カテゴリ:本・読書
(拝借した写真です) 9月から読み始めていた、文庫本で10巻まである『翔ぶが如く』(文春文庫)をやっと読み終えた。 司馬遼太郎の小説は『空海の風景』上下2冊以来で、いきなり10冊の小説に踏み込んでしまったわけは、図書館の棚から『司馬遼太郎全集』を適当に引き抜き、たまたま立ち読みしてしまったことがきっかけだった。 全集は重いし字が小さいので文庫本を買うことにした。 革命を起こして維新を成功させた西郷隆盛が、どうして新政府に反発して反乱を起こしたのか。いったい何を考えていたのか。しかも、そんな西郷がなにゆえこうも高く評価されているのか、ということが知りたくなった。 いきなりの長編だったが、日本を動かしていたそうそうたる人物たちが数多く登場する難しい漢字も多いこの本を、途中投げ出すことなく読み切れたのは、やはり司馬さんの筆力がすばらしいからだろう。 明治初期に外国を視察してきた派と、外国に行かなかった時流に乗り遅れた派が、征韓論をめぐって対立する。このことによって薩摩藩士たちが太政官と呼ばれた明治政府と対立することになる。西郷隆盛が薩摩隼人の桐野利秋らにかつがれ、ついに西南戦争を起こし、敗れて行く過程を詳細に小説として仕上げている。 太政官側の大久保利通や、日本の警察制度を創った川路利良が中心に描かれている。 西郷隆盛は主人公のようで主人公ではない。薩摩という独特な土地柄と人柄。 結局、西南戦争とは太政官になった大久保利通と、鹿児島に帰国した西郷隆盛の私闘であり、最初から最後まで登場する川路利良が導火線になっていたことがわかる。 桐野利秋という薩摩軍に担ぎあげられ、何も指揮を出すことなく移動を共にするだけの無口な西郷。戦略も何もないまま、無駄な殺し合いが続く薩摩藩士たちの争いは悲劇である。 新聞に連載しながら、司馬さんは西郷という人物を描くことで、西郷隆盛という人間を明らかにしようとしたようだが、結局わからない存在だったようだ。会った者にしかわからないほど不思議な魅力の持ち主だったようである。 征韓論や西南戦争の西郷の印象は、私にも期待はずれだった。 そして、大久保の暗殺で小説は終わる。 司馬さんは、明治維新から明治10年までの変化は、フランス革命やロシア革命よりもはるかに大きかったのではないかとしている。 あくまで史実に基づいて描かれているので、『竜馬がゆく』や『燃えよ剣』のような娯楽性は無いが、現在に続く日本の国家体制の成立について書いてあるため、非常に勉強になった。 よく知られている司馬さんの逸話に、神田の古本屋街から、ある日大量の本が消えるというのがある。 「今度こういうテーマで書くから」と各店に連絡すると、政治家、軍人、文人、芸術家などの集められる限りの資料が集められて、トラックで大阪の司馬さん家に運ばれたらしい。 『翔ぶが如く』も、あらゆる登場人物の評伝が書かれているので、この逸話が実感できる。 これと並行して同じく司馬さんの『明治という国家』上・下(NHKブックス)も読んでいた。これがまたいい勉強になった。 ☆。.:*:・'☆'・:*:.。.:*:・'゚:*:・'゚☆ 今年もお陰様で212冊の本を読むことができた。 買いたい読みたい本のリストがどんどん増える。 宝くじが当たらないかなぁ。 当たれ!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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