テーマ:八重山的小説(65)
カテゴリ:nobel
二人帰り、一人たちあがり、まもなく男たちは
皆帰ってしまった。片付けは明日に改めてやろ うねと言い残し女たちまで帰った。かつてこれ ほどまでにしらけた宴は誰も知らなかった。残っ たのは、帰るわけにはいかぬ宴会場の主と、 その息子の源太だけだったのである。 一族の恥とまで罵倒された。女一人も教育で きぬ馬鹿者未熟者と罵られた。嫁の好き勝手 を許す大戯(おおたわ)けと誹謗され、両親それ ぞれから二時間あまり、都合五時間もの間ひた すらに説教を受け続けた源太が解放されたの は新聞販売店に朝刊が運び込まれる頃だった。 「石垣島を出ようよ。東京に帰ろうよ。ね、源太。 そうしようよ」 家に戻ってきた源太に桜子はそう切り出した。 それは提案というのではなく、これ以上はもう堪 えられないので帰京以外に選択肢はないとも 主張して頑なところをみせたのである。しかし ここで嫁をお里に帰しては自分の両親や親族 ばかりではなく桜子の両親や親族からも責め苦 を受ける羽目になるではないかと源太もまた 全力で桜子の翻意に努めるしかなかった。 夫は嫁をなだめすかし、又時折怒ったり笑った り涙を流したりしながらありとあらゆる懐柔策を 用い、そしてその甲斐あって嫁はあと三ヶ月、 三ヶ月間だけ石垣島で頑張ってみるということに あいなったのである。もちろん、三ヶ月間頑張っ てみても島に馴染めなければその時は問答無 用で帰京するとの確約を夫はするしかなかった のだが。 夫と妻が未来を見つめて固い約束を交わした のは既に新聞少年が朝刊の配達を終えている 頃であり、夫は一睡もできぬまま憔悴しきった 体をひきずるように職場へと向かったのである。 (to be continued) 小説を連載してからアクセスが増えたようです。 好評なのか怖いもの見たさなのか何なのかよく は判りませんが、当ブログに訪れてくれる方が 更に増えるよう書き続けますので今後もお付き 合いのほどよろしくお願いします。ついでにブロ グランキングへも投票もしていただけると幸いで す。下記の文字列をクリックしていただけると幸い です。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.03.30 07:54:30
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