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ランちゃん健康倶楽部

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鉄欠乏性貧血

【貧血と栄養】
現在は、血液の専門家達は次のような理解の仕方をしています。
貧血であるかないかということは、ヘモグロビン量やヘマトクリット値という数字だけでは不正確なので、血清フェリチンという検査項目を調べて、本当の鉄欠乏の貧血があるかないか、ということを診断しなくてはならない、という理解の仕方です。

●鉄は成長期に欠かせない栄養素
   年齢   フェリチン(μg/リットル)
新生児      110
6ヶ月        5
5~10歳     21
12~18歳    22
18~45歳(男) 94
18~45歳(女) 25
45歳以上 (男)124
45歳以上 (女) 89

この表は、赤十字の調査報告による、年齢別のフェリチン値です。
この表が示していることの意味は、かなり重要なことです。
男性の18~45歳のグループと18歳以下のグループの間では、新生児を除いて大きな差があり、18歳以下ではフェリチンの量が極端に少なくなっています。
これは成長期には鉄の需要が非常に多いと言うことを意味しています。
5歳、10歳、12歳、18歳という成長期には、鉄がなかなか貯まらないのです。
成長期に極端に鉄が不足すると、鉄は軟骨を造ることにも重要な関わりをもっているため、軟骨の異常形成が起きます。これが「成長痛」と呼ばれるものです。
成長期に「膝が痛い」という子供がいます。中には膝の軟骨が飛び出すような子供もいます。重症になるとかかとに軟骨が飛び出すこともあります。こういう子供のフェリチン値は、ほとんど0に近い状態にあったという報告があります。
人間の体は、常に替えなくてはならないものを作り替えていくのですが、そのような時に、肝心な材料が足りないと、本来備わっている機能が充分に働きません。
つまり、貯蔵鉄をしっかり増やしておくように対策を立てることが重要といえるでしょう。
必要なフェリチン値は110だという意見があります。
血液の材料は鉄です。赤ちゃんは成長期に母乳やミルクを飲んでいますが、母乳の中には鉄はあまり入っていません。したがって、母乳やミルクを飲んでいるからといって、赤ちゃんは充分な鉄はもらっていないのですが、赤ちゃんは胎児の時に母胎からせっせと鉄をもらい、鉄をいっぱいもらって生まれてきます。4ヶ月経って体がちょうど2倍になるために必要な造血の材料を、生まれる時に、すでに蓄えているのです。
これと同じように、成長期には1年に身長が5cm、10cm、15cmと急に伸びる時期があります。この時期には、必ずと言っていいほど体は貧血の状態になりやすくなります。この成長期に必要とする栄養を成長需要といいます。成長する時は、それだけ栄養の需要が増えていますから、食べ物をしっかり摂って、さらにいいサプリメントで補充することが望まれます。

●妊娠中の鉄摂取量は胎児の健康を左右する
母体は、どんなことがあっても必要なだけの鉄の量を胎児に渡します。この時に母体がもともと貧血だったら?母体が困ります。胎盤という臓器はものすごい臓器ですから、優先的に胎児の方へ鉄を渡します。このために妊婦さんはひどい貧血になります。
ところが、「貧血だけど、妊婦としてはまあまあですね」とよくいわれることがあるようですが、これは、妊娠している時は血液の量が増えているので、血液の濃度は、希釈されて少し薄く見えます。このために「妊婦は少しくらいの貧血でもいい。その方が胎盤から血液が流れやすく、胎盤の方に入り込みやすいから」と一般的にいわれているのです。
しかし、妊婦は自分と赤ちゃんのために、2人分のエネルギーが必要なわけですから、絶対に貧血であってはなりません。お腹の赤ちゃんのために、妊婦の方は自分でも貧血の予防と対策が求まられます。
また、これも重要なことですが、妊婦の方は、胎児が育つにしたがって鉄をもっていく量は増える妊娠後期ほど、鉄の摂取量を増やすことが望まれます。
母体は胎児にとっての土壌です。土壌が豊かであるほど植物がすくすく育つように、しっかりした母体であれば胎児も健康に育ちます。妊婦となられる方は、鉄を含む栄養素を充分に補充することが望まれます。

●鉄欠乏性貧血は女性に多い
鉄欠乏性貧血は女性に多く、またスポーツ選手にも多くいます。とくにマラソンやエアロビックなどはステップ動作により足裏で赤血球を踏み潰して破壊するので貧血になりやすくなります。
このような貧血の人には必ずといっていいほど、不定愁訴があります。
不定愁訴とは原因のはっきりしない、いろいろな病的な症状の総称です。

<不定愁訴>
(1)寝起きが悪い               
(2)湿疹ができやすい             
(3)風邪をひきやすい             
(4)先発後、毛が抜けやすい
(5)顔色が悪い
(6)神経過敏                 
(7)胸が痛む
(8)吐き気がする
(9)むくみがある
(10)下痢しやすい
(11)食欲不振
(12)疲れやすい、肩がこりやすい       
(13)頭痛や頭が重い事が多い         
(14)立ちくらみ、目まい、耳鳴りがする    
(15)喉の不快感、鼻づまりがある
(16)注意力が低下する、イライラしやすい
(17)歯茎からの出血、体にアザができやすい  
(18)皮膚が青白く、または黄色っぽくなる
(19)体を動かすと動機や息切れがする     
(20)まぶたの裏が白い
(21)爪がスポーン状に変形し、割れやすくなる

