梨木香歩『裏庭』
~新潮文庫、2001年~
梨木香歩さんによる長編小説。第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作とのことです。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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両親がお店で忙しいので、照美は友達の綾子の家によく行っていた。そして、適度な距離感で接してくれて、いろいろな話をしてくれる綾子のおじいちゃんを好きになった。
バーンズ屋敷の裏庭の話には、わくわくしていた。ある日、お母さんに思いを伝えようとしても聞いてくれなかったとき、照美は学校に行かずにバーンズ屋敷を訪れた。そして、おじいちゃんが話してくれた鏡を見つけると、「裏庭」にたどりついていた。
「裏庭」では、3つの国が分かれて、大きな竜の化石を分け合っていた。この国を元に戻すには、そして照美(裏庭ではテルミィ)が元の世界に戻るには、竜の化石をすべて集めてもとに戻さないといけない。どの国にも属さないコロウプのテナシや、スナッフとともに、テルミィは化石を取り戻すための冒険に出る。
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裏庭でのテルミィたちの冒険と、おじいちゃんが幼い頃にバーンズ屋敷に住んでいたレイチェル、そして照美のお母さんたちそれぞれの物語が交錯しながら、物語は進みます。
自分の思いを反映する服を選んだテルミィは、それによって助けられることもあれば、大きな試練を迎えてしまうこともあります。照美にしっかり向き合えていなかったお父さんやお母さんにもそれぞれの事情があったり、そしてお店の常連の夏夜さんの話で、いろんな人生がつながったりと、「児童文学ファンタジー」というイメージで想像するよりはるかに深い物語だと感じながら読み進めました。
久々の再読ですが、良い読書体験でした。
(2022.02.27読了)
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