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カテゴリ:観劇日記
今月2回目の国立能楽堂。定例公演とはいえ、六郎オジサンや友枝昭世や観世のお家元や銕之丞さんなどなど、リーズナブルなお値段では見られない人々が出てるんじゃないのに見に行くのは、私としてはとても珍しいこと。
ヒト目当てじゃないってことは、演目目当てってことなんだけれども、じゃぁ今日の演目を知ってるのかと言えば、そうでもない。 ただ、江戸の大蔵流の狂言を久しぶりに見たいと思ったらちょうど善竹さんが出ていたのと、業平モノのお能だっていうんで、狂言もお能も気分がピッタリあったのでした。 まずは狂言。善竹さんを見に来たので、正直言って曲には何の興味もなかったのですが…『鞍馬参り』ってありがちな題名だし見たことあるような気がするんだけども全く思い出せず。見てるとしたら茂山さんじゃないかって気がするんですが、同じ大蔵流とは思えないくらい味わいも色合いも違うもんだから、これじゃ見たことあっても思い出せなくて当然かも、なんて思ったりもして。 主が太郎冠者を連れて鞍馬参りをする。なんだか気持がすれ違いがちな二人。主がワガママ勝手を言うので太郎冠者は面白くない?ような、そんな感じ。で、おこもりしてると太郎冠者の夢に多聞天が出てきて福を授ける。それを聞いた主は羨ましがって、適当な理由をでっちあげてその福を譲れといいだす。太郎冠者はタダくれてやるのは悔しいからなぶってやれと、受け取り方が悪いとか何とか言っていろいろやらせる。でも結局は、福を譲っておしまい。 うーん。 ワンマンなオーナー社長と中間管理職みたいな感じ(爆) 無理難題を言いつける主の雰囲気も、ムカついてる太郎冠者の感じも、茂山さんでなじんでるのとは全然違うし…芸風が違うっていうより登場人物の性格設定がまったく違う風。だから、同じ曲を見ても違って感じられるに決まってる!と思ったんだっけ。 だって、え!そういう流れでそういう展開になって、それでも仲良く収まるの?!って感じだもん。 でも、善竹さんを見たのはこれでやっと2回目だし、初めて観てから5年くらい経ってるし、この機会に観られて良かったです。東次郎さんとも違う、サラッとした雰囲気は、なるほど江戸の大蔵流っていうもんなのかも。狂言の、シュールな感じが、とっても増幅されるような、そんな印象が残りました。 そしてお能、業平ちゃん。 『小塩(おしお)』という題に、「車之仕方」って副題がついてるもの。なんでも、後ジテで車という装置を使う特別な型らしい… 大原の小塩ってところで花見をしていたら、花の枝を持った風流なジジィが現れて、それが実は業平ちゃんだった、というお話しですが、花見という内容が今の季節にピッタリで気持ち良し。なるほど、いいプログラムだ!あはは。 そして…うーん、そうだよね、そうなんだよね、イイオトコって。 若い頃のイケてたボクにとらわれている。そのせいで、どうやら成仏できないらしい?業平モノってどうもそんな風に見えちゃって仕方がないんだけど、これもそうでした。もちろん私の偏見なんですけど、どんな筋立てになっていても業平ちゃんの舞なんか見てると、老いてジジィなって昔のカッコいい自分が忘れ去られてしまうのが辛く悲しく耐えがたいみたいな。 これなんてまさに、前シテがジジィで後ジテが若くてカッコいい貴公子ですからねぇ、そのまんまだよ。 「妄執の雲晴れやらぬ朧月」ってのは鷺娘だけども、業平ちゃんもそんな感じ。気分はイケメンのままなのに、カラダは老いて見てくれはショボくなって、「やだやだ、こんなのボクじゃない!」って地団太踏んで悔しがってもどうにもならない感じ。でも諦めきれなくて、魂魄この世にとどまっちゃうってな。 後ジテの舞がとても美しく、またその時の謡の詞章がキレイな言葉なもんだから、私の頭の中ではますます妄執の雲が広がっちゃいました。 うーん、業平ちゃん、いいよ、それで(爆) 今月のお能、二つ目もまず満足、いや意外なほど満足。先月の公演中止の無念さが、だんだん薄れてきたなー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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