『抄訳版 アメリカの鏡・日本』 学んだことを実行すると、先生から厳しく叱られるのである
・・・・・つづき多くの人に読んでほしい『抄訳版 アメリカの鏡・日本』 (角川oneテーマ21) 820円ヘレン・ミアーズが書き残したこの本は、決して日本擁護の書ではないが、アメリカが何を考えていたかがわかる本である。GHQの内部情報に直接ふれた彼女が、戦後すぐに書いたこの本は、アメリカにとっては都合が悪く、マッカーサーによって禁書とされ、占領が終わるまで翻訳出版も許されなかった。その本が1955年に新たに出版され、2005年に『抄訳版 アメリカの鏡・日本』と新書になっている。アメリカやヨーロッパに日本を糾弾できる資格があるのか? 日本は私たちの真似をしただけではないのか? 近代日本は西洋列強が作りだした鏡であり、日本の犯罪は、それを裁こうとしている連合国の犯罪である、という。西洋の価値観が、日本の伝統的価値観を完全破壊しようとしている。それが日本占領であると、彼女は公平な立場で書きあげている。ヘレン・ミアーズは近代日本の犯罪に西洋文明が深く関わったことに心の痛みを感じている。上手く感想が書けずまとめられないので、私が気になった部分だけを独断と偏見で抜粋します。(Pは本書のページ)この「抄訳版」に載っていない省略された「伝統的侵略性」の中でヘレン・ミアーズは、私たちが日本に来て最初に命令したのは、歴史、地理、道徳の授業をいっさい中断することだった。私たち自身が日本の歴史を著しく歪曲してきた。アメリカ人は日本の歴史家たちが現実を直視していないとか、不正確な歴史記述をしているといって非難できる立場ではないのだ。 と書いている。う~ん、現代にも通じる指摘ですねぇ。歴史を歪曲してるのは日本以外の国ですもんねぇ。「第一章 懲罰と拘束」いったい私たち(欧米)は公正な裁判官を自任できるほど潔白で聡明なのか、アメリカ人は自問自答したことがない。私たちは日本側のいい分を聞いてみたことがない。日本の歴史について、戦争プロパガンダが好んでつかう史実しか教えられなかった。 (P21)私たちは日本とアジアの考えをまったく無視してきた。日本人は起訴状にあるように、本当に世界征服の野望を抱く野蛮で侵略的な民族なのか、考えてみたこともない。 (P22)アメリカ文明は個人の権利と尊厳の尊重を基盤にしているはずだ。そうであるなら、審問抜きの大量懲罰は、私たちの法と正義の哲学に著しく反しているというほかない。 (P22)「第二章 世界的脅威の正体」日本の脅威に対する私たちの恐怖は異常に誇張されていた。 (P36)日本人の野蛮さに対する恐怖は、ほとんど根拠のないものだったが、誇張されたプロパガンダがそれを覆い隠してしまった。 (P37)彼ら(日本)は「アメリカの安全を脅かして」いたわけではない。この作戦でアメリカを「征服」しようと思ったわけでもない。アメリカが日本を征服しようとしていたのだ。 (P53)日本人を「世界で最も軍国的な国民」とする私たちは「戦闘的な人種」という偽りの像をつくり出した。 (P53)日本人を軍国主義的人種として告発することで、わたしたちの力の優位の証拠としてつかっている。日本人を完全に屈服させるために強力な新兵器原子爆弾をつかったが、そのためには根拠のない告発をつくり出す必要があった。 (P54)日本政府は少なくとも1945年5月に降伏の打診をしているが、この打診はアメリカ政府によって公式に無視、あるいは拒否された。事実、1944年の早い段階から、日本政府の内部では完全敗北とみなしうる条件の受け入れが真剣に検討されていたのだ。 (P86)「第三章 改革と再教育」日本人に暴力と貧欲を組織する国際的技術を教えたのは、外国の専門家たちなのだ。 (P119)欧米列強は「外様」雄藩の野心的青年たちが協力的であるとみると、進んで「革新的」新体制を助けた。倒幕を支援するために武器を売り、新しい政府をつくるために知恵を貸した。天皇を京都から東京へ迎え、新政府の首座に据えたこともイギリスが勧めたことでもあった。 (P120)私たちは日本が西洋文明の理想に反したことを非難している。欧米列強こそ国際社会において自分たちの原則を守らなかったし、自分の国の中でさえ原則を実践していなかったのだから、そういう非難がどこから出てくるのか、理解に苦しむ。 (P125)「第四章 最初の教科 合法的に行動すること」 新渡戸稲造(マサチューセッツ州ウィリアムズタウン政治研究所での講演 1932年)私たちはアメリカから多くのこと、とくに、隣接地域の不安定政権にどう対処するかを学んできた。そして、学んだことを実行すると、先生から激しく叱られるのである。 (P132)「第五章 鵞鳥のウソ」本当の敵は日本ではなかった。敵は日本に満州での「合法的」権利を与えている不平等条約体制だった。このような体制がなければ、日本は満州事変を起こせなかったのである。 (P174)米英両国の軍隊と砲艦が自国民の生命財産を守るために中国の「盗賊」を攻撃したとき、両国の世論は中国人を野蛮人と呼んで非難した。日本人が同じように中国の「盗賊」を攻撃すると、同じ国民が日本人を野蛮人と呼ぶのである。 (P186)そこで日本人は、こうした非難は日本の行動に対してではなく、人種に向けられたものだという結論に行きつく。国際連盟がリットン報告(連盟が設置した調査委員会の報告)を受け入れ、連盟とアメリカが満州国を独立国として承認しなかったことから、日本は連盟を脱退した。 (P187)「第六章 第五の自由」戦争原因を考えるにあたって、私たちは人種的、思想的側面にこだわりすぎ、経済的要因を無視している。日本の視点から簡単にいうなら、この戦争はアジアの支配勢力として台頭するのを阻止し、米英企業のために日本の貿易競争力を圧殺しようとする米英の政策が引き起こしたものだった。実際に行われた政策とアメリカ政府の公式説明は、まさに日本の解釈を裏づけるものといわざるをえない。 (P199)アメリカは競争力を「脅威」とすることによって、日本を差別している。アメリカが恐れているのは、どうやら日本の競争力らしい。たとえば、米国企業は絶えず日本の中南米進出に文句をつけているが、日本の対外輸出が多かった1934年でも、対中南米輸出総額は2040万ドル程度のものだ。これに対してイギリスの輸出額は、アルゼンチンだけで6792万5千ドル、日本の南米大陸全体への輸出額の3倍を超えている。それでも、イギリスの競争力を「脅威」とする声はまったく聞かれない。 (P216)アメリカ式に贅沢な占領は最初の3か月で、1930年の年間軍事費を上回るお金を日本に使わせた。以後、占領コストは急増し、9か月間の占領軍の経費は45億円にのぼっている。1947年8月現在の政府予算は1845億円という天文学的数字にのぼったが、その43%以上が占領軍経費に充てられている。 (P221)日本人はどうやって生きていけばいいのだろうか。いままで日本人が働いていた職場はすべて消え去った。もちろん海外からの収入も絶えた。海外資産は凍結された。恐らく賠償金として没収されるだろう。日本は破産した。 (P222)私たちは日本人に飢える自由を与えた。私たちがそれを民主主義と呼べば民主主義なのだ。 (P225)アメリカの傲慢さは、戦争が終わって70年近くたった今でも似たような感じがする。新渡戸稲造さんの言葉は名セリフですね。 つづく・・・・・