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 NOB1960@ Re[1]:無理矢理持ち上げた結果が…(^^ゞ(10/11) Dr. Sさんへ どもども(^^ゞ パフォーマン…

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2005年06月16日
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これまでに30本以上も書いておきながらなんで今更プロローグなんだって気がしないでもないんですが、そもそも楽俊が雁に任官して5年で慶に移るって考えてみたら変なんですよね。官吏になるには戸籍だって必要だし… その辺りのことはどうするのかって考えてみたんだけど、あっしの中では雁への任官は「あるばいと」の延長であり、慶への任官も巧での任官を目指すための就職活動の一環ってことにしちゃいました。後には良拓によって半獣追放令すら出ちゃうくらい半獣って巧では恵まれていないけど、それでも故国でそういう差別をなくして誰もが幸せになれるようにしたいってのが楽俊のモチベーションの根源にあるんじゃないかと思うんですよね。それを延王や景王に納得してもらう場面がないと変だなぁってことで屋上屋って感じだけど、敢えて書いて見ました。実際お話の始まりである「みけ」で十分だって気もしないでもないんですが、楽俊の回想風の語りで始まるのもいいかなって思ったんですよね。この日の出来事については4人の胸に収められているんですが、「楽俊の弁明」では浩瀚に見破られていますよね。まぁ、景王の昔からの知人だけど、雁の大学を首席で卒業して玄英宮に伺候してたった5年で辞めて慶にやってくるっておかしいと思うのが人の常でしょうね。まぁ、「へっどはんてぃんぐ」したって景王辺りは言い訳していそうな気もしますね(^^ゞ


