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ねこと猫女神の徒然日記

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2015年07月27日
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カテゴリ:小説

 敗戦国家と言っても色々ある。隣の星系に色々持って行かれたりするところや、
資本を乗っ取られるケースである。
 ライガーでは、どうやらそう言ったケースが多いようで、ドッグ周りは静かであった。<椿姫>は、<ペルシアン・キャット>と並んで係留した。
 どっちが行くかは勿論、<ペルシアン・キャット>側である。
「はい、何とかの雫」
「ひゃ~、帰ってきてよかった~」
「あの時、<ペルシアン・キャット>が来てくれて、助かりましたよ」
「本当だったら、適当な石ッころにくっつけてしまおうかと思ったくらいだから」
 またも石ッころである。しかも今回はランダム打ち。ペイントも付けられないのでは、「今回は発信機付きなのよ」
 なるほど、そこまで準備していての、<ペルシアン・キャット>への狙撃だったのか。
 運がよかったとしか言いようがない。
「あたしの運の強さね~」
などと椿は言っているが、単なる偶然である。絶対に偶然である。認めたくない~!
「せっかく戻ってきて何だけど、衣装に合うのがないので、しばらくはお休みね」
「今回は、どうやって盗んできたんですか」
「宝石が飾ってある床下、つまり天井に爆弾を仕掛けて、落ちてくるのを待ってたの」
「ド派手~~~」
「俺たちのイメージから、完全にドジっぷりが消えたぜ」
 そう、これが本当の“千年庭園”なのだ。
宇宙港へ入ってもエアカーを乱れ走らせ、空港を一時閉鎖させてから、自分だけお先に~である。
 しかし今回は、パトロール艦の山に囲まれて、運が尽きたかと思われたが、これは事前に配置されていたものであろう。“千年庭園”は予告状は出さないが、人気の宝石を狙うので守備固めをされていたのだろう。
「さて、俺は積み荷の方へ行ってくるぜ」
「あたしたちは、騒ぎまくろう~~~」
 同じ工場であっても、活気の無さを感じる。
 これが敗戦国というのだろうか。
 勿論市民レベルまで行けば、今日を生きるために色々やっているだろうが、ちょっと高いところから見ている裕には、計り知れなかった。
 宇宙船のエンジンを下ろしている最中、周辺は何事もなく、特に変わった様子もない。
 考え過ぎか。
 そう思ったところへ気付いたのが、積み荷がないと言うことである。
 敗戦国だけに、輸出がないのだ。
 しまった、と裕は思った。
 工場の詰め所へ行って何でも良いから、積み荷がないか聞いてみる。
 しかしなかった。
 あああ、“千年庭園”と同じになってしまう~~~。
 そこへ、内務省から連絡があった。
 内大臣の亡命である。
 戦争犯罪人から逃れるための手段であろう。
 今回の戦争で、一番罰せられるのは、アンクード連合のトップだが、付いた側の高官まで裁かれるのはいかがなものか、と言う気がして成らない。
 もう工場まで来ており、裕は立ち会うことになった。
「初めまして、モナコ・ドワーニです。そちらが妻と娘です」
「これは内々のはなしですよね?」
「勿論そうです。おおっぴらにやると、反乱が起きてしまう」
「行き先は決めてらっしゃるのでしょうか」
「太陽系国家フェルザーに決めておる。話はこれからだがな」
「では我々は、あなた方をフェルザー、まで送り届ければいいと」
「そう受け取ってもらって結構だ」
 そうなったら、速く出立したいところだが、エンジンの搬出はまだ続いているし、
 美奈が帰ってこないので、出たくても出られないのだ。
 そうこうしているうちに、人だかりが出来はじめていた。
 どこからか、情報が漏れて、亡命することがばれてしまっているのだ。
 銃を手にした民間人たちが、大勢船の周りに集まってきた。
 ここは、強行突破しかない!
 <ペルシアン・キャット>は、台座から後退し、エンジンの搬出を無理矢理終えた。
 荷受けのサインなど、必要があるが、とても出来る状態ではない。
 あとで請求するとして、発進状態に入った。
 「警告、警告<ペルシアン・キャット>は正規の手続きを踏まず、出国しようとしています」
 だったら、銃器を持った連中を排除してくれよ、と裕は思った。
「エマージェンシーだ、銃器を持った連中に襲われている。ここから抜錨しても良いか」
「了解した」
 裕は荷受会社に連絡を取り、エンジンの納品が終わったことを確認した。これで、入金があるわけである。やれやれだ。
 内大臣はリビングに連れて行きくつろいでもらっている。ギャラがいくらになるのかは、
付いてから次第になりそうだった。
 裕は美奈に連絡を取った。用事が出来たから、先に出立すると。
 パーティの真っ最中の美奈は、よく理解できなかったようで、はいはいと返事をしてきた。
太陽系国家フェルザーまで、ワープ2回で済む。隣通しと言うところか。
 裕は、<ペルシアン・キャット>をワープさせた。
                    ☆
フェルザーの方は、寝耳に水だったようだったが、一応亡命を受け入れてくれた。
裕の仕事はこれで終わりである。
わけがなかった。
ギャラをもらってないからである。
モナコ・ドワーニはケチではなく、大枚をはたいてくれた。
よほど居心地が悪かったに違いない。
 しかしお隣通りの太陽系国家とあっても、フェルザーが決して安定しているわけではなかった。
<ペルシアン・キャット>をドックに係留したまま、街へ出てみる。
意外に活気がある。敗戦国と言うより、戦争が終わったことが、何よりのことなのだ。 少しばかり歩いてみると、それがよく判る。
 誰も彼も、戦渦に焼かれて疲れ切っていたのだ。
 それが終わって、脳天気になっているのである。
 だが、それは一面でしかない。
「おい兄ちゃん、金もってねえか」
 不意に襲われた、後ろに、4人いたのである。
転がされた裕だったが、すぐに起きてパンチを食らわす。
 一人轟沈。
 さあ、どうするか。
 二人目も殴りかかってきた。
 同時に三人目も上から蹴りを入れてきた。
 二人目をカウンターで熨すと三人目は十文字ブロックで蹴りは跳ね返し、脇腹に一発、蹴りを入れてやった。
 最後に残ったヤツも、右フックで終わりである。
 こうでもしないと、生活が成り立たないのかな。
 内大臣亡命に支払ったギャラを持つ裕には、やるせなさが残った。







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最終更新日  2015年07月27日 17時02分52秒
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