427097 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

夏希ヒョウの世界へようこそ

夏希ヒョウの世界へようこそ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2008年01月30日
XML
カテゴリ:その他
【あらすじ】
熱血漢・「菅原(すがわら)勇(いさむ)」(30)は銀行員だったがサラリーマン生活は性に合わず、頭取を殴って辞めてしまった。その後、実家のラーメン屋を手伝っていたが「もっと多くの人達を満足させたい」との思いから『仕出し弁当屋』を思いつく・・・

【本編】
都内一流ホテルの宴会場で帝国銀行・本店の忘年会。
会場は立食のバイキング形式で、サイドテーブルの上には和・洋・中の様々な料理が用意されて、数十人の銀行員たちが9つの丸テーブルをそれぞれ取り囲んで食事と会話を楽しんでいた。
会話の中から、彼らの本音とも言えるやり取りが・・・
A   「銀行経営を健全化しろというけど 利鞘(りざや)で儲かっている俺たちは融資金利の引     き下げは無理だし・・・」
B   「預金者の金利なんて上げられるわけがねぇよ」
C   「しょせん健全化なんて無理な相談だぜっ」
D   「客の9割はATM利用や振込み 公共料金などコストばかりかかる
    “ごみ預金者”じゃねぇかよ」
E   「30前半で年収1千万を超える銀行員と比べて 民間企業なんてボランティア団体さ」
F   「ただ同然の寮費だろ 借家住まいでも8割の補助を受けられるし・・」
G   「銀行員の社員金利は0.5%だから・・」
    「普通預金金利の500倍だぜ フフフ」
そして、頭取が壇上に上がって挨拶を始めた。
頭取  「来年こそ 日本経済と我が帝国銀行の大いなる発展を目指しまして・・・」
そこに係長・菅原勇が壇上に上がってきた。無表情だが何を考えているのか・・・?
菅原  「頭取 平成大不況の元凶は我々銀行です!」
頭取  「今 日本経済は好景気じゃないかね・・・」
菅原  「このままだとバブルが生んだ不良債権に押し潰されて・・国有化は目に見えてますッ」
頭取  「何を今さら・・・昔の話を・・・」
    「我々は旧大蔵省の指示に従ったまでだ。だから責任などない!」
    「それに大銀行は絶対に潰れないし 国が潰さない・・・」
    「民間企業とはわけが違うんだ!!」
菅原は訴えるように、
    「だからこそ取るべき責任を取り 世のため顧客のための銀行であるべきだと・・」
銀行マンたちから失笑が漏れる。
    「あいつ 係長の菅原勇だろ・・」
    「あの馬鹿 頭取相手に・・・」
    「確かに菅原の言ってることは間違いじゃねぇが でも世の中そうじゃないんだよ        な・・・」
    「だからあいつは子供なんだよ」
頭取は菅原を厳しく見据え、一喝した!!
頭取  「君は私に説教をするつもりかね!?」
菅原は頭取を殴り飛ばした!!
4人の社員が壇上に上がり、菅原を取り押さえた。
菅原  「意識改革も出来ない銀行なんて 辞めてやる!!」

それから菅原は、父親が経営する大衆食堂「中華飯店・たまご屋」(町工場が多い品川区大森)を手伝うことになる。

商店街通りの中にある「たまご屋」。
狭い店内はカウンター5人、テーブル席が3つ。
昼食時、満席で熱気がある。
カウンター奥の厨房では、菅原がフライパンを振っていた。
そして塩・コショウをフライパンの中の炒め物に振り掛ける。
菅原  「料理の味付けで一番重要なのは「塩」なんだよな・・・」
    「素材が持つ旨味を引き立たせ 高めてくれるから」
そして皿に盛って、カウンター内の父親・「勇一」(55)に、
    「親父(おやじ)っ出来たぞ」
父親  「ハイよー」
父親がカウンター越しに客に料理を出す。
菅原は厨房からカウンターの脇に顔を出して、店内を見渡す。
必死に、満足気に食べる客の顔を見て、菅原は嬉しかった。やりがいを感じた。
菅原  「一生懸命食べてやがる・・・」
    「もっと美味いモン作ってやるぞ!!」
そして、トイレへ。
勇一はカウンター内で、椅子に座って腕組みをしてTVを見ていた。
頑固だが情に厚く涙もろい。白髪交じりの角刈りで痩せ型の、江戸っ子気質だった。

