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普通の速さで歌うように♪

[趣味　今んとこ読書か] カテゴリの記事

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西の魔女が死んだ

～解説から～日々の中で、人間は、自らが作り出した科学物質をはじめとする人工的なものに囲まれ、さらに、人工的なよくわからない物がたくさん入ったたべものを食べて生きています。それは少しずつ人間を歪め、社会全体を歪めてきたように思います。いつのまにかそんなおかしな格好になってしまった人間も、本来は、他の生物と同じ自然の一部ですから本能的にどこか変だと感じていても、すぐにはどうすることもできずに毎日を生きています。様々な社会問題は、全て、そんな人間の歪みが引き起こしているのではないかと思えてなりません。～～～この物語には、人によって形は異なりはしても、私たちが実際にしあわせに生きるためのヒントがいくつも書かれていると思います。おばあちゃんの、この一見古風な生き方は、実は、古くもあり、同時に最も新しくもあります。それは、まさに現代社会に生きているまいが、自分の力で立ち直り、自分の足で歩きはじめるのに有効であったということからもわかります。本当に価値のあるものは何であるのか。今、現実に私達のいる社会が求めた答えのひとつがここに在り、書かれるべくして書かれた物語のように思えてなりません。～～～一つめは、ごはんの時、ひとくち、ひとくちをよーく噛んで食べてください（なるべく、今自分がいる国で産した、旬のものを）すると食べたものたちが体にしみ込んでゆく感じがして元気がでます。米・野菜・魚・肉・・・・。料理される前は、みんな自分を同じように生きていたのだという事実、そのお蔭で自分は生きていられるのだという事実も思い出してください。二つめは、もしもテレビやラジオなどが、身の回りで常についている状態にあるのでしたら、一度、それら全部消してみてください。何だか落ち着かない気持ちになるかもしれませんが、今まで、あふれる音に埋もれていた「自分」が現れてきます。そして三つめは、庭があるお家ならば庭でよいですし、無ければ近くの公園などへ行ってそこの土地や草の上に、裸足で立ってみてください。靴と靴下を脱ぐのは、最初ちょっと抵抗があるかもしれませんが、きっと何かが目覚めるような感覚を体験できると思います。～おばぁちゃんの台詞から～「身体を癒す草木に対する知識や、荒々しい自然と共存する知恵。　予想される困難をかわしたり、耐え抜く力。そういうものを、　昔の人は今の時代の人々よりはるかに豊富に持っていたんですね。　でも、その中でもとりわけそういう知識に詳しい人たちが出てきました。　　人々はそういう人たちのところへ、医者を頼る患者のように、　教祖の元へ集う信者のように、師の元へ教わりに行く生徒のように、訪ねていったのです。　そのうちに、そういうある特殊な人たちの持っているものは、親から子へ、子から孫へと　自然と伝えられるようになりました。知恵や知識だけでなく、ある特殊な能力もね」「多かれ少なかれ人にはそういう力があるんですよ。　でも、人より多くそういう力のある人はいますね。人より上手に歌が歌えたり、　計算が早くできたりする人がいるようにね。私の祖母がそうでしたよ」おばぁちゃんのような魔女になりたいと願い始めた孫娘に　おばぁちゃんが魔女修行として諭した言葉。「そうね。まず早寝早起き。食事をしっかりととり、よく運動し、規則正しい生活をする」「悪魔を防ぐためにも、魔女になるためにも、一番大切なのは、意思の力。　自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。　その力が強くなれば、悪魔もそう簡単にとりつきませんよ。　まいは、そんな簡単なことっていいますけれど、　そういう簡単なことが、まいにとっては一番難しいことではないかしら」学校生活に馴染めなくなり、どうしても学校に行けなくなった少女が山の中で魔女を自称しながら自然と一緒に暮らす、大好きな大好きなおばぁちゃんと一緒に過ごす短い期間のお話。魔女として暮らすおばぁちゃんの魔女修行の肝心かなめは『何でも自分で決める』　喜びも希望も、もちろん幸せも～教えていただいた桃のコンポートのよに心がキラキラする素敵な話♪～どうしてみ～しゃおねぇさんが、魔女を自称するのか知りたくておねだりして教えていただいた本。（＾＾）　なのでした♪　　←幸せものあたしもいつか魔女になりたぃ♪昨日朝日の読書欄で素敵な本の紹介にも載っていました。映画化されるそうで♪おめでとうございます♪

2007.10.08

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本棚

ひゃん♪カマキリだぁ♪速やかに退去していただいた♪蟷螂（漢字にするとかっちぃぃ）に中断されたので、休日暇つぶし、←ばっかりしてるふと気が向いて本棚を撮る　　わたくちの本箱といえばそりゃぐちゃぐちゃで古典が割りと好きですね。ナナの隣にあるソクラテスの弁明は投げた「夏の日の声」の横にある、嵐が丘なんてぼろぼろだ。買ってきちゃ上に横積み　買ってきちゃ上に横積みジェーン・エアの上に　ラマンがあるのは偶然とはいえ　おもろぃと思うしかしお気に入りには、枠があり（笑奥底にも枠がある♪サガンは一生捨てない（笑　←似合わねぇよって漫画も図鑑も実用書も平並べで大好きな海水魚の図鑑は　たくあたりに切り取られた魚もあり＞鯛そして、指輪物語とナルニア国は、、詩くんあたりが読まないかちら？連れが帰宅しました。本日これにて終了検定おねがいしまぁあぁ　休日まったりしたぁ♪

2007.10.07

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頼むから静かにしてくれ

(￣ー￣) ふ気障った台詞 ←ぢゃ買うなあのね♪今日の仕入れ品は・上海ベイビー/衛彗・南総里見八犬伝/安西蔦子・楢山節考/深沢七朗・頼むから静かにしてくれ/レイモンド・カーヴァー・砂の女/安部公房（＾＾）　♪♪♪　↑ぐちゃぐちゃ◆名前になってるのも多いですね。珠の名前。　仁（孔子曰く仁とは『人を愛す』）　義（この字のつく方は日本にどれだけいんやら。そしてそのうち義を持つ人は？）　礼　智（さとよっ智を持て）　忠（忠太くんは飲酒で免許取り消しになった）←連れの仕事仲間　信（おやじと殴り合いした末のおぢちゃん）　孝（たーちゃん　孝行してなぃ）　悌名前負けしてる方も多いですね（ほほほ♪）『八個の珠を揃えるのだぁぁ』　の南総里見八犬伝からいくか◆エロエロ上海べぃべ♪（中国当局発禁ブツ）からいくか、とてもとても思案しているところざんす♪本を買うときはいつだって今度こそ生涯お取り置きの本に逢えるかなぁ。と思うとワクワクしますぅ♪あたしの本の読み方は熟読（しなぃ）。乱読・速読・手当たり次第派なので９割９分　読んで廃棄→古本屋へそれでも、引っ越しても引っ越しても片付けても片付けても残るリスト読み直しても読み直しても手放す気にならなぃリストがこの歳になると少しずつ溜まってきて、まだまだ溜まっていくといぃと思う　＞ばさまになって、会社勤めなども引退したらそゆ本だけ読み直して暮らしたぃ　＞自分好みの自分書庫　そこで酒呑んで暮らす　←この５年以上ずっと公言してるこれも夢ですお夕飯は愛あふれる連れの、昨日の残りの鍋・生野菜その場で生肉串刺し。備長炭炭火焼き鳥（レバー・タン塩・しし唐焼き・砂肝）でちた。帰宅するなり連れが『重箱どこ？重箱？』『何につかうのですかぁ』『明日の弁当、助六でいぃ？納豆巻きはくさぃか？　←作る気まんまん仕込み初め済み　かっぱ巻きもいれる？鯖の味噌煮と、智にはウイング揚げと～～～～～』（－－；　・・・何を張り切っているやら（－－；　・・・お昼にそんなに食べられませ～ん秋涼しくなり、また目覚め始めた連れの料理熱をいぃ事にそしてわたしは読書時間に秋の日を多くあてるのでちた♪

2007.10.02

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「調理場という戦場」　～いちばんおいしいもの～

「調理場という戦場」～いちばんおいしいもの？調理場という戦場～　＞調理場という場や組織を仕切る『組織論』や『仕事論』はもちろん、　＞人の生き様をしみじみ感じる本です。　＞自分を磨くとは・・・・？なんて、きママねぇさんが、是非是非読んでみる価値ありと太鼓判でお奨めしてくれた本。普段はあまり生き方指南とか、選ばないんだけど(読まないんだけど・・特に・・押し付けがましぃの嫌い・・・）と、思いつつ　おとつぃ本を手に入れてページをめくる。◆斉須さんの言葉「毎日やっている習慣を、他人はその人の人格として認めてくれる」　自然のものを素材に何がしかを生み出す職業に就いているので、怖くなることもあります。時が経つごとに、作為に満ちたものが市場に入ってくるようになっている。自然のものではなくなっている。「笑顔で麻薬を注入し続けているような食品」が増えてきている現実もよくわかるので、いろいろな事を思ってしまいますよ。　人間の慈しみが介在しない、機械のみで作られる食べ物が増える事態は、これ以上進まないでほしいなと思いながら仕事をしています。自分でやれる大きさ以上の仕事には手を出さない・・・これは簡単そうで難しい。いつもうれしそうに、楽しそうに仕事をしていました。姑息さもない。表も裏もまったく変わりがない。ああいう風になりたい。大切なのは、簡潔であり、清潔であり、人間性があるということです。「整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされるための基本なのだ」汚い環境では、最後まで邁進するパワーすら出てこないと思う。そして、絶えず汚い環境で育ってしまえば、後々にクリアな環境になじむこともできない。そして、清潔度は毎日やらないと保たれないものだから、貯金しておけない。愛情や信頼と同じ。人は外見で判断すべきではないかもしれません。人間を住んでるところで判断するべきでもないかもしれません。しかし、どういうところに住んでいるか。身なりはどうか。それを、まわりの人は「それがマサオの生き方なんだ」という目で見ているのです。そして、クチでは何を言っていたとしても、その人の住居なり身なりには、生活の現実が浮き出てくるものでしょう。　だから、稼ぎがいいとか悪いとかいうよりも、生き方をきちんとしたいと思っていました。富んでいるか貧乏かというよりも、住んでいるところを大切にする姿勢を持ちたかった。洗濯をこまめにする人間でありたかった。「マニュアル言葉でそらぞらしい事をお客に言ってくれるなよ。　自分がどれだけさもしいかを　露呈するようなものだから　」家庭的な雰囲気で、ありのままに自分の心を込めていれば、きっとサービスは伝わる。言葉の見かけ上のきれいさに逃げないでほしいのです。絵空事の幸せを切り売りして悦に入るのではなく、普通のサービスをきちんとやればどれだけ輝いて見えるものか・・・。ありのままにやってほしいなぁ。採用するかしないかを決める基準は、ふたつだけです。気立てと健康。そのふたつにはよけいな作為が入ってないからいいのです。どこを切っても裏表なく人に接する人はすばらしい。運命という名前の楽譜を手にしても、それぞれが独特の演奏をしますよね。演奏の価値は、それぞれからにじみ出てくる個性ひとつでガラッと変わる。　それを人は「かけがえのないもの」と呼ぶわけでして・・・調理場でも本当は人間の生き方から出るダシが「いちばんおいしいもの」なのです。～あとがきから～もうすこしやりたいし、上手になりたい。その気がある限り、道は続いている。ゆっくりを精一杯・・・・今はそんな気持ちです。「コート・ドール」斉須雅雄の仕事論　　真剣に真面目に自分を積み重ねてきた人の、飾らない自分の積み重ねの体現するものからでてくる言葉の宝石箱のような本で、読み終わった読後感は、、、、、、、素敵な人だ・・・♪背筋が正されるような生き方をしている人に感銘を受けました。そして、読んでいて曲がった背筋が引き締まりました。ねぇさん、、ありがっと♪

2007.09.23

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～若気と老熟と～　徒然草と論語から見る

◆第百七十二段◆若き時は、血気内に余り、心物に動きて情欲多し。身を危ぶめて砕けやすきこと、珠を走らしむるに似たり。美麗を好みて宝を費やし、これを捨てて苔のたもとにやつれ、勇める心盛りにして物と争ひ、心に恥ぢうらやみ、このむところ日々に定まらず。色にふけり情けにめで、行ひを潔くして百年（ももとせ）の身を誤り、命を失へるためし願はしくして、身の全く久しからむことをば思わず、好ける方に心ひきて、長き世語りともなる。身を過つことは、若きときの仕業なり。老いぬる人は、精神衰へ、淡く疎かにして、感じ動くところなし。心おのづから静かなれば、無益のわざをなさず、身を助けて憂へなく、人の煩ひなからむことを思ふ。老いて智の若き時に勝れること、若くしてかたちの老いたるに勝れるがごとし。◆若い時代は血気が盛んで、心は物に接すると高ぶり、欲望が烈しいものだ。身を危険にさらして破滅しやすいさまは、砕け易い玉を転がすのに似ている。美麗なものに心奪われ、有り金をつぎ込んだかと思うと、突然これらを捨てて一人出家してしまう。また闘志満々で、人と争っていたかと思うと、自己嫌悪に陥り他人を羨ましがる。目標が毎日変わって一定しない。色欲に溺れ、情にほだされ、思い切りのよい行動をして先の長い将来を台無しにし命を失ったような例に憧れて、我が身の安全は頭にない。そうして好きな事にのめりこんだ揚句、長く世間の噂の種になってしまうのだ。身の破滅はまさしく若気の至りである。年老いた人間は、気力が衰え何事にもあっさりとこだわりがなく物に接しても欲望にかられない。　心が自然で平静だから、無益なことは慎む。我が身を大切にして心配事なく他人に迷惑をかけないようにと考える。老人の判断力が若者より勝っているのは、ちょうど若者の容貌が老人より勝っているのと同じだ。◆～ふぅぅん(笑～年を食うという事～(年を食う。重ねていくのは心を不安定にする無駄な執着心がないと、取りたいところ）◆孔子　『四十にして惑わず』若い頃はあれこれやって叩かれようが、他人に何言われようがどんどんチャレンジいろんな事を覚え、吸収して自分を磨き、その中から自分の判断で良いと悪いをきっちり選別。そして悪いものは捨て、善いと信じる事だけを、その言動に出せるようになれば四十になる頃には、間違っても周囲に憎まれるような人間にはならないはず。時には人に叱られて、時にはあちゃっと失敗し、きっと孔子の若い頃はそれでも人よりいろんな事を見聞きしようと過ごした分、いろんな物事に戸惑いっぱなしだったんですね♪きっとそれまでは、それでも、やっぱり全てを体感・実感・自分で判断。若い頃を思い出す遠い目。（￣￣　）　・・・昔は僕も若かった・・・そして孔子は言った。『四十になって、ようやく、やっと、周りのいろんなあれこれに自分自身が戸惑わなくなった』◆孔子　『七十にして心の欲する所に従へども、矩を踰えず』この文は逆に、それまでの孔子が、しばしば思いのままに踏み越える大変な情熱家であり行動家であった、ということをうかがわせる。なお、ここから七十歳を　『従心』という。　自分が思うがままに振舞う、その無理の無い自然の振る舞いが　人としての、標準。そして法則。そして道徳的な基準。生きていく上での規準を踏み越える事が無くなるなんて理想。自分の基準。自分の拠り所となる自分の芯は、長い長い月日をかけて、自分自身の力でこれはいい。これは違うと。ひとつひとつ、いっこいっこ、真剣に、丁寧に、自分の中に、自分の力で、積み重ねて創りあげていくしかないんだろうな。っとしみじみ思う。天命もわからないし、あれしても、これしてもいちいち惑いっぱなし。心の欲するところに従っても矩を踰えなくなるまで　←なれればね先は長い。人生を悟って思いのままに振舞っても、規準を踏み越える事が無くなるそんな自分を　人生まっとうするまでに、創りあげられるんだろうか心の欲する所に従へども、矩を踰えず　そんな老人になれたらいい。これもまた、一朝一夕にしてならず。願うもんぢゃなくて、ただ日々の積み重ね。（笑◆子曰く～５～時間の使い方一時間の積み重ねで、人生は成り立っている。無駄に使えば無駄な部分が多い分、内実の部分が割合が少ない人格が形成されるだけかと暗い事考えるより、明るい事、考えるほうに配分まわすほが、ま、同じ時間使うなら、人のためぢゃなくて、自分のためであーる。自分が同じ過ごすなら、楽しく思う時間の使い方をしよう。同じ限られた時間の中、楽しい時間を多く取り、無駄な時間を省いたものが結局人生勝ち？ほうけてんなら、なんかしろ。っと　貧乏性のすすめともとれる（笑時は金なり。無駄に浪費してる余分はにゃぃっ！！　って事かな◆昔から、早く年取りたい願望ってゆぅのがあって　＞早く多少のあれこれに右往左往しなぃ土性骨ってゆぅか、　＞やせ我慢ぢゃなくて、ほんとの心からでっかぃ懐の　＞多少の出来事には、いつでも笑ってるばばぁになりたぃっちゅぅか。で、今日も今日とて徒然のこんな一節に惹かれてみます。論語でも同じよなこと書いてあったなぁっと論語をひっくりかえさず、たまには日記を読み返してみる。出てくるくるくる（くるくるぱぁ）延々と同じような事書いてます。　＞それは自分が心から願っているから。だと思う。　＞右往左往しなぃでかぃ懐のばばぁになりたぃ　＞いつも毎日無駄にせず自分のために笑って生きていきたぃこれだけ暗示をかけてるんだから（笑あと２０年する頃には、（少しはまともなばばぁになれてるかもしれなぃ。）と、自分で自分の先を楽しく思う（願う

2007.09.07

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～徒然草～　今も昔も一緒ぢゃねぇか(笑

◆（第七十八段）◆今様のことどもの珍しさを、言ひ広めもてなすこそ、また受けられぬ。世に言古りたるまで知らぬ人は心憎し。今更の人などのある時、ここもとに言いつかたる言ぐさ、物の名など、心得たるどち片端言ひ交はし、目見合わせ、笑ひなどして、心知らぬ人に、心得ず思はすること、世慣れず、よからぬ人の、必ずあることなり。◆訳◆ニュースが起きると、すぐ乗っかって、しゃべりちらし、騒ぎたてるのは、どうもうなずけない。すっかり騒ぎがおさまってしまうまで気付かなかったという人間の方が奥深い感じがする。新顔の前で、仲間同士はよく知っていることを、一部分だけ言い合って、互いに目配せしたり、笑ったりして、何もわからない新人を戸惑わせるのは社会性のない、軽薄人間が　きまってやることだ。◆(第七十九段）◆何事も入り立たぬさましたるぞよき。よきひとは、知りたることとて、さのみ知り顔にやは言ふ。片田舎よりさし出でたる人こそ、よろづの道に心得たる由の差し答へはすれ。されば世に恥づかしき方もあれど、自らもいみじと思へる気色、かたくななり。よくわきまへたる道には、必ず口重く、問はぬ限りは言はぬこそいみじけれ。◆訳◆どんな場合でも、よく知らないふりをするにかぎる。立派な人間は、知っていても知ったかぶりをしないものだ。軽薄な人間にかぎって、何でも知らないことはないといった返事をする。だから、聞いている相手が圧倒されることもあるが、本人自身が自分からすごいと思い込んでいるさまは、どうにも救いがたい。（ぅぷぷ♪）よく知っている方面については、口数少なく、聞かれない限りは黙っているのが一番である。あたし、転職歴もけっこあるので、ピーチーエーとか自治会とか役員もよくやらされるので(ぅぅん。確かにたくさんいる。こゆ人・・・）と、笑ってしまったこってす。知ったかぶり、なんでも横槍口出し、そしてその場の会話仕切りたがりな人はどこにでもいるし、仲間内だけ～～　メール見たぁぁ？（高校生きゃ？）見てない知らない人には入れない会話を～私達は仲良し仲間ゆえに～みたぃに、自慢げに見てない人の前で平気でする若いギャルばば（笑　他の目を気にせず、内輪受けと自分話に終始するおばさま。『○○さん（前の方）はね。』（比べられても知らないっすよ）　みたぃな人もたくさんいますね。人間の生活とか、人の集まりってゆぅのは　変わらないこってす。。。っと徒然草読んで思う（笑

2007.09.04

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◆人の心素直ならねば(第八十五段）◆

◆人の心素直ならねば、偽りなきにしもあらず。されどもおのづから正直の人、などかなからむ。己素直ならねど、人の賢を見て羨やむは尋常(よのつね）なり。至りて愚かなる人は、たまたま賢なる人を見て、これを憎む。「大きなる利を得むがために少しきの利を受けず、偽り飾りて名を立てむとす」とそしる。己が心に違へるによりて、このあざけりをなすにて知りぬ。この人は下愚の性移るべからず。偽りて小利をも辞すべからず、仮にも賢を学ぶべからず。狂人のまねとて大路を走らば、すなはち狂人なり。悪人のまねとて人を殺さば、悪人なり。騎を学ぶは騎のたぐひ、舜を学ぶは舜の徒なり。偽りても賢を学ばむを賢といふべし。◆訳◆人間の心はまっすぐではないから、嘘をつくこともある。ただし生まれつきの正直者がいないわけではない。ところが、自分は不正直なのに、他人の正直を羨ましく思うのが人間というもの。しかも、大ばか者は、まれにいる正直者を見ると、かえって憎しみを抱く。「内心はもっとでかい利益を狙っているので、小さい利益はわざと受取らず、　いい格好をして評判をあげる魂胆なのだ」と中傷する。自分の本心とは合わないからといって、こう嘲笑するのでよくわかる。この大ばか者は死んでもなおらない。たとえ嘘でも、小さな利益を断れないし、賢人のまねさえできない。狂人のまねだといって大通りを走れば、本物の狂人になる。悪人のまねだといって人を殺せば、本物の悪人になる。駿馬をまねる馬は駿馬の仲間、中国の聖人　舜をまねれば聖人舜の仲間に入る。たとえ本心からではなくても、賢人を見習おうと努める者は、賢人と呼んでいいのだ。◆坂口安吾の堕落論◆人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄のごとくではあり得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それゆえ愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。～続堕落論～生々流転、無限なる人間の永遠の未来に対して、我々の一生などは露の命であるにすぎず、その我々が絶対不変の制度だの永遠の幸福を云々し未来に対して約束するなどチョコザイ千万なナンセンスにすぎない。無限また永遠の時間に対して、その人間の進化に対して、恐るべき冒涜ではないか。我々のなしうることは、ただ、少しずつよくなれということで、人間の堕落の限界も、実は案外、その程度でしかあり得ない。人は無限に堕ちきれるほど堅牢な精神にめぐまれていない。お題とまとめ『あたしの心素直ならねば、偽りなきにしもあらず。されども偽りても賢を学ばむを賢といふべし。』人の一生は短い。いつまでも変わらないものもないし、いつまでも留まっているものもない。変わっていくものなら少しずつでも自分が思う良い方向に変わっていきたい。それをなしえるのは自分の心のベクトルとそして行動の発露。振り返るとき、「あっとゆぅ間」の人生ならなし崩しに何もせず、そして日々つまらなぃなぁっと思いながら暮らし続け、ただ堕ちていったよなぁ。ただもぅつまらなかったよなぁいつ来るかわからない最後の時に、今までの自分の全部を悔やむより昨日より今日　昨日より今日　そして今。少しでも、自分で自分を満足できるよに。。。かな？生き方ハゥトゥ本は嫌いだけど、古典は好きです。つまみ食い派です。カチンコチンのなんとか信者じゃなくて、自分に合うところだけチョィスして、トッピングして食べます。

2007.09.04

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～徒然草～　蟻のごとくに（第七十四段）　寸陰惜しむ人(第百八段）

◆第七十四段◆蟻のごとくに集まりて、東西に急ぎ、南北に走る。高きあり、賎しきあり、老いたるあり、若きあり。行く所あり、帰る家あり。夕べに寝ねて、朝に起く。営むところ何事ぞや。生をむさぼり利を求めて止む時なし。身を養いて何事かを待つ。期するところ、ただ老いと死にあり。その来たること速やかにして、念々の間にとどまらず。これを待つ間、何の楽しびかあらむ。惑へるものはこれを恐れず。名利におぼれて先途の近きことを顧みねばなり。愚かなる人は、またこれを悲しぶ。常住ならむことを思ひて、変化の理を知らねばなり。◆訳◆人間が、この都に集まって、蟻のように、東西南北にあくせく走り回っている。その中には、地位の高い人や低い人、年老いた人や若い人が混じっている。それぞれ働きに行くところがあり、帰る家がある。帰れば、夜寝て、朝起きて、また仕事に出る。このようにあくせくと働いて、いったい何が目的なのか。要するに、おのれの生命に執着し、利益を追い求めて、とどまることがないのだ。このように、利己と保身に明け暮れて、何を期待しようというのか。何も期待できやしない。待ち受けているのは、ただ老いと死の二つだけである。これらは、一瞬にもとまらぬ速さでやってくる。それを待つ間、人生に何の楽しみがあろうか。何もありはしない。生きることの意味を知ろうとしない者は、老いも死もおそれない。名声や利益に心奪われ、我が人生の終着が間近に迫っていることを、知ろうとしないからである。逆に、生きることの意味がわからない者は、老いと死が迫り来ることを、悲しみ恐れる。それは、この世が永久不変であると思い込んで、万物が流転変化するという無常の原理をわきまえないからである。◆第百八段◆寸陰惜しむ人なし。これよく知れるか、愚かなるか。愚かにして怠る人のためにいわば、一銭軽しといへども、これを重ぬれば、貧しき人を富める人となす。されば、商人の一銭を惜しむ心切なり。刹那おぼえずといへども、これを運びてやまざれば、命を終ふる期たちまちに至る。されば、道人は、遠く日月を惜しむべからず。ただ今の一念、空しく過ぐることを惜しむべし。もし人来たりて、我が命、明日は必ず失はるべしと告げしらせたらむに、今日の暮るる間、何事をか頼み、何事をか営む。我らが生ける今日の日、何ぞその時節に異ならむ。◆訳◆短い時間を積み重ねて、たいせつに使う人はいないものだ。これは、短い時間を惜しむ必要はないという意味を、よく知っている人なのか、それとも全然知らない愚か者なのか。知っている人はともかく、知らないで時間を無駄にしている怠け者のために、忠告しておきたい。一銭はわずかな金だが、これが貯まると、貧乏人を金持ちにする。だから、商売人が一銭を惜しむ心は切実なのだ。同様に、一瞬のような短時間は、その流れをはっきり意識するのは難しいがだからといって、その一瞬をほうっておいては、人間の一生はたちまち最期を迎えてしまう。たとえば、人がやってきて、あなたは明日必ず死ぬと教えてくれた場合、今日が終わるまでの間、何を頼りにして、どんなことをするだろうか。私達が生きているこの今日という日も、明日死ぬと言われたあの今日という日と、まったく変わりはないのだ。

