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カテゴリ:思ふこと/旅日記
最近、「大橋文庫」に行ってみた、という学生の声を聞くようになった。 FUNの学生、中でも「近現代史勉強会」に参加している学生なら、だいたいみんな名前は知っている名物古本屋さんだ。 なぜ「名物」なのか? それはとにかく、お店の中の状態がすごいのだ。 そのすごさを味わうため、まずはこちらを見てほしい。 店内を隈なく撮影した方のブログだ。どなたかは知らないが、古本好きの方のようだ。 【衝撃の店内の様子はこちら】 …と、まぁ、こんな感じなのである。 しかも、これは最近こうなったのではない。私は10年ほど前から時々行っているが、ずっとこうなのである。 大橋文庫は、 1)一人では行けても買えないことがある。 2)店内に入れる人数は三人、女性なら四人が限界である。 3)看板に書かれている営業時間が当てにならない。 4)20年前の物価水準のまま埋もれている本も多い。 という魅力的なお店だ。 もっとも、古本業界は独特の世界観を持った人が多く、大名にある「痛快洞」なども、営業時間中に、電気をつけっぱなしにしたまま、「3時間外出してきます」などと貼り紙がしてあることがある。 私は絶句した。 「いつから3時間なんだ?」と。 しかし、また同じような貼り紙を見て、「30分出てきます」、「1時間不在」などと様々なバリエーションがあるのを見て… この業界の人々は、顧客への思いやりがあるのかないのか、一体どっちなのか、人間性を深く考えさせられた、というのは嘘だが、「活字文化の危機の中、なんておこがましい業界なんだ!」と魅力を感じた。 一、「一人で行けても買えぬ」 商品の陳列、いや、「山積」がひどいため、仮に名著を見つけても、他の「山」を崩すのが大変で、買えないことがある。 私は以前、この山を隈本さんや大月さんと、またある時は一人でせっせと切り崩し、 「兄小林秀雄との対話」…4冊 「美に生きる」…4冊 「春宵十話」…3冊 などを見つけてきた。 まぁ、それらは全て学生にプレゼントしたのであるが、私のレジュメには、こういう肉体労働の努力も詰まっているのである。 いわゆる「労働価値説」だ。 二、店内に入れる人数が少ない。 だから、大人数で行く時は、近くの大橋ブックオフと時間帯を分けるか、あるいは「珈琲館」で待っていてもらうことにする。 レイテ沖海戦のように、三人単位で「第一攻撃部隊」、「第二攻撃部隊」、「第三…」とやっていかないと、店内を回れないのである。 しかも、いくら攻撃しても、山積した本の山は旅順要塞のようにビクともしない。 通路は狭く、歩く時はクラシックバレエのような緊張感が漂う。 本棚は近く、概観しにくい。 下の方にある本などは、男性の体格では、見ることさえ不可能なのではないだろうか。まるで、ラジオ体操をさせられているようである。 三は飛ばして、四、物価水準。 くしくも大月さんも発見したように、このお店の本の「地層」を掘っていくと… 「古い地層ほど新しい」 という、科学では解明できない現象が起こる。 開業は25年ほど前ということだが、昔は一冊一冊をビニールカバーに入れ、値札を入れて、丁寧に陳列していたのであろうか。 この時期は「白亜紀」や「ジュラ紀」と言えるだろう。 今は、本の裏側に鉛筆で小さく数字が書いてあるが、昔の在庫は、値段を書いた紙が袋の中に入っている。 …といふことは? 「値段が書き換えられない」のである。 つまり、昭和50年代から、わが国の物価は2倍ほどに上昇しているが、このお店の本は、その当時の物価のままなのである! こ、これって…。 「デフレ」だ。 つまり、このお店に足を踏み入れた瞬間、その空間は昭和50年代~60年代の物価水準にあるのだ。 なんとお得なお店なのだろうか。 みなさんも、ぜひ足を運んでみてほしい。 もし、運悪く閉まっていたら、隣のお店がおいしいという噂を聞くから、そこか、大橋ブックオフに行くのもいいだろう。 以上、「閉ざされた古本空間」の旅行記であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.20 18:42:43
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