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存生記

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2010年09月06日
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「幸せはシャンソニア劇場から」をDVDで見る。原題は「Faubourg 36」とそっけない。邦題からすると、古き良きパリを描いたハッピーエンドの人情メロドラマを想像するし、そういう映画にも仕上がっているが、なかなか厳しい作品である。陰惨な暴力の場面もある。なにせ隣国のドイツではヒトラー劇場で盛り上がっていたわけである。フランスにもファシズムが隆盛し、諍いが絶えなかった。思想上もそうだし、経済的にも逼迫していたので金銭のトラブルも多かった。どいつもこいつも拳銃を持っている。劇場のスタッフが金庫番になって順番で泊まり込んで見張っている。そんなことからも1936年のパリの厳しさをよく伝えている作品である。

赤軍兵士だったという劇場の若者がいる。年齢からしてスペイン内戦に共和国軍側で志願したのだろうか。彼の恋敵はファシズムの組織を支援しているオジサマだ。彼らがとりあうことになる美貌の天才歌手の登場で劇場は復活する。だがそれもつかの間、彼女はラジオでスターにのしあがっていく。この時代はなんといってもラジオだ。ラジオばかり聴いて隠居している爺さんが出てくるが、彼の意外な才能もラジオで歌声を聞いたのをきっかけに劇場の復活に貢献する。

 ストライキの場面、レオン・ブルムの人民戦線、ユダヤ人差別など当時の情勢を伝える場面がじっくり描かれているので、娯楽作品としては長尺な印象だ。歌姫をめぐる三角関係以外にも、歌姫と生き別れになった父親との関係、妻と離婚した男と幼い息子の関係もからみあって群像劇になっているので長くなるのだろう。ファシズムの集会では余興で物真似芸人が出てきて、劇場で司会の歌姫がコマーシャルをやってみせるのは、当時の状況を再現しているのだろうか。

 ミュージックホールでの音楽やスペクタクルのシーンが明るく楽しく陽気なムードに溢れている。当時の客たちもそういう空気に触れたくて足を運んだのだろう。





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最終更新日  2010年09月07日 02時39分54秒



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