2007.09.03

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見栄人間

〔見栄人間〕遠藤周作が飛行機に乗った際の話。昨夜　ソルダム酒呑みながら徒然に読んでました。すっごくくだらなくも面白いので、休日朝のお暇つぶしに（ぅぷぷ～～～前略　適当に割愛～～～帰りの機内で珍しい客にあった。彼はスチュワーデスが自分のそばを通り過ぎるたびに声をかける。「ぼくはね、君の生まれる前から日本航空を利用しています」「ありがとうございます」「世界の大陸ならたいてい行きました。二十数カ国になるでしょう」「二十数カ国ですか」スチュワーデスは忙しいにかかわらず、お客様を傷つけないために仕方なく相手をしている彼はスチュワーデスだけでなく、周りの客にも自分の話を聞かせるためか、大声を出すのである。「どこの国が面白うございますか」「面白いというのは、どういう意味ですか」「あの・・・つまり文化的に」「文化的。ぼくの経験ではその国の言葉がわかる国なら、面白いのです。　ぼくは英仏独はしゃべりますが、イタリー語やスペイン語はしゃべれません。　そう申し上げれば、ぼくにとって、どの国が面白かったか、あなたにはおわかりになるでしょう」わたしは思わず吹きだしそうになるのをこらえた。この客の子供っぽい心理が、私にも手に取るようにわかるからである。やがて飲み物の注文がきた。「葡萄酒は・・・・これだけしかないのですか」とメニューをひろげた彼は、今度はパーサーにたずねた。これも大声で、周りの人々に聞こえるように「はい」「シャブリはないのですか」「本日はございません」「ぼくはシャブリしか飲まない男です。お宅の飛行機ならシャブリくらいはあると思ったのだが」「まことに申し訳ございません。そのかわり、用意いたしました白葡萄酒には・・・」「いや、ぼくはシャブリでないと困るのです。ぼくはね、色々な国の一流の店で葡萄酒を　味わった男ですよ。シャブリがぼくの舌にあうのです。」「申し訳ございません」とパーサーはスチュワーデスと同じように客に逆らわない。周りの日本人は黙っている。困った御仁と一緒になったと皆が思っているのだが、御当人だけは一向にそれにお気づきにならない。パーサーもスチュワーデスも周囲の客も、彼のことに感心していると錯覚しているらしい。私ははじめはびっくりしたが、彼の演説を聞いてるうちに、次第におかしくなってきた。しかし本を読もうと思っている時にこの大声は閉口である。土産物の販売がはじまると、この男、また大声をだしはじめた。「さっきから見ていると、機内のお客さんは高価なものならいいと思っているようですね」これにはさすがのスチュワーデスも「はい」とも「いいえ」とも言えず黙っている。「しかし高いものなら、いいとは限りません」と彼の演説はしばらく続いた。私はその時、何となく北杜夫の作中人物の中に、この人のような自己顕示癖の強い人物が滑稽化されて書かれていたからだ。しかし周りの乗客が皆黙っているのにも感心した。相手になるのも馬鹿馬鹿しいと思ったからであろう。と同時に、日本航空のパーサーやスチュワーデスがあくまでこの客に逆らわないのにも感心した。おそらく心の中では「このバカが」と思っているにちがいないのに、その表情には豪もそんな気配はない。そこにはやはり、お客様はカミさまですという日本の昔ながらの心がまえがあったのかもしれない。退屈だったからしばらく窓外を眺めながら、こういう人物の心理をいろいろ考えてみた。そしてこれが女性なら、もう少し自己虚栄心や自己顕示欲を複雑な形で出すかもしれないななどと、思った。というのは、出発間際に私のところに送られてきた何冊かの書籍の中に『お嬢様ブック』という面白い本があった。その本に「あなたをお嬢さまっぽく見せる」方法が次々と書いてあったのを思い出したからである。その方法のひとつに「お父さまの職業は、何々関係という言葉で言いましょう」というのがあった。つまり父親が大工さんをやっているなら、「大工さん」と直接に言わずに「建築関係の仕事をしていますと言ってください」と書いてある。パチンコ屋をしているなら「娯楽関係の仕事をしております」と言うべきだそうだ。思わず吹きだしながら読みすすむと、「わたくし、食料品は青山の紀伊国屋で買いますの」などと見栄を正直に出してはいけないと教えている。そして、「紀伊国屋のオレンジよりアズマのオレンジのほうが安くて新鮮だわ」と言ったほうがもっと巧妙な言い回しなのだと書いてあった。ちなみにアズマとは紀伊国屋の近くにある、もっと庶民的なスーパーマーケットだそうだ。『お嬢様ブック』は流行のお嬢さまをパロディ化した本にちがいないけれども、そこには女心の見栄のありかたを示していて面白い。一言でいうと、女の見栄のはりかたは男に比べてずっと巧妙だということである。「ぼくはシャブリしか飲まない。ぼくはね、色々な国の、一流の店の葡萄酒を味わった男だが、　シャブリに勝るものはない」と実に素朴に見栄をはり、威張りまくる男にくらべて「お嬢さま」でさえ、もっと手のこんだ言い方をなさいますのでございます。だから私はあの機内の男に再会したらぜひこの『お嬢さまブック」　を贈りたい。同じ見栄をはるなら、お嬢さま程度にお上手にお巧みにやっていただきたいものですなｱ。～～～～いぢょ　《眠れぬ夜に読む本》　遠藤周作　よりはぁぁぁ・・・　ほぉぉぉ・・・　　ふぅぅん・・・（ギャグネタかと思った『おとうさまの職業は？』　『（・・）　自営がつぶれて食材配達運転手』『だんな様の学歴は？』　『（・・）　高１夏休み前中退。中卒』『家柄は？』　　『（・・）　カンチョンミックス在日３世。元ヤン。』『よく食べられるお食事は？』　『（・・）　２パック４９円のもやし』ほぉぉぉ　48歳までアメリカ大陸とアメリカ合衆国の違いをわからなかった連れを、ばかわぃぃと思うあたしにはまったくわからなぃ見栄はりである。あっほくさぃのぉぉお嬢さまもや～だが、このおっさんもやだ（隣にいたら吐く息が吐く言葉でぷんぷん臭そうだ）自分をかっちいく見せようとすればするほど、目につく耳につくその作為がとてもとても周りにくどくぷんぷん臭ぅ事にこゆ人たちは気がつかなぃのだろぉか。。見栄は張るもんぢゃなくて、虚勢は張るもんぢゃなくて、その人の貫目に対する、賛美や賛辞は、普通にしてても素敵な人にはその人の自然体に自然に周りから集まるものなのではにゃぃか？っと、私は思う。見栄はるものも無いわたしは、臭い見栄張る人があまり好きでなかったりもする。＞別に「わたしってすごぃでしょぉ」って言われなくても＞すごぃ人なら素直にすごぃと思いますよぉぉ　黙っててくださぃな～で、主役のちぃが起きてきたのでどろん。おっと、見栄はれるものがありました。（＾＾)v 素敵なうちの息子達です。今夜も主役（あたしの中の）

2007.08.26

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～海からの贈物・浜辺を振返って～

私は麻で編んだ籠を持ち、柔らかな足の下で崩れて、一人で考えていられる時はもう直ぐ終わる。質素な生活と、内的な自足と、人間的な関係の充足を求めるというのは、これはかなり狭いものの見方ではないだろうか。或る意味では、それは勿論そうである。一種の世界的な立場と言ってもいいものが人類の前に突然現れて世界は今日、我々の周囲に益々広くなっていく輪を描いて鳴動し、火を吹き始めている。そして我々から一番遠い輪に当たる所で生じた大緊張や、対立や、災難も我々に影響せずにはおかなくて、我々はそれに無関心でいることはできない。しかし我々がこの世界的な感覚に即して行動するのには、どうすればいいのだろうか。我々は今日、世界中のものに同情し、活字になって伝えられる報道を凡て消化し我々の心や頭に生じる道徳的な衝動を残らず行為に移すことを要求されている。世界の凡ての部分が互いに各種の関係で結ばれることになったために、我々は我々の心には入りきれないほど多くの人間のことを絶えず思っていなければならない。と言うよりも、―　なぜなら、私は人間の心というものの大きさは無限であると考えるから。現代の伝達方法がいろいろな問題を我々に課して、それは人間の体力が堪え得る量を超えている。そして我々の心や、頭や、想像力が広い範囲にわたって働かされるのはいいことだと私は思うが、我々の体や、神経や、耐久力や、寿命はそれほどに伸縮自在のものではない。私の一生は、私の心を動かす凡ての人々の要求に行為によって答えるのには短すぎる。私はその人たちの凡てと結婚することも、その人たちを凡て私の子供として生むことも、或いは私の両親が病気になったり、年取ったりした場合と同様にそういう人たちの世話をすることもできない。私たちの祖母たちは、また少し無理をすれば、母たちでさえも、その心や頭に生じる大概の衝動が行為に移せる狭い範囲で生活していた。そして私たちもその同じ伝統の下に育ったのであって、それが今日ではもう通用しなくなったのは、私たちの生活の範囲が時間と空間の全体に拡げられるに至ったからである。こういう困難に直面して、私たちはどうすればいいのだろうか。私たちはどうすれば私たちの世界的な感覚と、厳しい良心を調査させることができるだろうか。私たちはそのことで、何かの形で妥協することになる。私たちは多数の人間の一人々々に就いて考える訳にはいかないから、ときにはこれを多数という名の下に、一つの抽象として扱おうとする。また現在の複雑な状況に手を焼いて、これを飛び越え、未来のもっと簡単な夢に生きる。そして私たちがいる場所から遠く離れた所で起こっている世界の問題に就いて論じ合う。私たちが背負わされた耐え難い重荷から、私たちはそうして絶えず逃れようとしている。しかし私たちは本当に多数という一つの抽象に心を動かすことができるだろうか。また、未来は現在の代用になるだろうか。そして私たちが現在を無視して、それで未来が良くなると言えるだろうか。また、私たち自身の問題が解決できなくて、世界の問題が解決できるだろうか。私たちはそうすることに、どこまで成功しただろうか。輪の中心ではなしに、その外側に注意を向けることで、どれだけの効果を挙げることができただろうか。考えてみると、現代生活で実際に損害を蒙っているのは前に挙げた三つの中心、自分が現にいる場所と、現在と、それから個人というものとその他の人間との関係ではないだろうか。未来への競争で現在は脇へ押しやられ、自分から離れた場所のことが取り上げられて自分が現にいる場所は無視され、個人は多数によって圧倒されている。アメリカは今日の世界にまだ残っている現在の中で最も輝かしいものを与えられていながら未来に対して貪欲な余りに、その現在を楽しんでいる暇がない。歴史家、或いは社会学者、或いは哲学者は、私たちがまだ開拓時代のアメリカ人の活動に駆られていて、その精神や、次の「こと」をしなければならないという清教徒的な観念から抜けきれずにいるのだと言うのかもしれない。しかし、一方、過去の思い出に耽っているように私たちがいつも思うヨーロッパは、不思議なことに、今度の戦争以来、現在というものを見直さずにはいられなくなっている。よかった過去の日々は余りにも遠くて、最近の過去は余りに悲惨なものであり、未来はどんなものになるか全く解らないので、現在が「ここ」と「今」の黄金の現在に変わる機会を与えられたのである。今日、ヨーロッパ人はただ日曜日に田舎に散歩に出掛けるとか、町の喫茶店で一杯の珈琲を飲むとかいう簡単なことでも、それで現在を楽しんでいる。或いは人間は、ここと、今が脅かされるようになるまでは、それに目を留めないものなのでここと、今は今日のアメリカでも、漸く脅かされ始めている。我々は個人というものが我々の時代になって多数に、―　その多数が産業であっても、戦争であっても、或いは思想や行為の統制であってもその多数に個人であることを返上する誘惑や脅迫にさらされることになったために、却って個人の尊厳に目覚めだしたのではないだろうか。我々は今こそ、ここと、今と、個人というものを本当に理解することができるのである。ここと、今と、個人というものは、まさに聖者と、芸術家と、詩人と、それからこれは大昔から女が特に関心を寄せていたものなのである。女は家庭という一つの狭い範囲で、その家庭をなしている一人々々に認められる独自のものを、また、今という時間の自然の姿を、また、ここという場所の掛け替えのなさを決して忘れたことがない。そしてこれが生活の基本であり、そしてまたもっと大きな、多数とか、未来とか、世界とかいうものを作っている要素なのである。我々はそれを無視することはできても、それなしではすまされない。こういう要素は、川になって流れる水の滴であり、生命そのものの本質であって、それが現在では無視され勝ちであることに抗議するのが、女である私たちに与えられた任務であるかも知れないのである。そしてそれは、もっと大きな責任から逃れるためではなくて、そういう責任の性質をよりよく認識し、その解決に乗り出す第一歩としてなのである。私たちが私たちの中心にあるものから出発すれば、そこから輪の外側まで拡がっている、何か価値があるものを発見する。私たちは今ある喜びと、ここにある平和と、自他にある愛を再び取り返して、地上にある神の王国はそういうもので作られているのである。波音が私の後ろから聞こえてくる。忍耐、―　信念、―　寛容、と　海は私に教える。質素、―　孤独、―　断続性、・・・しかし私が行って見なければならない浜辺は他にまだ幾つもあり、貝殻もまだ幾種類もある。これは私にとって、そのほうへ一歩を踏み出したのに過ぎないのである。

2007.07.22

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～海からの贈物・幾つかの貝～

この島を離れる時が来て、私は今、荷造りをしている。この島でしたこと、ここの浜辺であれこれと考えたことから私は何を得ただろうか。私の生活に就いて、どういう解決を見付けることができただろうか。私のポケットには幾つかの貝殻が入っていて、それはそれだけの手掛りになるが、貝殻はほんの僅かしかない。この島に来たての頃のことを振り返ってみると、私がひどく欲張りな貝殻の集め方をしていた感じがする。ポケットはいつもまだ海水に濡れた、そして隙間にはやはり濡れた砂が付いたままの貝殻で一杯だった。浜辺には美しい貝が一面に散らばっていて、私はその一つでも見逃したくなかった。足元に気を取られて、顔を上げて、海を眺める暇もなかった。蒐集家というのは、大概のものに対して目隠しされているようなもので、自分が探しているものの他は何も見えない。それ故に、所有欲は美しいものを本当に理解することと両立しないのである。しかし服のポケットというポケットが伸びきった上にびしょ濡れになり、本棚も、窓の棚も貝で一杯になった後、私は欲張るのを止めて、集めた貝の中からいいものだけを選び、他は捨てることにした。浜辺中の美しい貝を凡て集めることはできない。少ししか集められなくて、そして少しのほうがもっと美しく見える。つめた貝が一つあるほうが、三つあるよりも印象に残る。空に月は一つしか輝いていない。日の出貝は一つならば見付けものであるが、六つは、学校に行っている時の一週間と同じで、一つの連続でしかない。私はそのうちに捨てることを覚えて、完全なものしか取って置かないようになった。珍しい貝でなくてもいいが、形が完全に保存されているもので、島も同様にこれを銘々から離して並べた。なぜなら、周りに空間があって初めて美しいものは生きるからである。事件や、ものや人物はそうして初めて意味があるので、だからまた、美しくもあるのである。一本の木は空を背景にして意味を生じ、音楽でも、一つの音はその前後の沈黙によって生かされる。蝋燭の光は夜に包まれて花を咲かせる。つまらないものでも、周りに何もなければ意味があって、東洋画で白紙のままにされた片隅に、秋草が何本か書いてあるのもその一例である。コネティカットでの私の生活には空間が余りにも不足していて、それで意味がない、つまり、美しくないのだということが解る。空間には字が一面に書き込まれ、時間は一杯になっている。私の控え帳には空白の箇所が殆どなくて、一日のうちに何もしないでいられる時間は少ないし、私の生活には、自分一人でいられる空いた部屋がない。仕事や、持ちものや、会わなければならない人が多すぎるのである。やり甲斐がある仕事や、面白い人や、貴重な持ちものが多すぎる。なぜなら、つまらないことだけでなくて、重要なことも我々の生活の邪魔をするからである。一つか二つの貝殻ならば意味があるのに、我々は宝物を、―　貝殻を持ち過ぎているという場合も生じる。この島には空間がある。可笑しなことに、この限られた場所では却って空間を押し付けられることになる。地理的な境界線や、労力の限度や、通信上の不自由は、いやでも選択の範囲を狭めて、仕事も、人も、ものも多すぎず、どれもが十分な時間と空間の枠に置かれているので意味がある。ここには時間があって、静かにしているのにも、無理をせずに仕事をするのにも、考えるのにも、鷺が根気良く獲ものを探すのを眺めているのにも、時間に困ることはない。星を見上げる時間もあれば、一つの貝殻をいじくり回す時間もあり、友達に会って無駄話をし、笑い、話し込むこともできる。そして話をしないでもいられる。コネティカットでは、友達に会っていられる時間が余りに僅かであり、貴重なので、立て続けに話していなければ気がすまない。そういう時、私たちが黙っているのは贅沢なのである。しかしこの島では、私は友達と黙って一日の最後の薄い緑色をした光が水平線に残っているのや、白い小さな貝殻の渦巻や、星で一杯の夜空に流星が残す黒ずんだ後を眺めていられる。話をする代わりに交感するのであって、そのほうがどんな言葉よりも私たちを力づけてくれる。島での生活は私の代わりに選択してくれるが、それは極めて自然な具合にである。そしてそれは量の問題であって、ものの性質によってではない。この島ではいろいろな種類の経験をするが、それが決して多過ぎないのである。いろいろな人間がいても、その数は限られていて、そしてここでの質素な生活は私に知的な仕事や人との付き合いだけでなしに、体を使う仕事もしないではいられなくする。自動車がないから、私は買いものや郵便を受取りに自転車に乗って行く。寒い時は、流れ木を集めてきて、その上にそれを割らなければならない。私はお風呂に入る代わりに、海で泳ぐ。ごみはトラックが来て持って行くのではなくて、自分で穴を掘って埋める。そして詩が書けない時はビスケットを焼いて、それで同じくらい満足する。こういう手仕事や力仕事は、時間一杯の生活をしているコネティカットの私の家では重荷になるばかりである。家には子供が大勢いて、私はまた多くの人間の生活に大して責任も持たされている。しかしこの島では時間も、空間も十分にあって、手仕事も気晴らしになり、私の生活に平衡を保たせてくれて、これは私の家では望めないことである。寝床を直したり、市場まで自動車を運転して行ったりするのは、泳いだり、自転車に乗ったり、土を掘ったりするように頭を休ませてはくれない。しかし私の家に戻ったならば、ごみを土に埋める訳にはもういかなくても、庭仕事はできて私の仕事場にしている小屋まで自転車で行けるし、そして何も書けない時にはビスケットを焼くのを忘れずにいたいと思う。この島での生活は私に代わって、人の選択もしてくれる。小さな島であるから、そう大勢の人間はいなくて、ここでは、私が家にいれば滅多に会わないような、年齢の点でも、職業の上でも私とは掛け離れた人たちと顔を合せる。大きな都会の郊外では、私たちは年齢も、趣味も私たちと余り違わない人たちと付き合うのが普通で、私たちが郊外に住むことにしたのも、夫と私が大体同じ仕事をしていて好みも似ているからだった。しかしこの島では、私とはそういう点で非常に違った人たちと付き合うことになって、こういう時間も、空間も十分にある場所では、それが必ず面白い、私にいろいろ教えてくれる人たちなのである。これは航海や、長い汽車の旅行や、小さな村での一時住まいで誰もが体験することと同じで、人生の渦巻の中から、一つの場所に閉じ込められているという偶然が何人かの人間を仲間にして、これは私たちが自分で選んだ仲間ではなしに人生が私たちのために選んでくれたのである。しかし、そうなれば、私たちはお互いに相手を理解しようと努力し、その努力が私たちにとって刺激になる。大きな都会に住んでいて困ることは、私たちが人の選択をすれば、― そして大勢のものの中で生活し、仕事をし、息をするのには、― そうして選択する他ないのであるが　私たちが自分と同じような人間を選んで、それで生活が非常に単調になるということである。例えば、私たちがどういう人間であるかによって、前菜ばかりで肉の料理がない、或いはまた野菜と菓子ばかりの食事に似た付き合いをすることになるのである。しかし人によってどんなに好みが違っていても、一つ確かなことは、私たちは何を選ぶのでも大概の場合、既に知られているものを取り、未知のものに向かうことは稀にしかない。それは未知のものが私たちを不愉快にしたり、落胆させたり、或いはただ少しばかり扱い難かったりすることを恐れるからなのであるが、そのように落胆したり、当てが外れたりすることはあっても、私たちを本当に豊かにしてくれるのは凡てそういう、未知のものなのである。島での生活はいろいろな意味で、私が家でやるよりも旨く私のために選択してくれる。私がコネティカットに帰ったならば、私はまた、遠心的な活動のみならず、求心的な活動も多過ぎて、また気を紛らわせることだけでなしに、やり甲斐がある仕事が、そしてまた、つまらない人ばかりでなくて面白い人も多過ぎて、その下に埋まってしまうのだろうか。世界の多様な姿が、また私の価値の観念を歪めるに違いない。質ではなくて量が、静寂ではなくて速度が、沈黙ではなくて騒音が、考えでなくて言葉が、そして美しさではなくて所有欲が、価値の基準になるのである。わたしはどうすればこれに抵抗することができるだろうか。どうすれば、人間を幾つかにも分割する圧力に対して自分を守れるだろうか。私は島での自然な選択の代わりに、ここにいる間にはっきりしてきた、今までとは違った価値の基準によるもっと意識的な選択の方法を採用しなければならない。それを私は島の教訓と呼んでもいいので、今までとは別な生活の仕方へのそれは指針なのである。それは人生に対する感覚を鈍らせないために、なるべく質素に生活すること、体と、知性と、精神の生活の間に平衡を保つこと、無理をせずに仕事をすること、意味と美しさに必要な空間を設けること、一人でいるために、また、二人だけでいるために時間を取っておくこと、精神的なものや、仕事や、人間的な関係からでき上がっている人間の生活の断続性を理解し、信用するために自然に努めて接近することなどであって、いわばそういう幾つかの貝殻である。島での生活は、それを通してコネティカットでの私の生活を調べるレンズの役をしてくれた。私はこのレンズをなくしてはいけない。休みの間に与えられた視覚は段々に弱っていくもので、私は島の眼でものを見ることを忘れてはならない。貝殻が私にそれを思い出させてくれて、私の島の眼になってくれるだろうと思う。

2007.07.22

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～海からの贈物・たこぶね4～

日の出貝の段階では、二人の人間が個人的に親密な付き合いをしているだけだった。牡蠣の状態でも、その個別的な、仕事本位の状態から逃れることができずにいた。しかし　たこぶねまで来れば、二人は親密とか、個別的とか、仕事本位とかいうものから抽象的で普遍的なものへ、そしてまたそこから個人的なものへと、自由に往復することができてなくてはならないはずである。そしてこの振子が二つの相反する極の間をゆっくり往復しているという考えは、人間と人間の関係というものの一切に対する手掛りにもなりはしないだろうか。ここには、凡てそういう関係の翼がある生命、そういう関係が絶えず満ちたり、引いたりして、断続的であることを免れないということに対する理解さえも暗示されているのではないだろうか。「精神の生活、真実の生活は断続的であって、いつもあるのは頭の生活だけである、・・」とサン=テグジュペリは言っている。「精神は、・・・明視と盲目の間を往復する。・・・ここに自分の農園を愛している一人の男があるとして、その男にその農園が、互いに何の関係もない幾多の物体の集まりにしか思えないこともある。また、自分の妻を愛している男がいても、彼がその愛に邪魔や束縛だけを感じる瞬間もある。また、音楽を愛する男がいても、どうかすると音楽が彼の胸にまで届かずにいる」我々の感情や付き合いの「真実の生活」も、やはり断続的なものなのである。我々が誰かを愛していても、その人間を同じ具合に、いつも愛している訳ではない。そんなことはできなくて、それができる振りをするのは嘘である。しかしそれにも拘らず、我々はそういうふうに愛されることを要求していて、我々は生活や、愛情や、人間的な関係の満ち引きに対してそれほど自信がないのである。我々は潮が満ちて来ると、それに飛び付き、引き始めると慌ててそれに反抗して、潮が二度と満ちて来ないことを恐れる。我々は恒久的な持続に執着するが、生活でも、愛情でも、その持続は成長に、また、流動性に、そしてまた、自由であることにしか求めることができなくて、踊り手は自由であり、通りすがりに触れ合うだけであっても、やはり同じ律動で結び付いている。所有するのが安全なのではなくて、それは要求したり、期待したり、希望したりさえもしないことでなければならない。人間的な関係の保障は昔に郷愁を覚えて振り返ってみたり未来に恐怖を感じたり、期待を掛けたりすることにはなくて、それは現在に生き、現在の状態をそのまま受入れることにしかない。なぜなら、人間的な関係も島のようでなければならないからである。我々はそれをそれに課されたいろいろな条件とともに今、ここにある状態で受入れなければならなくて、それは島であり、海に囲まれ、海に割り込まれて、潮が絶えず満ちて来たり、引いて行ったりしている。我々は翼がある生命、潮の満ち引き、また、断続的であることが我々に与えてくれる保障を信じなければならない。断続的であること、これを人間が自分のものにすることは非情に難しい。我々の生活が引き潮になっている時に、それをどうすれば生き抜くことができるだろうか。波の谷に入った時はどうすればいいのだろうか。浜辺にいれば、それが比較的に解り易くて、ここの波ひとつ立たない引き潮の時には、我々が、普通は知らずにいる、或る別な世界が現れる。我々はこの待機の瞬間に、海の底の世界を覗く機会を与えられる。ここの浅瀬の温かい水の中を渡って行くと、大袖貝の群れが片足で立ち、“かしぱん”が泥に幾つも嵌め込んだ大理石の賞牌のように横たわり、無数の極彩色の“おおのがい”が水の中で光って、蝶の羽も同様に開いたり、締まったりしている。海が引いたこの静かな時間は実に美しくて、それは海が戻り始め、波が浜辺を打ちのめして、前の満ち潮の時に残していった黒い海草の線まで行こうと焦っている際の美しさに劣らない。ここの浜辺の生活から私が持って帰ることになった一番大事なものは何かと言えば、それは或いは、潮が満ち引きするそのどの段階も、波のどの段階も、そして人間的な関係のどの段階も、意味があるということの思い出かもしれない。私が集めた貝は、これはポケット一つに入れて持って行ける。貝は単に、海が引いてはまた戻ってくるのを永遠に繰り返しているのだということを私に思い出させるためだけのものなのである。

