静かな部屋
二人床に座って
ただ黙って音楽を聞く
ねぇ
雨が降ってきたよ
君は黙ったまま
私の髪を
そっと抱き寄せて
ピアノと
雨音と
君の息遣い
切り抜いた
何かのシーンのようで
雨のノイズに
霞む世界
部屋のどこかから
細く忍び込む
雨の匂いに
切なさが増して
君の肌に触れたくなる
命が消えるまで
打ち続けるはずの拍動を
一枚のシャツの下に感じながら
体をひねって
君の喉元に口づける
雨の日は
人肌が恋しくなるなんて
おかしいかな
私
君は
私の髪に顔をうずめて
静かに呼吸する
ストイックを装う
嘘つきの冷静
やがて雨が
そのポーズさえ流して
君の鼓動
雨音より強く鼓膜を揺らし
私は壊れたレコードのように
途切れ途切れになりながら
君の名ばかり 呼ぶ
床の上
散らばり敷き詰められた
音符と雨音と
吐息と鼓動の上
横たわり
君に奏でられる
私は
ひとつの
楽器
ブレスやノイズを
交えながら
不思議な
音楽を奏でる
君なら
いつだって
上手に奏でられる
その指は 誰よりも
楽器をよく知っているから
私はいつしか
君と言う奏者を選ぶ楽器になり
君の指で
形を変えながら
流れる
音符の 雨で
うまれた流れに
流れて
ただ
流されて