地下迷宮で青春を送った全ての人へ
かつて『ウィザードリィ』で、青春を送った全ての人に読んでほしい一冊。ルールが複雑になり過ぎた現在リリースされ続ける無数のゲームにもついて行けず、かといってネットゲームにはまる時間も余裕もない、ふだん幻想文学もSFも読まない人にこそ、毎晩読んで読んで読み倒してほしい垂涎の一冊。かつての『ウィザードリィ』初期4部作に熱中した世代や、現在のRPGからそのルーツを遡行する一部のフリークだけでなく、『ウィザードリィ』や『ウルティマ』といったRPG黎明期の作品のさわりしか触れてない人、その名には興味をもっていたがそのまま体験できなかった人にも、この『アラビアの夜の種族』の圧倒的な災厄のディテールはかつてのディスプレイの中の「冒険」の数々を想起させまくるに違いない。地下で実験を繰り返すワードナや、大魔術師が地上を目指して脱出する『ウィザードリィ4』、そしてありえなかった外伝の数々を、永遠に自動生成するかのような『アラビアの夜の種族』。古川氏が『アビシニアン』でみせた、視覚が弾ね、聴覚が弾ねる世界、無数のハーブが目眩をもって乱舞する世界を現出させる文章の膂力の凄まじさが可能にした、ゲーム小説ではない、読むゲーム。無数に飛び交った初心者近寄るべからずな書評で足をすくませるにはあまりにもったいない、異界でのめくるめく彷徨を日々体験し続けることができる、ゲームも幻想文学もリタイアしてしまった人にぴったりの魔書。10年ぶりにゲームを買ってみる気になった人ならこれも一冊! 『アラビアの夜の種族』http://www.bk1.co.jp/product/2112609/p-wolfmann/