2007.07.22

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～海からの贈物・たこぶね3～

私はこの一日をもう一度その始まりまで戻して、なんという素晴らしい一日だったのだろうかと考える。これをこのような一日にしているものは何なのだろうか。この一日には、我々にとって手本となるものがあるのではないだろうか。先ず第一にここには自由というものの手本がある。この日の背景になっているものは時間的にも、空間的にも少しも窮屈な感じがしなくて、不思議なことに、島では時間も、空間も無限だという印象を受ける。またこの一日のうちにしたことも、その種類の上で制限されているということがない。それは手仕事と、精神的なものと、人間的な付き合いの間に自然に平衡が取れたもので、無理のない律動がそこにある。仕事が無理のために歪められているということがない。また、付き合いが義理で縛られていなくて、親密な感情も或る気軽さで和らげられている。私たちはこの一日を二人の踊り手が踊るように過ごして、本能的に同じ律動に従っていたから、ただ僅かに触れ合えば、それで足りた。人と人とのこういう関係は踊りと同じ様式のもので、これを支配している規則も同じである。二人のものは同じ一つの律動に従って自信を持って体を動かすから、手をしっかり握り合っている必要はなくて、モーツァルトの舞曲のように、動作は複雑であると同時に陽気で早くて、そして自由なのである。固く手を握ったりすれば動きが鈍り、絶えず発展して限りなく変化していく美しさが壊されることになる。ここには、強引にしがみ付くとか、腕に縋るとか、重く寄り掛かるとかする余地はなくて、通りすがりに僅かに触れ合うだけなのである。腕を組もうと、向き合おうと、或いは互いに背を向けようと、その一つ一つを区別する必要はないのであって、それは二人が同じ律動にしたがっていて、一緒にある一つの形を生み出し、それによって銘々が支えられていることを知っているからなのである。そういう形を作り出す喜びというものは、創造する喜び、また協力する喜びであるだけでなくてその瞬間、瞬間に生きる喜びであり、そうして生きるのと身軽な動きが一緒になっている。旨く踊るのには、音楽と完全に調子を合わせて、前のステップを長引かせたり、次のステップを急いだりせずに、いつも現在のステップを踏んでいなければならない。どのステップにも完全に乗っていることが、踊り手に時間を快く超越して永遠を垣間見ている感じを与える。ブレークの詩に喜びを自分のために曲げるものは翼がある命を滅ぼすが、通り過ぎる喜びに接吻するものは永遠の日差しに生きる。というのがあるのは、このことを言っているのである。完全に調子が合っている二人の踊り手は各自の、そしてまた相手のうちにある「翼がある生命」を決して滅ぼさない。しかしこの踊りの技術を、我々はどうしたら覚えることができるだろうか。なぜそれがあれほど難しくて、我々は躊躇したり、躓いたりばかりしているのだろうか。我々が前の瞬間に縋り付いたり、次の瞬間に待ちきれずに手を出したりするのは、恐怖からだと私は思っている。恐怖が「命ある生命」を滅ぼすのである。そしてこの恐怖を追い払うのには、どうすればいいのだろうか。恐怖はその反対である愛によってでなければ追い払えなくて、心が愛で一杯になっている時には恐怖や疑惑が入り込む余地はない。そしてこの恐怖を感じないということが踊りの秘訣であって、二人の人間のどちらも愛する余りに、相手も自分を愛してくれているかどうか考えることを忘れただ自分が愛していて、その音楽に合わせて動いていることしか念頭にない時、二人は初めて同じ律動に完全に調子を合わせて踊ることができるのである。しかしこの、音楽と一緒になって踊っている二人の踊り手ということが、たこぶね的な関係というものが意味する凡てなのだろうか。二人は同時に、分け合うことと孤独、親密な感情と抽象の境地、また個別的なものと普遍的なもの、身近なものと遠いものの間を振子が往復する、もっと大きな律動と調子を合わせるべきではないだろうか。そしてこういう相反するものの間を振子が往復することが二人の人間の関係を豊かにするのではないだろうか。イエーツは人生の最高の経験は「深遠なことを二人で一緒に考えて、それから触れ合うこと」であると言ったが、そのどっちもなくてはならないのである。第一に触れ合うこと、例えば、二人で台所仕事をしたり、炉の側で話し合ったりして個人的に、個別的に親密なものを感じることで、次にはその親密な感情をひっそりした浜辺とか、空一杯の星とかが与える或る抽象的で偉大な印象のうちに忘れることなのである。二人とも、普遍的なものの海に漂っていて、それは人を惹き付けると同時に解放し、離れさせるとともに一つにする。現在よりももっと成熟した人間と人間との関係、二つの孤独の出会いというのは、こういうものなのではないだろうか。

2007.07.22

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～海からの贈物・たこぶね2～

しかしそのために女は自分一人で努力しなければならないのであって、他人がいかに熱心にその手伝いをしたがっても、他人の助けを借りる訳にはいかないのである。今日では、この新しい女というものに多大の関心が寄せられていて、それは主に雌の動物としての女の機械論的な研究の形を取っている。そして勿論、女にとって自分の性的な欲求や習慣を理解してこれを受入れることは必要でもあり、助けにもなるが、これは一つの非常に複雑な問題の一面に過ぎない。女の肉体的な反応に関する統計が集められても、それは女の内的な生活、また、自分というものとの基本的な関係、それから今日に至るまで長い間、与えられずにいた、純粋に肉体的な形以外で創造的であることに対する人間としての希望と権利にとって、大して役立つものではない。女は自分で大人にならなければならない。これが、―　この一人立ちできるようになるということが、大人になるということの本質なのである。女は他のものに頼ったり、自分の力を験すのに他のものと競争しなければならないと思ったりするのを止めなければならない。昔は女は依存と競争、因循と女性尊重の両極端の間を往復していて、これはいずれも女に平衡を失わせるものであり、いずれも女に完全に一人の女であることを許さない。それができる中心の位置を女は自分で見付けなければならず、そうすることで完全に自分になることが必要である。私には、女は「二つの孤独j」の関係を実現するのに先ず、詩人の忠告に従って、「誰か他のもののために自足した一つの世界」にならなけらばならないように思われる。それだけでなくて、男も、女も、この非常に困難な仕事をし遂げなければならないのではないかと私は考える。男も、自分だけで足りる一つの世界になる必要があるのではないだろうか。男も、自分の今まで無視してきた面を拡充し、例えば、外での活動のためにやる暇がなかった内省の習慣を身に付けるとか、余り味わう機会がなかった他の人間との個人的な関係を楽しむ事を覚えるとか、忙しくてそのままにしていた芸術とか、感情とか、文化とか、精神とか、そういういわば、女性的なものに関心を向けるべきではないだろうか。或いはアメリカの男も、女も、我々の物質的で活動的な、外部に向けられた男性的な文化で、心とか、精神とか、そういういわゆる、女性的なものに飢えているのかも知れなくて、それは実際は男性的でも、女性的でもなくて、単に我々が今まで無視してきた人間的なものに過ぎないのである。そういう線に沿って成長することが我々を人間的に完全にし、各個人に自足した一つの世界になることを得させる。しかし各個人がこうして完全に自分になり、自足した一つの世界になれば、男と女はそれだけお互いから離れることになるのを免れないのではないだろうか。確かに成長するというのは分離することであるが、それは木の幹が育つに従って枝や葉に分かれるのと同じことである。木はやはり一本の木であって、その各部分が一つになってこの木ができている。そして二つの別々な世界、或いは二つの孤独は、各自が一つのものの貧弱な半分だった時よりも多くのものをお互いに与えることができるのではないだろうか。「二人の人間の間で完全に何でも分け合うとういうことはあり得ない」とリルケは書いている。「そしてそれにも拘らず、そういう共同の生活が営まれていると見える場合は、それは何かが狭められているのであって、二人のうちの一人か、或いは両方の自由と発達を阻む契約が取交わされていることなのである。しかし最も近い二人の人間の間にも無限の距離がやはりあることが理解され、それが受入れられれば、そしてもしこの二人が二人の間にあるこの距離を愛するに至るならば、それは互いに相手の全体を広い空を背景に眺めることを許して、二人だけのまたとない生活が始まることになる。」これは美しい影像であるが、これを実現することができるだろうか。一人の詩人の手紙以外に、そのような結婚生活がかつて存在したことがあるだろうか。リルケが説いた二つの孤独の観念や、マックマレーの完全に個人的な関係は、今のところは確かにまだ理論の域を脱していない。しかし探検をするのには先ず理論がなくてはならなくて、我々は荒野の中を行くのに、どんな手掛りも無視することはできない。なぜなら、我々は実際に伝統と因習と教義の迷路の中で新しい道を切り開こうとしている先駆者に他ならないからである。我々の努力は、男女の関係、と言うよりも寧ろ、凡て人間と人間の関係に対する観念をもっと成熟させるために続けられている戦いの一部をなしている。それ故に、このことに就いて少しでも理解を増すのは貴重なことであって、一歩でも、それが仮に試験的な一歩でも踏み出すことにはそれだけの意味がある。そして完全なたこぶねの生活というものに出会ったことはないにしても、我々は自分たちの生活でも、極く僅かな間、その一端を伺う機会を与えられたことはあって、そういう短い経験が、未来の人間と人間の新しい関係がどんなものであり得るかを我々に教えてくれる。私はこの島で、そういう経験をした。一人で一週間暮らした後、私の妹が来て私と一週間いたのである。私はそのうちの一日を取って、机の上に並べてる貝殻と同じように、私の前に置いてこれを眺め、引っくり返し、そのいい所に就いて考えてみたいと思う。私は、自分の生活がこの一日、― 一週間の休暇の中から選んだこの完璧な一日と同様になる時が来るとは思っていない。完璧な生活というものはあり得ないのである。それに二人の姉妹の関係は男と女の関係とは違っているが、それは凡て人間と人間の関係の本質を我々に示すことにはなって、どんな関係でも、それがもし成功していれば、凡ての関係に就いて我々に教えてくれる。そして完璧な一日は完璧な生活というもの、―　それが或いは　たこぶねの神秘的な生活であるかも知れないものの手掛りなる。私たち二人は同じ小さな部屋で、木麻黄の木の枝を吹き抜けるそよ風の音と、浜辺に静かに砕ける波の音で、善良な子供の深い眠りから眼を覚ました。そして滑らかに拡がっていて、前の晩の潮が引いた後に残された濡れた貝殻が方々に光る浜辺まで、跣で駈けて行った。朝、海で一泳ぎすることは、私にとっては洗礼を受けて祝福され、世界が我々に感じさせる美しさと驚きに対して再び眼を開かれるような働きをする。そして私たちは浜辺から駈け戻って、家の裏にある小さなベランダで熱いコーヒーを飲んだ。ベランダは台所用の椅子二つと、私たちの間に置かれた子供用のテーブルだけで一杯の狭さで、私たちは日光に足を伸ばして笑いながら、その日一日の予定を立てた。洗うものが少ししかないので、私たちは使った皿をただ手当たり次第に洗った。仕事は楽で、二人は本能的に協力し、台所を行ったり来たりしてぶつかることもなかった。そして掃いたり、皿を拭いたり、しまったりしている間も、誰か私たちが知っている人や詩や、何か共通の思い出に就いて話をしていて、そのほうが私たちがしている仕事よりも大事に感じられたから、仕事も訳なくできた。それから私たちは銘々の部屋に閉じ篭って仕事をして、お互いにその邪魔をする気は少しもなかった。自分も、自分と一緒にいるものも、自分がどこにいて、この次に何をするかも忘れて書くということ、眠りや海の水の中に沈むのと同じ具合に仕事に浸かるということは、我々を本当に解放してくれるものなのである。鉛筆や、用紙や、字で埋められて巻き上がった青い紙が机の上に積み重なって、それからお腹が空いたのに刺激され、私たちは少しぼんやりした頭で立ち上がって遅い昼の食事の用意に取り掛かった。仕事に完全に集中していたので、少し眩いがするのを感じながら、昼の食事の細々した支度をするのは、それが何か現実の世界に私たちを繋ぎ止めてくれる網のようで、安心だった。私たちは精神的な仕事の海の溺れ掛けて、足が筋肉の仕事の底に着いたのが嬉しかった。そういう仕事も一時間くらいで終わって、私たちは午後はまた浜辺に出掛け、仕事だとか、凡て特定の事柄、実際的な事柄を忘れ去った。そして黙って浜辺を歩いて行ったが、それは私たちには解らない或る内的な律動と調子を合わせているバレエの踊り手たちの身振りで、私たちの前を進む千鳥の群れと同様に、互いに或る調和を感じながらであった。親密と言えるような気持ちは風に吹き飛ばされ、感情は沖に運び去られた。私たちは考えることからも、少なくとも、考えと考えを繋ぎ合せる仕事からは遠ざかって、日光にさらされて真っ白になった流れ木のように清潔であり、貝殻のように空で、やがて非情な海と、空と、風に満たされ、外界を吸い込むのに長い午後を費やした。そして私たちが、足下の海草も同様にぐったりして重くなってから、夕方、私たちの家の温かくて親密な空気の中に戻って来た。私たちは火が燃えている炉の前でゆっくりシェリー酒を飲み、話をしながら夕食を始めた。私は学校時代の習慣がまだ残っていて、朝は頭を使う仕事のためであり、午後は手仕事、それから外でやる仕事に適しているという気がする。しかし夜は人と考えや感想を分け合い、話をする時である。これは、光ではっきり区切られていた昼間の後で、無限に拡がっている夜の暗闇が我々をお互いに相手に対して解放するからだろうか。或いは、無限の空間と暗闇が我々を圧倒して、我々に人間が放つ小さな火花を求めさせるからなのだろうか。話し合うこと、―　しかしそれは、余り長くなってはならない。なぜなら、みっちり話をすることはコーヒーのように我々を刺激して、後でなかなか眠れないものだからである。私たちは寝る前に、もう一度星空の下に出て行って、浜辺を歩いた。そして歩き疲れると、砂の上に仰向けに寝そべって空を見上げ、空の広さに私たちも拡がっていくような感じになった。星は私たちの中に流れ込んできて、私たちは星で一杯になった。私たちはこれが欲しかったのだ、ということが解った。昼間の仕事や、細々したことや親密な感情や、心から話し合えたことさえもがあたえる狭苦しい気持ちの後では、波のように自分の胸に流れ込んで来る星で一杯の夜というものの大きさと普遍性が欲しくなるものなのである。そしてしまいに、星と星の間にある広大な空間から、私たちはそこの私たちがいる浜辺に戻ってきた。私たちは黒い霞の塊に見える木立の間から、家の明りが差している方に向かって歩いて行った。家は小さくて安全で、我々を温かく迎える感じでそこにあり、それは暗闇の巨大な混沌にともされた小さな人間的な火なのだった。そして私たちは家に着いて、再び善良な子供の眠りに誘い入れられた。

2007.07.22

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～海からの贈物・たこぶね1～

浜辺で見られる住人の中に、稀にしか出会わない、珍しいのがいてたこぶねはその貝と少しも結びついていない。貝は実際は、子供のための揺り篭であって、母のたこぶねはこれを抱えて海の表面に浮かび上がり、そこで卵が孵って、子供たちは泳ぎ去り、母のたこぶねは貝を捨てて新しい生活を始める。私はこのたこぶねのそういう仮の住居を専門家の蒐集でしか見たことがないが、その生き方が提供する影像に非常な魅力を感じる。半透明で、ギリシャの柱のように美しい溝が幾筋か付いているこの白い貝は、昔の人たちが乗った舟も同様に軽くて、未知の海に向かっていつでも出航することができる。本に書いてあることによれば、この貝の名前（Argonauta）は黄金の羊毛を探しに行ったイアソンの船から取ったもので、船乗りにとってこの貝は晴天と順風の印になっている。美しい貝で、それが呼び起す影像も美しい。私はその影像をそのままにして置くことができなくて、これは人間と人間の関係が次に達すべき段階の象徴だろうかと考える。我々は中年になって牡蠣の状態を脱した時、貝を離れて大海に向かったたこぶねの自由を期待していいのだろうか。しかし我々が大海で出会うものは何だろうか。人生の後半が我々に晴天と順風を約束するとは思えない。我々中年のものにとって、どんな黄金の羊毛があるのだろうか。たこぶねの話になると、我々は普通の意味での貝の蒐集から離れることを認めなければならない。日の出貝とか、牡蠣とかならば、大概のものは知っている。我々は見れば、それが何であるか解るし、どういう貝であるかも知っていて、それは我々の日常生活の一部をなし、また我々以外の多くのものにとっても、その生活の一部になっている。しかしこの　たこぶねという珍しい貝では、我々は既に試験ずみの事実や経験を離れて、創造力の世界に向けて船出することになる。我々が来るのを待っている黄金の羊毛というのは、何か新たな成長を指すのだろうか。私には下記の状態を通った後で、そこには一番いい種類の結びつきが生じる機会があるように思われる。それは日の出貝の場合と違って、限られた、排他的な性質のものではないし、また、牡蠣とも違って、仕事本位の、お互いに相手を頼りにし合っているものでもなくて、それは二人の成熟した人間の、そういう人間としての出合いなのである。スコットランドの哲学者、マックマレーの言葉を借りるならばそれは完全に個人的な関係、というのは、「人間が自分の全部で入っていく種類の関係なのである。」「こういう個人的な関係は」と彼は更に説明している「・・・それ以外に何の目的もなくて、特定の利害関係に基づいてもいなければ一部的な、限られた理由から結ばれるのでもなくて、その価値は全くそれ自体だけにあり、それ故に他の凡ての価値を超越する。そしてそれは、それが人間と人間の、人間としての関係だからなのである。」この「人間と人間の、人間としての関係」は、今から五十年近く前にドイツの詩人リルケによって予言的に暗示された。彼は男と女の関係に非常に大きな変化が起こるのを予見して、将来はそれが今までのような服従と支配、或いは所有と競争の伝統的な型に属するものではなくなることを望み、各自が成長する余地も自由もあり、そしてお互いに相手の解放の手段となるという、そういう状態を描いてみせた。「それは一人の人間と別な一人の人間の関係でなければならない」と彼は結論している。「・・・そしてこのもっと人間的な愛は（それは結び付けるのにも、放すのにも、無限に思いやりがあって優しくて、明確であることで実現されるものなのであるが）我々が今苦労して用意しているもの、というのは、二つの孤独が互いに相手を保護し合い、相手に触れ、相手に敬意を表する愛に似ることになるのである。」しかしこの新しい人間と人間の関係、このもっと人間的な愛、またこの二つの孤独が触れ合うという観念は、決して簡単に自分のものにすることができるものではない。それは凡てしっかり根を降ろした成長と同様に、徐々に育つ他ないのであって、それは或いは人間の文明の歴史、また個人的には各自の生涯で長い時間を掛けて発達を遂げることによってしか得られないものなのである。人間の生活でのそういう段階は、私には偶然にではなしに、或る成熟の過程の一部として、自分と相手の両方に或る重要な変化が起こった後に初めて達っせられるもののように思われる。それはまた女が、―個人的にも、また女全体としても―大人にならなければ実現できないことであって、この女の成熟ということが今日既に始まっている。

2007.07.21

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～海からの贈物・牡蠣4～

しかし人生の午後が始まるのはそれからで、我々はそれを今までのもの凄い速度でではなしに、それまでは考えてみる暇もなかった知的な、また、精神的な活動に時間を割いて過ごすことができる。我々アメリカ人は、若さとか、行動とか、具体的な成功とかいうものに何より重点を置いていて、そのためにこの人生の午後を軽視し、そんな時期が来ることなどないと決めて掛りさけする傾向がある。我々は時計の針を押し戻して、人生の朝を長引かせようとし、この不自然な努力に体力を使い果たす。しかし勿論、それに成功する訳はないので、我々は我々の子供たちと競争することはできない。そしてそういう、活発であり過ぎてまだ知恵が足りない大人たちと力比べをするのは、なんと辛いことだろう。我々は息を切らして、午後になるのを待たなければならない人生の開花を見逃す場合が多い。なぜなら、中年というのは第二の開花、第二の成長、そして第二の青春でさえあるのではないだろうか。確かに世間一般の態度は、我々がこの人生の後半をそういう風に解釈するのを困難としている。そしてそれ故にこの実際は拡張の時期でもあるべきものがよく当人にも悲劇的な具合に誤解されて、多くのものはこの四十から五十に掛けての時代を乗り越えることができずにいる。この時代の、私には青春期と非常に似ているように思える成長の兆候、例えば、不満とか、焦燥とか、疑惑とか、絶望とか、何ものかに対する憧れとかは、そのために衰弱の印と間違えられる。若い時は、人間はこういう兆候を誤解しないで、それを正しく成長に伴う苦痛として受取り、真面目にその声に耳を傾け、それに導かれて進む。勿論、そうするのが不安でもあるが、純粋な空間というもの、―開かれた戸の息詰まるような空しさを誰が恐れないだろうか。しかしその恐怖にも拘らず、戸の向こうの部屋に入っていく。しかし中年に達した時は、それが衰弱の時期だという間違った考えから我々はそういう人生上の兆候を死が近づいて来る印のように解釈する。それを、真面目に取り上げる代わりに頬被りをするのであって、精神的な沈滞や、神経衰弱や、酒や、恋愛や、或いは度外れに烈しい仕事振りに逃げ道を求める。どんなことでも、中年の兆候に面と向かって、それに教えられるよりはましなのである。こうして我々はそこまで我々が成長した印を消そうとし、それが悪魔ででもあるように追い払おうとして、それが実際はお告げの天使であるかも知れないことは考えない。では、何を告げる天使だろうか。生きて行く上での或る新しい段階を、であって、それまでの活動的な生活に伴う苦労や、世俗的な野心や、物質状の邪魔の多くから解放されて、自分の今までの無視し続けた面を充実させる時が来たのである。それは自分の精神の、そしてまた心の、それからまた才能の成長ということにもなって、こうして我々は日の出貝の狭い世界から抜け出すことができる。日の出貝の世界は美しくはあっても、やはり限られた性質のものだったので、その中にいつまでも閉じ篭っている訳にはいかなかった。そしてそのうちに、牡蠣の貝殻がいかに居心地がよくて、融通が利いてもそれさえも狭すぎるようになる時期が来るかもしれない。

2007.07.21

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～海からの贈物・牡蠣3～

しかし、これは結婚を恒久的に象徴するものだろうか。日の出貝の場合もそうだが、この牡蠣の状態もいつまでも続いていいものだろうか。人生の潮は引いて行き、方々に寝室や物置を建て増して膨れあがった家は、次第に住人が減り始める。子供たちは学校生活に入り、それから結婚して自分で生活することになる。大概のものは、中年になる頃までには社会で或る程度の地位を得るか、或いはそれを得ようとして努力するのを止めるものである。そうすれば、生活とか、場所とか、他の人間とか、或いは環境とか、持ち物とかに対するあの恐ろしいぐらいの執着は、自分や自分の子供たちが無事に暮らせるために努力していた時代ほどは必要でなくなるはずではないだろうか。成功、或いは失敗によって、それまで続けてきた烈しい戦いが止んでも貝がまだ岩にしがみ付いていなければならない訳はない。そういう訳で、中年の夫婦というものはどうかすると、もう役に立たなくなった要塞も同様の貝殻の中に置き去りにされた形になる。その場合、どうすればいいのだろうか。そのまま退化して行って死ぬ他ないのだろうか。それとも別の形の生活、別な種類の経験に向かって進むべきだろうか。或るものは、それがもとの自足した日の出貝の世界に戻る機会だと言うかもしれない。これでまた、マフィンとマーマレードが出ている朝の食卓で、二人だけになれるという訳である。しかし実際は、あの密閉された世界にもう一度戻っていくことはできない。あの端正な形をした貝に再び納まるのには、我々の方が余りに大きく、また多面的になり過ぎたのである。これは、どんな貝にもいえることかもしれない。中年というのは、野心の貝殻や、各種の物質的な蓄積の貝殻や、自我の貝殻など、いろいろな貝殻を捨て去る時期であるとも考えられる。この段階に達して、我々は浜辺での生活と同様に、我々の誇りや、見当違いの野心や、仮面や、甲冑を捨てることができるのではないだろうか。我々が甲冑を着けていたのは、競争相手が多い世の中で我々を守るためだったはずであり、競争するのを止めれば、甲冑も必要ではなくなる。それで我々は少なくとも中年になれば、本当に自分であることが許されるかもしれない。そしてそれはなんと大きな自由を我々に約束することだろう。確かに我々が若かった頃の冒険をもう一度試みるのは大分、困難になっている。我々の多くにとって、中年になってからそれまでとは違った仕事を始めたり、新たに家庭を持ったりする訳にはいかない。各種の世俗的な野心を実現するのも、二十年前よりはもっと難しくなってきている。しかしそれで却って気が楽になるということもあるのではないだろうか。芸術家として認められた或る美しい女の人が或る時、私に「もうニューポート一の美人と言われるのが苦にならなくなりました」と語ったことがある。そしてヴァージニア・ウルフの小説に登場する人物の中に私が好きなのが一人いて、その男は中年に達して告白する「いろいろなものが私から落ちてなくなった。私がもう感じなくなった欲望もある。・・・私には一時思っていたほどは才能がないことが解った。或る種類の事柄は私の力に及ばなくて、哲学上の面倒な問題は私には解らず、ローマが私の旅行の限度になっている。・・・私はタヒチで現地の人々が燃えさかる松明の明りで魚を槍で突いたり、獅子が密林の中で飛び掛ってきたり、裸の男が生の肉を食べたりするのを決して見はしないだろう。・・・」（そしてその後で、有難いことに、とこの男が付け加えるのが聞こえてくるような気がする）人生の黎明や、四十、或いは五十前の壮年期に属する原始的で肉体的な仕事本位の生き方はもう中年にはない。