「将来の夢」

おいらの名前は張清、字は楽俊。巧州国淳州安陽県鹿北ってところで生まれ育った。おいらは半獣だ。獣形になると子どもくらいの大きさの鼠になる。鼠の姿でいれば服も要らないし楽なんだけど、そうも行かない。おいらの生まれた巧では半獣ってのはどっちかといえば疎まれていたようだった。半獣ってだけで禄に学校も行けない。自分で言うのもなんだけど、おいらケッコウ頭よかったんだけど、小学までしか通えないってことになっていたんだ。まぁ、母ちゃんが頼み込んでどうにか上痒には行けたけどそれまでだ。あとは父ちゃんの遺してくれた本を読むくらい。少学にだって行けそうだったのになぁ… 上痒だって母ちゃんが給田売ってどうにかしてくれたから贅沢はいえなかった。で、二十歳過ぎたけど、給田がもらえるかって言えばダメなんだよな。半獣だから。誰も雇っちゃくれない。半獣でも牛とか馬とか力の強いのになるのがいて、そういうのを基準にしてるから半獣雇うと税金がべらぼうに高い。おいらみたいに力のない鼠になる半獣なんて雇ったら損になるだけだからな。だからおいらは考えていた。いつか巧でも半獣が差別を受けないような国にしてぇなって… まぁ、そのためには力をつけなきゃダメだ。何でも青海の向こう側にある雁では半獣でも給田がもらえたり官吏になれたりするらしい。少学だっていけるそうだ。雁にいけば、って思わずにはいられなかったけど、女手一つでおいらを育ててくれた母ちゃんを残していくのはなぁ… おいらには踏ん切りがつけられなかった。このままじゃダメだってことはわかっていたけどな。そんなある日おいらはとんでもないものを拾っちまった。役人に追われている「悪い海客」だ。まぁ、「悪い海客」といったって見た目はただの娘だ。傷ついて疲れ果てていた。放っておくのも目覚めが悪い。ついつい仏心を起して家まで運んで、臥牀に寝かしておいた。持ち物には剣だとか物騒なものもあったが、気にしなかった。辛そうに寝ているんだからな。こりゃ放っておけないよ。よほど辛いことがあって誰も信用できないって顔をしている。海客が来る時に蝕が起きて田畑が潮を被ってダメになるとか、波に人が攫われるとかあるそうだけど、海客が望んだことじゃない。間違ってこっちに流されてきただけで、海客だって戸惑ったりもするだろう。捕らえられたら抵抗だってするだろう。おいらがそういう立場になったらきっとそうするだろうからな。諦めるのは簡単だ。けど、諦めたくはない。その海客…陽子って名前だった…はどうにかして蓬莱に帰るんだって諦めないでいた。だから手を貸そうと思った。雁にいけば半獣だけでなく、海客だって巧よりはマシは扱いを受ける。だから雁に行こうと誘った。陽子を誘うことでおいらも踏ん切りをつけたようなものだ。妖魔が出てアブナイかもしれないけど、母ちゃんを置いて雁に行く。雁で立派になって巧に戻ってくる。母ちゃんを幸せにする。そのためにも今行かなきゃイケないんだって。青海に面した阿岸から雁の烏号に向かう船に乗るつもりだったが、途中の午寮で陽子とはぐれちまった。午寮の街の手前で妖魔に襲われ、おいらは意識が吹っ飛んじまった。陽子は役人を恐れて逃げちまった。おいらは陽子を探したけどダメだった。役人を懼れて先に行ったかもしれないと思って阿岸までいき、烏号に渡った。阿岸でも烏号でも陽子はいなかった。おいらのほうが先に着たんだろうってことで烏号で働きながら待つことにした。そして阿岸からの船がつくたびに様子を見に行った。そして一月くらい経った頃やっと陽子と再会できた。それからが大変だった。あれこれ話している内に陽子が普通の海客じゃないことがわかったんだ。おいらは何気に言葉が通じていたけど、普通の海客はこっちの言葉がわからないってことだ。つまり陽子は卵果が蓬莱に流された胎果じゃないかってことになり、そして… まさかなぁ… おいらが拾ったのが慶東国の王様だったとはな。ビックリしちまって慌てて作法通りにしようとしたら陽子に怒られた。「海客でも差別しなかったのに、王だったら差別するのか」てな。ホンと変わった奴だよ陽子は。それから延王や延台輔の助力を得て、偽王に捕われていた景台輔を取り戻し、立派な王様になった。けど、単なる半獣のおいらのことを変わらずに友達だといってくれる。そのお蔭で雁の大学にも入れたんだよな。それがもう五年前のことだった。延王や延台輔は陽子の知り合いだからってことでおいらにもよくしてくれる。休みのたびに「あるばいと」だといってたまを貸してくれてあちこちの国を見て回らせてくれたりもした。本で見るのと実際に見るのとは大違いだってのがよくわかった。その街の人と話すといろんなことが見えてきた。何度も旅することでおいらの中の引き出しが増えていったような気になってきた。物凄く恵まれていると思う。友達にも恵まれた。蛛枕には書籍をイッパイ貰った。鳴賢には弓射や馬術を叩き込んでもらった。お蔭で両方とも允許がもらえた。ホントに鳴賢のお蔭だ。でなければ卒業も危なかっただろうな。その鳴賢は去年の春雁に任官した。今では天官府で働いているらしい。つまり延王のお側だ。たまに大学に風漢と称して遊びに来てたから、玄英宮で見かけたらきっと魂消たことだろう。そしておいらも今度の春には大学を卒業して雁に任官する。五年も世話になったからなぁ… と、その時おいらの背中が叩かれたんだ。

「楽俊!」
「うわっ… 陽子?風漢?六太?」
「一応、外から声はかけたぞ。物思いにでも耽っていたのか?」
「い、いや、そんなことはないけど、何でここに?」
「たまたま休暇が取れたんで風漢のところに遊びにきたんだ。で、足を伸ばした」

と、快活に笑うのは緋色の髪を無造作に括った翠の瞳をした少年、にしか見えない少女、今の景王陽子だ。その後ろには腰に物騒なものを差した偉丈夫、ここでは風漢と名乗っているこの国の王、延王尚隆だ。そして頭に布を巻きつけて、それがウザったいらしい十二三歳の少年は六太という名のこの国の麒麟、延麒だ。その稀なる貴人たちが何でおいらの大学の寮の部屋にいるんだって!誰かが来たらどうするんだ!そんなおいらの心の叫びが聞こえたのか、風漢が声を落として提案した。

