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2009.02.15
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カテゴリ:本・読書
昨夜というか今日未明というか、はい、「凍てつく夜もさだまさし」見ました。
この歳になると、深夜2時まで起きてるというのは辛いものです。


そんな昨夜のテレビの中でちょっと触れた話題は、
今日2月15日が井伏鱒二の誕生日ということでした。お誕生日


井伏鱒二といえば有名な『山椒魚』
10頁ほどの短編で、大正8年の処女作です。ノート


どんな話しかというと・・・・・


この山椒魚が岩の中に住んでるわけなんですが、成長しちゃって、出ようとしても、
出口が小さくて頭がつっかえて出られなくなってしまうんですね。


そんな所に蛙が飛び込んで来ます。
そうすると山椒魚は出口をふさいで、蛙を出られないようにしてしまうんです。


自分が出られないから、意地悪をしてしまうんですね。
「一生涯ここに閉じ込めてやる!」と。


蛙も頑張るんですけど、1年経ち2年経ち・・・・・
蛙は空腹で動けなくなるわけです。
「もう駄目なようだ」と。


すると山椒魚は「おい蛙、お前はどういうことを考えているんだ?」と聞くんです。
蛙は遠慮がちに、「今でもべつにお前のことはおこってないんだ」




と、まぁこんな最後のセリフで終わる短い小説です。


気づいた時には出られない状況って、人間にもあると思うんです。
問題が大きくなり過ぎて、にっちもさっちも行かなくなる状況。


そして、自分が不幸だから人も不幸にしてやれと意地悪をする人がいますねぇ。
この短い話が、私達にいろんなことを考えさせてくれるのですが。




ところが、1985年(昭和60年)、『井伏鱒二自選全集』に収録する際、
井伏さんはこの作品の末尾を削除してしまったという出来事がありました。


そのことを、さださんは昨夜もチラっと言ってたのですが、
多分、テレビを見ていた方はほとんど意味がわからなかったでしょう。


私の手元にある新潮文庫は平成5年7月版なので、削除されたものなのか、
原文のままなのかわかりません。


なぜ井伏さんは、70年も経ってから自分の作品に手を加えたのかと、
さださんはご本人に会った時に確認したわけです。


「だって・・・・・あれじゃあ出られないもの・・・・・」
「あれじゃあ、どうしようもないもの」


と何度も何度も何度も言ったそうです。


「若い頃に書いたとはいえ、どうしてひどいことをしたのかなぁ」と、
ず~っと思い続けていたのだそうです。




井伏さんって優しい方だったんですね。


私は井伏さんの詩を読んで笑いころげたことがあります。大笑い
こんな詩をご存知でしょうか?



     『顎』

   けふ顎のはずれた人を見た
   電車に乗っていると
   途端にその人の顎がはずれた
   その人は狼狽へたが
   もう間に合わなかった
 
   がくりと口があいたきりで
   舌を出し涙をながした
   気の毒やらおかしいやら
   私は笑い出しそうになった

   「ほろをん ほろをん」
   橋の下の菖蒲は誰が植えた菖蒲ぞ
   ほろをん ほろをん

   私は電車を降りてからも
   込み上げて来る笑ひを殺そうとした 




     『蛙』

   勘三さん 勘三さん
   畦道でいっぷくする勘三さん
   ついでに煙管を掃除した
   それから蛙をつかまへて
   煙管のやにをば丸藥にひねり
   蛙の口に押し込んだ

   迷惑したのは蛙である
   田圃の水に飛び込んだが
   目だまを白黒させた末に
   おのれの胃の腑を吐きだして
   その裏返しになった胃袋を
   田圃の水で洗ひだした

   この洗濯がまた一苦労である
   その手つきはあどけない
   先ず胃袋を両手に受け
   揉むが如くに拝むが如く
   おのれの胃の腑を洗うふのだ
   洗ひ終へると呑みこむのだ
 


     『春宵』

   佐藤俊雄が溝に落ちた
   僕がうしろを振り向くと
   忽然として彼は消えていた
   やがて佐藤の呻き声がした
   どろどろの穢水の溝であった
   彼は溝から這ひあがり
   全くひどいですなあ
   くさいなあと泣き声を出した
   それからしょんぼり立っていたが
   ポケットの溝泥を掴み出した
   實にくさくて近寄れない
   気の毒だとはいふものの
   暫時は笑ひがとまらなかった



井伏鱒二って、なんだかお茶目な方だったと思いませんか? OK





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最終更新日  2009.02.15 19:32:55
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