2007.07.21

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～海からの贈物・牡蠣2～

それは生きて行くための戦いそのものを思わせて、牡蠣は岩の上にその位置を占めるために奮闘し、その場所にしっくり嵌って、容易なことではそこから引き離すことはできない。それと同様に多くの夫婦も、世間で自分たちの場所を確保するのに努力し、それは初めは、家庭を持ち、子供を育て、自分たちが住んでいる社会で足場を固めるのが目的の、肉体的な、また物質的な戦いであり、そういう生活をしている最中には、朝の食事で小さなテーブル越しに二人で向き合う時間は余りない。そしてその時になって私たちはサン=テグジュペリが、「愛というのは、互いに相手の顔を眺め合っていることなのでなくて　（―これは一つの完璧な日の出がもう一つの完璧な日の出を眺める　　　ことに相当する。―）　同じ方向に二人で一緒に眼をむけることなのである。」と言ったのが本当であることを理解する。妻も夫も、一緒に同じ方向を眺めているだけではなしに、外に向かって一緒に働きかけているのであり（牡蠣が岩の上に次第に繁殖していく有様を見るといい）、そうすることで他の人間との繋がりもできるし、また社会にしっかり根を降ろすことになって（牡蠣を岩から剥がすのは大変な仕事である）、それで二人は本格的に人間の社会の一部をなすに至る。この時代に、結婚の絆も生じる。結婚の絆ということはよく言われるが、この段階に達してそれは多くの、性質も抵抗力も違った絆の集まりになって、容易なことでは破れない一つの網が作られる。それは愛でできているのであるが、ただ一種類の愛だけではなくて、最初の憧憬に満ちた愛、それから次第に生じた献身の情、そしてそのいずれををも絶えず支えているのが友愛である。この網はお互いに相手に対して忠実であることや、相手に依存していることや、共同の経験で出来上がっている。それは廻り合いや、対立や、勝利や、失望の記憶で編んである。それは共通の言語、また、言語の不足を共通に受入れることからできている網でもあり、相手の好みや、癖や、ものごとに対する反応の仕方の知識もその中に入っている。それは本能や、直覚や、意識された、また、無意識の交流で作られているもので、こうしてこの網は毎日を一緒に過ごして同じ方向を眺め、その方向に一緒に仕事をすることからくる親しみから生じて、それは時間的にも、空間的にも、人生と同じ性質のものなのである。しかし憧憬でもある初期の恋愛の絆は、これとは少し違っている。それは親しみとか、習慣とか、或いは時間や空間、或いは人生そのものとも関係がなくて、そうもの凡てを虹のように、或いはちらと見た眼差しのように一飛びに飛び越え、ただ一つの絆、また、紐帯であって、それが日の出貝を結びつけている。そしてもしこれが嵐で切れたならば、もう日の出貝の貝の両面を結んでいるものは何もなくなる。ところが、結婚が牡蠣の状態に達すると、この初期の愛は二人の人間が作り上げた複雑な、丈夫な網の材料になっている多くの絆のたった一つに過ぎなくなるのである。私は牡蠣が好きである。牡蠣は不恰好であり、灰色をしていて、決して美しいとは言えないが、牡蠣はその生活に適応するためにこういう形をしている。私はそのでこぼこした形を見て可笑しくなり、また牡蠣が背負っている殻の重さやいろいろな付着物を不愉快に思うこともある。しかし、その適応性や根気強さには驚く他ないし、またどうかするとそのために涙ぐみさえする。そしてその見馴れた不恰好な様子には、丁度、自分の手にしっくり嵌るようになった古い庭仕事用の手袋にも似た親しみがあって、一度手に取ると、直ぐには置く気になれない。私はこの貝殻も持って帰るつもりでいる。

2007.07.21

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～海からの贈物・牡蠣1～

しかし私たちは少なくとも結婚に関する限り、それが恒久的なものであることを望むのではないだろうか。一つの関係が持続するのが、結婚というものではないだろうか。それは勿論そうなのであるが、しかしそれが何もただ一つの形、或いは状態、例えば、日の出貝の状態で続く必要はない。日の出貝の他にも、私の机の上に並べる貝がある。私が昨日拾ったのが一つあって、これは別に珍しいものではなくて浜辺に行けば沢山転がっているが、それでいて、二つと同じ形をしているものはない。それは牡蠣で、どれもがその生活を続けていく必要から生じた独自の形をしている。私が拾ってきたのには、他の小さな貝殻が沢山付いていて不恰好にでこぼこしているのが、凡て成長するものが取る形が不規則であることを思わせる。それは、家族が大勢いる家が必要に応じて段々建て増しをして、子供たちのために寝部屋を一つ増やしたり、その遊び場にベランダを作ったり、ガレージや自転車を置く小屋を足したりするのに似ている。私の現在の生活、また私でなくても、結婚して何年かたった多くの女がしている生活のようでもあって、見ていて可笑しくなる。いかにもごたごたしている感じであらぬ方向に拡がり、いろいろなものが付着していて、これは中が空になったのが波に打ち上げられたのであるが、生きている間は私たちの生活と同様に、岩にしっかり根を下ろしている。牡蠣は確かに、結婚して何年かになる夫婦を表すのに適した貝のようである。

2007.07.21

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～海からの贈り物・日の出貝6～

前にあった関係に恒久的に戻ることはできないという事実を、そしてもっと深い意味で、或る関係を同じ一つの形で保ってはいけないということを私たちは段々受け入れるようになる。そしてそれは悲劇ではなくて、伸びて行く生命の絶え間がない奇蹟の一部なのである。凡て生きた関係は変化し拡張しつつあって、常に新しい形を取っていかなければならない。そういう絶えず変化する関係を表すただ一つの固定した形というものはなくてその各段階にそれぞれの形があるのかも知れず、それならば結婚生活の或いはその他どんな関係でもの、違った段階を示す幾つかの貝を机の上に並べて置いてもいい訳である。最初に来るのはこの日の出貝である。結婚の最初の段階をこれで表すのは間違っていないと私は思うので、二つの少しも欠けた所がない面がただ一つの紐帯で結ばれ、完全に一つに合わさって、どっちの面にも暁の光が差している。それはそれだけで一つの世界を作っていて、これこそ詩人たちが歌おうとしていたものではないだろうか。私たち二人の目覚めた魂は、お早う。私たちは互いの相手の顔色を窺がったりしなくて、それは愛が何を眺める時の心も支配し、一つの小さな部屋を凡ての場所にするからだ。探検家は新しい世界を発見し、地図は多くの世界を示すがいい。私たちはただひとつの世界を所有し、銘々が一つを持っていて、そして二人は一つなのだ。しかし、ジョン・ダンが歌っているのは　「小さな部屋」で、それはやがては私たちには狭すぎるようになり、そしてそれが少しも不幸なことではない、小さな世界なのである。日の出貝はとても美しくて、壊れ易い、はかないものである。しかしそれだから幻影ではないので、我々はそれがいつまでもあるものではないという理由から一足飛びに、それが幻影であるなどと思ってはいけない。持続ということは、真偽の尺度にはならない。蜻蛉の一日や、天蚕蛾の一夜は、その一生のうちで極めて短い間しか続かない状態だからと言って、決して無意味ではないのである。意味があるかないかということは、時間とか持続とかと関係はなくて、他の基準に従って判断されなければならない。それは或る時の、或る場所での現在の瞬間に属していることで、「現在あるものは、或る時の、或る場所での現在にしかない」のである。日の出貝には、凡て美しくてはかないものの永遠の価値がある。

2007.07.21

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～海からの贈り物・日の出貝5～

我々は皆、自分一人だけが愛されたい。「林檎の木の下で、他の誰とも一緒に座っちゃいや」という古い歌の文句の通りである。そしてこれは、W・H・オーディンが言っているように、人間というものが持っている一つの根本的な欠陥なのかもしれない。どの女も、男も、持って生まれた迷いから、適えられないことに心を焦がし、普遍的な愛だけでなくて、自分だけが愛されることを望むしかしこれは、それほど罪なことだろうか。私はこの句について或るインド人の哲学者と話をしていて、非常にいいことを聞いた。「自分だけが愛されることを望むのは構わないのですよ」とその哲学者は言った。「二人のものが愛し合うというのが愛の本質で、その中に他のものが入ってくる余地はないのですから。ただ、それが間違っているのは時間的な立場から見た場合で、“いつまでも”自分だけが愛されることを望んではならないのです」というのは、我々は、「二つとないもの」―二つとない恋愛や、相手や、母親や、安定に執着するのみならず、その「二つとないもの」が恒久的で、いつもそこにあることを望むのである。つまり、自分だけが愛されることの継続を望むことが、私には人間の「持って生まれた迷い」に思える。なぜなら、或る友達が私と同じような話をしていた時に言った通り、「二つとないもＫのなどはなくて、二つとない瞬間があるだけ」なのである。二つとない瞬間は確かにある。そして一時的にせよ、そういう瞬間を取り戻すことも決して間違ってはいない。マフィンとマーマレードが出ているテーブルで向かい合うのも、子供に乳をやるのも、もっと後になって、子供と浜辺で駆けっこをするのも、一緒に貝殻を探すのも、栗の実を磨くのも、大事にしているものを分け合うのも、―そういう二人だけの瞬間には凡て意味があって、ただそれが恒久的なものではないだけなのである。そのうちに、恒久的に純粋な関係というものはなくて、またあってはならないということも解ってくる。そういう関係は時間的にも、空間的にも限られたものであって、その性質からして排他的なのである。それはそれ以外の生活や他の人間的な関係や、我々の生活の別の面や、他の責任や、将来起こり得る他の可能性を無視し、そしてそれは成長を無視する。子供部屋の締まっている戸の外では、他の子供たちが呼んでいて、その子供たちも愛さずにはいられない。電話が鳴って、友達とも話がしたい。朝の食事がすんだ後は、その次の食事、或いはその翌日のことを考えなけらばならない。そういうことも現実であって、これに眼をつぶる訳にはいかず、生活は続けられなければならない。しかしそれは、短い期間に二人だけでいる経験を繰り返すのは時間の無駄だということにはならなくて、小さなテーブル越しに向き合ってする朝の食事はその日、またその後に来る多くの日々に光明を投げ掛ける。子供たちと浜辺で駆けっこをするのは、海に飛び込むのと同様に私たちを若返らせてくれる。ただ私たちはもう子供ではなくて、人生も浜辺とは違っている。こういうことは恒久的な復帰を許すものではなくて、私たちを立ち直らせてくれるだけである。

2007.07.21

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～海からの贈り物・日の出貝4～

しかし日の出貝に似た純粋な関係が一度失われた後に、もう一度実現できるのだろうか。それは満たされなければならない双方の要求の性質が違うというだけのことではなくて、二人が違った方向に、或いは違った速度で成長するという場合もあることを考えなければならない。極く短い期間にわたる日の出貝の関係が、二人の間で実現できる凡てだったかもしれないので、それならばそれはそのこと自体が一つの目的だったのであり、もっと深い関係の基礎になる性質のものではなかったのである。しかしそれ自体が成長していく関係では、そのもとの姿は失われるのではなくてただ生活上の夾雑物の下に埋められているに過ぎない。その本質はまだそこにあって、ただそれを蔽っているものを取り除けさえすればいいのである。日の出貝の関係を呼び戻すもう一つの方法は、それと同じ状況を再現することである。夫も、妻も、ときには一人でどこか旅行に出掛ける機会を作るべきであるとともに、二人だけでそうするのもいいことであって、夫と二人で出掛けてもとの関係を取り戻すということも十分に考えられる。夫婦ならば、大概のものはそういう休暇の楽しさというものを味わったことがあるはずである。子供や、家や、勤めその他、日常生活の束縛を凡て後にして一ヶ月でも、或いは週末の二日でも、或いはどこかの宿屋の一晩でさえも、二人だけで過ごすというのは、なんといいものだろう。そういう時、日の出貝の奇蹟が再び二人の間で起こる。自分が恋愛した男と二人だけで小さなテーブルを隔てて向き合っていて、それが家では、なんと大勢のものが食卓を囲むことになったことだろう。そして子供が4人も5人もいて、電話は掛かってくるし、夫の通勤列車の他に、子供たちを学校に運ぶ幾つかの違ったスクールバスの時間も考えなければならないというのは、なんと頭を混乱させるものだろう。そういうことは凡て自分と夫を離すもので、純粋な関係を保っていく上で邪魔になる。しかし小さなテーブル越しに二人だけで向かい合っていれば、二人の間にはコーヒー注ぎと、トウモロコシのマフィンと、マーマレードしかない。こうして夫と二人だけで朝の食事をするというのは大した贅沢ではなにが、結婚して忙しい生活をしていれば、これも始終はできないことである。そして私は、この一時的に昔の純粋な関係に戻るということが、自分の子供との場合にも当て嵌まると思う。私は日の出貝を掌に載せて眺めながら、一日或いは一月、或いは一年のうちの一部を私の子供たちの一人々々と二人だけで過ごせたら、と考える。そうすれば、子供たちももっと幸福で、丈夫になり、そして安心するから、結局はもっとしっかりしてくるのではないだろか。子供は皆、自分がまだ赤んぼで、子供部屋で母親と二人きりで乳を飲んでいた時代の、母親との関係に内心では戻りたがっているのではないだろうか。そしてもし私たちがこの考えを実行して、子供の一人々々ともっと多くの時間を過ごすようにしたら、子供はより多くの安心感と力を得るだけでなくて、大人になってからの人間的な関係に就いて重要な予備知識を与えられるのではないだろうか。

2007.07.21

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～海からの贈物・日の出貝2～

しかしこの完璧な融合はなんと早く、そしてまた誰にも避けられない形で犯されることだろう。相手と初めのうち結ばれていた関係は変わって、世間との接触でもっとも複雑な、もっと厄介なものになる。これは友達でも、夫婦でも、或いは親子の関係でも、皆そうだと思うが、この変化が一番感じられるのは夫婦の場合で、それは夫婦の関係が最も基本的な性質のものであり、また一番保ち難くて、またどういう訳か、我々がそれを初めのうちと同じ形で続けていくことができないのは悲劇だという、間違った考えを持っているからである。確かに、この二人が結ばれた当時の関係というのは美しいものである。それはそれだけで充足したものであって、春になった頃の朝の感じがあり、我々はやがては夏が来るのを忘れて、二人の人間が過去にも未来にも煩わされずに、個人と個人として向き合うこの愛の早春をいつまでも続かせたいと思う。どんな変化も、それが人生と人生の進展の一部をなしている自然なものであることが解っていても、不愉快に感じられるのであるが、肉欲と同じことであって、人と人との関係も、初めの歓喜の状態が同じ烈しさをいつまでも失わずにいるということはあり得ない。それは成長して別な段階に入り、我々はそれを恐れずに、春の次に夏が来たのを喜んで迎えるべきである。しかしその頃には同時に、当を得ていないものの評価の仕方や、習慣や、負担が堆積して我々を押し潰そうとし、人生でも人と人との関係でも、我々はこの無意味な皮を絶えず剥ぎ取るように注意しなけらばならない。男も、女も、生きて行くうちに生活が次第に複雑になるに従って、相手との関係が初めの頃とは違ったのを感じ、もとの形に戻れないのはどうしたことかと思う。

2007.07.21

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～海からの贈物・日の出貝1～

この貝は自分で見付けたのではなくて、人から貰ったのである。友達がくれたので、この島で日の出貝、殊にこんなに完全に保存されたのは珍しい。この、さわるだけで壊れそうな貝の両面は正確に対をなしていて、丁度、蝶の羽のように、両方とも模様が同じであり、二つを会わせている金色の紐帯から白い半透明の表面に、いずれも三本の薄紅の線が延びている。だから、私は二つの日の出を手に持っている訳で、それにしても、この華奢な貝殻がどうして少しも傷つかずに浜辺の波を潜ることができたのだろう。珍しいもので、それを私にいきなりくれた人がいるのである。この島に住んでいる人たちは皆そうで、浜辺で会った知らない人が笑顔になり、近寄ってきて、何の理由もなしに貝をくれると、また向こうに行ってしまう。その代わりにどうしてくれということはなくて、何かの挨拶が期待されているのでもなければ、それで近づきになる訳でもない。貝はただくれたので、それをこっちはただ貰い、互いに相手を信用しきっているのである。ここでは、人が子供と同じように、誰かに出会うと笑顔になり、それに対してこっちも笑顔になって返すものと決めていて、いやな顔をされるなどということは全然考えない。そしてこっちも、それがただそれだけのことであるが解っているから、実際に笑顔になる。その笑顔になるという行為、またそれによって生じる親しみは、純粋にその時の現在に属するもので、「ここ」と「今」の一点に掛り、それは一羽のカモメのように宙に浮いて平均を保っている。こういう純粋な交渉というのはなんと美しいものだろう。そしてそれはなんと容易に傷つき、また、無駄なもの、―或いは、無駄なものでなくても、人生そのものと、人生や時間の経過が堆積するものに直ぐ押しつぶされることだろう。というのは凡て人間と人間の関係は、それが友達、或いは恋人同士或いは夫婦、或いは親子の関係、或いはその他何であっても、初めのうちは純粋で、簡単であり、重荷になるものなどはない。それは芸術家が製作に取掛かって一つの形式を与えることになる前のまだ彼の頭に浮かんだままの彫像、或るいは、成熟して、そのために重い責任を負うことにもなる前の恋愛の萌しにも似ている。どんな関係でも、初めのうちは簡単なものに思われて、初恋とか、友情の始まりとか、二人の人間の気持ちがそういうふうに最初に近寄りだした時は、―それが仮にどこかに呼ばれて、食卓を隔てて夢中で話をするだけのことであっても、―ただそれだけで一つの完全な世界ができあがっているような気がする。二人の人間が互いに相手の声に耳を傾け、貝の両面が合わさって、一つの世界を作る。この瞬間の完璧な融合に、他の人間や、事情や、関心は何ひとつ入って来ない。それはまだいろいろな縁とか、義理とかに束縛されず、責任も感じられなければ、未来のことに対する心配や、過去のことに対する義務も伴っていない。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 7～

アメリカでは　つめた貝のことを月の貝と言うが、誰がこの貝にそういう名を付けたのだろうか。誰か、直感力が発達した女でないかと私は思う。そして私はこの貝に、島の貝という別な名前を付けたい。私はここの島にいつまでもいる訳にはいかないが、この貝を持って帰って、コネティカットの私の部屋にある机の上に置くことはできる。そこで貝はそのただ一つの眼で私を見詰めるだろう。そしてその滑らかな表面に描かれた幾つかの輪が小さな核心に次第に近づいて行くことから、私が何週間を過ごしたこの島のことを思い出させてくれるに違いない。そして私に、孤独ということを言って、私が私の核心、また島である性格を失わずにいるためには、一週間でも、二、三日でも、一年のうちに一度は、また一日のうちに一時間でも、五、六分でも、一度は自分一人でいるようにしなければならないことを絶えず注意してくれるだろう。そしてその島である性格を持ち続けなければ、私は私の夫にも、子供にも、友達にも、また世間一般にも、多くのものを与えることはできないことを改めて思い出させてくれるだろう。女はその生活をなしているいろいろな活動の中心にあって、車の軸のように静かでなければならないのであり、自分が救われるためだけでなしに、家庭生活、また社会、そして或るいは我々の文明さえもが救われるためにも、この静寂を得るのに掛けて先駆をなさなければならないのである。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 6～

その対策は、昔に戻って、女を再び家庭に閉じ籠め、箒と針を持たせることではない。機械的な手段があって、私たちがそういうことをする手間を省いている。しかしそれで節約された時間と気力を持て余して、もっと多くの無意味な仕事や、生活をするのを簡単にするはずで、却って煩わしくする器具を集めることや、私たちが使うのにも、味わうのにも暇がないものを手にいれること、要するに、空白を更に多くの気散じの手段で埋めようとすることにその時間や気力を浪費するのも、問題に対する答えではない。別な言葉で言えば、私たちを幾つかに分割する効果しかない遠心的な活動を幾ら求めても、何にもならないのである。女の生活は今日、ウィリアム・ジェームスがドイツ語のツェリッセンハイト、ずたずたに裂かれた状態、という言葉で言い表したものに次第に近づいていく。女はいつまでもこの状態で置かれていることはできなくて、そのままでいれば、木っ端微塵にされる他ない。女はそれとは反対に、一人で時間を静かに過ごすとか、ゆっくりものを考えるとか、お祈りとか、音楽とか、その他、読書でも、勉強でも、仕事でも、自分を内部に向かわせて、今日の世界に働いている各種の遠心的な力に抵抗するものを求めなければならない。それは体を使ってすることでも、知的なことでも、芸術的なことでも、自分に創造的な生き方をさせるものなら何でも構わないのである。それは大規模な仕事や計画でなくてもいいが、自分でやるものでなくてはならなくて、朝、花瓶一つに花を活けるのは、詩を一つ書いたり、一度だけでもお祈りするのと同様に、忙しい一日の間、或る静かな気持ちを失わずにいる結果になることもある。要するに、少しでも自分の内部に注意を向ける時間が必要なのである。　つめた貝は　我々に孤独ということを教え、中心に向かえ、と清教徒の聖者たちは言い、自分を見失わずにいることが内部への道である、とプロティノスは説き、シエナの聖カテリナによれば、巡礼は自覚の独房で生まれ変わらねばならない。これは昔の人たちがしたことである。しかし今日ではそれを意識的に行うのだとういう点が、昔とは違っている。昔のように、時代の流れに従って、誰でもがやっているからやるのではなくて実際は殆どもう誰もそういうことをするものはない。それをやるというのは、或る意味では一つの革命でさえあって、それは今日の思想や傾向の凡てがこの新しい、内的な生活の仕方とは正反対だからである。女が、この我々の内部に力を求めるということの先駆をなさなけらばならない。女はいつもその先駆をしてきたとも言えるので、二、三十年前までは外的な活動に加わるのが難しかったために、そういう生活上の制約自体が女に注意を内部に向けさせた。そしてそうすることによって、男がその外的な活動に捧げられた生活では容易に求めることができなかった内的な力を女は得た。しかし私たちは最近になって女というものを解放し、女が男と同等であることを示そうと努力するうちに、これは無理もないことかも知れないが、男と外的な活動の面で競争することで私たちの内的な力の源泉を放っておく結果になった。しかしこの女の力の源泉は時間を越えたものであって、それをなぜ、私たちは男の一時的でしかない外的な力と取換える気になったのだろうか。男の外的な力も人間になくてはならないものであるが、その男の世界にも純粋に外的な力や、問題の解決の仕方は今日では用をなさなくなりつつある。男も、目を内部に向けて、問題の外的な形式にある解決のみならず、内的な解決を求めずにいられなくなっているのであり、或るいはこの変化は、現代の外向的で行動的な、唯物論的な欧米の男が成熟の新たな段階に達したことを示すものであるかも知れない。男も、神の国が人間の心の中にあることを覚り始めたのだろうか。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 5～

昔は、女がそれを知っていたかどうかは別として、女の生活に一つの中心を与えるのにもっと多くの力が働いていて、女が意識いるといないとに拘らず、女の糧になるものを供給するもっと多くの源泉があった。女が家の中に閉じ籠められているということ自体が、女が一人でいられる時間を作った。女の仕事の多くは、静かに自分をいうものを眺めてこれを知るのに適した性格のもので、昔の女は今日の女よりももっと多くの創造的な仕事を持っていた。料理とか、裁縫とかいうようなものさえも、自分というものの糧になる創造的な仕事に属していて、パンを焼いたり、布を織ったり、漬物を作ったり、子供を教えたり、歌を歌ってやったりするのは、今日の女が自動車を運転したり、百貨店に買い物に行ったり、各種の機械的な手段で家の仕事をしたりするのよりも、遥かに多くのものを女に与えたに違いない。家事というものの芸術と技術は衰えて、方々で反対のことが広告されているにも拘らず、仕事の中で昔から無意味だった部分は今日でも残っている。生活の他の面でと同様に、家事でも、頭と手の間に機械的な手段の幕が降ろされたのである。　教会も、昔から女に一つの手段を与える大きな力のひとつだった。女はなんと長い間、誰にも邪魔をされずに自分を知る静かな時間を教会で過ごして生きてきたことだろう。教会にとっても、それを支える最も大きな力が女だったのは不思議ではない。女は教会に行けば、自分一人の部屋も、一人でいる時間も、静寂も、平和も、凡てあって、その上にこれは家族と社会とが是認していることだった。教会の中では、誰も、お母さんとか、妻とか、奥様とか言って邪魔をしに来るものはなかった。そしてそれよりも、そこでは女は無数の役割にちぎられずに、自分であることができた。女は教会での礼拝と祈りと交感のうちに、完全に自分を捧げて、そして受け入れられ、それによって女は更正し、泉には再び水が沸いてきた。教会は今日でも、男にも女にも自分というものを見出される大きな力であって、前にも増して必要であり、―それは教会の信徒が殖える一方であることからも解る。しかし教会に行くものは今日、昔のように自分を捧げ、またその自分を教会から受け取っているだろうか。我々の日常生活は静かにものを考えることに適していなくて、一週間のうちに一時間を教会で過ごすのは助けにはなっても、それで毎日の騒々しい活動の埋め合わせができるだろうか。もし私たちが家でもそういう静かな一時間を過ごすことにすれば、教会でももっと容易に自分を捧げてそしてもっと深く更正することになりはしないだろうか。なぜなら、更正する必要は今日でも、少しもなくなりはしないからであって、自分全体が受け入れられ、幾つかの役割の集まりではなしに、一箇の個人として扱われること、自分を完全に、そして無意味にではなく与えることを望む気持ちはわたしにもいつもあり、それが私たちを更に多くの気散じの手段、或るいはかりそめの恋愛、或いはまた、病院や医者の診察室に追い込む原因の一部にもなっているのである。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 4～

これは考えてみれば、不思議なことである。それ以上のどんなことも、これよりはいい口実に考えられていて、用事で人に会うとか、パーマネントをかけに行くとか、お呼ばれとか、買いものとか言えば、相手は納得するがもしその時間は自分が一人でいることにしているからという理由で相手の申し出を断れば、そういう人間は礼儀を知らないか、我がままか、変わっているということになる。しかしそういうふうに、一人になることが何かいけないことになっていて、そのためにお詫びをしたり、口実を設けたりして、自分がしていることが恥ずかしいことででもあるようにそれを隠さなければならない我々の文明というのは、なんと奇妙なものではないだろうか。我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。或る種の力は、我々が一人でいる時だけにしか沸いてこないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために一人にならなけらばならない。しかし女にとっては、自分というものの本質を再び見出すために一人になる必要があるので、その時に見出した自分というものが、女のいろいろ複雑な人間的な関係の、なくてはならない中心になるのである。女はチャールス・モーガンが言う、「回転している車の軸が不動であるのと同様に、精神と肉体の活動のうちに不動である魂の静寂」を得なければならない。この美しい彫像は、女がいつも胸に描いていいものであると思う。そしてこの目的、―というのは、他人との交渉やいろいろな義務や活動が車になって回転している中心の、不動の軸であることに向かって私たちが努力してはどうだろうか。しかし一人になるというだけでは、これを実現することはできなくて、それは実現への一歩、つまり、世界で女が進歩する前に女のために要求された「自分一人の部屋」のような、一つの機械的な手段にすぎない。自分一人の部屋を手に入れ、また、一人でいる時間をつくるのは必要であると同時に困難なことでもあるが、それが凡てではなくて、それよりも問題は、どうすれば活動している最中でも魂の静寂を得られるかということなのである。つまり、どうすれば自分の魂にその糧を与えられるかということなのである。なぜなら、涸れつつあるのは女の精神であり、機械的な手段の方は決して不足していないからであって、そういう手段の点では、女はこの何十年かの間に多くのものを獲得した。少なくとも、アメリカでは、婦人運動その他の功績で、女の生活は昔よりも楽で自由で、いろいろなことをする機会に恵まれたものとなった。自分一人の部屋や、一人でいる時間は、かつてないほど多くの女たちにとって前のように無理な注文ではなくなった。しかしこういう貴重な成果はまだ不十分であって、それは女の方がそれをどういうふうに利用したらいいか解らずにいるからである。婦人運動に参加した人たちはそのように遠い将来のことまでは考えていなかったのであって、彼らは、いかに生きるべきかということに就いては教えなかった。彼らとしては、女のために現在女に与えられている特典を要求すればよかったので、凡ての先駆的な運動ではそうである通り、獲得したものの使い方は、後から来るものの課題に残された。そして女は今日、まだその使用法を求めている。私たちは飢えを感じてはいるが、何がそれを満たすかは、今日の私たちにも解らない。私たちは自由な時間を得て、それで私たちの泉に水を漲らせる代わりに、寧ろ泉を涸らしてしまうことのほうが多い。私たちは桶一杯の水で庭の植木に水をやるのではなくて、野原一つに水を撒こうと考え、委員会や各種の運動に訳もなしに飛び込んで行く。私たちにどうすれば精神に糧を与えることができるか知らなくて、その要求を紛らせることしかせず、車の軸を安定させる代わりに、私たちの生活に更に多くの遠心的な活動を加えて、それが私たちに体の平均を失わせる。機械的な意味では、私たちはこの何十年かに多くのものを獲得したが精神的には却って失ったもののほうが多いとわたしは思う。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 3～