●無機鉄と有機鉄
鉄には「有機鉄」と「無機鉄」があります。
平均的な話ですが、栄養価の高いいい食事をすると、1日におよそ10mgぐらいの鉄を摂取できるようになります。ただし、吸収されて体の中に取り込めるのは約1mgです。つまり、10分の1しか体の中に入らないのです。鉄は非常に吸収が悪いものです。
特に植物の中の鉄はほとんど体に利用されることはないと考えていいようです。ホウレンソウやプルーンの鉄は、ほとんど吸収されません。プルーンで貧血が治るとか、鉄がたくさん含まれているといっていますが、これは大きな問題です。
誤解のないように説明しますが、それではプルーンは食べて悪いのかというと、決してそういうことはなく、食物繊維も多く、果物としての効用もいろいろあり、鉄も多く含まれています。ただし、プルーンの鉄は、私たちの体の中に取り込むことはほとんどできないのです。
なぜかと言うと、鉄は「有機鉄」と「無機鉄」があるからです。
例えば、肝臓など動物の体の中にある鉄は「有機鉄」です。有機鉄は体の中に取り込みやすい鉄です。
一方、果物や野菜、穀類に含まれている鉄は、すべて無機鉄です。無機鉄は、私たちの体にとってあまりうれしいものではありません。無機鉄というのは金属ですから、鉄粉が目に入ったら目が痛むように、金属の鉄は、人間の体にとっては「毒」です。植物に入っている鉄は、無機鉄なので吸収率はよくありません。
人間は雑食ですから、植物性、動物性を取り混ぜ、実に多様な食品を食べていますが、一般的に肉や野菜を含め、食品から1日に摂取する鉄が10mgで、その1割に当たる1mgが体内に吸収される一方、汗や尿や便から生理的に排出されるのが1mgといわれています。したがって、鉄は1mg入って1mg出てしまうわけです。このため「鉄は大変に閉鎖的な代謝をしている」といわれています。
ところが、例外は女性の場合です。女性は毎月の慢性出血があります。この出血で約60ml;(日本人の女性の平均出血量は60ml;といわれています)の血液を失います。もちろん人によって個人差はありますが、60ml;出血すると、その時に約30mgの鉄が失われます。1ヶ月が30日ですから、女性に関して言えば、1日平均1mgの鉄を失っている計算になります。
1日に1mg摂取して1mg失っている上に、女性の場合はこの他に1日平均1mgの鉄を失っているので、初潮から閉経までの間に、単純に計算して男性の倍の鉄を失っていることになります。
したがって、原則的に鉄欠乏性貧血は、生理のある時期の女性に特有の症状といえるのです。

【栄養補助による不定愁訴の改善率】
不定愁訴                  事例数   改善数   改善率
(1)寝起きが悪い               737   587   80%
(2)湿疹ができやすい             405   322   80%
(3)風邪をひきやすい             231   181   78%
(4)先発後、毛が抜けやすい          656   514   78%
(5)顔色が悪い                 80    60   75%
(6)神経過敏                  76    76  100%
(7)胸が痛む                  71    56   79%
(8)吐き気がする                65    52   80%
(9)むくみがある                50    30   60%
(10)下痢しやすい                35    23   66%
(11)食欲不振                  27    27  100%
(12)疲れやすい、肩がこりやすい       1053   689   65%
(13)頭痛や頭が重い事が多い          953   724   76%
(14)立ちくらみ、目まい、耳鳴りがする     839   692   82%
(15)喉の不快感、鼻づまりがある        368   255   80%
(16)注意力が低下する、イライラしやすい    886   704   80%
(17)歯茎からの出血、体にアザができやすい   325   255   79%
(18)皮膚が青白く、または黄色っぽくなる    197   155   79%
(19)体を動かすと動機や息切れがする       95    76   88%
(20)まぶたの裏が白い              86    64   74%
(21)爪がスポーン状に変形し、割れやすくなる   60    60  100%

●鉄の体内分布
       mg/kg 体内の総量(mg)
赤色骨髄    2     160
循環赤血球  28    2240
ミオグロビン  4     320
細胞内酸素   2     160
フェリチン  13    1040
総計     49     392

●鉄欠乏性貧血
特徴
生体内の鉄が長期的に欠乏し、ヘモグロビンの生産量が減少して発生する貧血。
日本人の貧血の約70%が鉄欠乏性の貧血である

●原因
鉄の摂取不足
腸管からの鉄吸収障害
妊娠・成長などによる鉄需要の増大
出産・月経などによる鉄の過剰喪失
(憩室・ポリープなどによる出血は見逃されやすい)
フリーラジカルによる赤血球寿命の短縮

