昼と夜
とある電車にゆられているとビルが無くて住宅ばかりの景色が広がっている。たんぼがあって、鉄塔があって、空がある。 空には夏の雲が。強い日差しで形をくっきりとさせて浮かんでる。 その雲の後ろには膨大な太陽の光がひそんでいてさすがの雲も陰となり 薄い雲の間から光を漏らしている。 そんな雲を映しだす田んぼの水鏡。 天にも地上にも広がるその景色。 別天地。 その別天地を切り裂くように鉄塔が立っている。鉄塔は太陽の光によって影となり雲のようには透けないから 表情の見えない黒さでそこに居る。 それを電車の窓から見つめている私。 窓にかすかに反射する自分の姿。目の前の猛スピードで過ぎていく景色と遠くで変わらず私を見つめている太陽が 窓に映る透けた私の中を通過していく。 うつろにみていた太陽が 今も目の中でさまよっている。目線の先に浮かぶ何色とも捕えがたい穴。それは時間と共にゆっくりと消えていく。 悲しいことに人間は太陽の光をずっと見つめていることはできない。だから人は暗闇から生まれた。そして一生光を愛し闇を愛するのだろう。 それが昼と夜がある理由なのかもしれない。