カテゴリ:パーソナル
イバラーは得てしてグルメを自認している。それもかなり強く自認している。強度の自認である。ゆるぎない自認と言っても差し支えないし、パラノイアと断じれば断じられない事もないくらいモノ凄い自認グルメなのだ。世界中の料理だって彼らはなんの臆面もなく批評するだろうし、おそらく食べたことがなくても美味いだの不味いだのと評する筈である。それぐらい凄いグルメとしての自認があるわけだが、実はその自認自覚は我々一般人の想像を超えてはるかにもの凄い自認自覚であり、それがどれくらい凄いかと言うと…って、もういい!冒頭からあんましくどいのも読みづらいのでこれくらいにしておこう。
で、彼らは只単にグルメなだけでは飽き足らず、物足りず、欲求不満たらたらの体(てい)でアイ・アム・グルメを他人にも解らせるべく料理を、素材を、調味料を、ハーブを、鍋や釜や皿を延々と何時間でも何日でも何週間でも語り続け、チェックをいれた店店のその内装からトイレから伝票から冷暖房の利き具合からスタッフの人相まで瞬時のうちに評価を与え、それをまたお伺いも立てていないのに私の如き無辜の民に向かって語りまくるのである。 これは正味難儀である。できるものなら止めてほしいし、避けて通るべくこちらもあの手この手で逃げまくるのであるが、グルメイバラーはそうは問屋がなかなか卸してくれない。こちらがわざわざグルメネタを避け、Tシャツだの雑貨だのの話題を展開しているにも関わらず何処からでもグルメに話を引き戻すのだ。例えばこんな具合だ。 「筒井康隆なんかも最近書く本はすっかり爺のそれですね。彼も、もう還暦過ぎたし、テレビタレントでも食えるようなったから書くモチベーションなんてないんだろうな。ここ何冊は昔のアイディアの使い回しだけでなんとか食いつないでいるって感じですからね」 「ああ、食いつないでるって言えばね、仁科くん。オレも先日食いつないだのよトンカツを。昼めしに○○亭のソースカツ丼食ってさ、三時に商談で△△町に行ったんだけど△△町に行ってさ□□□食堂のローストンカツを食わないで帰るわけには行かないからさ、ちょっと昼飯のソースカツ丼残ってたんだけど強引に食ったわけよ。でも強引に食っても旨かったね。さすが□□□食堂のロースは違うわ。うん。でも店員さんにちょっと難があったんだよね。接客態度とか別に悪いってわけじゃないんだけど、その店員、新人さんらしくてさ、オレの顔を覚えてないのよ。あそこ行くとね、普通は、注文なんか聞かなくてもオレの顔見たらローストンカツ定食を持ってくるのが当たり前なのにさ、お冷持ってくるなり『ご注文は?』なんか訊いてくるからびっくりしてさ、お勘定のとき店主に言っておいたよ。新人さんに俺の顔と注文覚えさせておいてねって。常連顧客の顔覚えるのも仕事だからねって。そうしたら店主、平謝りでさ。失礼しました失礼しましたって何度も頭下げるからオレも言ってあげたのよ。いやいやそんな気にしないでくれって。オレはこれから何十回でも何百回でも来るんだから次まで覚えておいてくれればそれでいいからって。なんならオレの写真撮っておいて新人さん入ったら覚えさせておいたらいいのにって提案したらさ、店主のやつ『はい。次までデジカメ用意しておきます!』なんて言うんだよ。まいったね。写真まで撮られるんだから常連はつらいよね。アハハ。アハハハ。でさ、八時から◎◎通りで飲んでたんだけど新しいトンカツ屋がオープンしてんのよ◎◎通りに!これは食べてみるしかないと思ってさ、入ったのよ。その新店に。そうしたらさ●が▼になって×××が■■だから………」 という具合にグルメイバラーの話は延々と三時間ほど続いたりするから聞かされている私のほうは息も絶え絶えとなるのである。嗚呼合掌。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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