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職の精神史

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2008.04.25
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※この文章は、2003~2006年に大学生・若手社会人向けに配信されたメルマガ『内定への一言』のバックナンバーです。


261.「情報が価値を有するのは、曖昧で、未確認で、整理されていない時に限られる」(P・F・ドラッカー)


さて、最近は「就活アンケート」の集計に取り組んでいますが、内定報告と合わせてよく聞くのが、「学部って、全然関係ないんですね」という言葉です。毎年、就活前になると、文学部の比率が多いFUNでは、「文学部は不利じゃありませんか?」という質問が来ます。まったく、何を根拠にした質問か、理解に苦しみます。だから僕は、「文学部ほど仕事に有利な学部はない。法学部も経済学部も、就職には有利かもしれない。しかし、文学は王者の学問だ。物語を構想する発想がなければ、事業は成功しない」と言うことにしています。

質問をした学生さんには、「文学部も、別に不利というわけじゃないよ」という慰めでももらえればよかったと思っていたのか、「他の学部より有利だ!」と断言されて、面食らう人もいます。しかし、文学部は有利なのだから、仕方ありません。僕は事実を話しただけです。以下、その事実を解明していきます。

法学、経済学、商学が、一定量のまとまった「過去」を素材に、共通性や論理性をもとめて学問体系を組織しているのとは違い、文学は純粋に人間の想像や心理を扱い、未来を構想することができます。文学ほど幅広いテーマを、好きなだけ深く、自由に追究できる学問は、他にないのではないでしょうか。確かに、専門性に欠けると言えば欠けるかもしれないし、具体的に何かの資格で知識の質や量が証明されるわけでもないので、学んでいる人は、客観的に見た有用性に疑問を持つのも、分かります。

では、「社長」に資格はありますか?会計にも税務にも、法律にも労務にも、それぞれ専門の資格があります。過去のデータが集まり、基準が設定された分野だからこそ、資格が作れるのです。それに反し、社長だけは純粋に、組織や社会の未来を描く仕事であるため、その知識や発想を規制することはできません。社長の周りに集まる資格者たちは、社長の発想が法律や規則に照らして正しいかを判定し、より効率的な努力を提案することで、報酬を得ています。

「先入観を持たずに、未来を自由に発想する人」がいなければ、組織は発展しないし、社会も豊かになりません。僕は「文学」と社長の仕事は、とても似ていると思います。目の前の現実や現象から、自分の構想を支える情報やデータを抜き出し、自由に編集して、「アイデア」という結果に変換していく「事業計画」という作業は、物語のシナリオを書くのに、とても似ています。あるいは、異質な文化を比較対照し、その共通点や相違点を探り、文化が導入・伝播される過程を研究して、その広がりを分析する比較文化などは、マーケティングそのものです。

特に、英語や中国語といった「外国語関連学科」の勉強は、異質の言語体系で表現されたアイデアを、適切な日本語に訳し、納得できる意見として再編集する訓練を集中的に行います。これは、証券会社や広告代理店の仕事そのものです。

これらの仕事では、人の思いや社会の動きを言葉に変換し、関係者が納得できる発想まで落とし込まなければ、顧客が掴めないからです。「翻訳」といっても、別に辞書を片手に、英文を和訳するだけの作業ではありません。子供の声を商品に反映させるのも、高齢者のニーズをサービスに結実させるのも、全て「翻訳」です。外国語ばかりが対象ではないのです。

昨年亡くなった経営学の大家・ドラッカー教授は、著書「チェンジ・リーダーの条件」(ダイヤモンド社)の中で、こういう言葉を残しています。「情報が価値を有するのは、曖昧で、未確認で、整理されていない時に限られる」と。

曖昧、未確認、未整理…が条件って、何だか変ですよね。つまり、マスコミが扱い、幅広く大衆に共有されてしまったものは、もう「情報」とは呼べない、ということです。情報は、情報となる前に察知し、人が編集しないうちに可能性を見抜いて、何らかのメッセージに変換して活用しなければ、価値がない、と言っているのです。

例を挙げてみます。学生が毎年嫌がるものと言えば、「教科書の購入」でしょう。自分の大学でしか売れない「永遠の初版」を、ここぞとばかりに数千円で売り、半分も進まずに出番を終える、あの高い教科書。ブックオフに行けば、九大や西南のテキストが、100円でずらりと並んでいます。

