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カテゴリ:想像の小箱(「十二」?)
蓬莱には延麒や泰麒が行っているようですが、向うのお金の調達とか大変そうですよね?もし、蓬莱に界身があってそこでお金を引き出せたら便利ですよね?玉葉なら女仙たちを派遣するのにそういうもの用意しそうですが…
「蓬莱にて(前編)」 峯果が失われてから一年あまり経った頃、泰麒と延麒は碧霞玄君・玉葉から呼び出しを受け、蓬山にやってきた。こちらから尋ねることはあっても、玉葉のほうから呼ばれるということは極めて珍しいことで、泰麒は初めてだった。雲海の上を延麒は悧角に泰麒は傲濫に乗ってやってくる際に泰麒は延麒に尋ねた。 「碧霞玄君から呼ばれるって私は初めてなんですが、延台輔はありますか?」 「まぁ、俺も最近はなかったけど、初めてじゃないな。呼び出しと言えば若い麒麟の面倒を見ることが多いんだよな。泰麒の時には景麒が呼ばれたりしてただろう?そんなものかな?若い麒麟がいるとするなら宗麒か峯麒だろうけど… イロイロと噂になっているからなぁ… まぁ、いるとしても俺じゃなくて高麒とかを呼ぶんじゃないか?泰麒はまだ若い方だけど、俺はもう六百歳だぜ。今時の若いのとは話だってあわないし… らしくないよな?それに他の麒麟と一緒にってのは初めてだし…」 「宗麒と峯麒の二人分って意味ならそうかもしれませんが、どうなんですかね?」 「宗麒も峯麒もいないかもしれないからな。宗麟が登霞してから二度も大きな蝕が蓬山を襲ったらしい。それで卵果が流されたかもな。その辺はハッキリしない。でも呼び出されたのが二人とも胎果ってのは…」 「やはり、蓬莱に?」 「おそらくはそうだろうな。女仙が大挙して蓬莱に行ったとか聞いたけど、どうなのかな?」 「女仙だけでは見つからないのでしょうか?」 「そんなことはないと思うけど、蓬莱ってのは場所によって人がやたら多いだろう?そのせいじゃないか?」 「ああ、団地の中から誰か一人を探すってのは大変ですよね。そういう場所なら私たちでも…」 「ある程度は麒麟同士だと感じるものがあるじゃないか。それに期待してるんじゃないのかな?泰麒の時だって俺が何気にそれらしい気配に気がついたのがきっかけだしな」 「そうでしたね。その際はお世話になりました」 「まあな… 今回は他の連中も呼んでいるのかな?」 「廉台輔や氾台輔ですか?」 「廉麟は呉剛環蛇が必要だから呼ばれてるだろうな。あとは…どうなんだろう?」 「どうなんでしょうね?」 「とりあえず急ごう」 「はい」 二人が蓬山につくと、いつもと同じように碧霞玄君が出迎えにでていた。玲瓏たるその顔が少し曇っている。 「延麒に泰麒、二人とも忙しいところ呼びつけてすみませぬ」 「いえいえ、ご無沙汰しております。…なにやらご心痛のようですが?」 「…どうぞ、こちらに」 玉葉は延麒の問いに答えずに二人をある堂に導き、その中にある階段を下りていく。どうやら蓬路宮に向かうようだ。玉葉は白亀宮に二人を導き、茶の用意をする。どうやら長い話になるようだ。蓬路宮全体の雰囲気はどこか沈んでいる。麒麟がいるときの華やかさなどまるでない。やはり、と思いつつ玉葉の手元を見ると茶器の数が一つ多い。それを訝しく思ったとき、背後で女仙の声がした。 「廉台輔をお連れしました」 その声に振り向くと平伏している女仙の後ろに廉麟が立っていた。廉麟の顔色はあまり良くはない。奏が斃れて五年。南方の諸国はその影響で徐々に疲弊しつつあった。慶から楽俊が清漢宮に乗り込み、取りまとめに奮闘している。