　与えるのに意味があれば、それほど自分が減らされるということがない。与えるということの自然な形式がそれなので、そうして与えれば与える程、更に与えるものが湧き上がってきて、丁度それは母親の乳と同じことなのである。そして建国当時のアメリカや、また最近では戦時中のヨーロッパでは、女が与えるということは難しくはあっても、意味があり、またなくてはならないものだった。しかし生活が比較的楽になった今日、多くの女は生きるために原始的な競争という点でも、また家庭生活の中心としても、自分がそれほどなくてはならないものとは感じなくなった。そしてそれがないために、私たちは飢えていて、何に飢えているのか解らないから、その空白をいつも手が届く所にあるいろいろな気を紛らす手段、―しなくてもいい仕事や、押し付けられた義務や、社交上の瑣事で埋めようとしている。しかし、それは大概は役に立たなくて、そのうちに私たちは泉が涸れてしまった事に気付く。飢えは勿論、自分がなくてはならない存在だと感じるだけで凌げるものではない。与えることに意味があっても、与えただけのものを補う源泉が何かなくてはならなくて、乳がいつも出るためには栄養を取らなければならない。与えるのが女の役目であるならば、同時に、女は満たされることが必要である。しかし、それにはどうすればいいのか。　一人になること、と　つめた貝が答える。誰でも、そして殊に女は、一年の或る部分、また毎週、及び毎日の一部を一人で過ごすべきである。そう言うと、これはなんと大変なことに聞こえるだろう。多くの女にとっては、これは到底望めないことであって、一人で休暇を取るだけの余分の収入もなければ、一週間を家事に追い回されて過ごして、一日休む暇もない。そして一日、料理や、掃除や、洗濯をした後では、一時間を創造的な孤独のうちに過ごす気力さえも残っていないのである。しかしこれは単にそういう経済的な問題なのだろうか、私はそうは思わない。有給の労働者はいかに薄給でも、一年に一度の休暇と、毎週一回の休みを与えられている。したがって主婦だけが定期的な休暇がない労働者であるということになって、これが一つのそういう大きな階級をなしている。そして主婦がそのことで不平を言うことさえも余りなくて、自分が一人になる時間というもの、それほどなくてはならないものと思っていないらしいのである。ここに、この問題に対する一つの鍵がある。もし女が週に一週に一度の休日或いは一日に一時間、一人でいる暇というものを決して過分ではない要求と考えるならば、それを実現する手段は必ず見つかるに違いない。しかし現在のところは、女のほうで自分がそういうことを望む根拠が余りにも薄弱なのを感じて、それを要求することが殆どないのである。そしてそのように、この問題が単に経済的な性質のものでないことは、一人になるための経済的な余裕、或るいは時間と気力が実際にある女が、それをそういう目的に決して使っていないのを見ても解る。外的な圧力というものは勿論あって、それがそのことを一層、面倒にしているが、これはそれよりも寧ろ内的な信念の問題なのである。孤独の探求ということに関する限り、我々は湿度が高い八月の午後も同様に鬱陶しい、否定的な空気を呼吸している。今日の世界は男に対しても、女に対しても、一人になることの必要を認めないのである。

2007.07.20

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～海からの贈物・つめた貝 2～

私は波の音の律動や、背中や足の皮膚にじかに差す日光や、髪に掛かる波の飛沫にさらされているのを快く感じながら、浜辺の端まで歩いていった。そして千鳥のように、海にはいってまた出て来た。それから、びしょ濡れのまま、一人で過ごした一日の気持ちで満たされて、酔った感じで家に帰る。私は、まだ少しも欠けていない月や、縁まで一杯にされた茶碗と同じ具合に満たされている。聖書の詩篇に出て来る、「私の杯は溢れる」という言葉には特殊な意味があって、私は急に恐くなり自分を満たしているものがこぼれないためにも、誰も来ないように、と祈る。　それが女というものなのだろうか。女はいつも自分をこぼしている。子供、男、また社会を養うものとして、女の本能の凡てが女に、自分を与える事を強いる。時間も、気力も、創造力も、女の場合は凡て機会さえあれば、一つでも漏る箇所があれば、そういう方向に流れ去る。私たちは必要がある時に、それも直ぐに、与えることを、伝統的に教えられ、本能的に望んでもいる。女は喉を乾かしているもののために絶えず自分というものを幾らかずつこぼしていて、縁まで一杯に満たされるだけの時間も、余裕も与えられることが殆どない。　しかしそれでいいのではないかとも一応は考えられる。与えるというのが女の役目なのであるから、女が自分というものをこぼすのがなんで悪いだろうか。しかしそれならばなぜ、私は浜辺で完璧な一日を過ごした後に、私が手に入れた宝をなくすのをこれほど恐れているのだろうか。それは単に私に芸術家の素質があるからだけではない。芸術家は勿論、自分を小出しに人に与えることを好まない。自分が一杯になるまで待つことが芸術家には必要だからである。しかし、それだけではなくて、私が思い掛けなくこういう気を起すのは、私が女だからである。　これは矛盾していると言わなければならない。女は本能的に自分をいうものを与えることを望んでいて、同時に、自分を小刻みに人に与えることを喜ばない。これは一つの対立なのだろうか。それとも、もっとこれはいろいろな要素が含まれている複雑な問題の一端に過ぎないのだろうか。私の考えでは、女は自分を小出しに与えるということよりも、無意味に与えるのを嫌うのである。私たちが恐れるのは、私たちの気力が隙間から洩れて行くことではなくて、それがただ洩れてなくなるのではないかということなのである。私たちが自分というものを与えた結果は、男がその仕事の世界で同じ事をした場合のようにはっきりした形を取らない。一家の主婦がやる仕事は、雇い主に給料を上げてもらうということもなければ、人に褒められて私たちが及第したことが解るということも殆どない。子供というものを除けば、殊に今日では、女の仕事は多くの場合、眼に見えないのである。私たちは家事と、家庭生活と、社交に属する無数の内容を異にした事柄を一つの全体に組み合わせるのを仕事にしている。それは眼に見えない糸を使って綾取りをやっているようなもので、この家事や、お使いや、お付き合いの断片が混ぜこぜになっているのを指して、どうしてそれをひとつの創造と呼ぶことができるだろうか。その多くは機械的に行われるもので、それに何か意味があると思うことさえ難しい。それで女は自分が電話の交換台か、電気洗濯機のような気がしてくる。

2007.07.19

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～海からの贈物・つめた貝 1～

これは蝸牛の殻の格好をした貝で、丸くて艶があって橡の実に似ている。こぢんまりした形の貝で、猫が丸まっているような具合に、いい心地よさそうに私の掌に納まる乳白色をしていて、それが雨が降りそうな夏の晩の空と同じ薄い桃色を帯びている。そしえその滑らかな表面に刻み付けられた線は貝殻のやっと見えるくらいの螺旋を描いている。この黒い点は不思議な目つきをした眼で、それが私を見詰め、私もそれを見詰める。またそれは時には、空に威厳に満ちて輝く満月になり、ときには夜、草が茂っている中を音を立てずに通って行く猫の眼でもある。そしてそれはまた、輪を描いて段々に拡がって行く波に取巻かれた島にもなって、この島はただそうしているだけで充足してその波間にその姿を現している。島というのは、なんと素晴らしいものだろう。私が今来ているような空間的な意味でも島もいいし、それは何マイルも続く海で囲まれ、こういう島を本土と繋ぐ橋も、電信も、電話もなくて、島は世界からも、世間での生活からも切り離されている。またそれは時間的な意味での島でもよくて、私のこの短い休暇が丁度そういう島なのである。過去と未来は切り離されて、ここには現在だけしかない。そして現在の中でだけ生きていることは、島での生活をひどく新鮮で純粋なものにする。「ここ」と「今」しかないとき、子供、或いは聖者のような生き方をすることになり、毎日が、そして自分がすることの一つ一つが時間と空間に洗われた島であって、どれもが島同様に、それだけで充足した性格を帯びる。そういう空気の中では、人間も島になって充足し、落ち着きを得て、他人の孤独を尊重してこれを犯そうとせず、別な一箇の個人という奇蹟を前にして自然に一歩後ろへ足を引く。「人間は島ではない」とジョン・ダンは言ったが、私は我々人間が皆島であって、ただそれが同じひとつの海の中にあるのだと思う。我々は結局は、皆孤独なのである。そしてこの孤独という我々の基本的な状態は、我々がいやだからと言って、どうすることもできるものではない。リルケが言っている通り、それは「我々に取捨の自由が許されているものではなくて、我々は実際に、孤独なのである。我々は我々自身をごまかして、それがそうではないように振舞うことはできる。しかしそれだけであって、それよりも我々が孤独であることを自覚し、自覚しないまでもそうであると仮定することから始めるほうがどんなにいいだろうか。勿論」と彼はこれに続けて言っている。「我々はそう思うだけで眩いがしてくる」勿論、誰も自分が孤独であると考えたくはない。何とでもしてそう考えることを避けようとするので、それは人に嫌われているとか、仲間はずれにされているということと同じように思われる。孤独という言葉には、私たちがまだ若かった頃の不安が付き纏っていて、舞踏会で他のもっと人気がある女の子たちは熱い掌をした相手の男たちと皆もう踊っているのに、自分は一人で壁添いの椅子に腰掛けていることになるのではないかというふうな心地がする。我々は今日、一人になることを恐れるあまりに、決してひとりになることがなくなっている。家族や、友達や、映画の助けが借りられない時でも、ラジオやテレビがあって寂しいというのが悩みの種だった女ももう一人にされる心配はない。家で仕事をしている時でも、流行歌手が脇にいて歌ってくれる。昔の女のように一人で空想に耽るほうが、まだしもこれよりは独創的なものを持っていた。それは少なくとも、自分でやらなければならないことで、そしてそれは自分の内的な生活を豊かにした。しかし今日では、私たちは私たちの孤独の世界に自分の夢の花を咲かせる代わりに、そこを絶え間ない音楽やお喋りで埋めて、そして我々はそれを聞いてさえいない。それはただそこにあって、空間を満たしているだけなのである。この騒音が止んでも、それに代わって聞こえてくる内的な音楽というものがなくて、私たちは今日、一人でいることをもう一度初めから覚え直さなければならないのである。それを覚えるということは、-自分の家族から離れて、一週間でも、一日でも、一時間でも一人でいる練習をするということは、今日では容易なことではない。わたしにとっては、別れる時が一番辛くて、別れている期間がどんなに短くてもそれはどうしても苦痛を覚えさせずにはおかない。手や足を切断する手術のようなもので、私にはなくてはならない肢体が一つ切り取られるのに似た感じがする。しかしそれでもそれが終わってしまえば、一人でいるということがいかに貴重なものであるかということが解ってくる。手術の後で空虚になった部分に前よりも新鮮で充実した生命が戻ってきて、それは実際に腕を一本切り取られたようなものであり、その後で　ひとでも同様に、別な新しい腕が生える。失ったものは回復され、それまで他の人たちに自分の一部を取られていた時よりももっと健康な自分にさえなっている。私はこれでまる一日と二晩、一人で暮らしたことになる。私は夜、浜辺に出て星の下で一人で寝転がっていた。一人で朝の食事を用意し、波止場の端で私が投げてやる餌を鴎が拾っては舞い上がり、また水面を目掛けて飛んで来るのを一人で立って眺めていた。それから午前中は机に向かって仕事をして、遅い昼飯を浜辺で一人で食べた。そしてそうやって私の同類から離れていると、私は他の動物にもっと親しみを感じることができるようだった。私の後の砂洲に巣を作っている臆病ものの鴫や、濡れて光っている向こうの波打ち際を恐れげもなく駆け回っている千鳥や、私の頭の上をゆっくり羽ばたきながら飛んで行くペリカンや、背中を丸めて不機嫌そうに水平線を眺めている年取ったカモメや、そういうものと、私は一種の繋がりがあるという気がして、その繋がりに喜びを覚えた。地上と、海と、空の美しさが私にとって前よりも意味があって、私はそれと一つになり、いわば宇宙の中に溶け込んで自分を見失い、それは寺院で大勢のものが賛美歌を歌うのを聞くのに似ていた「神を讃えよ、海の魚の群れ、―空の鳥、―人間の子供たち、―神を讃えよ」その通り、私は一人でいて私の同類にも前よりも親しみを持つことができた。なぜなら、我々を他の人間から切り離すのは地理的な意味の孤独ではなくて、精神的な孤独だからである。我々を我々が愛している人たちから遠ざけるのは無人島や、砂漠ではない。それは我々の頭の中に拡がる砂漠、また心の中の荒地であって、そこを我々は行く所もなくてさ迷っている。自分が自分に対して他人であるならば、我々は他人に対しても他人であることになって、自分と接触がなければ、他人に近づくこともできない。私は大きな都会の中にいて、誰か友達と握手しながら、その間に荒野が横たわっているのを何度感じたことだろうか。私たちは二人とも、かつては私たちの生命を養っていてくれた泉を見失うか、或いはそれがいつの間にか涸れてしまったのを発見して、そうして荒野の中をさまよっているのだった。自分自身の心臓と繋がっている時にだけ、我々は他人とも繋がりがあるのだということが、私には漸く解ってきた。そして私にとっては、その心臓部、或いは内的な泉を再び見付けるのには一人になるのが一番いい。

2007.07.19

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～海からの贈物・ほら貝 3～

　浜辺での生活で第一に覚えることは、不必要なものを捨てるということである。どれだけ少ないものでやって行けるかで、どれだけ多くでではない。それは先ず身の回りのことから始まって不思議なことにそれが他のことにも拡がって行く。最初に着物で、勿論、浜辺で日光を浴びていれば着物の数も少なくてすむが、それは別としても着物をそう何枚ももっていなくてもいいことに、ここに来て急に気が付く。箪笥一杯ではなくて、鞄一つに入るだけあればいいのである。そしてこれはなんと有難いことだろうか。直したり、縫ったりする面倒が省けて、そしてそれよりも助かるのは、何を着るかということで頭を悩まさずにすむことである。そして着物の面倒がなくなるのは、同時に、虚栄心を捨てることでもあることが解る。　その次は、自分の住居である。ここでは、冬のアメリカの北部のように住居を密閉することはなくて、私は貝殻も同様の、屋根と壁だけの家に住んでいる。暖房も、電話も、問題にするほどの下水も、湯を沸かす設備もない。あるのは石油焜炉が一つだけで、それで器具が故障を起すということはあり得ない。絨毯もないのである。初め来た時はあったが、これは巻いてしまって、砂を掃くのには床に何も敷いてないほうがいい。しかしここでは、無闇に掃除をするということもない。埃というものが余り気にならなくなって、整頓や清潔ということについて私が持っている清教徒的な良心もどこかへ行ってしまった。そのような良心というものも、物質的な重荷の一種なのだろうか。カーテンもこの家にはない。外から見られないでいるのには、家の回りに生えている松だけで十分でそれに私は窓をいつも開け放しにしておきたいし、雨が振り込んでも構わない。私はいろいろなことに就いて、今までのように気を遣わなくなっている。古くて色が剥げた、洗濯が利く着物を着ているのをなんとも思わなくて、人がそれを見てどう考えるかということも苦にならない。自尊心というものに悩まされなくなったのである。家具もなるべく少なくして、必要なものはほんの少ししかない。そして私はこの貝殻に過ぎない私の家に、私が本当に何も隠さずに話せる友達だけを呼ぶことにする。私は交際上の偽善ということも捨て始めているのである。そしてそれでどれほど私の気が楽になるだろう。私は、生きて行く上で一番疲れることの一つは、体面を繕うことだということを知っている。それだから、社交というものがあれほど私たちを疲れさせるので、それは私たちが仮面を被っているからなのである。そして今、私はその仮面を捨てたのである。　ここにいると、アメリカ北部では冬になくてはならないと思っていたいろいろなものがなくても、少しも不自由しないで暮らせることが解る。そしてこれを書きながら、ドイツの捕虜収容所で三年間を過ごしたフランスの或る友達が私に同じようなことを言ったのを思い出して、そこに見られる生活の違いが余りにも大きいのに不意を打たれた感じにならざるを得ない。その友達によれば、収容所では勿論、碌に食べるものはなくて、ときにはひどい目にあわされ、行動の自由も殆どなかったが、それにも拘らず、そこでの生活がどんなに大きな精神上の自由と平和を与えるものかということを教えたというのである。私はそれに就いて、今日、アメリカに住んでいるわたしたちには他のどこの国にいる人たちにも増して、簡易な生活と複雑な生活のいずれかを選ぶ。しかし私のように偶然に何日間か、そういう簡易な生活をすることになると、同時に、それが私たちをどんなに落ち着いた気分にさせるものかということも発見する。　　それは、余り美しい生活とは言えないのではないかと思うものがあるかも知れない。私たちは安楽を願う心や虚栄心からだけでなしに、美しさも求めていろいろなものを手に入れるのである。それならば、貝殻も同様の私の家は醜いだろうか。そんなことはなくて、私の家は美しいのである。そこには殆ど何も置いてないが、その中を風と日光と松の木の匂いが通り抜ける。屋根の、荒削りのままになっている梁には蜘蛛の巣が張り巡らされていて、私はそれを見上げて初めて蜘蛛の巣は美しいものだと思う。それは白髪が中年の女の顔に寄った皺をぼかすのと同じ具合に、梁のごつごつとした線を和らげる。私はもう白髪を抜こうともしなければ、蜘蛛の巣を払いもしない。壁は、初めのうちは、確かに殺風景な感じがした。がらんとしていて、四方をこの壁に囲まれいると窮屈になり、私は絵を掛けるとか、窓を作るとかして壁に変化を与えたくなった。それで私は浜辺から風と砂で繻子のような肌に磨きあげられた流れ木を引き摺って来て、その他に、柔らかな葉の先が赤くなっている蔦があった。それから日光にさらされて真っ白になった大袖貝の残骸も拾って来て、その奇妙に凹んだ形はどこか抽象派の彫刻に似ていた。私はそういうものを壁に打ち付けたり、部屋の隅に立て掛けたりして、それで今ではもう何も文句を言うことはない。外が眺めたければ窓がひとつあって、そこから私の考えはいつでも部屋の中から飛び立つことができる。　私はこれだけで十分に満足している。私がものを書く机は台所用のものでその上に吸取紙とインクの瓶が置いてあり、文鎮の代わりに雲丹の殻が一つ、ペン置きには　おおの貝を使って、大袖貝の桃色をした端が折れたのを時々いじくり、他にもものを考える材料に貝殻が幾つか並べてある。　私はこの貝殻に似た家が好きで、これを私の家族がいるところまで持って帰っていつまでもこの中に住みたいと思う。しかしそれはできない相談で、この家に夫と五人の子供と、それから日常生活に必要な器具や家具はとても入らない。私はこの小さな　ほら貝しか持って帰れなくて、私はこれをコネティカットの家でも机の上に置き、簡易な生活の理想を忘れずにいて、私がここの浜辺で始めたことを続けるための励みにしようと思う。どれだけ多くのものでではなくて、どれだけ少ないものでやっていけるかということをいつも心掛け、私の生活にまた一つ何か、例えば何か一つの仕事を加えたくなった時に、それは必要だろうかと自問するために、である。外面的な生活を簡易にするだけではまだ足りない。外側は外側に過ぎないのだが、それでも私はそこから始めようと思う。私は一つの貝殻の外側を、そしてまた私の生活の、－つまりその殻を見ているのである。完全な答えというものはそこには求められなくて、これは単に一つの方法、恩寵とともにある状態に辿り着くための一つの道でしかない。本当の答えはいつも中に隠されていることを私は知っている。しかし外側も手掛りになって、中の答えを探り当てるのに役立つ。そして私たちは　やどかりと同様に、自由に貝殻を換えることができるのである。　私は　ほら貝を机の上に戻す。私がそれを見ている間に、私の考えは中へ、中へと進む一つの螺旋状の階段を昇り始めたのである。

2007.07.19

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～海からの贈物・ほら貝 2～

　なぜなら、今日のアメリカでの生活は段々範囲が広くなって行く接触と伝達を基礎にでき上がっていて、それは家族生活だけでなしに、新聞や、雑誌や、ラジオの番組や、政治運動や、慈善団体の呼び掛けなどという社会的な、また文化的な機関を通して市民に対してなされる各種の共同生活上の、それからまた国家的な、そしてまた国際的な要求を意味しているからである。私はそのことを考えただけでも眩いがする。私たち、アメリカの女はなんという芸当をやってその日その日を過ごしていることだろう。曲馬団の軽業師も私たちに比べればものの数ではなくて、私たちは毎日、本や、乳母車や、日傘や、台所の椅子を頭に載せて綱渡りをしている。それだけに注意しなければならない　これは少しも簡易な生活ではなくて、その反対の、私たちよりも賢明な人たちが戒めている煩雑な生活である。それは私たちを統一にではなくて分裂に導き、恩寵を授ける代わりに私たちの魂を死なせる。そしてこれは私自身の生活に就いて本当であるだけでなくて、それが何百万というアメリカの女が送っている生活なのだと思わざるを得ない。私は殊にアメリカということを強調するが、それは今日ではそういう生活を自分のに選ぶことがいわば、アメリカの女の特権になっているからである。アメリカを除いた文明の世界の非常に広い地域にわたって、今日の女は戦争や、貧困や、それまで住んでいた世界の崩壊や、単に生きて行くための努力だけで、時間的にも空間的にももっと狭い世界の中に追い込まれ、家庭生活や、生存ということそのものから直接に生じる問題と取り組むので手一杯なのである。しかしアメリカの女だけは、それよりもっと広い範囲の生活を選ぶ自由をまだ今のところは与えられていると言える。この羨むべき、そしてまた危なっかしい地位をアメリカの女がいつまで保てるかは解らない。しかし現在のそういうアメリカの女の地位は、それにかえられている経済的な、或いは国家的な、或いはまた、女であるからという制約を遥かに越えた重要な意味を持っている。なぜなら、この生活が煩雑であるという問題はアメリカの女だけでなくて、アメリカの男も直面しているものだからである。そしてこれはアメリカ人にとって問題であるのに止まらずに、現代文明そのものに課された問題でもあって、それはアメリカ人の生活が今日では世界の他の国々に住む多くの人たちによってひとつの理想にされているからである。また最後に、これは現在の文明に限られたことではなくて、ただそれが極端な形を取っているだけのことであり、この弊害は実際には常に人類を脅かしてきた。プロティノスは既に三世紀に、煩雑な生活をすることの危険を説いている。しかしながら、これは殊に、また本質的に女の問題であって、それは分散、或いは気が散るということが今までも、そして恐らくこれからも、女の生活から切り離せないものだからである。　それは、女であるということが、丁度、車の輪のように、中心から四方八方に向かっている義務や関心を持つことだからである。私たち、女の生活は必然的に円形をなしている。私たちは夫とか、子供とか、蜘蛛の巣も同様に、どこから吹いて来る風にも、どこから来る呼び掛けにも敏感な状態で自分をいうものを拡げている。そしてそれならば、そういう相反した方向に働く幾つもの力の作用にさらされて、平衡を保っているということが私たちにはどんな困難なことだろうか。またそれにも拘らず、それは私たちにとってどんなに大切なことだろうか。宗教生活で常に説かれる不動ということは、私たちにはどんなに得難くて、そしてまた、なんと必要だろうか。瞑想家や、芸術家や、聖者にとっての理想である内的な平静、また曇らない眼というものは、私たちにいかに望ましくて、そしてそれは苦痛であるとともに或る滑稽味を私に覚えさせるものでもあるのだが、なぜ、女で聖者だった人たちが稀にしか結婚しなかったかを理解する。それは私が初め考えていたように、禁欲とか、子供とかいうこととは本質的には関係がなくて、何よりもこの気が散るということを避けるためだった。子供を生んで育て、食べさせて教育し、一軒の家を持つということが意味する無数のことに頭を使い、いろいろな人間と付き合って旨く舵を取るという、大概の女ならばすることが芸術家、思索家、或いは聖者の生活には適していない。それで問題は、女と職業、女と家庭、女と独立というようなことではなくて、もっと根本的に、生活が何かと気を散らさずにはおかない中でどうすれば自分自身であることを失わずにいられるか、車の輪にどれだけの圧力が掛かって軸が割れそうになっても、どうすればそれに負けずにいられるかということなのである。　そしてそれに対して、どういう答えがあるだろうか。直ぐに思い付く答、また完全な答えというものはなくて、私にはただ幾つかの手掛りが、浜辺で拾った貝のような手掛りが与えられているだけである。ほら貝の簡素な美しさは私に一つの答えは、そして或いは問題を解決するための第一歩は、自分の生活を簡易にして、気を散らすことの幾つかを切り捨てることなのだということを教えてくれる。しかしどうすればそれができるだろうか。今までの生活から完全に離れるという訳にはいかない。私には私なりの責任があって、それを捨てることはできない。無人島に一人で住むことも、家族に囲まれて私だけが尼さんの生活をすることもできない。またそれを私は望んでもいない。私にとっての解決は、この世を完全に捨てることにも、完全に受け入れることにもなくて、その中間のどこかで釣り合いを取り、或いは、この両極端の間を往復する一つの律動を見付けなければならないのである。孤独と接触、退避と復帰の間に吊るされた振り子になるのであって、今こうして世間を避けて一人でいる間に、世間での生活で役に立つことが何か学べるかも知れない。少なくとも、わたしは手始めにこれからの二週間、私の生活を表面上だけでも簡易にする練習をすることができる。やってみて、その結果を待つことにしよう。ここの浜辺でならば、それができる。

