076073 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

*ナチュラルステップ*

*ナチュラルステップ*

インタビュー/大西優香子さん


0506大西優香子さん

必要なものがそこになかった。だから自分で立ち上げた

福祉NPO法人代表 大西優香子さん


●毎日が大変だけど 毎日がシアワセ

昨年十月に、大西さんが準備してきたNPO法人「ほっとポケット」が、名古屋市千種区で活動を開始した。
デイサービスを中心とする、小規模の介護施設。1日十人ほどのお年寄りが訪れ、一緒にお昼を食べ、話をし、夕方帰っていく。
中には重度の認知症(痴呆症のこと)の人もいて、向き合っていくのは簡単ではないが、辞めたいと思ったことは一度もないそうだ。
「沈黙が3秒続いただけで、パニックを起こしてしまうような人もいます。でもそんな重度の人をこそ預かって、家族の負担を減らしたい、とこの仕事を始めたんです。
家族の人たちに『やっと見つけた』『ここがあって良かった』と言われると、幸せを感じますね」。



●中学生の頃から福祉の道に進もうと

「自分でもビックリしています」と話すほど、大西さんの歩いてきた道は、福祉一直線だ。
きっかけは、中学生の頃に観ていたテレビ番組。
「日本が、アフリカへの援助などに積極的な時期でした。自分も人を助ける仕事がしたいなぁと」。
学校の養護教諭を目指して短大へ進み、卒業後はイギリスに1年半のボランティアホリデーへ。
半年ほど住み込みで老人ホームのボランティアをし、帰国後は老人ホームで5年間働いた。
「老人ホームで働いていたり、自分の父親が精神を患ったりした中で、いつも感じていたのは、今の福祉の体制では、受け入れてもらえない人がいるということです。
自分や家族もそれでつらかったので、同じ思いをする人がたくさんいるなら、必要な施設を自分で作ろうと思ったんです」。
そこでNPO法人を立ち上げてしまうところが、彼女のすごいところだ。「介護保険を適用するには、法人格が必要です。講座に通ったり周りの助言を聞いたりし、有限会社ではなくNPO法人として立ち上げました。
NPOの良い所は、横のつながりが出来ること。利益追求が第一目的ではないから、周りの組織と助け合いながらやっていけます」。



●生きることのつらさを減らす手助けがしたい

彼女が運営するNPOは、儲かるたぐいのものではない。
わざわざ起業するからには、お金儲けがしたいとは思わなかったのか、と聞くと「そんなこと考えもしなかった」と笑った。
「父親はじめ周りの人間を見たり、介護に携わったりしていると、人がひとり、生まれてから死ぬまでを『普通に』生きていくのって、なんて大変なことだろうと思うんです。奇跡に近いかも。
だから私は、その『大変なこと』を、『あんまり大変じゃない』ように手助けがしたい。
だって、誰だって死んでいく時には、生きてきて良かった、と言いたいじゃないですか」。

今は、「ほっとポケット」で忙しい毎日。だがこの先、いろんな人にノウハウを伝えて、同じような施設を広げていきたいと夢を話してくれた。
お金による豊かさとは違う次元で、彼女は今日も、豊かに生きる。
冷え切った誰かのために、ポケットをあたためながら。



*出逢えてよかった!私の影響人3*

イギリスの老人ホームのお年寄り
「ボランティアで接したお年寄りたちから孫のようにかわいがってもらい、お年寄りが大好きになったそう。
「楽しい」だけでは済まされない、老人介護の奥深さを知った出会いだったという。

亡くなった叔父さん
「何でこの人がこんな目に遭うの?と、納得が出来ない、頑張って生きてきても報われず死ぬこともあるんだと思い知らされた、叔父さんの人生と死だった」と話す。
それを身近なところで見ていたことが、大西さんが「ほっとポケット」を始めた大きな動機となっている。

ほっとポケットのスタッフと利用者
一緒に仕事をするスタッフからは「介護の才能を感じながら、仕事に向かう姿勢を勉強させてもらい」、利用者からは「人生の奥深さについて、毎日考えさせてもらっている」のだそう。
大西さんにとっては、毎日が新しい学びの場のようだ。


大西優香子さん(おおにし・ゆかこ)
 愛知県名古屋市在住。短大卒業後、老人ホームで5年間勤務し、退社。2004年10月、「特定非営利活動法人ほっとポケット」を立ち上げる。現在、同NPO代表として、地域のお年寄りへ介護サービスを実施。宿泊や出張なども行う、利用者のニーズを酌んだケアが、利用者やケアマネージャーの評判を呼んでいる。


2005年4月取材
この記事を購入できます



© Rakuten Group, Inc.
X