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存生記

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2008年06月19日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
猫カフェに行った。隣に首都高が走る池袋のマンション。エレヴェーターであがると、さすがに普通のドアではなく、店内が見えるようになっている。とりあえず一時間のコースを選択する。フリードリンクで千円ポッキリの明朗会計。スリッパに履き替え、手を洗うように指示される。見通しの良い明るいワンフロアに椅子やクッション、猫の遊具が散らばっている。すでにちょうどいい感じの客入りである。

 ホームページには人気の猫たちが名前入りで紹介されている。「猫キャバではありません」という注意書きがついている。場所柄からキャバクラと勘違いして入った客は、びっくりするだろう。店員が「当店ナンバーワンのフィガロちゃんです」と猫を連れてきて「フィガロちゃんはモンプチが大好物なのでぜひ注文してあげてください」と勧められ、そのキャットフードがとんでもない価格で、しかも猫は自分勝手な生き物だから触らせようともせず、客はイライラして「この店は客をなんだと思ってるんだ。」と逆ギレして帰ってゆく……。

 この店はそんなことはなく極めて健康的で、皆が平和に退行している。客はデジカメやケータイカメラで撮影したり、客同士が交流するためのノートにイラストや文字を書き込んでいる。客は猫やノートを解して交流するようだ。あるいは、人混みのなかの孤独を猫を介して満喫する。みたところ、常連になれば別だろうが、見知らぬ客同士がそこで仲良くなって話し込む光景は見られない。カーペットにじかに座ってもいいし、寝ころんでもいいし、思い思いにリラックスしている。見知らぬ男女がこれだけプライベートな表情を人目にさらしているのも、そこに猫がいるからだ。

人と違って猫は、別に愛想が良いわけではない。広告では「人間好きの猫ちゃんです!」と書かれていても、終日触られていたら嫌になるだろう。そのためか人間の手の届かない高い場所で居眠りして降りてこない猫もいる。窓枠に縮こまってカーテンの影に隠れて窓外の景色を眺めている猫もいる。ただし、おやつタイムは別だ。店員から少量のキャットフードを渡されるのだが、このときばかりは猫は人にすり寄ってくる。現金なものだ。食べ終わるとまたすぅっと去っていく。

確かに癒しの空間ではあるが、こんなことがビジネスになるのかという驚きもある。池袋ならばちょっと歩けば、野良猫がうろうろしている住宅街がある。野良だからさらに人なつっこくはないが、猫は猫である。見ているだけで気持ちは和む。しかもタダ。でもちょっと仕事帰りにカフェに立ち寄って一休みしたいという人にとっては、敷居が高いかもしれない。住宅街をうろうろするのは疲れるし、人目も憚れる。そういう人にとっては、猫カフェはまさに理想のカフェであろう。

店の外に出ると、メイドが立っていてチラシだかチケットを配っている。猫カフェは近くにすでに何軒かあるそうだ。猫対猫、猫対メイドの激しい競争が展開されている。ある意味、ここは資本主義の最先端をゆく街だと言えるだろう。





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最終更新日  2008年06月19日 16時45分37秒



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