今日は憲法記念日です。日本国憲法が施行されて73年になりました。安倍首相は
「自民党総裁としての任期が切れる来年9月までの憲法改正の実現を目指す」(3日、時事通信)と語りました。しかし昨今の新型コロナウィルスの感染拡大により、憲法改正の優先順位はとても低いと言っていいでしょう。
私は憲法改正自体には賛成です。しかし!
現在の日本にとって、憲法改正が緊急性の高い問題だとは思いません。例えば自衛隊の存在を憲法9条に明記したとしても何が変わるのか。自衛隊法の改定や新しい法律の制定で十分間に合うのではないか。・・・と思い始めたのです。
皮肉にも第2次安倍政権の、集団的自衛権を行使できる憲法解釈の変更(2014年)、安保法制の制定(2016年)といった「実績」が憲法改正の必要性を低下させたと言っていいでしょう。
閑話休題。このブログのトップページに、私は以下のメッセージを書いています。
Die Würde des Menschen ist unantastbar.
Sie zu achten und zu schützen ist Verpflichtung
aller staatlichen Gewalt.
人間の尊厳は不可侵である。
これを尊重し、守るのは全ての国家権力の義務である。
これは、
ドイツの基本法(憲法)第1条第1項の条文です。
Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland
世界史の授業でも出てきますが、ドイツでは20世紀前半、当時のナチス政権によってユダヤ人への抑圧(不当な差別)が行われていました。時の政府の思惑により、ユダヤ人というだけで外出制限を課されたり、学校から追放されたり、商店を破壊されたり、強制労働に動員されたり・・・。ナチス政権の悪行は枚挙に暇がありません。大戦末期には、フランスやチェコでナチスの親衛隊によって住民のほぼ全員が虐殺された村もありました。ユダヤ人以外の民族への不当な差別も行われていたと言われます。
第2次世界大戦の敗戦を経て、西ドイツ→現在のドイツ連邦共和国は
「二度と戦争の惨禍を繰り返さない」「特定の民族の尊厳を否定するようなことは二度としない」という強い決意をもって、基本法(憲法)を制定したのです。
この基本法(憲法)は1949年5月24日に施行されました。それ以来、ドイツでは約70年間で60回以上もの憲法改正が行われています。ただし、ドイツでの憲法改正の多くは、統治機構の改革(国と地方の役割分担、EUへの協力など)をテーマとしたものです。
詳しくは、
幻冬舎の以下のサイトが分かりやすいかと思います。
ドイツ基本法と日本国憲法の歩みを比較してわかる、日本の改憲論議の不思議(幻冬舎プラス)
憲法というのは、当該国に住む人々の命や世界観を守るためにある。権力者が暴走しないよう縛るためにある。憲法とは、そのようなものであると約10年前から思っています。