Laub🍃

2017/01/16(月)12:47

君の脳みそロックオン/「安穏族」石坂啓

●読(100)

誰しもバイブルみたいなものってのはあるんじゃないかなと思います。 オタクは好きな本、塾に通う人は参考書、先生は教科書、本読まない人は友達とかゲームとか。 でなければ、目を閉じ口を噤んで孤独に暮らしているーことになるんじゃないでしょうか。 さて、この本の「腐ったミカンは箱の外」は、箱を出された腐ったミカンが、今の教科書(バイブル)とは違う「昔の」「残酷で不敬な」教科書を見付けるお話。 「腐ったミカンは箱の外」 主人公の「腐ったミカン」良が、「少し成績が下がっただけで外に放り出され」 その先で、「知らないまに大人の言うなりになって教育されちゃっていいコでいる」のを拒んで 「やりたい勉強を好きなだけやる」てらこや集団のリーダーになる、という話です。 「おちこぼれのあたしたちの方がむしろ一番人間らしく暮らしているんじゃ……」 それに対し、どこか怪しげで自信家な新入り・サトルの言葉が 「ほんとはここにいることもいくらか不安なんじゃないのか?」 それを受けて、良は自分の秘密・・・ 「昔の教科書が隠されている場所」 を見せます。 良「隠してたわけじゃないんだけど・・・みんなに言っていいものか」 「最初は何だかわからなかったの でも見てるうちになんだか大変な気がしてきて…」 「ねえちょっと読んでみてよ社会科なんか びっくりしちゃった」 「あたしたちが習ったこととまるでちがったことが書いてあるんだもん」 「ねえ何か昔にあたしたちの知らないスゴイ事故でもあったんじゃないの?」 「ゲンバクってなに?」 「侵略とか虐殺とか過激な表現が使われてるの あたしたちが聖戦として教わった美談のことよ」 「その一方で、使命感とか参拝義務については書いてないの」 と不思議がる良。 教科書を読み終えたサトルは怒り出し、「君が毒されてなくてよかった」と言って 教科書を全部燃やします。てらこやと呼ばれた建物も壊し、良をそこから箱の中・・・再洗脳の場へと連れ出します。 それから数年時は経ち、ラストで彼女は言います。 「大丈夫です。もう何も怖くなくなりました」 そして戦争に向かうことを示唆して終了。 あれ、これどっかで見たことあるな・・・? 駅前で配ってる「最近の教科書が都合の悪い事実ポイしてる」っていうあれじゃない…? あとあまりに後味が悪いんだけど 「戦争ってそういうモンじゃない?」もな・・・ 軍体験に行った主人公が、レジスタンスサイドの人に対し「ふーん、そういうもんなのか」と納得するけど、 その子が「間違ってる」「牢獄にぶちこむべきもの」とする「仲間」に対しても、「ふーん、そういうもんなのか」と流されてしまう。 結局この主人公は後味の悪いラストで、凄いものとして位置づけられていた祖父が、醜悪で下卑たことを「そういうもん」としてやっていたことも、受け入れていくのかなあ。 できれば疑問を抱いて、これから先ちょっとだけ流れの中立ち止まるポジションで居てほしいけれど。 でも、レジスタンスの子が「憲法9条変えないで」って言っていたのに、矯正所に入れられて、オニの居ぬ間に憲法九条改正が行われてしまった作中のように、 「疑問を抱く」「この流れは駄目だと言う」瞬間に箱の外に出され、そして淘汰されるかより洗脳しやすい方向に発展した箱の中に「頭が冷えた」「「常識」的にならないと損だと思わせた」瞬間に、連れ込まれるのかもしれない。 そして、箱の外を攻撃する側にまわってしまうのかもしれない。 最近、ディズニーの人魚姫が主流になりすぎて 「人魚姫は実は泡になってたんだよ!」がトリビアとして紹介される時代になったそうです。 私はゆとり教育の最後の世代なんですが、これには「マジかよ・・・」となりました。 これと同様、何か有名な上塗りするものが出てきたら、案外簡単に人ってそっちを事実だと思い込んでしまうんじゃないか?今の時代なら常識なものでも当たり前じゃなくなってしまうんじゃないか? ・・・今、当たり前に使えて、当たり前に事実確認やいろいろな意見をきくツールとなっているインターネットでさえも、日本人だけファミリーセーフティならぬジャパニーズセーフティをつけられたり、言論統制されたりしてブラックリストに載せられたものは見ることもできなくなってしまうんじゃないか・・・ 安穏として暮らしていたら、そうなるのかもしれない。 ***** 7種で言うと、夏のAチームがちょっとそれに近いんだよな。 特に「優等生」だからこそ、人を傷付ける側に行ってしまった安居、そして涼。 「腐ったミカンは箱の外」されていた夏Bとの無知シチュじみた接触が特にそれを表している気がする。 「外れたみんなの頭のネジ」みたいに、周囲が狂っているのか、自分が狂っているのか 分からなくなってしまった人も、それに近いのかもしれない。 それを導くのが「歴史上の事実」であり、「教科書」「人の肉声」なんだけど、 72年も経っちゃって、教科書さえ改変されようとしてるなら、もうどうしようもないよね。 牙を抜いた側が、今自国産の付け焼刃をせっせせっせとつけようとしてきてる真っ最中だから、余計に。 無知シチュ利用してるみたいだなぁとか思ったり 二次元とか善意なら萌えるけど、こっちはねぇ・・・。 にほんブログ村 おすすめ本

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