カテゴリ:くつ下、ひだり半脱げ系
「こ、この音は!」 深夜2時。 いつもより闇の深い、新月の夜。 また、あの音が聞こえてくる。 ザッ、シャ。ザッ、シャ。 眠りに落ちて、まだ時間は浅い。 ザッ、シャ。ザッ、シャ。 不意に眠りを邪魔され、まだ朦朧としながらも隣に寝ているはずの妻のほうに頭を向ける。 その瞬間ハッとして、急激に頭が冴えてくるのがわかった。 横で眠っていたはずの妻は既に起き上がり、険しい表情をしていた。 (またか!) ザッ、シャ。ザッ、シャ。 私は妻の表情から、まだ鳴り続ける音の正体を悟った。 「ちょっと待て!」 私が止めるのも聞かず、妻はベッドから降り、大きな足音を気に留めるふうもなく風呂場へ向かって行った。 ガチャ! 妻は勢いよく風呂場の扉を開けるやいなや、こう叫んだ。 「小豆さん!あずきさん!!いい加減にしてくださいねえ!」 「あ~、すいません~。もう済みますんで~。」 「済みますんで、じゃあないでしょう! 何時だと思ってるんです!?」 「夜分、まっことすみません~。今度からなるべく早い時間にしますんで~。」 「早い時間とか、そういう問題じゃないでしょ! だいたい、なんでいつもうちで洗ってるんですか!」 「いや~、お宅で洗うとふっくらと炊きあがるんですよ、小豆~。」 「あのねえ。うちの子と、お宅の子、あらし君が同じクラスだから警察を呼ばないで穏便にしてますけどねえ、どこから入ってくるのかわからないけど、今度入ってきたら通報しますよ!」 「まっこと、すみません~。ちゃんと玄関から入ってるんで心配しないでください~。」 「まあまあ。もう少し落ち着いて。って、玄関からかよ!」 なぜか、妻をなだめつつ、小豆にも突っ込んでいる私。 突然、玄関が勢いよく開く音がするやいなや、騒々しい足音を立てて女性が飛び込んできた。 「あんた!!またいなくなったと思ったら、や~っぱりここにいた! またご迷惑をかけて、何度言ったらわかるの!!」 「ティ、ティアラ!」 急に小豆の顔色が青ざめる。 「うちの亭主が、毎度毎度ご迷惑をおかけしまして、すみません~。」 ティアラさんはそう捲し立てるように言うと、何度も私たちに頭を下げる。 心なしか、日本語がなまっている。って、元々日本人じゃないんだから当たり前か。 「いってててて!み、耳を引っ張るのだけは許してくれ~。」 情けない声を上げながら、ティアラさんに耳をつかまれて小豆は風呂場から出て行く。 「もうしませんから~~~~~・・・・」 情けない悲鳴は、闇に消えて行った。 ふぅっと、ため息をつきつつ、妻と二人、いつも使っている水道水を舐めながら首を傾げるのであった。 小豆あらい(42) 公務員 妻子持ち 趣味 和菓子作り お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004.08.27 00:59:31
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