●症状
顔面蒼白 易疲労性 頭痛 食欲不振 動機 息切れ 
下肢浮腫 便秘 下痢 微熱 月経異常
動脈血圧低下 心雑音 ST・Tの異常
爪の亀裂(スプーン状爪)
粘膜形成不全(咽喉頭異常感症)

●鉄欠乏が引き起こす機能的障害
鉄は生体の健全な機能維持に、多方面に複雑かつ微妙に関与しているので“いわゆる貧血”以前にも、鉄欠乏は多種多様な機能障害を引き起こします(“いわゆる貧血”というのは、医師が貧血と診断なさった場合の貧血のことです)。
貧血を示さない鉄欠乏症は、次にあげるように、非常に多くの症状があります。
(1) 細胞形態成長の及ぼす影響=発育障害
「うちの子は背が伸びない、体格が小さい」といわれる子を調べて見ますと、フェリチン値が非常に低いケースが多いようです。その子に、鉄を中心にした栄養を補給すると、すっと伸びる、ということを、私たちはこの数年間の間に見たりけいけんしたりしています。
(2) 身体活動横紋筋に及ぼす影響=筋肉疲労
横紋筋というのは心臓の筋肉や骨格筋にことで、運動をする筋肉です。これが鉄不足でうまく働かないときは、筋肉疲労が起きます。筋肉の中にはミオグロブリンという鉄の入った重要なものがあるのですが、鉄が不足してミオグロブリンがないと、筋肉のエネルギーが貯蔵されず、筋肉が疲労して働くことができなくなります。 
<凡例>
あるプロサッカーチームでは、後半になると選手たちが疲労しやすいためフェリチン値を調べてみたところ、どの選手もフェリチンがほとんど空の状態だった。ヘム鉄を投与し、しばらくしたところ、息が続くようになって、走り回っても後半もバテなくなったそうだ、
横紋筋には、チトクロームという酵素があります。これが、スタミナや持久力のエネルギーをつくる大事な酵素で、この酵素も鉄がないと働くことができません。
(3) 知能・情緒に及ぼす影響=易興奮性、集中力の低下、情緒不安定
鉄やフェリチンが少ないだけで、知能や情緒に及ぼす影響、すなわち興奮しやすい、集中力の低下、情緒不安定といった問題が生じることが分かるようになりました。
(4) 白血球や免疫機能に及ぼす影響=易感染
鉄には白血球や免疫機能に及ぼす影響があって、鉄不足は感染しやすくなります。このような人は風邪をひきやすく、ひいたらなかなか治らないのも当然のことです。
(5) 消化器官に及ぼす影響=胃液分泌低下、腸管からの吸収障害
鉄が足りないと意外なことに、胃液の分泌が低下します。これには胃萎縮などがあると影響はさらにひどくなります。そのため「いくらフェリチン値を上げようとしても、なかなか上がらない」という悩みを持った人は少なくありません。
(6) 咽喉頭以上感症=咽頭の異常感覚の存在
これは中年の女性に多く見られる症状で、「何か喉につまるような感じがする」などと訴える方が多いのですが、そういった喉の不快感は、鉄不足が原因になっていることが多いのです。
(7) コラーゲン形成不不全による種々の障害=毛細血管透過性の亢進、内臓下垂、しわ、静脈瘤、リウマチ、くも膜下出血
鉄不足によるコラーゲン形成不全が引き起こす種々の障害もあります。コラーゲンは私たちの体の中ではもっとも多いタンパク質です。このタンパク質は、たくさんのアミノ酸がつながって糸のようになって存在しています。コラーゲンの特徴は、ブロリンというアミノ酸が特にたくさん配置されていることです。
このプロリンというアミノ酸に、水酸化という化学反応が起きてヒドロキシプロリンというものになり、これが結合して、3本の糸が1本の縄のようになります。これは弾力性があって丈夫なものです、この縄が腱やアキレス腱となり、内臓を吊り、あるいは皮膚の張りをつくります。さらに血管壁を保護するなど、非常に重要な働きをしています。
このプロリンの水酸化に働くのがビタミンCと鉄ですから、皮膚の張りが悪いのは、鉄かビタミンCが不足し、水酸化がうまくいかない状態の時と考えられます。
血管壁は、コラーゲンが血管に巻きついて、血管を丈夫にしていると考えてください。
したがって、鉄が不足している人によくあるのは、いつどこでぶつけたかわからないけど、皮膚が紫色になっているという症状で、いわゆる内出血が簡単におこります。たいして痛くもない程度でない出血が起きるのは、いかに血管が弱いということです。
このように血管が弱い人が年をとると大変困った症状が出ます。例えば膣に子宮が落ちてくる子宮脱です。体の臓器はすべてコラーゲンという糸で吊るされていますから、中から吊るす糸が丈夫であればいいのですが、弱い糸だと落ちてしまうわけです。
血管は、ちょっとした衝撃を受けても内出血を起こし、運動選手は鉄が不足すると簡単に故障をします。腱をおかしくしくするのです。アキレス腱の損傷や骨などの怪我でダメになっていくスポーツ選手はかなりいます。


分子栄養学研究所発刊「貧血と栄養」より抜粋




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