|
カテゴリ:同人誌 「開かれた部屋」
ついに、師走 ですね~ あっと言う間の 1年間 色々あって、最後に 父を送ってきます 悔いのないように・・・と思ったのですが やはり 最後までの掲載は無理のようです~ 私的には この章が一番上手く書けたと思っているんです でも 専門家に こんな書き方をしてはいけません、と注意されました そんな駄作ですが・・・・ もうちょっと、気が済むまで書かせてね
< 終身パートナー検索します > その2 ・ されど温泉郷 (7) ― 私の事が気に入らなかったのかしら。それなら不幸中の幸いだわ。それとも田舎者だから 女性の扱い方が分らないだけなのかしら。それにしても・・・、もっと何とかしてよ。女が1人で 遠路はるばる尋ねてきたってのに ― お土産売り場もキノコ製品で埋め尽くされている。 せっかくだから、何か買っていこうか。 しかし、娘がキノコなんて喜ぶ訳がない。職場にキノコのお土産も様にならない。 結局、美味しそうなミルクコロッケを買った。 なぜ、ここでコロッケか。あまりにも空腹のせいかも知れない。 こんな男と食事をするよりも、と思い、更にフランクフルトと缶コーヒーを買って車で食べる事にした。 ブタ男は、「買ったかい?」 と腰をあげた。 ― なによ、気が利かない。ホントにブタみたい ― 「うち、行って見るかい?」。 ブタ男は平然とそう言った。 ― 誰が行って見たいもんか。まったくも~。まてよ。もしかして、それほど自慢の御殿だとか― 千秋の悪い癖が始まる。ブレーキが利かなくなるのだ。 このブタ男の新築御殿が気になって仕方がない。 牛舎だって、ここまで来たのだから参考に見てみたい。話の種に面白そうだ。 千秋は、久々に取って置きの甘い声を出して言う。 「私、やっぱり酪農なんて無理だと思うんです。でも~、せっかくここまで来て、こうしてお会い できたんですもの、やっぱり、牛舎とか見てみたいわ」 ブタ男は、形相も変えずに無愛想に言う。 「したら、行くかい? あと、着いてきたらいい。こっちから30分くらいだから」 ― そうかい、そうかい。着いてってやるよ。ブタ男さん ― ブタ男は、シルバーグレイの地味な車を発進させた。 千秋はフランクフルトをかじり、缶コーヒーを飲みながら、ハンドル片手にブタ男の後に続く。 千秋の好奇心は、すでに風船のように膨らんでいた。
妙に懐かしく感じる札幌のネオンである。 車線も2車線になった。 真駒内公園が見えて来た。もう直、我家に着くだろう。 千秋は無事、山道ラリーを経て生き残ったようだ。 ブタ男は、交通事故で妻と子供を亡くした。と言った。 はっきりとは話さなかったが、辛い過去に触れたくなかったのだろうか。それとも、千秋に 「交通事故ですか?」 と聞かれたから 「うん」 と頷いただけかも知れない。 もしかしたら・・・あの生活に嫌気が差して自殺した・・・とか・・・。 本当は、結婚暦なんてないのかも知れない。千秋の想像は際限なく続く。
ブタ男が先行して走る道の前方に、とてつもなくデカイ、少なくともこの村でこれ以上の建物は ないであろうと思われる建造物が見えて来た。 その建物を左手に通り抜ける。 「ん? 湯元○水亭!どこかで聞いたような。え?もしかして、あの、テレビで宣伝している? な~~んだ、こんな所にあったのか~」 ブタ男は、やっぱりブタである。こんな有名な温泉が、地元にあることも伝えられないのだ。 温泉にでもいらっしゃい、と誘えば良いものを・・・。 憤慨する千秋を尻目に、ブタ男はドンドン進んで行く。 なだらかなスロープの横断道路をしばらく登っていくと、酪農地らしいグリーンの丘の上に 差しかかった。 爽やかな、のどかな風景に先程までの憤慨はかき消された。 地元の人が地元の温泉にあまり興味がないのも、札幌の住人が雪祭りに関心が薄いのと 似ているのかも知れない。憧れの人間臭い生活空間が間近にある。 千秋の胸は張り裂けんばかりに高鳴る。 ― 外見で判断して、ブタ男、なんて思っては失礼だわ ― 数百メートルほど先の丘の上に、近代的な牛舎とサイロが見えて来た。 やって来たのだ。雄大な北海道の酪農地帯。 決して初めて見る光景ではないけれど、この日の千秋にとって、なぜかとても新鮮に身近に 感じられる。 グリーンの丘が切れる辺りの路上でブタ男の車が止まった。 千秋も数メートル離れて停車した。 あそこだよ、と、伝えようとしているのだろうか。 ― ああ、なんて素敵なんでしょう ― 車外へ出て、大地を踏みしめる。 土臭い緑色の風が優しく包んだ。 『風と共に去りぬ』 のスカーレット・オハラになった気分だ。思いっきり深呼吸する。 ブタ男が車から降りてきて、片手を大きく前方に広げて叫んだ。 「ここから先が、ずーっと、うちの土地!」 そして、すぐさま運転席に戻ると再び車を発進させた。
ここまでで、長いことお休みさせて頂きます nonmama
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 6, 2007 06:42:46 PM
[同人誌 「開かれた部屋」] カテゴリの最新記事
|