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テーマ:食べ物あれこれ(49912)
カテゴリ:食事
輸入食材のコーナーに小瓶のような形をした小さなプラスティック製のチューブが、網状の袋に数個入れられて売られています。形が面白く、思わず手に取ってみると、ラベルに書かれたSepiaの文字からそれがイカスミだと判ります。
ギリシャの言葉でセピアはコウイカの事を指し、コウイカはスミイカと呼ばれるほどイカスミとは縁が深い存在となっています。 かつてイカやタコの墨はインク代わりに使われていました。黒褐色の独自の色合いがイカスミ色の...という形で残り、今日のセピア色、セピア調といった色合いの表現になっています。 そんなイカスミを料理に加えると、イカスミの色のせいで料理が黒く不気味な仕上がりになってしまう事から、世界的にはあまり一般的に使われる食材ではありませんでした。 日本でも伝統的にイカスミを使う料理は、沖縄で作られていたイカの塩辛の黒作りくらいとされ、イカのワタの一部として墨袋ごと捨てられていました。 イカスミは粘性が高く、アミノ酸を多く含む事からソースなどに加える事で、素材とよく絡み、こくのあるマイルドな味にする事ができます。そうした美味しさに早くから気付いていた地中海地方では、パスタやパエリアなどで広く使われ、特にベネチアではペストを遠ざける働きがあると考えられた事から、多くの料理に使われています。 イタリア料理や地中海料理が広まるにつれ、イカスミに対する抵抗感もなくなり、今日では特に珍しい食材でもなくなってきています。 以前、イカスミは煙幕の一種で、イカが天敵の目をくらまして逃げるための物と考えられていました。しかし、粘性が高く、拡散しにくいという煙幕に不向きな性質や、イカが活動している水深には日光があまり届かず、目くらましの意味がない事を考えると、イカスミが煙幕ではないように思えてきます。 吐き出した場所に塊りで長く残り、多くのアミノ酸から美味しそうな香りがする。そうした特長は身代わりのデコイのようで、天敵が逃げ遅れた美味しそうな塊りを狙っているうちに逃げる時間を稼ぐための物のようです。 しかも高い粘性はエラに絡み付いて窒息させる働きもある事から、天敵を攻撃する意味合いも含まれています。エラ呼吸ではない私達は美味しくイカスミをいただく事ができますが、健康診断の前に食べてしまうと、イカスミの成分のせいで消化器官内に出血ありと診断されてしまう事があるので注意が必要です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月30日 07時56分34秒
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