しかし、それはまだ噂が下火のうちにかき消されているからだ。奏の麒麟は蓬山にいないという噂である。もしもこの噂が真実であると知れたら奏の民は一気に周辺諸国に流れ込んで行くかもしれない。そのことがわかっているだけに廉麟の顔色が良くないのだろう。延麒や泰麒の顔色も決して良くないに違いない。廉麟、延麒、泰麒の三人が卓子につき、茶器を手渡され、一口茶をすするまで、玉葉は口を開かなかった。三人の麒麟は玉葉が口を開くのを待った。 「この様子を見ればわかるだろうが、今蓬山には麒麟がいない。本来いるはずの宗麒も峯麒も蝕に奪われてしまった。宗麒は北西に、崑崙の方向だったのでもう五年にもなるのに手がかりの一つさえない。見つかる見込みは今のところはない。峯麒は昨年東に、蓬莱のほうへと流された。こちらならばどうにかなると女仙たちを大挙して蓬莱に送った。卵果が蓬莱の人の胎内にいるときはハッキリしないが、それでも漠然とどこにいるかを掴むことはできる。とはいえ、胎内にあるときにはこれをもぐことができない。漸く数ヶ月ほど前に体内から出たらしいが、困ったことになった」 「胎内から出れば呉剛環蛇を使ってもぐことができるのではないのですか?私のときはそうしたと聞いていますが?」 「ほぼ場所は特定できた。少蝶、あれを」 いつの間にか玉葉の後に女仙が控えていた。この女仙が卓子の上に蓬莱の地図らしきものを広げた。 「この少蝶らが峯麒を探して蓬莱を巡り、おおよその場所には見当をつけた。が、その場所がここじゃ」 「…ここは確か最近再開発が進んでいる…」 「そう、蓬莱ではこちらとは違い、『まんしょん』というのか?大きな建物に多くの人が雑居しているそうな。それがあまりにも多く、しかもいずれも似たような外観で区別すらできず、迷子にすらなる始末だとか。そんな場所では女仙では探索は難しい。そこで…」 「俺たちが麒麟の匂いを嗅いで見つけ出せってことかい?そりゃ女仙よりは強く麒麟の気を感じるかもしれないさ。でも、ここには何万人も住んでいるんだろう?その中からとなると…」 「もちろん容易に見つかるとも思えぬし、かつての泰麒の時の経緯もある。が、ここはなんとしても頼む」 「…玄君」 「此度のこともあり、蓬莱に界身を用意した。峯麒を見つけてくれたなら使って構わぬ」 「え?界身を蓬莱に?向うの清算をこっちでできるようにしたのかい?そりゃ凄いな。今までケッコウ苦労したからなぁ… なぁ、泰麒?」 「そうですね。向うの書籍とかも入手しやすくなるんじゃないですか?そうなれば…」 「どうじゃ、実際に使うのはお主ら二人しかおらぬであろ?もともとは女仙のためのものであったがの。使わぬのならたたむだけじゃが?」 「ちょ、ちょい待ち!誰も使わないなんて言ってないよぉ。な、なぁ、泰麒、そうだよな?」 「そ、そうです。そんな便利なものをなくすのは反対です」 「じゃが、お主らが峯麒を連れ戻さなんだら…」 「わ、わかったよ。なんとしても峯麒を探し出すよ。で、その界身の場所っていうのは?」 「そらそれならここにある」 玉葉はひょいと右手の先に一枚の紙を持ち、延麒の前でひらひらとさせる。延麒がついと紙に手を伸ばすとひょいと避ける。延麒は恨めしそうに紙と玉葉を交互に見つめる。 「これは峯麒と交換じゃ」 「…ってことは今回は使えないってことか?」 「ある程度必要なものはこちらで用意する。が、常日頃から蓬莱と往復しているそなたたちじゃ、足りぬものなどないであろ?」 「そりゃそうだけど…」 「では、すぐにでも…」 「チョイ待ち。峯麒のことはわかった。宗麒はどうなんだ?」 「…宗麒はおそらくは崑崙に流されたと思う。