ごめんね、にゃあ君       

2009/02/05(木)16:41

ごめんね、にゃあ君12

ごめんね、にゃあ君(55)

ピンポン  にゃあ君とはよく遊んだ。休みの日が待ち遠しかった。庭に出て行くと、待ってましたとばかりに寄って来て、足元にまつわりつく。目を細め、いつものように頭のてっぺんをスリスリこすり付けてくる。足の周りをぐるぐる回る。あんまり近くにいるので、うっかり尻尾を踏みそうになることもある。気をつけているのでムンズと踏み付けるわけではないが、たまに足を下ろした瞬間、足の裏に何かを感じることがある。慌てて足を上げ、バランスを崩して転びそうになる。時には危険も伴う。  テラスではよくボール遊びをした。ピンポン玉より小さめのゴムボールを軽くバウンドさせて投げてみる。にゃあ君が追い掛ける。掴まえようとするのだが、ボールは逃げ、にゃあ君の足元をコロコロ転がる。また追い掛ける。にゃあ君の前足が微妙な動きをする。にゃあ君の前足は、幽霊の手のように前には曲がるが、手の平を返しては曲げられない。幽霊手をして、おいでおいでをするようにボールを捉えようと動くので、なかなか面白い。  にゃあ君は飽きっぽい。何回か繰り返すとすぐ飽きてしまう。ボールは転がったままで、にゃあ君は見向きもしない。にゃあ君は一度興味を失うと、頑固だ。「フン」とそっぽを向いて、相手にしてくれない。 それでもご機嫌な時は、結構遊んでくれる。しかし、にゃあ君はボールをキャッチすると、こちらに返さず、お手玉をしている。 「にゃあ君、それじゃあ私がつまらないでしょ。一緒に遊ぼうよ。」  私が投げて、にゃあ君が受け止める。いつもそこで流れが止まってしまう。にゃあ君が打ち返してくれたら、さぞかし楽しいことだろう。そこでにゃあ君にピンポンを教えることにした。私は近付いて行って、にゃあ君の前足を取り、軽くボールを打った。 「にゃあ君、こうやって打つの。」  転がったボールを拾い、にゃあ君の前に置く。また、にゃあ君の前足を持って指先で弾いてみる。意外なことに、にゃあ君は逃げない。  何回か繰り返したあと、少し離れてボールを転がす。にゃあ君はボールを止めてお手玉を始める。 「にゃあ君、そうじゃなくて、打つの。いい?こういう風に。」  左手にボールを持ち、右手でにゃあ君の前足を掴む。左手に持ったボールを転がす真似をして、右手でにゃあ君の前足を持って打つ。何度かこれを繰り返す。 「にゃあ君、行くよ~。」 1メートル離れてボールを転がす。にゃあ君が打つ。ボールはあさっての方向に転がって行く。それを拾って、また転がす。何度も繰り返すうちに、にゃあ君はコツが飲み込めてきたらしい。にゃあ君の打ったボールがこちらに向かって転がるようになった。 「にゃあ君、すごーい!お利口さんねぇ。じゃあ本番いってみる?」    私が打つ、にゃあ君が返す。私が打つ、にゃあ君が返す・・・・。何とかピンポンの形を成してきた。私が打つ、にゃあ君が・・・・あ、失敗。にゃあ君はそろそろ飽きてきたようだ。私が遠くに転がったボールを取りに行っている間に芝生に下りてしまっていた。  それから時々、テラスでピンポンをして遊んだ。初めは数回程度だった打ち合いが、5、6回続くようになった。これはいい運動になった。もちろん私にとってである。にゃあ君は一箇所にじっとしたまま前足の先だけを動かしているが、私はどちらに転がるかわからないボールを追いかけ、腰を落としたまま小走りするのだ。にゃあ君と遊ぶのも楽ではない。  

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