健康コラム

2014/09/11(木)07:49

肝臓治療

薬(37)

 父親は毎日の晩酌を楽しみにしていて、仕事から帰宅すると母親が用意していた料理を肴に晩酌をしていました。そんな晩酌の肴が豆腐となり、輪切りにしたレモンが添えられるという事がしばらく続く事となりました。  豆腐とレモンの日々は一カ月以上も続いたのですが、後に血液検査で肝臓の数値に問題が生じていたためという事を知り、晩酌そのものを止めずに高タンパク低脂肪の豆腐とビタミンCのレモンという発想が父親らしいと思えます。  一カ月にわたる豆腐とレモンのお陰で再検査の際は数値が回復していたそうですが、あの時は頑張ったという発言を聞かされた事から、好きな豆腐であっても毎日、同じ物が続くというのはそれなりに辛い事だったと想像しています。  結局、肝臓ガンで他界する事となってしまったのですが、医師の話では日々の飲酒というよりも若い頃に受けた手術の際の輸血が原因ではないかとの事で、社会問題化していた輸血による肝炎ウィルス感染という問題が意外なほど身近なところで起こった事に驚かされた事が思い出されます。  C型肝炎ウィルスに感染すると肝炎から肝硬変を経て、肝臓ガンへと移行するといわれます。今のところ最も有効な治療法はインターフェロンを用いたもので、患者に大きな負担を強いるだけでなく、効果という点でも50%程度と低いものとなっていました。  今月、新たに登場した「ダクルインザ」と「スンベプラ」は、日本初のインターフェロンやリバビリンといった従来の薬剤を必要とせず、飲み薬だけでC型肝炎が治療できるという高い効果が期待されています。  ダクルインザとスンペブラは、作用の仕方がインターフェロンとは異なり、「直接作用型抗ウィルス薬」と呼ばれ、2つの薬剤による治療で日本のC型肝炎患者の7割を占める1b型の患者の84.7%で肝炎ウィルスが検出いされなくなっており、特に副作用の問題からインターフェロンが使えなかった65歳以上の患者に限るとウィルスが検出されなくなったのは91.9%とされ、効果の高さを伺う事ができます。  抗ウィルス剤は使用していいるとウィルスの間に耐性が生じてしまうという問題が生じるのですが、性質が違う2剤を使用する事で抗ウィルス作用が弱まってしまう事はないとされます。  副作用のためにインターフェロンが使えなかった患者や、インターフェロンでは効果が出なかった患者など、多くの人に朗報となるのではと思いながら、入院して治療に時間を費やす事を拒み、家族と一緒にいる事を選んだ父親は飲み薬だけで済む今回の新薬をどのように見るのか、そんな事を考えてしまいます。

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