「ここでは誰に聞かれるかわからないから、場所を移そう」

ということで移動したのは雁の首都関弓の街にある極々普通の酒楼だった。その二階の房室を借り受ける。注文した品が並べられたところで陽子が口火を切る。

「楽俊は今度の春には大学を卒業するけど、雁の官吏になるってのはホントなのか?慶には来てくれないのか?」
「ああ、今度の春から雁に任官するつもりだ」
「で、でも…」
「いや、すぐにでも陽子のところを手伝いたい気持ちはあるけど、他国のものを重用できる感じじゃないだろう?それに、おいらは雁の恩義で大学を出してもらった身だ。その分だけでもお返ししなきゃ拙いだろう?」
「ああ、それは気にしなくていいよ。だって『あるばいと』で十分元は取れてるからさ、そうだろ?尚隆」
「うむ、あれだけでも十分すぎる働きだと思う。お蔭で遊びまわる時間が増えた。が、少し面白くない」
「なに言ってるんだよ、自分がフラフラ飛びまわれなくなったからって八つ当たりはよくないぜ。それに楽俊が雁の官吏になったらますます出番はなくなるんじゃねぇか?」
「ああ、それが悩みの種なんだな。楽俊は欲しい、けど、楽しみが奪われるのは厭だ、困ったもんだ」
「だったら、すぐに慶に下さいな」
「そういう問題ではない。楽俊の気持ちというものがあるだろう。こちらとしては十分だと思ってはいるが、楽俊はそれ以上のものを得たと感じているらしい。だからその分のお返しをしてくれるということなのだろう?」
「はい、『あるばいと』はおいらにとってもとても役に立ちました。その御礼が出来ていませんので、せめて数年でも」
「…ということなので、俺たちは五年ほど楽俊の面倒を見たから少なくとも五年は働いてもらおうと思っている。そうすれば楽俊のほうも気が済むだろうし、慶のほうも楽俊を受け入れる準備も整うのではないか?」
「そうですね… 慶は漸く落ち着き始めたところ、新しい血には反発も強いかもしれません。しかし…」
「まぁ、こう考えればいいだろう。雁で官吏として頭角を現し、それを『へっどはんてぃんぐ』すればいいのだ。 …確かそんなような言葉だよな、六太」
「そうそう、珍しく間違っていないぞ、こりゃ明日は雨か?」
「そういう問題か?」
「違うのか?」
「…それに…」
「え?何?」
「おいら、今は無理だけど、いずれは巧のために働きたいんだ。巧でおいらみたいな半獣や海客も幸せになるように。他所もののおいらが慶で受け入れられるくらい雁で頑張って、さらに巧に受け入れてもらえるように慶で頑張って… こんな風に言うと風漢や六太や陽子を利用しているみたいで悪いんだけど、おいらはヤッパ巧の民だ。巧のために頑張りたい、巧の民のために働きてぇんだ。その時が来るまで、その時が来るように頑張りてぇんだ。そのためにも制度がかっちりしている雁でそれがどういう風に機能しているのかをきっちり見て行きたいし、これから制度を整えていく慶でどういう風にしていけば改革していけるかを実際に学んでみたいと思っているんだ。こんなおいらでもいいかな」
「何を言っている。最終的には巧のためでもまずは雁のために働いてくれるのだろう?俺はそれでいいぞ」
「そうそう、最終的に巧のためでもそれが回りまわって雁のためになるかもしれねぇしな」
「楽俊、そんな楽俊だからこそ助けてもらいたいと思ってはいけないかな?とりあえず五年は待つことにするよ。それまでに楽俊を受け入れられるようにするし、楽俊も『へっどはんてぃんぐ』されるくらい頑張ってくれ。慶には仕事はいくらでもあるんだからな」
「…ありがとう」

自分のために生きていきたいというおいらのことをこんなにも買ってくれる人がいるって物凄く有り難いことだ。こんなにも買ってくれる人の期待を裏切っちゃなんねぇな。おいらは照れくさくて酒盃を思い切り干した。なんかしょっぱい味がしたけど、嬉しいしょっぱさだったな。





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最終更新日  2005年06月16日 12時35分21秒
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