られないので『良性』ですね。」
「あ~、よかった、ありがとうございます。」
「次に左乳房ですが…。画像をよく見てください。
 右側と違って、白い星みたいなのが写っているでしょう?
 これは石灰化といって、残念ながら悪性の所見なんです。」
「……は?」
「石灰化といっても、全てが悪性なわけではないのですが
 ななこさんの画像からですと、悪性が疑われます。」
「悪性ってことは…」
「乳がんである可能性が高いということです。」
「えーーーーーー!!!32歳なのに早すぎる…!!!」
「乳がんは最近とても増えている病気で、年齢はあまり関係ないんですよ。」
「ここ1年くらいでできたものなんでしょうか?」
「一概には言えませんが、もっと前だと思います。」
「…私、ばかですね…。自分の体の中にあるものに
 今まで気付かなかったなんて…。」
「そんなことないんですよ、今気が付いたのは本当にいいことなんですよ。
 ずっと前から『何かおかしい』と思っていても
 ほったらかしにしておいて、体にさらなる異変が起きてから
 病院に来る人もいるくらいなんですよ。」
「でも…。私はこのあとどうなるんでしょうか?」
「まずは病巣部分を取り除くために、手術が必要になります。
 年齢的にみてハイリスクに入るので、術後は化学療法と放射線治療が…」
「あの、ちょっと待ってください。
 化学療法って、抗がん剤治療のことですよね?
 あの強い吐き気と、髪の毛が抜けるという…」
「残念ながら、年齢的にも転移や再発のリスクを少しでも下げるために
 副作用がきつくても、化学療法も放射線も受けておいたほうが
 のちのちのためだと思います。
 吐き気については、今はいい吐き気止めも出ているので
 多少は軽減可能なんですが、脱毛はどうしても避けられません。
 抗がん剤は、腫瘍もたたいてくれるけど、正常な細胞、特に
 一番活発な細胞にも働きかけるので、髪の毛とか体毛には
 ダメージを与えてしまうのです。」

 転移、再発、吐き気、脱毛…。
 次々ときつい言葉が並べられる。
 これは本当に自分に今起こっていることなの???

「私、仕事してるんですけど、会社は休むしかなさそうですね。」
「人によっては、抗がん剤治療中も、働いている人もいますけど
 もし休めるのならば、この際しっかり休んで治療に専念するのも
 いいと思います。この病気になられた方は、会社の方にも
 自分が乳がんであることを話して、周りの理解を得たうえで
 休みに入られる方も多いんですよ。」
「えっ!!!でも私、自分ががんだって会社の人には言いたくありません!」
「ただ言わないと周りから協力を得るのも難しいし
 今までの経験上、隠せば隠すほど、周りから勘ぐられて
 かえって治療がやりづらくなった人も多いのも事実なんです。」
「そんな…。でもやっぱり言いたくないです…。」
「まだ時間はありますから、これから一緒に考えていきましょう。
 今日はいろいろ一度にお話したから、疲れたでしょう。
 手術の日程とかもこれから決めていきますが
 焦らなくていいし、それに乳がんは効きやすい薬も多いので
 治ることを信じて頑張っていきましょう。」

診察室に入って、軽く1時間半は過ぎていた。
告知する先生のほうも大変だ。
私は途中、指先がスーッと冷えてしまって
「大丈夫ですか?少し横になりますか?」って言われたけど
動揺しつつも、思ったより冷静に告知を受けた気がする。

帰り際、ぼんやりとしながらも
「手術すれば確実に治る!」だとか
「腫瘍が大きくなるのを防ぐために、薬を出しておきます」だとか
そう言ったことは一言も言われなかったな~…ということを思い出し
これが、他の病気と「がん」との大きな違いなのだな…ということを
考えました。

この日から、良くも悪くも私の第2の人生が始まりました。 



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