その「教科書販売」の時期が近くなると、「親にお願いせんといかん」、「先輩にもらおう」、「うちのゼミは5,000円らしい」といった声が、毎年キャンパス中で聞こえてきます。実は、この声が「価値ある情報」なのです。あなたは、ある時期を迎え、周囲の学生が「嫌だなぁ」、「またか」、「金がない」と言っているその「対象」を察知し、それらの情報に共通点を見抜いて、「これは、教科書の中古販売が当たるぞ」と、新たなアイデアを練ればいいだけ。

誰も「教科書専用のブックオフがあればいいのに」とか、「生協で中古テキスト即売会でもやればいいのに」とは言いません。そのような「編集された意見」は、マーケットのどこを探しても、見当たらないのです。 あるのはただ、「曖昧で、未確認で、整理されていない」声や現象のみ。それに共通点を設定し、一定のメッセージを持ったアイデアに編集してこそ、「情報」が生まれるのです。

従って、ネットや新聞などの「媒体」で「情報収集をする」というのは、基本的にありえない行為です。媒体で「情報の断片を収集する」というのは可能ですが、本当の情報とは、「知ったこと」ではなく「考えたこと」です。

僕が、学生さんが学習するよりも速く、次々とテーマの違う講義のレジュメを執筆・編集できるのは、1日5冊本を読んでいるからではなく、次々に考えているからです。だから、どんな媒体を見るか、どんな知識を得るかよりも、「どんな疑問を持っているか」、「どんな考え方をしているか」の方が、実はずっと大事なのです。知識や情報は、考え方を引き出す媒介の役割しか果たせません。

従って、社会や人間を見て、そこにテーマを設定し、提出された課題に対して、その裏付けとなる事実や情報を抽出・編集していく「文学」の手法は、事業に絶対不可欠なものです。よって、「文学部は就職に役立たない」というのは、真っ赤な嘘。惜しむらくは、そう言う学生に限って、社会や仕事の情報が不足しているということです。事業や仕事に「ストーリー性」を見抜いてみれば、驚くほど文学的手法が当てはまることを知り、俄然、自信が湧いてくるでしょう。

ハーバード大学のロバート・ライシュ教授は、著書「ワーク・オブ・ネーションズ」(ダイヤモンド社)の中で、21世紀の働き方には、以下の3種類があると言っています。

1.ルーチン・ワーカー
2.インパースン・サービス
3.シンボリック・アナリスト

の3つです。
1は「決められた作業を行う単純労働者」で、肉体労働者やサラリーマン、公務員のこと。
2は「人間を相手にするサービス」で、日本では「接客業」と呼ばれる職種。ライシュ教授は、女性の雇用が飛躍的に伸びたのは、このインパースン・サービスが女性らしさを必要とするからだ、と述べています。

そして3の「シンボリック・アナリスト」とは、和訳すれば「象徴分析者」というほどの意味ですが、つまりは「社会や時代の中からテーマを見抜き、数々の事実、情報を比較検討して、アイデアを生み出す者」ということです。

「21世紀はシンボリック・アナリストの時代だ」とするライシュ教授は、知識を正しく解釈する学習方法よりも、創造的・体系的に発想する学習方法が大事だと説き、この分野で出遅れた日本と、世界の最先端を行くアメリカを比較しています。「アイデア」の生まれ方が、具体的に「なるほど!」という実感を持って理解できるこの名著は、もう古本屋でも滅多に見つからず、見つけた1冊はインストラクターの大月さんにプレゼントしました。

冬にBusiness Cafeで読んだ時は、学生さんたちから次々に「なるほど!」という声が出ましたよね。文学部で、自分の専攻に自信を持ち、面接官に「文学部は就職に最強です」と言いたい方は、ぜひ読んでおきましょう。

一橋大学では、こういう本をテキストに使っているそうですが、FUNでは世界の名著を集め、この1年で「FUN Library」を設置して、東京や大阪の学生を圧倒する「ミニ・ビジネス図書館」にしていく計画です。最近7ヶ月で、1,000冊ほど買い集めました。次の引越では、リビングルーム(20畳以上を予定)を「部員・OB専用図書館」にするので、楽しみにしておいて下さいね。

併せて、竹村健一さんの「シンボル・アナリストの時代」(祥伝社)も読むといいですよ。ライシュ教授の著書のダイジェスト版といった感じで、「シンボリック・アナリスト」の特徴や本質を、分かりやすく説明しています。







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Last updated  2008.05.09 01:25:43
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