上尾市議選の結果を考える
記事紹介。ご意見募集!各会派の得票数の変動から、上尾市議選の結果を考える 2019年12月17日 大友弘巳AAN-PF、上尾の図書館を考える会 事務局長1、「旧新政クラブ」グループの得票総数の減少について① 減少した数は9,179票、投票率約5%分に相当する数です。 前回当選した14人の得票数の合計は、26,636票でした。 任期途中で辞職した田中守氏と、任期満了と同時に引退される新井金作氏と嶋田一孝氏、合わせて3人の得票数小計は、5,887票です。残りの11人の得票数小計は20,749だった訳ですが、その11人の今回の得票数小計は17,457ですので、その差は3,292票となっています。 5,887票+3,292票=9,179票 グループとして今回はこれだけの票を失ったことになります。 前回の投票総数67,482票と、今回の投票総数67,208票は274票しか差がなく、ほぼ同数と言ってよい状況です。 有権者数は,前回183,384人に対して,今回は189,732人と、6,348人増でした。 その内、18歳以上20歳未満の若者に選挙権が与えられたことによる増加数が大半を占めています。(詳細を選挙管理委員会事務局に問い合わせ中ですが、まだ把握していないとのことで、しばらく待ってほしいと言われている状態です。)(※年齢別投票数は請願議決もされていて公表待ちです。) 9,179票は、前回の有権者数183,384人に対しては5.01%に当たり、今回の有権者数189,732人に対して4.83%に当たります。 このグループの議員は、それだけ投票率を下げる役割を果たしていると言ってもよいのではないかと考えます。② 辞職や引退による得票数減少 このグループの議員が減らしたこの得票数は、現実にはそのまま投票総数の減になっている訳ではありません。 田中守氏が辞職した分の票の減の一部は,尾花あきひと氏や,田中一崇氏の得票増に貢献しているものと考えられます。 新井金作氏が引退した分の票の減の一部は,原田嘉明氏の得票に貢献しているものと考えられます。 嶋田一孝氏が引退した分の票の減の一部も、少しは原田氏の得票に貢献しているかも知れません。 以上の3人の分の票は,名前を挙げた方々以外の候補者に貢献している可能性は少なく、大方は棄権(投票率低下要因)につながっているものと考えられます。➂落選者による得票数の減少 落選した野本順一議員の得票が減った一部は、惜しくも次点に終った25歳の新人池澤賢也氏が獲得したことが考えられます。 同じく落選した齋藤哲雄氏の得票が減った一部は、新人の石曽根氏が獲得したことが考えられます。 現職の得票数としては最下位だった小林守利氏の得票が減った分で、恩恵を受けた候補者がいたかを検討してみましたが、思い当たりません。 以上のことから、3人の落選者が得票を大きく減らした原因は、新たな挑戦者に食われたこともありますが、これまでの支持者が今回は棄権したことが原因と考えられます。 つまり、地元の住民から見放され、「お灸を据えられた」のではないでしょうか。その場合、投票率の低下の要因になることは言うまでもありません。④一部の例外を除くベテラン現職が得票数を減少 落選した3人は、元々前回の得票数が当落のボーダーラインに近い数しか得票できていなかったために落選に至った状態でした。 前回の得票数が比較的多かった議員も、多くは似たような大幅な得票減を体験していますが、それでも当選はできたということでした。 それぞれ新人に支持が移ったか、もしくは、支持者が今回は棄権されたことにより、投票率の低下の原因の一つとなったことが考えられます。 このように考える根拠になっているのは、投票所毎に(=地域によって)投票率の変動に大きな格差があることです。 全体で39カ所の投票所のうち、前回より投票率が上がったところが11カ所ありました。18歳以上20歳未満の若者が初めて市議選に参加して投票率を下げる要素になっていることを考えれば、出た数値以上に上乗せして評価してよいことだと考えています。 その逆に、今回の投票率が前回より大幅に下がっている投票所(地域と地元議員)は以下の通り13カ所です。辞職や引退並びに落選した諸氏が地盤としている地域は、ことごとく投票率を下げていることが明らかです。しかし、これは良くないことでしょうか? *平方小学校1 -7.73%(大字平方、嶋田一孝氏) *上尾市役所 -4.44%(本町1~5丁目、野本順一氏) *原市集会所 -4.00%(大字原市・大字瓦葺、星野良行氏) *平方小学校2 -3.76%(大字上野・平方領々家、嶋田一孝氏) *大石南小学校 -3.48%(大字小敷谷・畔吉・領家、新井金作氏) *原市公民館 -3.46%(大字原市・五番町・原市中、星野良行氏) *東町小学校 -3.37%(東町1~3・上尾宿・上尾下、齋藤哲雄氏) *上尾中学校 -3.08%(愛宕1~3・栄・日の出1.田中守氏) *大石北小学校 -2.83%(井戸木1~4・泉台2.3、小林守利氏) ほかに、-2.00%~-3.00%だった投票所4カ所、0%~-2%が15カ所となっています。