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存生記

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2007年07月18日
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連休中は、試験の採点に忙殺された。すべて選択問題にすれば採点は楽だが、問題作成が面倒だし、そもそも授業でやったことを試すにはそぐわない。例えば、動詞の活用について、正しい活用を選択肢で選ばせるよりも、自分で書いてもらうほうが確実に理解度をチェックできる。
 
採点という業務も派遣や請負による効率化という流れのなかで、派遣会社が処理すべき案件になってきている。介護のコムスンで騒動を引き起こした親会社のグッドウィルは、採点業界でも一方的な契約打ち切りで問題となっている。グッドウィルだけでなく、大手のNTTデータやベネッセも採点をできるかぎり安くあげるべくバイトのスタッフを調達しているであろうから、同様の問題は起きてくるだろう。私も子供の頃、赤ペン先生にお世話になっていた時期があるが、採点していた人の字がきれいだったことは覚えている。もしかしたら専任のスタッフではなく、アルバイトの主婦の方だったのかもしれない。
 
採点というのは、いちどやってみればわかるがけっこう大変な作業である。採点基準というのをもうけても、疲れてくると採点する人によって甘くなったり辛くなったりする。私の場合は辛くなるようだ。翌日、公平を期すために疲労回復してからもう一度チェックしたら何点か点数の変動があった。部分点をいくらあげるのか、あげないのかなんてやっていくと、ますます複雑になってくる。答案数が百枚を越えれば、点数を計算するだけでも疲れる作業である。仏作文の採点というのも、珍答に和むこともあるが、多くの場合は悩ましいものだ。
 
私自身が悪筆なので気が引けるが、字が汚い答案も疲れる。採点する人に読んでもらおうという発想がそもそもないのだろう。アクションペインティングみたいな殴り書きのまま提出してくるのだ。授業にほとんど出席せず、けっきょく試験は〇点なんて生徒もいたが、答案の余白にはフランス語の難しさについてや、出席しなくても点数がよければ単位を認めよとメッセージが書かれていた。メッセージについては私の方でお願いしたことなのだが、それにしてもそれだけのメッセージを言い放つのであれば、〇点ではなくもっと得点してもらいたいものである。親に反抗するだだっ子の相手もしなければならないのが採点であり、授業である。
 
逆に端正な字で高得点をはじきだす生徒もいる。メッセージも如才なく気遣いを感じさせ、折り目正しい。トータルな意味で賢い人である。若輩ながら現時点で教えている私よりもすでに賢い。将来的にはアナウンサーから政治家に転身しそうな可能性を感じさせる。そういえば、同僚が「やんなるよ、すんごいできる生徒がいるんだよ」と憂鬱そうな顔でぼやいていたのを思い出した。そのときは「いいじゃないか、そういう子がいると逆に助かるでしょう」と返事したのだが、こうして採点しているとなんとなく彼の気持ちも少しはわかる気がした。

これだけできる子は、きっとあっというまにこちらを採点する側にまわるのだろう。とはいえ、できる子の答案のほうが採点のストレスが少ない。ある種の潤滑なコミュニケーションのひとときではあるが、情報の整合性を確認しあう上っ面のコミュニケーションではある。だが、そこには点数以外のさまざまな情報が書き込まれている。採点しやすいような答案もあれば、答があっちこっちに飛んでいる答案もある。救済手段をお願いします、とメールアドレスが書いてある答案もある。忙しいのにいちいちメールアドレスを打ち込んで返事などするわけないだろうと思うのだが。要するに、答案には社会的成熟度が示されている。





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最終更新日  2007年07月18日 19時10分57秒



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