ごめんね、にゃあ君       

2009/02/09(月)15:48

ごめんね、にゃあ君41

ごめんね、にゃあ君(55)

消毒液  それからしばらく、にゃあ君はいつもと変わらぬ様子だった。砂浴びでもしたのか、全身薄汚くなって帰って来ることもあったが、大きな怪我をしてくることはなかった。  たった一度、鼻の頭に小さな切り傷を負ったことがある。小さくてすぐには気がつかなかったが、良く見ると、5ミリほどの浅い引っ掻き傷がある。  消毒液を綿棒に浸して傷口に塗ってやればよかったのだが、慌てていたので直接容器を逆さにしてにゃあ君の鼻の頭に垂らしてしまった。液が思った以上に出て、にゃあ君の口まで達している。しまった!と思ったが後の祭り。慌ててティッシュで拭き取る。にゃあ君は必死の形相で、いやいやをしている。耳の怪我で病院に行ったとき、ちょっとした傷なら家にある消毒液でも大丈夫だと言われたが、口に入れていいはずがない。にゃあ君の目が潤んで見える。ごめん、ごめんと謝り続ける私がうるさかったからか、にゃあ君はその場を離れ、ソファーの陰に隠れてしまった。  そうなったら、そっとしておいてやるのが親切というものだ。時々覗き込んで様子を窺うが、心なしか元気がない。  やがてにゃあ君は横座りをし、足を投げ出したかと思うと目を閉じた。全身が凍りつく。息はしている。万が一、呼吸が停止したら人工呼吸だ。病院に行く時間などない。にゃあ君の様子を気にしながら、慌てて猫の本のページをめくる。「猫の人工呼吸は・・・・『ネコの首をまっすぐにして横向きに・・・・』」  真剣に文字を追う。にゃあ君のお腹の起伏を監視しながら、最悪の事態に備える。  そのうち、にゃあ君がピクピク動き始めた。ひげの付け根の辺りがピリピリ痙攣する。ん、待てよ。これは・・・・。  私の心配をよそに、にゃあ君はいつの間にか深い眠りについていた。

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