2007.07.19

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～海からの贈物・ほら貝 1～

　私が手に持っている貝殻の中は空である。それはかつてほら貝という蝸牛のような格好をした動物の家だったので、これが死んでから暫くは小さなやどかりの住居になり、このやどかりは、砂の上に細い蔓が伸びているのに似た跡を残して逃げて行き、私にこの貝殻を残したのである。これはそれまではやどかりの体を保護していて、私は貝殻を裏返し、その大きな入り口を見る。やどかりはそこから逃げ出したのである。貝殻を背負って歩くのが厄介になったのだろうか。なぜこの貝殻から逃げたのだろう。もっといい家が、もっといい生活の仕方があると思ったのだろうか。そう言えば、私も何週間かの休暇の間、私の生活の殻から抜け出て逃げて来たのである。　しかしやどかりが住んでいた貝殻は簡単なものであり、無駄なものは何もなくてそして美しい。大きさは私の親指くらいしかないが、その構造は細部に至るまで一つの完璧な調和をなしている。形は西洋梨のように真ん中が膨らんでいて、先端に向かって穏やかに巻き上がり、色は鈍い金色で、海の塩が付いている所が白くなっている。どの渦巻もどの突起も、卵の殻のように華奢な感じがするその表面を蔽っている模様のどの部分も、この貝殻が今できたばかりかと思われるほどである。これが、やどかりが住んでいた時に昇り降りした螺旋状の階段の外側で、幾ら眺めても飽きるということがない。　私が住んでいる貝殻である私の生活は、こんなではない。それはなんと目も当てられないものになっていることだろうか。苔が生し、寄生した藤壺でごつごつしてそれが本当はどんな格好をしているのかさえも解らなくなった。しかしこれも初めはちゃんとした格好をしていたはずで、私の頭の中ではまだそれがそのまま残っている積りである。それでは、私の生活はどんな格好をしているのだろうか。　今日の私の生活は、先ず私の家族から始まる。私には夫と、五人の子供があって、私たちはニューヨークの郊外に住んでいる。勿論、私の生活の格好はこの他にいろいろなものの影響を受けてできたので、その中には私が子供の時に育った環境、私が受けた教育や私の頭の働き方、良心の動き、それから心の要求などを数えなければならない。私は夫や子供たちに何かを与えるとともに私も向こうから何かを与えられ、友達や私が住んでいる社会とものを分け合い、それから女、また文筆家、そしてまた市民として人間の世界に対して私が負わされている義務を果たしたい。　しかし私は何よりも先に、－こういう他の望みもやはりそこを目指しているという意味で、－私自身と調和した状態でいたい。私は今言ったような義務や仕事に私の最善を尽くすために、ものをはっきり見て、邪念に悩まされず、私の生活の中心に或るしっかりした軸があることを望んでいる。要するに、-聖者たちの言葉を借りるならば、-私はなるべく「恩寵とともに」ある状態で生きて行きたいのである。私はこの言葉を厳密にその神学上の意味に使っているのではなくて、本質的には精神的なものであると同時に、外面的な調和にそのまま変わり得る内的な調和を、この言葉で言い表したいのである。私は或るいはプラトンの『パイドロス』に出て来る、「外面的な人間が内面的な人間と一つになることを」というソクラテスの祈りと同じものを求めているのかもしれない。私はそういう形で恩寵の状態に達して、神の心に適うように人に与え、仕事をしたいと思う。　この定義は曖昧であるが、人によって使う言葉は違っても、多くのものが自分の生活の或る時期では「恩寵とともに」あり、別な時期では「恩寵を失った」ように感じるというのは本当ではないのだろうか。「恩寵とともに」ある幸福な状態では、どんなことでも直ぐに片付いて、なにか自分が大きな波に乗っている気がするのに、その反対の状態では、靴の紐を結ぶのも一苦労なのである。尤も、恩寵の状態にあるとないとに拘らず、私たちの生活の大きな部分が靴の紐を結んだりすることの技術を習得するのに変わりはない。しかし生活するということにも技術があって、恩寵を求めるのにも技術があるとさえいえる。そしてそういう技術を習得することもできる。私は或る程度までは自分自身で経験したことや、他の多くの人たちが示してくれた手本や、同じものを求めていた無数の人々が残した著書によって、或る種の環境、それから生活の仕方、また行いは、他の種類のものよりもそういう内的な、及び外面的な調和を得るのに適していることを知った。幾つかの方法が確かにあって、自分の生活を簡易にすることがその一つである。　私は簡易な生活を望み、やどかりのように何でもなく運んで行ける殻の中に住みたい。しかしそれは私にはできないことなので、私の生活は簡易であることを目指すのに向いてない。私の夫も、五人の子供も、この世で銘々の地位を得て生きて行かなければならなくて、私が選んだ妻、及び母としての生活は凡そいろいろな面倒なことで満たされている。それは郊外にある一軒の家と、次には、我々多くのものにとっては全然ないか、或るいは殆どないのに近い手伝いの問題、でなければ、家事に追われて何もできないということを含んでいる。それは食べものや住居の問題、料理や、家計簿や、買いものや、請求書やなんとかして請求書を償わせることを含んでいる。またそれは買いものをする店の人たちだけでなくて、各種の現代的な「簡易化」の設備がしてある（例えば、電気、下水、電気冷蔵庫、ガス・ストーブ、石油焜炉、皿洗い器、ラジオ、自動車、及びその他のいろいろな手間を省く道具がある）私たちの家で不自由しないで暮らすのに必要な大勢の専門家との接触を意味している。また家族の健康ということもあって、医者や、歯医者や、診察の時間や、薬や、肝油や、ビタミンや、薬屋まで出掛けて行くことがその中に入る。また精神的な、或いは知的な、或いはまた肉体的な教育の面では学校や、学校での集会や、自動車の駐車場や、バスケット・ボール、或いは管弦楽団の練習や、個人教授や、キャンプや、キャンプ生活に必要な道具や、輸送の問題がある。それから衣類のこと、またそのための買いもの、洗濯屋、洗濯、繕い、スカートを長くしたり、ボタンを付けたり、或いは自分の代わりにそれをやってくれる人を見付けるということもある。それからわたしの夫にも、子供たちにも、また私自身にも友達があって、友達が集まるのには、手紙や、招待状や、電話や、送り迎えのことで絶えず頭を使っていなければならない。

2007.07.19

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～海からの贈物・浜辺～

　浜辺は本を読んだり、ものを書いたり、考えたりするのにいい場所ではない。私は前からの経験でそのことを知っているはずだった。温か過ぎるし、湿気がありすぎて、本当に頭を働かせたり、精神の飛躍を試みたりするのには心地がよ過ぎる。しかし何度繰り返しても同じことで、やはり浜辺へは禿げちょろの藁の籠に本や、紙や、もうずっと前に返事を書くはずだった手紙や、削りたての鉛筆や、しなければならないことの表などを一杯詰めて、張りきって出掛けて行く。そして本は読まれず、鉛筆は折れて、紙は雲一つない空と同じ状態のままになっている。読みもしなけらば、書きもせず、ものを考えさえしない。－或いは少なくとも、初めのうちは、である。　初めのうちは、自分の疲れた体が凡てで、航海に出て船のデッキ・チェアに腰を降ろしたときと同様に、何もする気が起こらない。頭を動かしたり、予定どおりに仕事をしたりする積りになる毎に、海岸の原始的な律動の中に押し戻される。寄せて来て砕ける波や、松林を吹き抜ける風や、鷺が砂丘の上をゆっくり羽ばたきしながら飛んで行くのが都会や、時間表や、予定表の気違い染みたざわめきを消して、自分もその魔術に掛り、気抜けがして、ただそこに横になったままである。つまり、その自分が横になっている、海のために平らにされた浜辺と一つになるので、浜辺も同様にどこまでも拡がっている空っぽなものに変わり、今日の波が昨日の跡の凡てを洗い去る。　そして二週間目の或る朝、頭が漸く目覚めて、また働き始める。都会でも同じ形でではないが、浜辺の生活なりにである。それは浜辺に砕ける波とともに漂ったり、戯れたり、静かに巻き上がったりし始める。頭に起きたこういう無意識の波が、意識の白い、滑らかな砂の上に偶然にどんな宝を、どんなに見事に磨き立てられた小石を、或いは海の底にあるどんな珍しい貝を投げ出すか解らない。ほら貝、つめた貝、或いはたこぶねさえもが打ち上げられるかも知れない。　しかしそれをこっちから探そうとしてはならないし、ましてそれが欲しさに砂を掘り返したりすることは許されない。海の底を網で漁るようなことをするのはここでは禁物で、そういうやり方で目的を達することはできない。海はもの欲しげなものや、欲張りや、焦っているものには何も与えなくて、地面を掘りくり返して宝物を探すというのはせっかちであり、欲張りであるのみならず、信仰がないことを示す。忍耐が第一であることを海は我々に教える。忍耐と信仰である。我々は海からの贈り物を待ちながら、浜辺も同様に空虚になってそこに横たわっていなければならない。

2007.07.19

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～海からの贈物・序～アン・リンド・バーグ

　ここに書いたのは、私自身の生活のあり方、またその私自身の生活や、仕事や、付き合いの釣り合いの取り方に就いて考えてみるために始めたものである。そして私はものを考える時は鉛筆を手に持っていたほうがいいので、いつの間にか書き出した。そんなふうにして、私の考えが紙の上で形を取り始めたのであるが、始めのうちは、私は自分が経験したことが他の人のとは違っているという気がしていた（私たちは皆そういう感じを持っているのだろうか）。というのは、私は或る意味では他の人たちよりも自由な、そしてまた或る意味ではもっとずっと不自由な境遇に置かれていたからである。　それに私は、女というものが皆新しい生活を求めたり、自分ひとりでものを考える場所を欲しがっている訳ではなくて、多くは自分の現在の生活で満足しているのだとも思った。そしてその人たちが送っている生活から受ける印象では、非常に旨く、私などよりもずっと旨くやっているという感じがした。私はそういう人たちが何の滞りもない日々を過ごしているのを見て、羨ましく思いもし、感嘆もした。この人たちにとって問題などというものはなくて、或いはあったにしても、それはとっくの昔に解決されているのに違いなかった。そんな次第だったから、私は自分が考えているようなことは私自身にしか価値も興味もないものと決めた。しかし私は書きながら、他のいろいろな女の人。－年とった人や、若い人や、そして生活の仕方や経験の点でも皆違っていて、自活しているのや、職業婦人になりたいのや、妻、また母として忙しい暮らしをしているのや、もっと余裕があるのや、－そういういろいろな人と話をしてみて、私の考え方が決して私だけのものではないことが解った。その形式や環境は違っていても、多くの女が、そして女だけでなく男も、本質的には私と同じ問題と取り組んでいて、それにはどういう解決があるかに就いて一緒に話もし、考えたがってもいるのだった。また時計の針のように正確に歯車が回っているとしか思えない生活をしている人たちの中にも、もっと豊かな休止がある律動を、またもっと自分たちの個人的な要求に適った生き方を、そしてまた、他人、及び自分自身に対してもっと新しい、有意義な関係に立つことを望んでいる点では、私と変わらないものが少なくなかった。そういう訳で、いろいろな女のや男の人たちの話や、議論や、告白から得た材料が以下の幾つかの文章に加えられていくうちに、それはもう私だけの個人的な話ではなくなり、私はこれを、そこに書いてあることの多くを私と分け合い、またそれを暗示してくれた人たちにお返しすることにした。それで私はここに、私と同じ線に沿ってものを考えている人たちに対する感謝と友情を添えて、海から受け取ったものを海に返す。

2007.07.19

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〔別れる原因は～～〕　〔夫婦の真の絆とは？〕　宇野千代エッセイ二つ　

～別れる原因は相手でなく自分の方でつくっているものである～　私を一番苦しめたことは、あの人の心が、私から去ったことではありません。あの人の心が私から去る前に、なぜ、あの人を捨てなかったか、ということでした。男の女の間を繋いでいるのは愛でなく、自尊心なのかも分からないのです。　加代子は負けだった。愛情のない男女の間には、ただ勝ちと負けだけがあった。加代子はこの敗北の意識が、未練なのだと知っていた。（馬鹿だねえ、お前は、－別れただけ儲けものじゃあないか）そう思ってみても諦めきれぬものが胸の中一ぱいに詰まっていた。　憎み、憎み、憎む、そういう男女の間を繋いでいるものは、愛情の仮面を冠った憎悪だけだ。何事もほどほどにすることである。男の機嫌をとり過ぎて、男の気持ちをとり逃がすとは、愚の骨頂ではないだろうか。　人間という動物は、何事にも飽きるものである、と言うことをお忘れなく。　人の不運な恋をいたわってみせることは決して好いことではありません。真の友達に対しては残酷になりたい、と私はそんなことを思ったのでした。　他人の生活に打たれるのは、自分も同じような運命の近くまで知らぬ間に来ているせいではあるまいか。いまこそ私は、よき良人に愛せられ、よき家の中にうまうまと暮らしている。それは如何いうことなのであろう。愛されていると言うことは、いま既にそのうまさの破れつつあると言うことではないか。（そうだ。人はいつも、運命のもう一つの側であるその儚さにも馴れねばならぬ）「結婚生活の危機」という原因が、みな相手方にあると思う。相手さえ変わったら、こうはならないはずだと思う。　ところが、四回も結婚して見ると、危機は相手方にある、のではないことが分かってくる。コツン、とショートツする場所は、AもBもCもDも、みな同じ場所だからである。　こっちが同じ人間なのだから、コツンと当たるコブもやっぱり同じである。同じコブのところへ来ると、いくら相手が違っても必ず同じようにコツンと来る。　こっちのコブが治らない限り、いつでも同じ場所で衝突する。危機はいつでもこっち側にある、ということが分かって来る。　四回も結婚して、それが分かるというのだからバカは話である。男に捨てられた女は、自分が捨てられるほどの女だったとは、決して認めない。他にはっきりとした理由があって、それで捨てられたのだと思いたい。未練の感情くらい、人を愚かに、そして弱々しくさせるものはない。コブ・・・自分のコブ・・・心当たりのない人はいなぃであらぅ・・・・なはぁ・・・～夫婦の真の絆とは？～　或るときのことであった。必要があって私は、宮田文子と宮田耕三夫妻の間の話を調べたことがあったが、或る点では二人の生活をよく知っていた筈であったのに、調べるにつれて、その間の緊密な絆とも言うべきものを屡々発見して、感動したものであった。最後に文子が、帝国ホテルの自室で倒れ、翌日病院で死去したとき、当時ベルギーのブラッセルにいた夫君の宮田耕三が、ブラッセルから東京の病院へ駆けつけ、文子の小さな体を抱き上げて号泣した。　私は男が号泣するのを初めて見て、どんなに感動したか。どこか古武士のような面影のある宮田耕三の、人前も、なり振りも構わず号泣している姿は、人々の眼に何と映ったか。その一瞬、こんなにまで一人の男に愛せられることのできた宮田文子を、私はどんなに羨ましく思ったことか。　私はこの話を或るとき、私のうちにいるきものの助手たちに話して聞かせたことがあるが、そのとき、その助手の一人がこう言ったものである。「先生、先生はいつでも、私たちにこう言って話していらしたでしょう。　私はどんなに好きな人と一緒になっても、四年か五年たつと、どう　しても別れたくなって、別れて了う。でも、世の中には、一緒になって　二十年たっても三十年たっても別れないで、添いとげている人たちも　たくさんある。それだのに私には、その辛抱が出来ないのよ、と　いつでも言ってらしたでしょう。先生には、ほんとうの夫婦の絆という　のがどう言うものか、お分かりになってはいないのです。そう言う　先生にとっては、宮田耕三さんが宮田文子さんの小さな体を抱いて　号泣したと言う話や、文子さんがカネオクレと電報を打ちさえすれば　どんなに辺鄙な島々の果てまでも、金を送ったと言う話をお聞きに　なると、とことんまで感動なさいますけど、そんなことは二十年も　三十年も一緒に暮らした夫婦の間では、至極当たり前のことで、　何も吃驚するようなことではない、と思いますけどね。この私でも、　いまこの人が（と言って、そばに座っていた彼女の良人を指して）　もし、旅先で死んだという知らせがあれば、それがどんなに遠い　ところでも、すっ飛んで行って、亡き骸にすがりつき、なり振り　構わず泣いたことでしょう。　そして、もしこの人が旅先から、カネオクレと言って来ましたら、　たとえ手元に金がなくても、かけずり廻って金を作り、送って　やったことでしょう。そんなことは、夫婦の間では、至極当たり前　のことで、格別、とり立てて言うようなことではないと思いますけど、　ね」と言って、笑って私の顔を見たものである。私は思いもかけない方角から、ずどんと一発、鉄砲を撃たれでもしたように吃驚して、この助手の顔をみた。　そう言われてみれば、全くその通りであるのに、そんなことでとり立てて感動したなぞと言って騒ぎ廻るとは、私は夫婦の絆も分からない、唐変木なのだろうか。私はそう思った一瞬、自分で自分の心持が分からなくなって、しゅん、とした気持ちになったとは、全くおかしなことである。　あなたのご主人に対する感情は、決して動物的ではない、と言い切る自信があなたにあるとき、初めて、あなたはほんとうの意味でご主人を愛している。ご主人に尽くしていると言えるのではないでしょうか。　二人ともに、お互いの行動によって心が騒ぐということがない。あんまりサバサバしているので、それでは全く他人のようかというとそうでもない。　人には言えない困ったことにも、共通の過去がある。この「共通の」ということに秘密がある。共通の過去。共通の利害。　一つ屋根に永年住んでいたお蔭で、何々と説明しないでも、セキの仕方一つで「ごキゲン」の程度が分かる。何にも言う必要のない気安さ、安堵し切った打ち明けた気持ち－それは情人にもない、夫婦の間だけに特有の気持ちである。　夫婦と言うものは、豆腐屋や魚屋の夫婦がそうであるように、同じ仕事の利害関係によって、繋がっているものなのかも知れないのです。利害関係うんぬん、夫婦の絆うんぬんの前にきものの助手の一本勝ちだと思うのはあたしだけか　にゃは

2007.07.17

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宇野千代のエッセイ

恥ずかしながら、この年になってはじめて読んだもっと早く知り合えればよかった。ポジティブシンキングの女王みたぃな素敵な女性ぢゃなぃか♪♪♪　【行動が思考を引き出す】～頭で考えるだけのことは、何にもしないのと同じことである。　私達は頭で考えるのではなく、手で考えるのである。　手を動かすことによって、考えるのである。　手を素早く動かすことが、そのまま、頭を動かすことになる。　どんなことをするのでも、先ず頭が、その、することを伝達する。　その伝達が、間、髪を容れないほど、素早いのは、手が、頭の伝達を、　神業のように素早く受け取るからである。　私達は、先ず、手を動かすのかと思うほど、頭の伝達を素早く受け取る。　頭の動きというものは省略されているのかと思うほど、　手が、手だけが、素早く動くのである。　手が動かないものは何もない。　私もときどき、頭の中だけで、大傑作を思いつくことがあるが、　それは手が考えたのではないので、さて、書こうと思うと、　何であったか、まるで思い出せない。　人間の考えることは、その人の行動によって引き出されることが多い。で、はじまるこのエッセイ☆以下、見るがままに、おぉ　ふぅん　へぇ。な抜粋～おかしな言い方ですけれど、あの時は思わずそうした、　考える隙間がなかったと思うほど速い、速力のある行動　ほど、「生きていた」と言う感覚が強いのです。　悪かったかも知れない、しかし後悔はみじんもしない、　と言う感覚です。　人間の考えていることは、いつでも、変転極まりのない　ものです。あなたは私のことを、いつでも思ったらとことん　までやって了う、自由気ままな人生を送ってきたように、　考えておいでになるようですが、その私でも、或るときは　立ち停まって、行き先を考えたことだってたびたびありました。　ただ、私の場合は、その考えている間がとても素早いのです。　まるで、考えたことなぞなかったように、素早いのです。　自分から進んでその中に這入っていくことによって、　私は傷つかないことを覚えた。～何事をするのにも、それをするのが好き、と言う振りをすることである。　それは、単なるまねでもいい。すると、この世の中に、嫌いなことも、　また嫌いな人もなくなる。このことは、決して偽善ではない。　自分自身を救う最上の方法である。～私は思うのですが、あなたはあなたの父母に関する考えを、　ちょっと間違えているのではないのでしょうか。　子供の頃から、しばしば学校で教わって来た　「父母の恩は海よりも深く、山よりも高し」という諺を、　もう忘れて了ったのではないでしょうか。父母の恩は、　と言うのを変えて、父母の愛は、とした方が、分かり易い　かもしれませんね。父母の愛は宏大無辺のもので、あなた　が、いま、ほんのちょっとした、父母の悲しむような行為　をしたくらいのことで傷つくような、そんな小っぽけなもの　ではない、と私は思います。　愛とは借金のようなものなのか。　ちょうど享けただけの分量を返すのが礼儀なのか。　どこの肉親でも寄り集まると決まってする話題はこれだ。　孤独な何かのアンチテーゼである。　子供たちにとっては、悲劇は、大人がそう教えるまでは遣って来ない。～よく聞くことだけれど、「私の方だけは、決して浮気はしないのだから、　彼には決して浮気はさせない」と言う人がある。　私はこういう言葉を聞くたびに、なんだかわからない悲しい気持ちになる。　私はこういう人に対して、ごく自然に感情の動きに耳を傾けてごらんなさい、　と言いたい気持ちになる。そして出来ることなら、ちょっとだけ、浮気を　させてあげたい。　浮気をするということは決して好いことではない。　しかし、悲しいことに私は浮気を一度もしないと断言する人には、相手の　気持ちがわからない。こういうときにはこういう気持ちになる、ということ　がわからない。　浮気という決して好いことではないことをして見て、初めて人の気持ちが　分かる。ああいうときにはああいう気持ちになる、という恋愛のコースが　分かる。曲がり角も分かるし、行き着くところも分かる。　泣いたり騒いだりして、やっぱりこっちへ戻ってくる帰り道まで分かって来る　（T_T）　見られてたのかな・・・　嬉しいこともあるけれど、げっそりしてつまらなぃなァ、と思うこともあると　いうことが分かって来る。その分かって来ることが、悲しいことに、自分も　浮気をして見ないと分からないのだから、困ったものである。　悪いことも出来る人が、人の気持ちがよく分かる。　私は決して浮気しない、といばって言う人には、人の気持ちはわからない。～面白いことがある。この自然治癒力も、みな、自分の気持ちによって、　或るいはその力が強くなったり、全く失くなったりする。自分の気持ちと　いうのは自分の心にかける暗示のことで、この病気は治る、と思えば自然　治癒力は強く働くし、この病気はとても治らない、と思えばその力は弱く　なるか、全く失くなるかするものである。　自分の心にかける暗示。　これくらい強く、また他愛もなく、困ったものはないのである。　人間は誰でも、自分で自分に言った言葉で暗示を受けるものです。　デブだデブだと言っているからデブになるのです。　そんなことなぞ考えもしないで、平気でいると、決してデブにはなりません。～私は今日も相変わらず、料理をつくるために、台所に立っています。　私にとっては、料理を作るその過程が、とても愉しいからなのです。　しきたりや形式にとらわれないで、自分流の料理を発明することに、　生き甲斐を感じている、とでも言うのでしょうか。　一生懸命になって作っていると、必ず、旨いものが出来るのです。　面白いことですが、料理というのは、もう、これで好い、と言うような　到達点がありません。やればやるだけ、奥が深いものではないでしょうか。～私は人に訊かれると、何でも安いものが好きなんですよ、と答える。　安いものの中には、なかなかおいしいものが沢山あるものですよね。　温かいご飯にほうれん草の胡麻よごし、焼きたての目刺、その他、豆類　のようなものでもあれば、申し分がないですね。考えて見ると私の一生は　目刺とほうれん草とに支えられた、と言っても過言ではありません。～世間には貧乏が好きな人がいる。貧乏が性に合っていると言うのではなく、　生活が貧乏らしくないと落ち着かない人がいる。貧乏らしく見えることで　初めて安心する。その実、決して貧乏と言うほどではないのに、貧乏らしい　諸条件が完備している中で、つまり貧乏という形態に囲繞されて、いかにも　お気にいったような顔をして、安心して暮らしている。　それと全く同じように、悲劇が好きな人もいる。　生活が悲劇的でないと気に入らない。人の眼に、あの人くらい可哀そうな人　はいない、と思われたいのである。悲劇そのものではなく、悲劇的に見える　ことが好きなのである。　不思議に、こう言う人のところへは、ほんとうの貧乏も、ほんとうの悲劇も　寄りつかない。ほんとうの貧乏やほんとうの悲劇が寄り付くと、一番狼狽てる　のはこういう人たちだからである。神さまはちゃんと知っていらっしゃる。～物事を決めるとき、何も彼も一ぺんに決めてしまうことは、どんな人にでも　出来ることではありません。私はこんなときに、先ず、自分はどうしたいと　思っているかということを考えます。　自分がどうしたいと思っているか、これは誰にでも、さっと分かることです。　こんなことくらい、分かり易いことはありません。　家庭か、知的な仕事か、と、二つに分けて悩むことはありません。　体を動かして、こまごました家庭の仕事をするのも、一生懸命ですれば、　こんなに愉しいことはないからです。　　要はそれを愉しいこととして一生懸命でするか、いやいやでするか、と言う　違いがあるだけです。そして、それがすんだあとでは、全く別種な、知的な　仕事をするとしても、何の抵抗があるでしょうか。～どんなに大変なことでも、それが愉しいと感じられるときは、　人は疲れないものです。成功感を持てたときも同様です。～上手になるというのはひたすらに続けてすることである。　どんなことでも一生懸命やっていると、とても面白くなるものです。　好きこそものの上手なれ、と言うが、そんなことは決してない。　嫌いなことでも、辛抱して、している中に上手になる。　その証拠に、私は今日、この汗たらたら流れる暑い家の中に座って、　浴衣を一枚縫い上げた。　眼鏡をかけ、細い針のめどに糸を通して縫った。　最初はいやいやだったのに、だんだん面白くなった。　一枚縫い上げると、もう一枚、縫いたくなった。　上手になると言うのは、続けてすることだ。　どんなに小さなことでも、飽きることなく、仕事として続けている間には、　そのことが自分の体に定着して、ほんとうの仕事として、働けるようになる　ものである。私はいま、八十六歳になった今日でも、喜んで同じ仕事をして　働いているのである。　私は働くことがとても好きである。　

