カテゴリ:商法過去問答案
【問題】 平成13年・第1問
親会社であるP株式会社は、親会社としての影響力を背景に、子会社であるQ株式会社から不当に低い価格で製品を買い入れ、Q社に損害を与えた。Q社の少数派株主Aには、商法上どのような保護が与えられるか。この取引が商法第265条第1項の取引となる場合はどうか。 【答案】 平成13年・第1問 1 設問前段について (1)ア 株主は会社の実質的所有者であり、Q社の損害は株主Aの損害といえるから、AはP社に対して、この損害分の利益を返還させたいと考えられる。 (そこで) AはP社に対し、Q社からP社への利益供与を返還するよう求めることが考えられる(295条3項、4項、267条)。 イ(まず) P社はQ社の親会社であるからQ社の「株主」である。 (そして) Q社から「不当に低い価格で製品を買い入れ」ており、「受ケタル利益ガ供与シタル利益ニ比シ著シク少ナキトキ」(295条2項後段)にあたる。 ウ(よって) PQ間の取引は利益供与(295条1項)にあたる。 (この結果)Aが6ヶ月前より引き続き株式を有する者であれば、A自らP社に対し、Q社からP社への利益供与を返還するよう求めることができる(295条3項、4項、267条)。 エ(なお) P社が実質的にQ社の経営の意思決定を行っていたとして、P社を事実上の取締役ととらえて、 (2)ア(また) Q社の取締役は295条1項に違反する行為を行っていることから、取引を行った取締役には266条1項2号及び266条1項5号の責任を追及できる。 (この点) この行為が取締役会決議に基づいてなされたときは、決議に賛成した取締役も連帯して責任を負う(266条2項)。 (なお) この決議に参加しながら、異議をとどめなかった取締役は決議に賛成した者と推定される(266条2項)。 イ(そして) Aが6ヶ月前より引き続き株式を有する者であれば、A自ら株主代表訴訟(267条)により請求することができる。 (3)ア(さらに) Aは266条ノ3の責任をQ社取締役に追及することが考えられる。 (まず) 「第三者」(266条ノ3第1項)に株主は含まれるのか (思うに) 「第三者」とは会社・取締役以外のものをさす。 (従って) 株主も含まれると考えることができる (よって) 「第三者」に株主は含まれる イ(次に) 悪意重過失の対象及び損害の範囲 本来取締役は会社に対して責任を負うところ、取締役の地位の重要性から第三者保護のため法が特に認めた責任(→不法行為責任(民法709条)も追及できる) →取締役の任務懈怠についての悪意重過失があれば足り、損害は直接損害だけでなく、間接損害も含む (しかし) 株主は代表訴訟によって間接損害については回復可能 (よって) 株主AはQ社取締役に直接損害についてのみ266条ノ3によって請求できる (4) (また) P社が実質的にQ社の経営の意思決定を行っていたと考えられるから、P社はいわゆる事実上の取締役と考える。 (従って) 株主Aは、Q社取締役に対するのと同様、P社に対しても直接損害について266条ノ3によって請求できる。 2 設問後段について (1)ア(では) この取引が利益相反取引(265条1項)となる場合はどうか (まず) Aは266条1項4号の責任をQ社取締役に追及することが考えられる。 (この点) P社が総株主の議決権の三分の二の議決権を有する程の株主であれば、P社により、当該責任を免責される可能性がある(266条4項)。 イ(そこで) Aは266条1項5号によって責任追及することが考えられる。 (この点) 4号責任は適法に利益相反取引をなしたのに結果的に損害が生じた場合の無過失責任であるのに対し、5号責任は過失責任であって両立可 (よって) Aは266条1項5号によってQ社取締役に責任追及できる ウ(なお) 295条及び266条ノ3の保護については前段同様の保護がある。 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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