テーマ:八重山的小説(65)
カテゴリ:nobel
疎ましく喧しく何がなんだかよくわからない。
桜子は初めての八重山の夜をそんなふうに 感じたのであるが、しばらく後になって彼女は そんな歓迎の宴が幸せな時間だったことを知 る。つまり、以後折々の場面で執り行われる 各種宴席において桜子はもはや主賓ではなく、 あくまでも祝う側として席につかねばならなかっ たのだ。いや、より正確に言うなら桜子はそれ らの宴会中に席に着くことなど許されない。ひ たすらに食材や備品の買出し、料理、配膳、 給仕、片付け等々に追われる羽目となったの だ。 東京での桜子は、男性社会の牙城を崩すべ くキャリアウーマンとしての一翼を担っていたか ら間違っても各種宴席において男性社員にお 酌なんてしなかったし、そしてそれは相手が同 僚であろうと先輩であろうと上司であろうと経営 者であろうと、何人(なんぴと)に対しても彼女は 自立した女性であり続けたのである。 それがどうだ。此処八重山では家や親族関係 の行事であろうとも職場の酒席であろうとも桜子 をはじめとしてそこに居合わす全ての参加女性 は配膳及び給仕係で在らねばならなかった。男 性陣の求めに応じて泡盛の水割りをつくり、笑 顔でお酌をさせられ、料理を運び、取り皿や箸 や灰皿まで交換し、まるで何処かのスナックの ホステス並みだ。そして最後は、男どもが散々 飲み散らかし、食い散らかしていった宴の残骸 を片付け終えるまで撤収することも許されない のである。まさに屈辱的である。侮辱的でさえあ る。前近代的と言い換えてもいい。男女平等の 崇高なる理念を根底から覆す暴挙だ。時代に逆 行する悪しき習慣だ。とにかく桜子には宴会に 纏わる全てのことが信じられなかった。 (to be continued) 小説を連載してからアクセスが増えたようです。 好評なのか怖いもの見たさなのか何なのかよく は判りませんが、当ブログに訪れてくれる方が 更に増えるよう書き続けますので今後もお付き 合いのほどよろしくお願いします。ついでにブロ グランキングへも投票もしていただけると幸いで す。下記の文字列をクリックしていただけると幸い です。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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