2007.07.16

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坂口安吾の〔青春論〕

青春論女の人には秘密が多い。男が何の秘密も意識せずに過ごしている同じ生活の中に女の人はいろいろの微妙な秘密を見つけだして生活しているものである。特に宇野千代さんの小説は、私小説はもとより、男の子の話だの、女流選手の話だの、老音楽婦人の話だの、語られていることのひとつひとつが、正確に掘り出されてきた宝石のような美しさで僕は愛読しているのだが、さればとて、しからば俺もこういうものを書いてやろうか、という性質のものではない。僕のあたまを逆さにふっても、こういうものは出てこない。なるほど宇野流に語られてみれば、こういう心も僕のうちにあることが否定できぬが、僕の生活がそういうものを軌道にしてはいないのである。だが、僕は今、文学論を述べることが主眼ではない。このような微妙な心、秘密な匂いをひとつひとつ意識しながら生活している女の人にとっては、一時間一時間が抱きしめたいようにたいせつであろうと僕は思う。自分の身体のどんな小さなもの、一本の髪の毛でも眉毛でも、僕らにわからぬ「いのち」が女の人には感じられるのではあるまいか。まして容貌の衰えについての悲哀というようなものは、同じものが男の生活にあるにしても、男女のあり方にははなはだ大きな隔たりがあると思われる。宇野さんの小説の何か手紙だったかの中に　「女がひとりで眠るということの侘しさが、お分かりでしょうか」　という意味の一行があったはずだが、たいせつな一時間一時間を抱きしめている女の人が、ひとりということにどのような痛烈な呪いをいだいているか、とにかく僕にも見当はつく。～中略～だから、女の人にとっては、失われた時間というものも、生理に根ざした深さを持っているかに思われ、その絢爛たる開花の時と凋落との怖るべき隔たりについて、すでにそれを中心にした特異な思考を本能的に所有していると考えられる。事実、同じ老年でも、女の人の老年は男に比べてより多く救われがたいものに見える。思考というものが肉体に即している女の人は、そのだいじの肉体が凋落しては万事休すに違いない。女の青春は美しい。その開花は目覚しい。女の一生がすべて秘密となってその中に閉じ込められている。だから、この点だけから言うと、女の人は人間よりも、もっと動物的なものだというふうにいえないこともなさそうだ。実際、女の人は、人生のジャングルや、ジャングルの中の迷路や敵や湧き出る泉やそういうものに男の想像を絶した美しいイメージを与える手段を持っている。もし理智というものを取り去って、女をその本来の肉体に即した思考だけに限定するならば、女の世界には、ただ亡国だけしかあり得ない。女は貞操を失うとき、その祖国を失ってしまう。かくのごとく、その肉体は絶対で、その青春もまた、絶対なのである。どうも、しかし、女一般だの男一般というような話になると、たちまち僕の舌は廻らなくなってトンチンカンになってしまうから、この辺で、切り上げて、僕はやっぱり僕流に自分一人のことだけしゃべることにしよう。ただ、さっきの話のちょっとした結論だけ書き加えておくと、女の人は自分自身に関するかぎり、生活の一時間一時間を男に比べてはるかに自覚的に生きている。非常にはっきりとした自分自身を心棒にした考え方を持っていて、この観点から言うかぎりは、男に比べてはるかに　「生活している」　と言わなければなるまいと思う。～昨日の悪妻論で　中略したところの抜粋～先日、本の広告を見ていたら、詩人の恋文を、二人が恋しながら、肉体関係のなかったゆえに神聖な恋だと書かれていた。おかしな神聖があるものだ。精神の恋が清らかだなどとはインチキでゼスス様もおっしゃるとおり行きすぎの人妻に目をくれても姦淫に変わりはない。人間はみんな姦淫をおかしており、みんなインヘルノへ落ちるものにきまっている。地獄の発見というものも、これまたひとつの近代の発見、地獄の火を花さかしめよ、地獄において人生を生きよ、ここにおいて必要なものは、本能よりも知性だ。いわゆる良妻というものは、知性なき存在で、知性あるところ、女は必ず悪妻となる。知性はいわば人間への省察であるが、かかる省察のあるところ、思いやり、いたわりも大きくまた深くなるかもしれぬが、同時に衝突の深度が人間性の底において行われ、ぬきさしならぬものとなる。人間性の省察は、夫婦の関係においては、いわば鬼の目のごときもので、夫婦はいわば、弱点、欠点を知り合い、むしろ欠点において関係や対立を深めるようなものである。その対立はぬきさしならぬものとなり、憎しみは深まり、安き心もない。知性あるところ夫婦の繋がりは、むしろ、苦痛が多く、平和は少ないものである。苦痛をさけるべきではなく、むしろ、苦痛のより大いなる、より鋭くより深いものを求める方が正しい。夫婦は愛し合うとともに憎み合うのが当然であり、かかる憎しみを怖れてはならぬ。正しく憎み合うがよく、鋭く対立するがよい。ですって♪　きママねぇさん　はふねぇ。打倒＞旦那！！　れっつふぁぃ！！（笑ま、、連休だし、連休なので本読んでました。　＞他に長い夜の時間のつぶし方を知らない本読んでたらあっとゆ間に明け方だ。。。。＞ところで、、他人事っぽぃあたしは、どちらかとゆぅと安吾目線だから（－－；　・・・・男の中に～女が一人ぃぃ　生まれた時からだったので（－－；　・・・周りの野郎にすっかり物事男目線。男思考。（－－；　・・・男論理を刷り込まれちゃってるのですね。　　　　　　　（刷り込みの教育とはこわいものです。。。）（－－；　・・・割と殿方に都合のいぃ女に成り上がってます　はぃ・・身体は女で嗜好も女ですが、考え方の思考は殿方よりです。男女間　永遠の問いかと、そして答えは性別により敵対する『女と男、どちらが大変か』　の問いですが、わたくちのばやぃは、、『そりゃもちろん、一も二もなく、殿方です。男は大変なんだぜ』　＞だってさぁがんばって稼いだ金。例えば自分の稼いだ金。　＞自分で使う権限なく、でかぃ面した嫁やガキに全部吸い取られて　＞そのうえ、邪険にされたら、あたしなら、、、、　＞『てめ！誰の金で生活してると思ってんだよっ！！』　←菊次郎ですかぃ？　＞家でくらぃ　好きに時間つかわせろっ！！　＞・・・・十中八九　　＞キレるな・・　　←元・直情短気　←女に嫌われるタイプでせぅ。女の愚痴より、殿方の愚痴のが同意できる部分が多いから　（ここまで来ると、おばちゃんぢゃなくて、おっさんですね。）殿方の愚痴は聞きますが、愚痴たらす女性は（たまに可愛らしいと思えない事もなぃけど）たぃがぃ鬱陶しいと思います。　＞愚痴たらすの好きな女の方、愚痴話がストレス解消の方　＞申し訳ありませんね♪　＞あたしにはなるべく聞かせないでくださぃまちね♪　＞そぢゃなきゃ笑い話にアレンジしてから聞かせてくだちゃぃ♪嫁の愚痴（妻・母目線）より、弟の愚痴（大黒柱・仕事に追われ、たまに冷たい目線の嫁と冷戦を続けるおのこ）の愚痴のが、たぃがぃ筋通ってるといつも思います。だから生活の愚痴満載の井戸端会議とか、主婦連の会合とかも嫌い。同意してないから相槌も打てないわけです。（たまにつまんねぇ話だらだらしてんなぁ・・早く終わんねぇかなぁ・・とか思う）あたしは外で連れの悪口は言いません。（家ん中でも言わないけどだから女だけど・・・・・結論をきっぱり言うと女々しいのが嫌いな訳です。　　←ほほほ♪あなた男らしくってよ♪ほほほ♪　　　～ところで本日台風な日～　台風で時計草もうつむぃちゃってるこってす。愛する息子とうちに篭ると・・・・ぅぅん　ストレス解消できなさそなのでお茶っぴきの美容院さんに　お金でも落として癒しの時間でも過ごしてきよっと♪

2007.07.15

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苦しみの日々　哀しみの日々

苦しみの日々哀しみの日々それはひとを少しは深くするだろうわずか五ミリくらいではあろうけれどさなかには心臓も凍結息をするのさえ難しいほどだがなんとか通り抜けたとき　初めて気づくあれはみずからを養うに足る時間であったと少しずつ　少しずつ深くなってゆけばやがては解るようになるだろう人の痛みも　柘榴のような傷口もわかったとてどうなるものでもないけれど　　　　　　　（わからないよりはいいだろう）苦しみに負けて悲しみにひしがれてとげとげのサボテンと化してしまうのはごめんである受けとめるしかない折々の小さな棘や　病でさえもはしゃぎや　浮かれのなかには自己省察の要素は皆無なのだから～茨木　のり子～　の詩もいいですよね。強い意志とナイーブな感受性によって紡ぎだされた詩集。なんて裏表紙に書いてあります♪

2007.07.14

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　　笑う能力

　　「先生　お元気ですか　　我が家の姉もそろそろ色づいてまいりました」　　　他家の姉が色づいたとて知ったことか　　手紙を受け取った教授は　　柿の書き間違いと気づくまで何秒くらいかかったか　　　「次の会にはぜひお越しください　　枯れ木も山の賑わいですから」　　おっとっと　それは老人の謙遜語で　　若者が年上の人を誘う言葉ではない　　着飾った夫人たちの集うレストランの一角　　ウェーターがうやうやしくデザートの説明　　「洋梨のババロワでございます」　　「なに　洋梨のババア？」　　若い娘がだるそうに喋っていた　　あたしねぇ　ポエムをひとつ作って　　彼に贈ったの　虫っていう題　　「あたし　蚤かダニになりたいの　　そうすれば二十四時間あなたにくっついていられる」　　はちゃめちゃな幅の広さよ　ポエムとは　　言葉の脱臼　骨折　捻挫のさま　　いとをかしくて　　深夜　ひとり声たてて笑えば　　われながら鬼気迫るものあり　　ひやりともするのだが　そんな時　　もう一人の私が耳もとで囁く　　「よろしい　　お前にはまだ笑う能力が残っている　　乏しい能力のひとつとして　　いまわのきわまで保つように」　　はィ　出来ますれば　　山笑う　　という日本語もいい　　春の微笑を通り過ぎ　　山よ　新緑どよもして　　大いに笑え！　　　気がつけば　いつのまにか　　我が膝までが笑うようになっていた

2007.05.24

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　椅りかからず

　　　　　　　　　　　　　もはや　　　できあいの思想には椅りかかりたくない　　　もはや　　　できあいの宗教には椅りかかりたくない　　　もはや　　　できあいの学問には椅りかかりたくない　　　もはや　　　いかなる権威にも椅りかかりたくはない　　　ながく生きて　　　心底学んだのはそれぐらい　　　じぶんの耳目　　　　じぶんの二本足のみで立っていて　　　なに不都合のことやある　　　椅りかかるとすれば　　　それは　　　椅子の背もたれだけ　　　　　　疎開児童も　お爺さんになりました　　　疎開児童も　お婆さんになりました　　　信じられない時の迅さ　　　飢えて　痩せて　健気だった子らが　　　乱世を生き抜くのに　せいいっぱいで　　　生んだ子らに躾をかけるのを忘れたか　　　野放図に放埓に育った二代目は　　　躾糸の意味さえ解さずにやすやすと三代目を生み　かくて　　　女の孫は　清純の美をかなぐり捨て　踏み抜き　　　男の孫は　背をまるめゴリラのように歩いている　　　佳きものへの復元力がないならば　　　それは精神文化とも呼べず　　　もし　在るのなら　　　今どのあたりで寝ほうけているのだろう～初夏の風薫る　とあるスーパー脇の広間～　(ただしちと暑い＞スーツやけんね♪)ま、午前午後Ｗ面接だったので、いちいちうち戻るのもなんだしそ・そ・そくらてすは、ども面白くない　←聖人に失礼　←古くさぃよ　（雷はゼウスが起こすんぢゃなくて、雲が起こすのは、現代ならもぅ誰でも知ってる。)つぃつぃ魔の本屋さんに行ってしまぃましたとさ＞手を出してはならなぃ禁断の新書（定価とも云う）を２冊も買ってしまぅ。茨木のり子さんという方の詩集に一目ぼれしました♪（上の２編です♪）ドトールなんかにしけこんでてもつまんなぃので初夏の風に吹かれて、読書など満喫しておりました。とさ。(￣∀￣*)　ツツジも綺麗　　　←何してんですか。これから面接なのに。

2007.05.24

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子供より親が大事、と思いたい。

子供より親が大事、と思いたい。子供のために、などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。少くとも、私の家庭においては、そうである。まさか、自分が老人になってから、子供に助けられ、世話になろうなどという図々しい虫のよい下心は、まったく持ち合わせてはいないけれども、この親は、その家庭において、常に子供たちのご機嫌ばかり伺っている。子供、といっても、私のところの子供たちは、皆まだひどく幼い。長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳である。それでも、既にそれぞれ、両親を圧倒し掛けている。父と母は、さながら子供たちの下男下女の趣きを呈しているのである。夏、家族全部三畳間に集まり、大にぎやか、大混乱の夕食をしたため、父はタオルでやたらに顔の汗を拭き、「めし食って大汗かくもげびた事、と柳多留にあったけれども、　どうも、こんなに子供たちがうるさくては、いかにお上品なお父さんといえども、汗が流れる」と、ひとりぶつぶつ不平を言い母は、一歳の次女におっぱいを含ませながら、そうして、お父さんと長女と長男のお給仕をするやら、子供たちのこぼしたものを拭くやら、拾うやら、鼻をかんでやるやら、八面六臂のすさまじい働きをして、「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるようね。いつも、せわしくお鼻を拭いていらっしゃる」父は苦笑して、「それじゃ、お前はどこだ。内股かね？」「お上品なお父さんですこと」「いや、何もお前、医学的な話じゃないか。上品も下品も無い」「私はね」と母は少しまじめな顔になり、「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」涙の谷。父は黙して、食事をつづけた。私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。それこそ「心には悩みわずらう」事の多いゆえに、「おもてには快楽」をよそわざるを得ない、とでも言おうか。いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創る事に努力する。そうして、客とわかれた後、私は疲労によろめき、お金の事、道徳の事、自殺の事を考える。いや、それは人に接する場合だけではない。小説を書く時も、それと同じである。私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する。自分では、もっとも、おいしい奉仕のつもりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も、このごろは軽薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安易、と私をさげすむ。人間が、人間に奉仕するというのは、悪い事であろうか。もったいぶって、なかなか笑わぬというのは、善い事であろうか。つまり、私は、糞真面目で興覚めな、気まずい事に堪え切れないのだ。私は、私の家庭においても、絶えず冗談を言い、薄氷を踏む思いで冗談を言い、一部の読者、批評家の想像を裏切り、私の部屋の畳は新しく、机上は整頓せられ、夫婦はいたわり、尊敬し合い、夫は妻を打った事など無いのは無論、出て行け、出て行きます、などの乱暴な口争いした事さえ一度も無かったし、父も母も負けずに子供を可愛がり、子供たちも父母に陽気によくなつく。しかし、これは外見。母が胸をあけると、涙の谷、父の寝汗も、いよいよひどく、夫婦は互いに相手の苦痛を知っているのだが、それに、さわらないように努めて、父が冗談を言えば、母も笑う。しかし、その時、涙の谷、と母に言われて父は黙し、何か冗談を言って切りかえそうと思っても、とっさにうまい言葉が浮かばず、黙しつづけると、いよいよ気まずさが積り、さすがの「通人」の父も、とうとう、まじめな顔になってしまって、「誰か、人を雇いなさい。どうしたって、そうしなければ、いけない」と、母の機嫌を損じないように、おっかなびっくり、ひとりごとのように呟く。子供が三人。父は家事には全然、無能である。蒲団さえ自分で上げない。そうして、ただもう馬鹿げた冗談ばかり言っている。配給だの、登録だの、そんな事は何も知らない。全然、宿屋住いでもしているような形。来客。饗応。仕事部屋にお弁当を持って出かけて、それっきり一週間も御帰宅にならない事もある。仕事、仕事、といつも騒いでいるけれども、一日に二、三枚くらいしかお出来にならないようである。あとは、酒。飲みすぎると、げっそり痩せてしまって寝込む。そのうえ、あちこちに若い女の友達などもある様子だ。子供・・・・・七歳の長女も、ことしの春に生れた次女も、少し風邪をひき易いけれども、まずまあ人並。しかし、四歳の長男は、痩せこけていて、まだ立てない。言葉は、アアとかダアとか言うきりで一語も話せず、また人の言葉を聞きわける事も出来ない。這って歩いていて、ウンコオシッコも教えない。それでいて、ごはんは実にたくさん食べる。けれども、いつも痩せて小さく、髪の毛も薄く、少しも成長しない。父も母も、この長男について、深く話し合うことを避ける。白痴、唖、……それを一言でも口に出して言って、二人で肯定し合うのは、あまりに悲惨だからである。母は時々、この子を固く抱きしめる。父はしばしば発作的に、この子を抱いて川に飛び込み死んでしまいたく思う。「唖の次男を斬殺す。×日正午すぎ×区×町×番地×商、何某（五三）さんは自宅六畳間で　次男何某（一八）君の頭を薪割で一撃して殺害、自分はハサミで喉を突いたが死に切れず　附近の医院に収容したが危篤、同家では最近二女某（二二）さんに養子を迎えたが、次男　が唖の上に少し頭が悪いので娘可愛さから思い余ったもの」こんな新聞の記事もまた、私にヤケ酒を飲ませるのである。ああ、ただ単に、発育がおくれているというだけの事であってくれたら！　この長男が、いまに急に成長し、父母の心配を憤り嘲笑するようになってくれたら！　夫婦は親戚にも友人にも誰にも告げず、ひそかに心でそれを念じながら、表面は何も気にしていないみたいに、長男をからかって笑っている。母も精一ぱいの努力で生きているのだろうが、父もまた、一生懸命であった。もともと、あまりたくさん書ける小説家では無いのである。極端な小心者なのである。それが公衆の面前に引き出され、へどもどしながら書いているのである。書くのがつらくて、ヤケ酒に救いを求める。ヤケ酒というのは、自分の思っていることを主張できない、もどっかしさ、いまいましさで飲む酒の事である。いつでも、自分の思っていることをハッキリ主張できるひとは、ヤケ酒なんか飲まない。（女に酒飲みの少いのは、この理由からである）私は議論をして、勝ったためしが無い。必ず負けるのである。相手の確信の強さ、自己肯定のすさまじさに圧倒せられるのである。そうして私は沈黙する。しかし、だんだん考えてみると、相手の身勝手に気がつき、ただこっちばかりが悪いのではないのが確信せられて来るのだが、いちど言い負けたくせに、またしつこく戦闘開始するのも陰惨だし、それに私には言い争いは殴り合いと同じくらいにいつまでも不快な憎しみとして残るので、怒りにふるえながらも笑い、沈黙し、それから、いろいろさまざま考え、ついヤケ酒という事になるのである。はっきり言おう。くどくどと、あちこち持ってまわった書き方をしたが、実はこの小説、夫婦喧嘩の小説なのである。「涙の谷」それが導火線であった。この夫婦は既に述べたとおり、手荒なことはもちろん、口汚く罵り合った事さえないすこぶるおとなしい一組ではあるが、しかし、それだけまた一触即発の危険におののいているところもあった。両方が無言で、相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか、出し抜けに、さあ出来ましたと札をそろえて眼前にひろげられるよな危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言って言えないところが無いでも無かった。妻のほうはとにかく、夫のほうは、たたけばたたくほど、いくらでもホコリの出そうな男なのである。「涙の谷」そう言われて、夫は、ひがんだ。しかし、言い争いは好まない。沈黙した。お前はおれに、いくぶんあてつける気持で、そう言ったのだろうが、しかし、泣いているのはお前だけでない。おれだって、お前に負けず、子供の事は考えている。自分の家庭は大事だと思っている。子供が夜中に、へんな咳一つしても、きっと眼がさめて、たまらない気持になる。もう少し、ましな家に引越して、お前や子供たちをよろこばせてあげたくてならぬが、しかし、おれには、どうしてもそこまで手が廻らないのだ。これでもう、精一ぱいなのだ。おれだって、凶暴な魔物ではない。妻子を見殺しにして平然、というような「度胸」を持ってはいないのだ。配給や登録の事だって、知らないのではない、知るひまが無いのだ。……父は、そう心の中で呟き、しかし、それを言い出す自信も無く、また、言い出して母から何か切りかえされたら、ぐうの音も出ないような気もして、「誰か、ひとを雇いなさい」と、ひとりごとみたいに、わずかに主張してみた次第なのだ。母も、いったい、無口なほうである。しかし、言うことに、いつも、つめたい自信を持っていた。（この母に限らず、どこの女も、たいていそんなものであるが）「でも、なかなか、来てくれるひともありませんから」「捜せば、きっと見つかりますよ。来てくれるひとが無いんじゃ無い、　いてくれるひとが無いんじゃないかな？」「私が、ひとを使うのが下手だとおっしゃるのですか？」「そんな、……」父はまた黙した。じつは、そう思っていたのだ。しかし、黙した。ああ、誰かひとり、雇ってくれたらいい。母が末の子を背負って、用足しに外に出かけると、父はあとの二人の子の世話を見なければならぬ。そうして、来客が毎日、きまって十人くらいずつある。「仕事部屋のほうへ、出かけたいんだけど」「これからですか？」「そう。どうしても、今夜のうちに書き上げなければならない仕事があるんだ」　それは、嘘でなかった。しかし、家の中の憂鬱から、のがれたい気もあったのである。「今夜は、私、妹のところへ行って来たいと思っているのですけど」それも、私は知っていた。妹は重態なのだ。しかし、女房が見舞いに行けば、私は子供のお守りをしていなければならぬ。「だから、ひとを雇って、……」言いかけて、私は、よした。女房の身内のひとの事に少しでも、ふれると、ひどく二人の気持がややこしくなる。生きるという事は、たいへんな事だ。あちこちから鎖がからまっていて、少しでも動くと、血が噴き出す。私は黙って立って、六畳間の机の引出しから稿料のはいっている封筒を取り出し、袂につっ込んで、それから原稿用紙と辞典を黒い風呂敷に包み、物体でないみたいに、ふわりと外に出る。もう、仕事どころではない。自殺の事ばかり考えている。そうして、酒を飲む場所へまっすぐに行く。「いらっしゃい」「飲もう。きょうはまた、ばかに綺麗な縞を、……」「わるくないでしょう？　あなたの好く縞だと思っていたの」「きょうは、夫婦喧嘩でね、陰にこもってやりきれねえんだ。飲もう。今夜は泊るぜ。だんぜん泊る」子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。桜桃が出た。私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。食べさせたら、よろこぶだろう。父が持って帰ったら、よろこぶだろう。蔓を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐き食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。

2007.05.19

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学びて時にこれを習う

【学びて時にこれを習ふ、亦た説(よろこ）ばしからずや】―勉強をして、機会あるごとに実習してみるのは、なんと嬉しいことではないか―『時』は適切な折。実習するのによい機会。先生から教わり、自分で書を読んだりして『学』ぶのは、主に知的な理解、頭での理解である。それを実際の場面に即して実習し、頭での理解を実践によって身体で覚えていく。というのである。この章から『学習』という熟語が生まれた。従って『学習』とは本来、学ぶことと復習すること　との意味。ところでさとの通う高校は技術高です。先日図書館便りみたいのを持ってきました。学校図書館・・・・バカにしたもんぢゃなぃ・・　どころかこの品揃えはなんだ・・　本好きのママとしては　よだれたらさんばかり。先日持ってきた図書館便りには、新着案内なんかも載っている。・下流志向　学ばない子供達働かない若者　・１０代からの子育てハッピーアドバイス・・・時代か？犯罪被害者　東京消防庁パーフェクトブック(誰が読む？)　ビジネスマナーの基本　ジャンル問わず充実男子のかんたん弁当。ホームベーカリーでナチュラルパン。日本の農業。とても素敵。メタボリックに噛み合せ。防ごう食中毒に『それでも好きなものだけ食べさせますか』（そぃえば調理科みたぃのもあったんだっけ。ここ）絵とき機械用語事典に　切削加工実践Q＆A　・・ふみゅ定番読み物も充実してるし漫画も置いてあります。８０１ちゃんが読めなくて　秀に聞いちゃった『となりの　やおいちゃん』なんだってそうじ力に伊東の食卓。そして読売年鑑。高校図書館、バカにするどこか、すっごぃなぁぁぁぁぁぁぁぁさすが技術高　おらたちの税金からでてるのら（しかし、充実させてくれんと困るよ中学の頃みたく　また頼んだら　さとペリカン便してくれるかなぁ・・技術高なので、この便り見て連れもよだれじゅるじゅるである。＞彼の好きなのは、車関連ね。【学びて時にこれを習ふ、亦た説(よろこ）ばしからずや】さとはまだまだ　先生から教わり、自分で本を読んだりして『学』ぶ時代。いつか誰にも必ず訪れる。『時』＞適切な折。実習するのによい機会。のために今のうちたくさんたくさん学んでおいで。(本読むだけぢゃなぃけどね）自分が自分で学んだ事を実際の場面に即して実習し、インプットした頭での理解を、実生活の実践によって身体で覚えていく。従って『学習』とは本来、学ぶことと復習すること　との意味。『学習』　秀もさともまだまだ学ぶ時代　あたしもか・・生きてる限り、これずっと学習だね。しかし、本　借りたいーーっ！！新刊本はこれから　さとに頼もぉ　　←吝嗇　新刊買えないんだもぉまだ　運んでくれるかなぁ？　愛の篭ったおべんと食べてるからだいじょぶでしょ。多分・・・・・　　　　