トイレ。
菅原は排泄の目的でトイレに入ったわけではなく、洗面所の鏡を見て腕組みして自分の顔を見ていた。自分自身を見つめ直す・・・そして、思念・・・
菅原  「確かに銀行とうちの店じゃ社会的ステータスが違うかもしれんが・・・」
    「いったいどれだけの顧客が銀行に感謝していたか?」 
    「だから俺はこの店に戻ってきたんだ!」

客のカウンターの作業員・Aが父親である勇一に、
A   「勇一さん 勇ちゃんが銀行辞めたのは残念だけど・・御蔭で人手は助かるし店も繁盛したからいいじゃない」
隣の作業員・Bも相槌を打った。
B   「そうそう 前からそうだったけど勇ちゃんが作ったの旨いよな」
勇一  「あいつには銀行が休みの時に店の手伝いやらせてたからな」
A   「捨てる紙あれば拾う紙ありってか」
B   「怪我の功名だな」
勇一  「まぁ人生前向きに考えんとな・・・」
と、渋々納得するしかなかった。

夕方6時、雨が降っていた。
店内は客2人。(カウンターで飲食)
暇なため父親・勇一はおらず、菅原はホールのテーブルを拭いていた。
菅原  「昼は満席だったけど 雨が降るとコレだもんな・・・」
    「もっと多くの人に喜んでもらいたいんだが・・・」
テーブルの椅子に座り込んで腕組みして、ため息・・・
持て余し気味に、
菅原  「客を待つって つらいよ!!」
店の電話が鳴った。
菅原  「はい たまご屋ですが」
相手  「明日のお昼に加賀工場まで 50人前の出前できますか?」
菅原  「出前はやってますけど 50食分も皿がありませんし・・・」
    「はい 申し訳ございません・・・」
そして、受話器を置いたまま呟く。
    「将来 銀行で学んだビジネスを生かして 独立するのが目標だけど・・・」
    「いったい何をやればいいんだ!?」「元手(かね)もねぇし・・・」
ふと、上を向いて思い出したように、
(銀行で学んだことよりも “起業”で大事なのはアイディアだった)
    「ガキの頃から 生きるために大事なことは学校の勉強ではなくて「遊び」の中から学ん     だっけ」
悩んだ表情から一転して悪戯っ子のように、
    「久しぶりにひとっ風呂イクか!」
    「銀行時代の垢を落とす意味でも・・・」
そこに勇一が外出から戻ってきた。
菅原  「おおっ グッドタイミング!」
    「親父 ちょっくら出かけてくる・・後は頼む」
取り残された勇一、ポツンと独り言。
    「ま~た自分に都合のいい口実つけて遊びにいきよったわい・・・」

川崎のソープ街。
菅原は巨乳美女相手に、ベッドで騎上位・正常位で激しく攻め立てた。
猪突猛進!!
女は絶叫した。
    「壊れるぅーっ!!」
一戦交えた後でベッドに座って一服する余裕の菅原に、女はまだベッドに横たわったまま目は虚ろ・・・
女   「この仕事をやってると セックスでその男の生き方が見えてくるんだ・・・」
    「あなたきっと人生も攻めて攻めて・・攻めまくるようなタイプよね」
    「およそ待つということを知らない・・・」
菅原は大きく目を開いて閃いた!
    「店で“待つ”より“攻めて”やれ!!」
携帯を掴んで、
菅原  「皿がダメでも プラスチック容器なら・・・」
そして通話した。
    「先ほど出前の依頼をお受けいたしました「たまご屋」ですが・・」
    「弁当で配達させて頂きたいんですが・・・」
そして、フリチンで起立して頭を下げた!!
    「ハイッ有難う御座います!!」
通話後、右手を握り締めて確信した。
    「店周辺は弁当屋は無いから“隙間産業”って言うか・・・よぉーーし!!」

「たまご屋」。
夜9時58分、勇一は雨天で店が暇なため暖簾(のれん)を片付けて店仕舞い。(10時閉店)
勇一  「客もいないし・・今日は閉めるとするか・・・」
店内の電話が鳴った。
勇一は受話器を取って、
    「いやぁ10時閉店なんで・・・」
喜んで店に入ってきた菅原は受話器を横取り、
    「はい 炒飯ひとつですねっ有難う御座います!!」
出前箱を片手にレインコート姿で、自転車に乗るが途中でパンクした・・・
勢いが空転・・・
菅原は渋い表情でタイヤを見つめ、
    「やっぱ銀行辞めなきゃ良かったかな・・・なんちゃって・・・」

彼はこの後、『仕出し弁当屋』として都内のオフィス街へ出向き、一日に数万件の事務所へ弁当を配達することになる。
END。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年01月31日 02時16分19秒
コメント(0) | コメントを書く
[その他] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X