テーマ:八重山的小説(65)
カテゴリ:nobel
おい。
おい。ノリヤス。 おい。 おいっ。ノリヤスって言ってるだろ。 玉子、ないさ。 なんで無いって、 無いから無いだろ。バカか。訊くな。 だから。 買ってこいな。 ワタシじゃない。オマエがさ。 いいから。早く行け。 結婚してまもなく妻の麻美はこのように喋るから 則安は少々面食らった。まがりなりにも新婚で、 それも共に溌剌とした二十代であるのに「おいっ」 はないだろう。それじゃまるで冷め切った四十代 後半の夫婦か何かみたいじゃないか。だから則安 が頼むからその「おいっ」で人を呼ぶのはやめて くれないか。なんか態度悪くないか、それ?と新妻 に申し入れること数知れず、でも麻美はそう言われ ると決まって無言になり、反駁とした目つきで家の 中をうろつき始めたりするから結局は則安のほうが 譲るよりほかに着陸地点を見出す術がなかったの である。 でもはっきり言えば「バカか。訊くな」にも腹が立 つし、玉子を切らした経緯を尋ねているのに「無い から無いだろ」の思考停止型の発言にも呆れるし、 買って来いとの命令形もどうかと思い悩む則安だっ た。あの頃。メールの中の麻美はこんな女じゃなか った。優しく知的でありながらも痴女のごとき淫猥な 言葉を操る、まさしく理想の女性であった筈だ。そ れがどうだ。このていたらくは何事なのか。命令さ れ、投げやりにされ、馬鹿にされるなんてどうにか してるよ。ボクはSMスナイパーじゃないんだ。M男 じゃないんだよ。目指すべきはあくまで合意の上で の痴漢であるのだ。糞。こんなの間違ってるよ。くそ。 クソ。 そのように憤りつつも則安は扶養家族を持つ身と なったからには一家の大黒柱とならねばならぬと勤 めに出ることにした。でもやっぱりそこでも彼を待っ ていたのは、島の職場に巣食うサド公爵たちだった のである。そう。則安はいじめられやすい性質(たち) なのだ。それは幼稚園に通い始めてすぐに発覚して いたものの小中高の学生期より今日に至るまで一 貫して彼自身にその自覚はない。 (to be continued) 次なる目標はブログランキングベスト10入りへ。 皆様ひとつよろしくお願いいたします。面白くなけ ればそれまでですが、みどころがあるようなら下記 の文字列をクリックしてやってください。 ではまた明日(かな?)。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2006.04.05 23:01:53
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