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カテゴリ:同人誌 「開かれた部屋」
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その1 ・ 丘の上のレストラン 2007.11.14 より掲載 その2 ・ されど温泉卿 2007.11.28 より掲載 その3 ・ バブルの落ち武者 2007.12.16 より連載中
その3 ・ バブルの落ち武者 (10)
pert2-(3) しゃがれた声で、男は話続ける。 「言ったろ、いい振りこきのシラミたかり、って。 知ってんだろ? この言葉。 俺の両親は、俺が中学に入ったばかりの頃、事故で突然、おっちんだ。(死んだ) 俺は、突然、住む所も無くなったんだ。 兄弟もいない。 正真正銘、天涯孤独ってやつさ。 同情した担任が、教師の独身寮に住まわせてくれたんだが、やがて、教育委員会に ばれて、居られなくなった。そこで、俺はどうなったと思う? 捨て犬じゃあ、ねえんだっつうのに、里親制度さ。 それで、札幌の畳屋に里子に出された。誰が決めたって、民生委員に決まってんだろ。 俺の意思じゃあない。 だけど、義務教育も終ってない俺に、当時は選択権はなかった。
要するに、俺は、孤児の田舎者だったんだ。
里親ってのは、名ばかり。 要するにでっち奉公さ。 こき使われたよ。 しゃあない。 他人様のただ飯、食うんだから。 高校に入る時、俺は自立したいって、申し出たんだ。 働きながら、夜間高校出て、どうしても入りたい大学が東京にあったから、 必死で働きながら勉強して、ストレートで合格した。 なあに、自慢話、してんじゃあ、ないんだよ。 事実を話してるだけさ。俺には、意地があったんだ」
男は、砂糖漬けのコーヒーを一口飲んだ。
「大学、卒業して、色んな仕事をしたが、何てったって、俺の人生の最大の仕事は 不動産業だった。面白いように稼いだよ。 経済論、喋ったら、なんぼ時間があったって足りない。 早い話し、貿易黒字がバブル景気を生んだんだ。 余った金を投機向ける。 80年代に、日本では、それが株と土地に流れた。 その為、みるみる株と土地が値上がりした。分ってるだろうが・・・。 全盛期には、銀座や赤坂なんか、坪1億円以上、当たり前の価格となったんだから、 面白くて止められなかった。 銀行も、土地持ってる企業には、担保割れした多額な融資をバンバンやったから、 面白いように売れた。それを、転がすんだ。 7~8年は、土地価格が上昇し続けたからね。 ピン札で、百万と言ったって、わずか1センチくらいなものなんだが、それが1千万 だと、10センチ。1億だと 1メートルだ。 それが、何十億も、入ったんだ。 はっきり言って、やばい儲けの金だから、不動産買ったら、税務署に目、つけられるから とにかく、使わなきゃならない。 金だと言うことがバレないように、そこら辺のスーパーの袋を2重にして入れて持ち歩く。 結構、重たいからね。2重にしてないと、破れっちまうんだよ。 一回、アホな相棒が、地下鉄乗り場でそいつをバサッと、ばら撒いちまった事があってね、 フフ、焦ったぜ~。 だけど、意外と周りの連中、とぼけて見て見ない振りしてんで、助かったよ。 触らぬ神に、たたりなし、ってヤツだな。 所詮、臆病者ばかりさ。
使っても、使っても、使い切れないって感じだった。 世界中の繁華街、遊び歩いたよ。 カジノも、行ったし・・・。 ススキノのホステスも、随分、俺が一流に育ててやったぜ~。 ダサイセンスの女に、ポンと、200万くらい渡して、1流クラブのホステスらしく、 もっと、マシな格好すれって、衣装や着物買わせたり、ブランドの小物や化粧品 買わせたり、だからって、身体のサービス求める、なんつう下劣なマネはしないさ。 勿論、馬鹿みたいに全部、遊びに使っちまった訳じゃあない。 事業もしたし、融資もしたさ。 ただし、友人にね。 それが、90年代に入って、初めて、みんな、危機を感じ始めた。 政府は、地価抑制のため、土地購入に対する融資を、突然、引き締めたんだ。 最悪さ。 土地を買う者が激減して、地価は急落。 膨大な借金をして土地を買った連中は、焦ったが後の祭りさ。 破綻者が、続出した。 金融機関も、不良債権が急増した。 いわゆる、バブルの崩壊、だよ。 俺が融資した友人達も、例外なく、引っかかった。 皆、行方不明だ。 自殺した奴も、2~3人いる。 お陰で、俺も、パ~さ。 一銭も、戻らない。 俺は、いいんだ。 どうせ、友情で貸したんだから・・・」
男の喋りに、あまり抑揚はなかったが、思い出したように両肘を肩の辺りまで引いて、 両手を頭上で組んだ。 ( つづく )
語りますね~ これでは 明らかに恋愛小説ではないようです~ またまた 皆様の応援に 感謝~
ご愛読 ありがとうございます お蔭さまで ランキング 急上昇 皆さんに 飽きられないよう、祈ってます
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Last updated
December 28, 2007 11:45:55 AM
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