のぽねこミステリ館

2022/06/04(土)13:59

筒井康隆『愛のひだりがわ』

本の感想(た行の作家)(215)

​​ 筒井康隆『愛のひだりがわ』 ~新潮文庫、2006年~  筒井康隆さんによるジュヴナイルものの長編小説。  舞台は、治安が悪化しいたるところで争いが起こっている日本。  主人公の月岡愛さんは、小学生。早くに父がいなくなり、母親とともに料理店で寝泊まりしながら働いていましたが、その母も病死してしまいます。料理店の男に母が残したお金も奪われ、そこで仕事しながらなんとか暮らしていました。  彼女は、過去にグレート・デーンという種類の獰猛な大型犬に左腕をかまれ、左腕が動かなくなっていました。しかし、その愛嬌から、店では客に人気者でした。  そんな愛さんが、父親の行方を捜しに、家出をして旅に出ます。犬と話せる愛さんは、まずは犬のデンとともに町を出ます。自警隊にデンが攻撃されてしまってからは、旅の途中で出会ったご隠居さんにいろいろなことを学びながら旅をともにしたりと、様々な人々が彼女を支えます。もちろん、愛さん自身も、学ぶことの重要性を感じ、貪欲なまでに学んでいきます。  安定して愛さんを支えるご隠居に、乱暴な男と暮らしながら素晴らしい詩を作っていた志津恵さんなど、魅力的な人物にあふれています。悪者との決戦もあり、わくわくしながら読み進めました。  ただし、あたたかいばかりの物語ではありません。現実を突きつけるようなラストは印象的でした。  あまりに面白くて、病院の待ち時間であっという間に読んでしまいました。  良い読書体験でした。 ​・た行の作家一覧へ​

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