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虹色のしゃぼん玉。

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June 27, 2006
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カテゴリ:カテゴリ未分類
蒸し暑かったので、外回りの途中、大型スーパーに入った。

言うまでもなく、クーラーがガンガンに効いている。
汗っかきの私にとって、いわばそこはオアシスなのだ。

店内の1階が吹き抜けになっている場所に、ベンチがいくつか並んでいる。
私はそこで小休止を取ることを最近の日課にしていた。

ハンドタオルで汗をふきながら ふとベンチの横の方を見た。
そこには私とほぼ同年齢の男性と、幼稚園くらいの女の子が座っている。

おそらく買い物を済ませてこれから帰るところなんだろう。
白いビニール袋から、パンや牛乳などいろんな食料品が見えた。

夕方の早い時間帯である。仕事が休みのお父さんと娘さんが
一緒に買い物に来てるんだろうな。ふとそう思った。

女の子は片手にしっかりと黄色い風船を握りしめていた。
そういえば入り口で小さい子供たちに風船を配っていたのを思い出した。

買ったばかりのお菓子を白いビニール袋から取り出し、女の子は嬉しそうに笑っていた。
と、次の瞬間・・・

持っていた風船が女の子の手をすり抜け、吹き抜けの高い天井に向かって遠ざかっていった。
「あっ」一瞬私は小さく声を出し、風船を目で追った。

「パパー・・・」女の子は少し飛び上がって風船を取ろうとした。
父親もすばやく立ち上がり手を伸ばしたが、ダメだった・・・。

風船はそのままゆっくりと上昇する。
やがて天井に着いたかと思うと「パン」と音を立ててあっけなく割れてしまった。

割れた勢いで、風船のかけらも上の方の階のどこかに飛んでいった。
女の子は一瞬の出来事に驚いていたが、やがて声を上げて泣き出した。

女の子にはかわいそうだったが、風船を放してしまうことは子供にはよくあることだ。
仕方ないなあ。また入り口でもらえるから大丈夫だよ。

私は本当に、この出来事を軽く考えていた。

しかし、泣き続けている女の子の頭をそっと撫でながら、
父親が優しく発した言葉を聞いて、愕然とした。

「風船はねぇ、きっとお母さんに逢いに行ったんだよ・・・」
「バイバーイって言っとこうね。ずっと泣いてたらお母さんも悲しむぞ」

父親に諭され、ぐっと口をつぐんで涙をこらえる女の子。
優しく女の子の頭を撫で続ける父親・・・。

その場にいるのがつらくなって、その店を出た。

全てを聞いたわけじゃない。まして、どこの誰かも知らない親子である。
母親が亡くなったのか、理由があり離れて住んでいるのか、知る術も無い。

ただひとつ確かなのは・・・
その女の子は父親にとても愛されているということだ。

母親がいないことは女の子にとって寂しいことかもしれない。
でも、その代わり、お父さんがそれ以上に愛してくれているじゃないか!

ガンバレ・・・。涙を拭いて・・・。

相変わらず入り口では、お母さんと一緒に買い物に来た子供が風船をもらっていた。
嬉しそうにニコニコしながら・・・。


(以前「さすらいの若旦那の日記。」にUPしたものを加筆修正した文章です)


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Last updated  June 28, 2006 11:22:20 PM
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