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カテゴリ:原発 核兵器 放射能
『死の灰』を浴び被爆した大石又七さんのメッセージ
私は元第五福竜丸というマグロを捕る漁船の乗組員で、アメリカが広島型原爆の約千倍、15メガトンという巨大な水爆実験を行ない、その爆発で起きた大量の『死の灰』を浴び被爆した大石又七というものです。 このマーシャル諸島のビキニ環礁は、負の遺産としてこの度、世界遺産に登録されました。 アメリカ軍は、1946年から1958年にかけて、このビキニとエニウエトク環礁を使って67回の大気圏核実験を行ない、合わせて100メガトンの核爆発を繰り返しました。 この間、日本の千隻におよぶ漁船が被爆しています。 この爆発は、なんと広島型原爆を毎日1個ずつ18年間落とし続けた量に匹敵するというから驚きです。 それらの放射能は半減期が何十年、何百年というもので人間の骨の中に入り込み、染色体を傷つけながら体の内側から攻撃するという内部被爆を起こしていたのです。 染色体を傷つければ死産や奇形児の原因を作りだし、子孫へと繋がっていきます。 これが水爆の恐ろしいところです。 骨の中では造血細胞が白血球や赤血球、血小板などを作り出して人間は生きています。 それらを時間をかけながら破壊し、がんなど作り出していました。 白血病や骨肉種を起こすストロンチウム90、甲状腺がんを起こすヨウ素131、遺伝子を狂わせるセシウム135、中には半減期が2万4000年かかるというプルトニウム239が含まれています。 この事件の重要なのは、目に見えない放射能というミクロの世界であるということです。 半減期の長い放射能が食物連鎖や風などに乗って地球上を漂い、誰のどこに取り付くかは現在の医学では計り知ることは出来ません。 1940年代から50年代にかけて核実験が地球上のあちこちで始まりました。 大量の放射能が大気圏や地球上に振りまかれています。 そのことを裏付けるように60年頃から世界でガン患者が急増し、日本でも今死亡率のトップはガンで、年間35万人といわれています。 私は、この放射能がその一因になっていると思っています。 この重大な問題は黙って見過ごすわけにはいきません。 私たち23人の乗組員の内、半数がすでに被爆と関係あるガンなどで亡くなっています。 私も肝臓ガン、最初の子どもは死産で奇形児、今も白内障、気管支炎、不整脈、肺には腫瘍を抱え嗅覚も消え、32種類の薬を飲みながら命をつないでいます。 しかし日米政府はこの大事な事件を被爆者や被害者の頭越しに政治決着を結んで解決済みにしたため、私たちはその時点から被爆者とて認められず亡くなっても発病しても援助も治療も受けていません。 私も他の被爆者と同様、差別や偏見を恐れ、その上共産党の回し者のように揶揄され、東京の人ごみに逃げ込み隠れていました。 だが、仲間たちが一人ずつ亡くなって行き自分にも次々と不幸が襲ってくる。 この恐ろしさが何事もなかったかのように忘れられていくことの悔しさが募り、当事者が声を上げなければ又必ず起きる、繰り返されると思うようになって、その後からは何十年も内部被爆と核兵器・放射能の怖さを伝え続けてきました。 ビキニ被爆事件は日米の政治がらみのため、識者の中には判る人もいますが、元漁師で洗濯屋の親父が一人で訴えても振り向いてはくれません。 東日本大震災、大地震が3月11日とうとう牙をむきました。 そして恐れていた原子力発電所が高さ15メートルの大津波で破壊され、大災害の上に放射能が襲い掛かっています。 被害を被っている人たちの心境はいかばかりかと胸が痛みます。 苦しんでいるさなかに不謹慎なことかもしれませんが、私は一言いいたいです。 東海村の原発とビキニ事件は大きな関わりがあるからです。 だが誰の口からもビキニ事件という言葉が出てきません。 ビキニ事件が当時、核、放射能の恐ろしさをあれほど警告して証明したのに、日米政府はわずか9ヶ月で政治決着を図り握りつぶしました。 私たちはその時点で被爆者ではなくなり、何の援助も補償も受けられなくなりました。 そして、こともあろうに被った膨大なビキニ被害額やアメリカの核実験容認などを取引材料にして水面下で原発技術や原子炉をアメリカに要求し、東海村に導入したのです。 後にアメリカの国立公文書館からそれらの資料が見つかり明らかになりました。 原発導入に対しては、当時大勢の人たちが日本列島には活断層が網の目のように走っているから危険だ「原発は核兵器と同じもので危ない」といって反対してきました。 その答えが今出ているのです。 もし直下型だったらどうなっているだろうか、北海道から沖縄まで、いや世界中に広がり大変なことになっていると思います。 ビキニ事件以来、歴代の政権は核兵器と放射能の恐ろしさを隠したまま安全だ安心だといって国民に少しも教えてきません。 これこそが重大な流言飛語ではないでしょうか。 そのため大人になっても怖さを知らず反対もしない。 目の当たりにして初めて驚き、恐れおののいているのだと思います。 それは科学者も政治家も同じで、自ら原発は安全で安心だという幻想をいつの間にか信じてしまい、この凶器を利益を追求する企業に持たせてきました。 企業には事故がおきても賠償する能力などなどないことは素人にも分かります。 ビキニ事件後に生れ、原発の成り立ちを知らない政治家たちがまるで現政権の責任でもあるかのように国会で騒いでいますが過去をもっとしっかりと勉強するべきだと思います。 原発導入に関わった者たちは、原発に有利な計らいをしてその見返りに政治資金や地位、財産にもありついてきたはずです。 自分たちの過ちで大勢の人たちが苦しんでいるのです。 責任を感じるなら溜め込んだ財産や資産は苦しんでいる人たちの前に差し出し、頭を下げて施設住宅に入り、発電所の中で自ら陣頭指揮をとるのが人の道ではないでしょうか。 あと一つ言いたいことがあります。アメリカ軍と軍事同盟を結び、毎年5兆円もの税金を使って人を殺す為の軍事訓練を重ねている自衛隊は、日本国憲法に従って今すぐにでもやめ、災害救助隊に替えるべきだと思っています。 私は何年も前から子どもたちの前でこのことを言い続けてきました。 災害地の現状がテレビで映し出されるたびに、災害救助のヘリコプターが今出動していたら助かるのに、飢えと寒さに震えているあそこにはヘリコプターなら行ける、有事なのだ。 イライラしながら見ていました。 核兵器を積んで他国を攻撃する最新鋭のハイテク飛行機は要らない。 ミサイルやたくさんのレーダーを搭載して人を殺しに行く4000億円もするイージス艦も要りません。 自衛隊員の姿を映像で見たのは確か災害発生2日後だったように思います。 外国からの援助隊は敏速でした。嬉しかったです。 憲法9条を持つ日本が世界に貢献する道は、毎年繰り返される災害に貢献する災害救助隊だと思います。 一刻も早く出動し、助け、喜ばれ、信頼される。これこそが核兵器や戦争を無くして平和に近づく早道で、21世紀の『人類が目指』なければならない方向だと思っています。 2011年4月22日 ビキニ被爆者 大石又七 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.07.03 22:30:33
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