あの地は広い。かつて峯麒が三度流され、三度とも見つからなんだ。此度も三年にわたり消息を探ったが何一つ得るものがなかった。今はもう探してはいない」 「峯麒の時と同じ感じなのか?では宗麒も三十年かの地で戻れずにいるというのか?」 「…そうではないとはいえぬ。そうであるかも知れぬ。が、こればかりは妾では知りようのないことじゃ。天も与り知れぬと思うが…」 「今奏は慶から楽俊が行ってどうにか崩壊を防いでいるが、この報が流れたら一気に崩壊するかもしれない。そうなれば巧や才はもちろん、慶や舜、範や漣も対岸の火事とは言っていられなくなる」 「麒麟は生まれて六七年で乳離れしますが、そうすると麒麟旗が揚げられるんですよね?となるとあと三四年で…」 「ああ、麒麟旗が揚らぬのがおかしいという噂になろう。なぜ揚らぬかということになれば芳のことがすぐに頭に浮かぶ。三代合わせて九十余年も麒麟がいないままだ。それと同じことが奏にも起こると考える輩も出てくるだろう。しかも、抑えとなる王も麒麟もいないとなれば王師が暴走しても止めようがない。…こういう事態は考えているのか?」 「これまでこのようなことはなかったからの。他国に攻め込めば『覿面の罪』に問われる、が、問われるものがいない。となれば他国を攻め込むのに歯止めはなくなってしまう。しかも奏は強国で、巧や才では如何ともしがたいだろう。はたしてどこまで民が冷静でいられるかにかかっておるのだが…」 「つまり、我らでどうにかしろということか。わかった、その話は峯麒を取り戻してからにしよう。今ここでサラッと解決できそうじゃなさそうだからな。廉麟、お前のところも大変になりそうだな」 「…はい。虚海を隔てているとはいえ、奏も才も隣国。何事もなく終わってくれればと祈るしかありません」 「じゃあ、行くか。どこから行けばいいんだ?」 「捨身木の近くがよかろう。見つかればすぐに連れ戻せるからの」 「わかった。泰麒、行こうか」 「…はい」 玉葉、延麒、泰麒、廉麟の四名は白亀宮から捨身木の近くへと向かった。その根元には良く似た女怪が二人いた。が、捨身木には女怪が育てるべき卵果は生っていない。一方の女怪のそばに先ほどいた女仙・少蝶が立っていた。他方の女怪のそばにも一人の女仙が立っていた。おそらくは少蝶と同じ立場にある女仙なのだろう。四人が呉剛環蛇を使う場所を決めていると少蝶がそばに近寄ってきた。 「蓬莱での案内を…」 「いや、要らん。お前はあの女怪とともに待っていろ」 「…は、はい」 延麒も泰麒も蓬莱は熟知している。女仙の案内など要らぬ。無論、女仙の気持ちがわからぬでもないが、目立ちたくなかったのだ。胎果である延麒や泰麒は蓬莱に行けば殻に覆われ、違和感なく過ごすことができるが、他のものはそうは行かないのだ。だから、あえて延麒は少蝶の申し出を断ったのだ。少蝶は唇をぐっと噛み締め、女怪のそばへと戻っていった。 「きっと連れ帰るから、安心して待っていろ」 いつになく泰麒がそんなことを少蝶に向かって言った。少蝶は眼を瞠り、やがて瞳が潤み、頷いていた。延麒は泰麒がそんなことを言うとは思っていなかったので、少々呆気にとられたが、気を取り直し、ニヤリとする。泰麒は峯麒のことを自分と重ね合わせているのだろう。延麒が泰麒の肩をぽんと叩くと泰麒は笑顔で頷いた。延麒と泰麒は廉麟が呉剛環蛇で開いた通路から蓬莱へと向かった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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