カテゴリ:囲碁
プロプロ置碁は、怖い企画の代表的なものであろう。以前は良く企画されていたが、最近はすっかり見なくなった。おそらく、あまりに危険な企画であるからだと思う。
本来は、プロ棋士が置碁の黒を持って、いかに上手に打つかというのを見せるための企画なのだが、白を持つ棋士がどうしてもプロの本性剥き出しになってしまって、洒落ですまない事態になる危険があるのだ。 特に危険な棋士は、言わずと知れた石田芳夫九段である。プロプロ置碁企画で、ある女流トップ棋士が石田プロ相手にたくさん置いて負けてしまって、せっかくの棋譜が使えなくなってしまったという話は、有名な話らしい。 また、昔の企画で石田プロにある女流棋士が9子置いて打ち、ほとんど勝負になってしまったのを見たことがある。この時は、細かくなってから更に白が勝負に出て損したために、結局30数目くらいの差で黒勝ちになっていたが、ほとんど一歩間違えばというところだった。 ところで、井目のハンデというのは、90目ではない。置石の相乗効果があるので、130目~150目と言われている。 それにしても、石田プロのすごいのは、白が勝ってはまずい企画とわかっていても本気で勝ちに行ってしまうことである。企画する方も、それを承知で石田プロを使うのだから、ある意味スリルを楽しんでいたのかも知れない。 私は、一度石田プロと日刊ゲンダイ紙の企画で3子で教えていただいたことがある。これは、武宮、加藤、石田プロのトリオが交互で、アマチュアに3子置かせて打つ企画だったのだが、よりによって石田九段に当たってしまったのだ。 序盤からポイントを稼がれたが、プロとは違って、固く固くけして怒らせないように打って、細かい勝負になり、辛うじて逃げ切った。けして褒められた碁ではないが、相手が相手だけにとにかく勝つことにすべての重点を置いたのである。これは、相当な金星だと思う。 ところでこの時の局後の検討が極めて印象的であった。序盤はさらりと手直していただいたのだが、寄せになって白が勝つ手順があったかどうかを、徹底的に検討を始めたのだ。 あっという間に想定図を作り、目算をする。そして数秒後には正確に結果をだして、別の想定図を作る、という繰り返しである。微妙だがなかなか白勝ちの図ができないので、延々と30分くらいこの作業が続いたかもしれない。 この流れるような作業を見て度肝を抜かれた。この人は、人間じゃないと思った。同業者からコンピューターと言う名がつけられたのは、比喩なんてもんじゃなくて、恐怖からだと確信した。 そして、一番紛れのある手を逃したことを、ひどく後悔していた。恐ろしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 2, 2005 10:55:08 AM
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