2007.05.09

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me の　悲劇

携帯からは・画像が見られない・リンク先に飛べないばやいが多々キリ番(キリぢゃなぃけどさ) ドル箱目押し勝ちで☆１☆１☆１☆１☆１☆が取れるかどうかがとても気になるある程度アクセス数あがったら　 ↑もちろん誰も見にくる人などいないとふんで　自分の　日々徒然日記　たまに愚痴（ぢゃなくて吼えるか？）はじめたので日々コツコツ積み立てして自分でアクセス数あげるつもりだったのであるぁ　できる事から　コツコツとぉ　５年たったらどんくらぃたまるぅぅ　である自分のページの自分のキリ番　片っ端からﾌﾟﾘﾝﾄｽｸﾘｰﾝしてキリ番.exe をつくりたかった程に（別にキリ番.docでもいんだども）あたしが脳天気かつ　自分のキリ番を楽しみにしてるのを　していたのを　誰も知らない１１１も２２２も逃した・・・　１０００も２０００も・・・そして　１００００も逃した１１１１１に逃げられたら・・・・次は１２３４５　　(゜_゜)(。_。) あたりまえです☆昼休み Yuka姐の最新サービスショットも　携帯からは見られなくてちゅまんなぃなgooなんてちぇだ(笑と　ワクワク感をだすために、自分のコメントからトピ更新したりもしてみる。毎日毎日ゲンナリする玄関にもめげず。そしてピンポン（６時過ぎて来んなっ！！）←笑ハタが　よっ♪っとゆぅので、よっ♪と返し、取り急ぎ　買い物も放り出してPCをあけてみたりもする。011163 ブログ / フォト / SNS | ブログ検索 | 口コミ【ブログ管理】・・・・・バタっ・・・そこに　ちびが取り込んだ洗濯も山盛りあるし、今にぃが風呂を洗ってもいる。さぁ・・　さぁ・・制服を着替え　灯油を入れに　２階にいって、中学生達をなぎたおしさぁ・・　さぁ・・夕飯の支度もしなくちゃいけなぃ・・・ほぉ♪　にぃが　クッキーの作り方を訊く・・・ほぉ♪　ホワイトディ　ほぉ♪　部活の後輩達に『手作りクッキーで　返してくださぃ　先輩♪』　大変やねぇ　ママもそれでいぃよ。今度の土日に一緒につくろぉ自分でつくって自分で食べるホワィトディか　ま、それもいっか。今日は連れが泊まりだから、早めに家事すませて、ひとりの夜時間楽しむとしよぉあ～～　もう６時半だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁまずは　着替えと灯油だぁぁぁ　部屋がさむいぃぃぃぃがんも煮付けよっと　今日　昼間　きママのページでおぃちちょだったんだ。豆・大豆好きなあたしは、実はがんもも大の好物冷凍室には、いつでも　コープの　ぎんなんがんも　か　枝豆がんもが常備してあるのでしたLast updated 2007.03.07 18:40:44--------------------------------------------------------------(＾∀＾)ゞいっただきま～すっ♪Last updated 2007.03.07 19:32:06--------------------------------------------------------------Re:7日の日記 me@怒涛の豆好きさん ☆小鍋だて豆腐。高野豆腐。ニラ。ネギ(庭取れ)。鮭の水煮缶。しいたけ。生姜。七味をたっぷり振って♪☆枝豆がんもの煮付けきママさんのＰへどじょ☆豆サラダキドニービーンズ。ひよこ豆。大豆。パセリ。ヒマラヤ岩塩で加えて息子メニュー　酒の肴だけだと腹にたまんなぃ（らしぃ）ので☆マカロニグラタン豆よけいだ！とちびが言う(笑　←育ち盛りにゃたんぱく質とカルシウムよ☆昨日参照煮豚味たまあぁ満腹♪連れがいないのでにぃと６chなど見ている　　　　　　　　　　　　　　　↑　　　　　今日の６ch 我が家ぢゃツボ(笑　　　　　上には上がいるもんで♪(2007.03.07 20:12:30)--------------------------------------------------------------Re:我が子が薬物依存 me☆食後の珈琲さんその時親ができる事はだってさ～にぃがそこにいるので　Ｔｖ見ながらいろいろ話すあとでトピ更新よ♪(2007.03.07 20:51:10)--------------------------------------------------------------食後に　にぃと　ピーナッツなども食べてみる　また　豆かよっ！！って突っ込んぢゃいや～ん♪♪♪

2007.03.07

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重松清の新作

家に帰ると簡単におやつをすませて、すぐに二階の部屋に入る。ランドセルを勉強机に置き、今日の宿題にかかる時間をざっと計算してから、ベッドにうつぶせに寝転んで、しばらく泣く。宿題を夕食前に終えられる時間を見計らって、ベッドから起き上がる。涙を拭いて洟をかみ、あいつらみんなバカだもんな、とつぶやいて、ティッシュと一緒に昼間をゴミ箱に放り捨てる。宿題を終えると、夕食。母親と二つ下の妹と三人－ときどき、仕事を早じまいした父親も加わる。「今日、学校どうだった？」　母親が訊く。「うん、まあ、おもしろかった」答えたあとは決まって味噌汁やスープを啜る。急に喉が渇いてしまうのだ。夕食のあとは入浴。じつはこの時間が一番ヤバいんだ、と誰かに教えてやりたい。お湯に浸かって、ふーう、と息をつき、全身の力を抜くと、むしょうに悲しくなる。泣きたくなって、死にたくなる。自分の首をタオルで軽く絞めて、一発じゃん、と確かめるときもある。風呂上りに果物を食べながらテレビを観ていると、束の間、学校のことを忘れられる。ただし、バラエティ番組のときは違う。売れない芸人をいたぶるネタの新作が披露されると、つい食い入るように観てしまう。教室でアレンジ可能なネタのときには、特に。ああ、これ、やられちゃうかもしれない。そう思ったときは、たいがい当たる。次の日にはあいつらがにやにや笑って近づいてきて、新しいネタを仕掛けてくる。バカだな。オリジナリティー、ゼロ。アタマの悪い奴は、だから嫌いだ。自分の部屋に入る。ベッドにあおむけに寝転ぶと、「明日」がじわじわと胸にのしかかってくる。明日も、また。明日は、もっと。明日からも、ずっと。何度も寝返りを打って、うああああっと、叫びたいのをこらえる。その一方で、こんなことも、思う。明日になれば、もしかしたら―。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アフリカの人も、みんなわしらと同じや。同じように欲を持って、野心を持って、守るべきものを持って負けてられへん意地があって、相手をだましたり、傷つけたり、逆にだましたり、傷つけたりしよる。嘘のうまい者もおるし、下手くそもおる。喧嘩の強い者もおるし、弱い者もおる。セコいことして世の中渡る者もおるし、正直すぎてドツボにはまった者もおる。美人もおるし、ブスもおる。（あ、これあんまり関係ないな。）それでええやん。なあ。狭～いニッポンの諸君、あんたら、自分が出会うた相手はみんな「いい奴」やないとあかん、思うてるんと違う？言うたら、友だちをどんどん増やさなあかん、いう思想やな。思想て大げさやけど。甘いなあ、それ。そんなん考えとったら、キツいやろ。「嫌な奴」に出くわしたら、どないすんねん。自分の不幸を嘆くんか？「嫌な奴」を憎むんか？どっちにしたってキツいわな。世の中には「いい奴」もおるし、「嫌な奴」もおる。それが現実や。自分は「いい奴」としか出会いとうない？アホか、ずうずうしいにもほどがあるわ。逆に言うたら、「嫌な奴」に出くわしてもそんなに落ち込むなや。なあ。丁半博打と同じや。たまたま裏目の奴と会うただけのことやないけ。～～～ムラさん、べつに「嫌な奴」に好き好んで出会いたいわけと違う。でも「いい奴」としか出会いとうないと思うほどの甘ちゃんでもない。わし、「いろんな奴」と出会いたいから、放浪を続けとるんやな。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「お父さんも、家族をいちばん大事にしてたひとだったから」「でも、ほとんど家にいなかったじゃない。　晩御飯なんて毎晩毎晩、お母さんとわたしの二人きりだったじゃない。」「…晩御飯、美味しかったでしょ。寂しかったけど、美味しかったでしょ？　それでいいのよ、お父さんは。お母さんと弥生子が家で美味しい晩御飯を食べてることが、　お父さん、嬉しかったの」なにが言いたいのか、よくわからなかった。だが、母親は自分の答えに我ながら感心したように、「美味しい晩御飯を食べさせることが幸せだったのよねえ、お父さんにとっては」と繰り返した。「そこに自分がいないんだったら、意味ないじゃない」「そうよねえ…でも、お父さんが家族を大事にするって言うとき、自分は含めてないのよねえ。　お母さんとあんたの二人だけが、家族なの。その家族のために、あんなにがんばって働いたの。　あの頃の父親って、ウチのお父さんだけじゃなくて、みんなそうだったんじゃないの？」返す言葉に詰まった。家族には自分自身が含まれていない―そんなのおかしいとは思う。間違った考え方だとも思う。それでも、その考え方は、泣きたくなるほどくっきりと、よくわかる。「お母さんもそうだった？」弥生子は訊いた。「お母さんも、家族を考えるとき、自分のことは入れてなかった？」「なんとなくね」母親はくすぐったそうに笑う。「家族のために美味しいごはんをつくろうっていうときは、　あんたとお父さんのことしか考えてなかったなぁ…　他の家のお母さんもみんなそうだったと思うけど」話が途切れた。弥生子は、もうなにも言えなくなった。へたに口を開くと、涙声になってしまいそうだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「宮崎さんのところって、まだお若いですよね」「ええ、僕が三十で、女房が二十九です。」「そんな歳でお墓を買うのって、珍しいんじゃないですか？」ですね、と宮崎は笑った。「会社でも知らないひとからはけっこう変人扱いされてますよ」と付け加える。「…なにか事情があるんですか？」「事情って？」「だから、たとえばウチなんかは、両親はまだお墓を持ってないんですけど、　父の体の具合も悪くなったんで、急いで買わなくちゃいけなかったんですけど」「まあ、ウチもね、急いでることは急いでたんですよ。あんまり時間もなさそうだし」「身内の方が病気なんですか？」立ち入ったことだったが、訊いてみた。母もそこを知りたがっているようだったし、なんとなく、宮崎も話したいのではないか、とも思った。「ええ…」宮崎はビールを啜った。「まあ、そうですね」「ご両親ですか？」―翠が訊くと、すぐに母が「まだお若いんだから、おじいちゃんやおばあちゃんじゃないの？」と横から問い直した。宮崎はビールをもう一口啜り、翠ではなく母のほうを見て、言った。「娘です」三歳になったばかりの娘のために、墓を買った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅田次郎も　重松清も、こむずかしい言葉使わないで、なんつの？日常の機敏と人の気持ちを　こりゃまたうまく文章にするんだよなぁ家族で見るホームテレビドラマちっくらわな。最後の話　笑えたな（笑～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～お父さんとお母さんはいいよね―ときどき、思う。両親はいずれまた墓の中で一緒になる事ができる。だが、翠は、晴之の墓に入れられてしまう。折り合いの悪い姑と、肝心なところをわかってくれない晴之と、それから顔も名前も知らない何人ものご先祖さまと一緒に、終わりのない長い年月を過ごす～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～こなぃだ、どっかの　甘ったれ娘が、どっかの甘っちょろ親父にこんな話をしていたよな（笑

2007.02.25

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もでら～と・かんた～びれ

昼間連れとゴロゴロしながら部屋で読んでました。なぁんとなく、このブログにぴったりと思ってブログ名替えちゃった♪もでらーと・かんた～びれ　　ぅぅんデュラス♪←あほためしに、ちびに聞いてみたら、音楽の時間にならったとつっまんなぃ訳を話してくれましたが、ちっちっちっこの本の訳は違うのよ。このブログを書いてる時の私の気分にぴったりです♪♪♪一緒に写ってるのは、今日マツキヨでたまたま見つけて、連れにプレゼントした一品(携帯灰皿よ～ん♪パンチパーマ専門店両方共、私の好きなものです。このセンスのミックスさが魅力なのだと自覚　　ばごーーんっ！！あぁ　どこかからパンチがーーーーっ！！で、ハローワークに行って検索かけてきました。・最寄り駅５分・３５歳～５０歳　　　 ←おっけ・基本給　200,000～　 ←おっけ・加入保険等条件　 ←おっけ・経理全般（建設業 ←おっけ・公共工事・大手ハウスメーカー・建設会社の下請 ←おっけ・経理財務全般　（決算業務・資金繰り・財務分析・原価管理・税務申告等・会計ソフト入力） ←おっけ・総務・労務全般（給与計算・社保雇用保険等業務他） ←おっけ・高卒以上 ←おっけ一応だけどでた・建設業経理事務士尚可 ←おっけ・パソコン必須（エクセル・ワード）←おっけ・普通自動車免許　　←× 免許持ってるけどペーパーだから申告しないおぉ、おっけばっかりだ。まるで私は使えるおんなみたぃだ。←こゆ性格なのですんませんおぉぉぉぉ　すぐ申し込んで紹介いただいてきました。自動車運転しないのも伝えてもらった。ちて、明日速攻面接です。私はいつだって　☆TAKE IT EASY＝やるだけやりゃぁ後はなんとかならぁね☆　です。連れとちびとデートでしたが、私がハローワークに閉じこもってる間にちびはガースカ寝てしまったので、BOOKOFFは無し（ちぇ～　なんか新しい“古”本ほしかったのにな）今日は、いっしょけんめい職務経歴書を仕上げてたので履歴書結局３枚書き損じる。脳血管が切れそうになるところを音楽の力で乗り越える＞次トピ私が明日の準備をしている間、連れがお好み焼きの準備をしてくれました。(話し掛けられると『気が散るーーーっ』と、最後は耳にイヤホン）←鬼嫁日記ニラやキャベツや山芋がた～くさん入ったやつ野菜が足りない気がしたけど、もちろん文句はいわない文句はいわないけど、冷蔵庫からもやしをだして炒める明日は面接だけど、酒は呑む呑む粉もんはふくらむ　はぁ食休みなのら　げふっそいえば、ハロワに、こんな張り紙がありました。～話してスッキリお気軽にどうぞ　心理カウンセリング実地中～３４歳位までの方対象～就職活動等の悩みは　うんたらかんたら？？？？？　行政ってたまに変ね。ニート対策？失業してほんとに悩んでいるのは　一番悩んでいるのは、家族抱えての中高年の世代じゃなぃのか？？？夕飯ネタ『重曹少々』　（~。 ~）b　３回続けて言ってみて♪（連れは言えませ～ん）『インカのめざめ』　今日生協で届いたじゃがいも。めずらしいとの事で買ってみたけど、まるで、サツマイモ。おいしい事はおいしいのですが、さつまいもとの料理比較ができないので（目つぶって口にいれたら誰も区別できないだろぉ我が家では、次は買わない事に決定（まぁまぁ高級品が口に合わない家族だこと。それにしても　ちび連れて出かけると『テンションが高くて困るぜ・・ふっ』　←小さな溜息　私を見て(けっ　大人振りやがってなんでーーーー、大好きな家族とでかけて　るんるん（死語）しちゃいけないのぉぉぉなんでーーーー、ママはほんとは外では　Ｃool beaty　なのよぉぉぉぉぉっと、訴えるが聞いてもらえず、ほんとなんだけどな・・そとではクールで知的な○○さんで通ってるんだけな・・・・・車の中で携帯ピポピポ　きママさんのページで連れの紹介されてちょっと嬉ちかったでふ（連れに伝えました。ありがとうございます。きママさん明日楽しみにしています♪kiss○♪）連れがいれてくれた　モカ飲みながら　次トピです♪

2007.01.23

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ご本が好き～おもしろい本あったら紹介してくだちゃぃ～

活字編です。乱読積読なので、訳わかめ。おかんが読書家。小学生の頃すでに、従軍慰安婦のなんたらとか(笑　悪魔の飽食とか、ま、読んだのは彼女の本棚にあったからで。電車の中、公園のベンチ、ひと休憩のコーヒータイム。家族がバラエティ見てる食後の居間。とにかく本開いてるのが一番落ち着くのでかなりの量読みます。頭に入ってるかは不明。好きな本は結局何回も読み返す。好きじゃないと読み返さない。たまに整理する時いるかいらないかを区別する(いらないのはBOOKOFFだぃ）そして、ずっと残り続けてる辺をまず羅列サガン＞あのピンク色のね。新潮文庫。この人が書いたのは全部持ってる。＞十数年読み返してる。J・アーヴィング＞近年最高にツボ。今回の新作：オウエンに祈りを＞で、やっとこの人が何結論づけたいのかわかりかけてきた気が＞心の救済なんだか、破滅なんだか、なし崩しなんだか、わかんないけど面白い＞家族愛にももちろん笑えて泣けるから、大好き日本の古典太宰の人間失格・斜陽とか、島崎藤村の雪国とか、坂口安吾の堕落論とか、芥川の羅生門。中勘助の銀の匙。永井荷風のぼくとうきだん。変換でないや。谷崎‐痴人の愛。そんなのがあんなぁ(本棚横目有名どころは、そのうち息子も目通すかと、捨てないで取っといてあります。漱石せんせの我輩は猫であるの出番定番土日の昼寝時(笑こないだの就職面接の時は、太宰の人間失格、電車の中で読んでました。その訳は―恥の多い人生を送って来ました。―ぱらぱらめくると　（ふみゅ　これならまだまだおらのが太宰より社会生活いけるっ！！）と、社会適応性に自信をつけさせてくれるから？（爆笑つっこみどころです。外国の古典そそ、アーヴィングも好きだけど、ディケンズもめちゃくちゃ好き(夢見がちだからオリヴァ・ツイスト。ディヴィット・コパフィールド。大いなる遺産。なんて大人になった今でもドキドキワクワク夜通し読んじゃう(話知ってるだろぉがクリスマスキャロルといい、この人のは、起承転結はっきりしてて映像向けだよね。嵐が丘とジェーン・エア　ブロンテ姉妹のこの二冊はかなり長年の愛用なのでぼろぼろカバーも無いやカポーティは、もちろんティファニーに(ヘップバーンですよ）遠い声　遠い部屋なんてのも取り置いてあるなぁデュラス(愛人☆胸がきゅっ）　も数冊。ゲーテのファウストなんてのもあります。ニーチェもあるね　（けっ気取ってらぁで　ツァラトゥストラ　←打つのが辛いスペリングショウパンハウエル（けっ気取ってらぁ）にぃんとこから戻ってきてらぁ＞自殺について哲学物を好きと自称する人を私は信用しない。ジツセイカツデノギマントウソハッピャクガウマソウデハナシガウザソウダ←笑オースティンなんてあります。古典好きですね～♪自負と偏見。エマ。説き伏せられて。は旧岩波書店なのがきつぃ＞よみづらぃロマンティックは取り揃えですよぉ。ゴロンのアンジェリク全２６巻は感動全読した後→おかんへ波乱万丈　美しくたくましいフランス革命頃のお話です。ベルバラよりよっぽど大河。なので椿姫。マノンレスコーなんかもあります（ガラじゃなぃぃ？放っといてよ。好きなんだから古典ばっかじゃありません。現代作家は目につくあたりから片っぱしからさらおうと近年苦労してます。桐野夏生の魂萌！なんかは読んだあと→おかんへ（当然の流れ島田荘司なんかも読みます。私が怖く感じない最終限度。山田詠美はずっと追ってたけど、もう飽きた＞気に入ると全さらい(飽きるまで）追ってく習性があります。最近映画化多いよね。石田衣良なんかは、読んだらすぐ、にぃに渡しちゃう＞にぃの部屋にたまる。大沢在昌は新宿鮫がつらい、完結したらまとめ読みする予定。渡辺淳一も飽きちゃった系。小野不由美の十二国記と、ハリーポッターの次巻をリアルタイムで待てる今に生まれてよかったと思うそれにしても十二国記は間長すぎ・・・長いと言えば、宮本輝の流転の海シリーズ　読むとおかんにまわすけど、そろそろ、、＞引っ張りすぎでんがな高村薫、なんかもあります。宮尾登美子も一時はまりました。浅田次郎・重松清は読み終わったらおかんにあげる(多分全部読んだ予定調和のほのぼのさと庶民さと人情が、キリキリ舞いの心に優しいはず←ふふん今はね、藤沢周平読んでるの。多分そこに１４，５冊。ナルニア国も全巻揃えたのは、ちびじゃなくて私（夢みがち指輪物語も全巻あるでよ。ガリバーは本当はあんまほのぼのしてない。＞怖いよね馬ハリーポッターはもちろんちびが全部持ってます。にぃは、音楽系だから、変なのも多いなぁ。大槻ケンヂとか三浦じゅんとか『（・。・）　これおもしろぃよぉ』　なんて持ってきてくれるけど、ざっと目を通して『若すぎて、ママにはこの感性わからんわぁ。しゅまん』なんて言って返しちゃぅ。バトルロワイヤル一時期にぃがはまっていた。うち、読む本の指定も規制もなぁんもなしなので、あたり構わずあれこれ自分で読んだ中で自分でいいと思った本を、母子でお薦めできるよな＞そんで、この本は好きだ。嫌いだ。あーだこーだ言いあえる。ま、息子達が本好きに育ったのはとりあえずよかったかもなんかこぅ面白い本ありませんかね？ホラーはダメなんだけど。最近読んだ本の中で、これ面白かったよ。暇つぶしにはいいよ。なんて本あったら教えてくださいましね♪

2007.01.18

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ご本が好き～漫画・雑誌編～

子供が大っきくなった専業主婦なんてちゅまんなぃものです…(誰も私と遊んでくんなぃ）←年幾つですか？　（・。・）　さんじゅうきゅになった。子供８時には出て、暗くなるまで帰ってきぃへんもんな。仕事行かないと暇やな。ほんと・・・（小さいお子さんお持ちのママ、今だけです。頑張ってっ！！）面接結果は、多分今日だとふんだ＞月曜の建設関連会社のCADとしてで、ご本が好きです。読書家を気取ってる訳ではありませんが、年間目通し活字量はけっこ行くと思います(漫画、雑誌含めぼぉっとTV見たり、ぼぉっと携帯メールしてたり、ぼぉっとネットサーフィンするよりはぼぉぅと本を目で追うのが好きというだけで。バックボーンはもちろん三つ子の魂です。叔父達がたくさんいた。のと工場があった。のと母が読書好きでうちに本がごろごろしてたのと。とにかく本には事欠かなかった。たぃがぃガテン系の人は、週刊雑誌が大好き。(漫画含む）工場に行くと、皆が買った漫画や雑誌が事務所のソファや寮の部屋にいっぱいいっぱい転がってる。それで親父は、読書家の(っちゅっか漫画好きの）家族のために、工場の廃品回収車となり毎週、せっせとせっせと、皆が買った週刊・隔週刊・月間・エロ問わずジャンプ・マガジン・サンデー・キング・チャンピオン・ビッグコミック系(全部週刊新潮・アサヒ芸能・漫画アクション・大人の歓楽街・エロトピアつまり分別せずに持って帰ってくるのですね。＞そしてうちの居間にもちろん分別しないまま積んどくそして積読小学校から中学校までの時代に、全ての男性雑誌は読破した＞とはいえなぃ　プレジデントとかそゆのは皆無だったから、なはっとにかくそこら辺の雑誌は毎週、毎月、毎号、＞たまに飛ぶともう大変　あの続きがーーーっ工場に忘れたぁぁぁ弟達も一緒ですがな。恋子の毎日とか好きだった。ジョージ秋山はおもろぃ：ヤクザと結婚したハワイのホテル王の娘の生活を描く。ジョージ秋山の同名漫画：検索してみた浮浪雲(私の理想の男性です♪）は段々道徳くさくなっちゃったね。作者の押し付けがましさがたまにうざぃ。ジョージ秋山も老いたか・・・俺の空シリーズとか藤子不二雄に手塚治、横山光輝-三国志は全巻読破ドジョウに顔があって、赤貝から汁が出るとこ突入とか←わかる人はわかる今もそうだけど、凌辱系の漫画は嫌い。女だからかな？何がおもろぃのかもしれず。もちろん濡れず(爆どもね。男の人はあゆ画風が好きなのかな。永遠に無くなんなぃよね(笑少年物ならアラレちゃん。ガキデカ。マカロニほうれん草。リングにかけろ。明日のジョー。湘南爆走族。書き出したらキリが無いので、少女期に読んだ本で、多少人格が形成されるのならば、少女漫画と少女雑誌が無いのが笑えるなのであの時代の少年及び青年漫画ネタなら多分全ていけます。たっちで和也が死んだ時とか、リングにかけろで剣崎君が菊ねえにKissした場面とかに心打たれたのは私だけじゃないはず。お好きな方どじょ。で、引き続き漫画は読んでます。お金が無くなったので週刊もので読んでるのはちびのジャンプと(葛飾区～両さんほんとすごっ！）と、他界センセお得意、スカィハィが昔連載してたYJ今やってるやつもいい。士道だっけ？カレーが好きなので華麗なる食卓も(触発されてスパイスフリーク星野あきは昔から好きだったんだ←グラビアもﾁｪｷする男目線熊田はよぉわからんが・・・BANANA FISHがそこに全巻ありますねぇ。なんとなく読み返したくてBOOKOFFで買った。子供達もまぁよく読みます。(漫画も活字もちびの部屋には、クロサギ全巻。ワンピース（途中挫折。　ブリーチ(ジャンプ系が好き。もちろんデスノート　プレミア版までつけて全巻。ドラゴン桜に(笑）。のだめ全巻。他にもいろんなのありますが、だいたい少年漫画ばっかりですね。ファミ通なんかも転がってますね＞どっかのセンセ(笑にぃの部屋には最終兵器彼女。僕の彼女が死んじゃった。東京大学物語。等々、高校生だけあって、ちっとエロが入ってるのもあります（ちょっとじゃないか最終兵器彼女とか、東京大学物語などは、BOOKOFFからかき集めてきて『（・。・）けっこおもしろかったけど、これ読む？』　などと、息子の方から私に勧めてくれます(かなりエロぃのよ(笑紡木たく‐ホットロード他。気分はグルーピー(古きよきバンド青春漫画でんがななんかは昔の古いいい漫画知ってるので、私がにぃにプレゼント＞Ｂｙ　やっぱりＢOOK OFFそこに読みかけのSPA！が転がってますね。ゴーマニズムは一時はまったけど、やっぱ小林センセのくどさと押し付けがましさがね←うなずく人多しとふんだ少女漫画はあんま知らないけど、紡木たくは欠かせなかったのはドキュソの時代だったので（たーちゃんの若い頃の性格、行動は、自分でも言ってるけど、春山そっくり）吉田秋生はおもちろいよね。内田春菊も読んだ（飽きた。）岡崎京子なんかはにぃがBOOKOFFでふるいの買ってくる(懐っつかしい～～～♪なんて言って借りてる。）今はNANAは読んでるよ。全巻ある＞流行もん好き。のだめはちびが持ってるし＞クラッシック談義が子供とできる日が来るたぁ思わなかった～で、次は家事ぼちぼちやりながら(トイレ掃除だ）漫画のないご本編へ～

2007.01.18

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～若気と老熟と～　徒然草と論語から見る

～徒然草～　今も昔も一緒ぢゃねぇか(笑

～徒然草～　蟻のごとくに（第七十四段）　寸陰惜しむ人(第百八段）

〔別れる原因は～～〕　〔夫婦の真の絆とは？〕　宇野千代エッセイ二つ　

苦しみの日々　哀しみの日々

　　笑う能力

　椅りかからず

me の　悲劇