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カテゴリ:ホラー・シナリオ
~第6鬼・心の鏡~
容姿端麗な女がいた。 外を歩いただけで男を惑わす魔性の女。 俺なんて口も訊いてくんない。 仕事をするわけでもないが、色んな大企業の社長と知り合いで、食事に付き合うだけで百万ぐらいの金をくれるんだとか。 宝石やブランドが大好きで、一度袖を通した洋服はどんな高価なものでも二度と着ないそうだ。 政財界・芸能界では、その女と食事することが一つのステイタスとなっていた。 イベントや映画の試写会があると、セレブとして招待される。 その美しさを豪華な装飾品や、ドレスがさらに引き立たせた。 どんな女優よりも誇らしげに、堂々として見えた。 当然のことながら他の女達からは嫉妬の目で見られたが、そんなことは気にしないしする必要も無かった。 さらにその女はたち居振る舞いも華麗で、それがさらに優雅な雰囲気を演出していた。 気配りも上手で、男達はその気遣いにも心が癒された。 名前は美香という。 イタリア製の宝石やインテリアを買い漁っていた時に、ある鏡が女の目に留まった。 額には宝石が鏤(ちりば)められていて、鏡に映るその顔をさらに美しく幻想的に見せていた。 部屋に戻っても、女は飽きずにその鏡を見て、念じ続けた。 自分に見惚れながら、 「私は綺麗、誰よりも綺麗。もっと綺麗になれよ私、もっと綺麗になぁれ」 すると鏡に映った顔が勝手に動き出した。 唇は腫れ、肌は荒れ、頬は膨れ、目は飛び出して、悪魔のような醜い顔に変貌していった。 念じ続けた鏡には、心が乗り移っていたのだ。 この鏡のタイトルはイタリア語で書いてあった。 日本語で「心の鏡」という意味であった。 気が狂った女は、シャンデリアの紐で首を吊った。 死んだ女の顔は元に戻っていた。 完。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年07月23日 21時37分58秒
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