2,公明党の得票数減少は、前回より-1,488(12%)投票率低下にも0.8%影響か。 公明党の当選者数は,前回も今回も同じ5人ですが、得票数合計は前回より1,488票の減となりました。比率では,前回比88.19%ですので、12%近くの減となっています。 1人、新旧交代が行われましたが,それがあっても格差を生ぜず,5人とも2,000票を越える得票をキープしたことは、公明党の組織力の強さの表れと感じさせられます。 それにしても、4月の県議選では前回比110.5%の17,931票を獲得していた勢いと比較すると、12月の市議選が前回比88.19%と言う結果は、公明党の市議会議員が支持層から厳しく見つめられているものと受け止められます。 この4年間、公明党議員団が、多数派の「旧新政クラブ」グループとの連携を重視してきたことから、小林議員によって「18人は何でもできる」仲間と認識され、喧伝されたことにより、市民の中にマイナスイメージが広がったことが原因となっていると思われます。 公明党の支持者が,他の会派の候補者に投票する可能性は低いと考えられることから,得票数の減は大方棄権の増、投票率の低下につながっているものと考えられます。3,日本共産党の得票数約30%減の要因として考えられること 日本共産党は、当選議員数では前回5人、今回も5人で同数でした。 しかし、5人の得票数合計では、前回11,556票に対して、今回は7,986票にとどまり、-3,570となっています。比率にすると前回比69.11%であり、約30%の大幅ダウンです。 4月の県議選では、秋山もえ候補が17,185票を獲得して,上尾市では公明党の石渡豊候補に続く第2位の得票数だったことに比べると、46.47%と半分にも満たない得票数であり、多くの支持者がまさかと感じた結果だったのではないか、と思われます。 このような結果となった要因として3点が考えられます。① 前回大量得票を得た、秋山もえ、糟谷珠紀の2氏が、今回は同時に交代したこと。前回の選挙で大量の得票を得た秋山もえ氏(3,540票でトップ当選)と、糟谷珠紀氏(狭い受け持ち地域の中で2,153票得て中位当選)の二人は,共に若手の女性であり、個人としての人気が高いベテラン議員でしたが、秋山氏は県議に転身し、糟谷氏は25歳の時から5期20年間務めた市議を引退することを以前から決めていたことが重なり、二人とも今回の選挙では交代することになったことです。もっと早くから若手女性の後継者対策を進めておく必要があったと思われます。② 各候補者の受け持ち地域の組み替えが必要となりましたが、それがかなり大幅になった上、準備も遅かったこと。 交代する2人の得票力が高く、新人とでは格差がありすぎるため、同じ人数の候補者の場合,当然、受け持ち地域の組み替えがかなり大幅に必要となります。そうすると、新人以外の候補者にも大きな影響を及ぼすことになります。 平田通子議員の場合は、最ベテランなので受け持ち地域は狭めることで頑張ることにされたと聞いています。それでも前回とほぼ同じ得票を得ています。そういう考えにも道理があるように思われます。 早くから,新たな受け持ち地域の住民とのつながりづくりの準備を始めなければ,新たな受け持ち地域では,新人と同じ状態になってしまいます。 県議選で秋山もえ氏が当選した直後から,新たな受け持ち地域分担を決め、市議選に備える準備を開始することが必要だったはずですが、それが大幅に遅れていたように感じています。③ 日本共産党を支持してきた市民の中には元々多様な人々がいて、今回はかなりの人々が、新たな集団や候補者を勝たせようと動いたと考えられます。日本共産党の候補者が減らした得票は、どこに行ったのか、棄権があったのかを考えてみるには、得票を増やしている会派や候補者を見詰めて見れば推測がつきます。 党派や集団として得票を増やしているのは、「市民の声あげお」が1,737票、立憲民主党の荒川昌佑氏が2,993票、維新の会が1,790票、N国党が1,383票、となっていますが、維新の会やN国党への支持に回った可能性は少なく、個人では、池澤賢也氏1,162票、近藤泰介氏960票、守田和樹氏516票、宮入勇二氏469票などが選択肢になっているものと考えられます。 選択肢となった可能性がある、党派や集団、個人を合わせると7,937票となり、前回は共産党に投じた票が,今回はこれらのいずれかに投じられたのではないか、棄権は少ないはず、と思っています。 それにしても、今回の得票減はその数が多く,市議選での共産党の得票数として1979年以来の40年間11回の選挙のなかで初めて8,000票を下回ったとのことです。池田達生氏は危うく落選に近い最下位当選であったことは、選挙戦でも不十分さがあったことが考えられ、同じ失敗をくり返すことがないように、総括を深めることが必要と考えられます。 先日公表した「上尾市議選の結果を受け止めて」という文書では,表面的な結果報告とコメントに過ぎず,分析が不十分でした。投票率が下がったことについての評価も一面的でした。それらを埋め合わせたく,この文書を作成しました。