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ヒロガルセカイ。

ヒロガルセカイ。

おわり。

   おわり。

アヤが頷こうにも、たとえ首を振ろうにも。
志信さんに逆らえません。ぎゅっと抱き締められて気持がよくて。
どきどきしている鼓動を悟られて悔しい。
志信さんの服を汚してしまったなあ・・と、とろんとした頭でぼんやり考えて。
自分の制服もくちゃくちゃで。
足元が地に着かないままなのは、抱え込まれたままだからか・・。
つま先を動かしても、空気を泳がせるだけ。

志信さんは何も言わないアヤを、抱き締めて溶かそうとしているみたい。
熱くて、熱くて、堪えきれない。

「・・返事をしなさい。アヤ。」

唇はすこし開きますが、喉につかえて言葉が出ません。

「もっときつくしてもいいんだよ。」

汗の匂いに混じってウッディの香りが肌から漂います。
いつもこの香り。
肌に鼻を近づければ香る、志信さんの匂い。

「とりあえずシャワー借りたいです。」
「この悪魔。素直になれ。」
「喉も渇いて。」
「まあ、上出来。すぐに涼しいところに連れて行ってやるよ。」
志信さんは、アヤの髪を撫でて。連れて行くといいながらも、ひとときも離れたくなさそうです。

「アヤ。そばにいなさい。望むもの全てを与えてやる。おまえをもっと我侭にしてやるよ。」

望むものなんて、ひとつだけですが。

「俺は我侭ですよ。いいんですか?」
悪戯を隠した子供のように、明るい声が志信さんの耳をくすぐります。

「貪欲だな。なんでもやるよ。アヤが俺の言うことを聞いて従順ならな。」
志信さんも負けません。

想いが通じるって、こんなに嬉しくてはじけそうなことなのですね。
互いの瞳には、愛するひとしか映りません。
これ以上、なにを望みますか?
これが欲しくて、ひとは悩むのです。
手に入った大事なものを離さない様に互いの想いが引き合うなかで。

もっとお互いが素直になれたらね。



「うお~い、アヤ!」
ノブがコピーされた入学案内を持って、受付にいるアヤに手を振ります。
「ノブ、なんだよ。また新しい資料作ったのか。」
ネクタイを締めて・さながら人気ホストな風体のアヤが、その筋の下っ端にしか見えないノブからコピーを受け取ってしかめ面。
「覚えるのめんどくさ・。」

「アヤさあ、進学するならここで兄貴の講義受けたらいいのに。
俺の兄貴はひとにものを教えるのがうまいぜ?まあ、上から物を言うのは仕方ないとして。」
ノブはなにも気がついていませんね。

あなたの兄貴は、このアヤにとんでもなく深い愛を教えているのですよ。

「進学はしない。めんどくさい。」
相変わらずですね、アヤ。
その逃げな姿勢を何とかなさい。
「アヤ~?働かないと生きていけないぜ?ここでずっとバイトかよ。俺はそれでもいいんだけどさ。
アヤは俺の大事な友人だ。こうして毎日会えるのも嬉しいくらいでさ。」
ノブの言い方に、とりあえず笑っておきました。
ばれなきゃいい。
ばれたらそのとき考えよう。

「アヤ、今誰か付き合っているひといるのか?」
「なんでだよ。」
「担任との噂も聞いたけどさ・」
「ありえない。」
誰かに見られたのかな。まあ、いいや。
何もなかったんだし。

「アヤ。兄貴と同じ匂いがするんだけど?」

ひやっとしました。
思わず首筋に手を当てました。

「同じ香水なのかな。」

ぼけた友人で助かりました、でもでも油断してはいけません。ぼろがでないように・・。
「知らない。」

「俺さあ。前からアヤ、好きだったんだ。だからここでバイトしてくれて嬉しいんだ。」

ああ、友情をどうしましょう。しかも彼は志信さんの弟。
これは言うべきかな?顔を上げたら、志信さんが通りかかりました。
「ノブ。新垣アヤ。出入り口でたむろするな。客が入りづらいだろう。」
「あ、ごめん」
「すみません。」
にやりと笑う志信さんは、「冷たいウーロン茶を買ってこい。」ノブにお金を渡します。
つり銭を返す気がないノブは、いそいそと出かけていきました。

「冷蔵庫にありますよ。」
「アヤの顔が観たくて。俺に謝る顔なんて、そうそう見れない。」
志信さんはアヤの肩を抱こうとしました。

「出入り口ですよ。客が入りませんよ?」
「煩いな。しなでも作ればいいのに。」
「塾ですよ。ここは。」
「たいした奴だな、本当に。・・・21時に終る。今日は寝ないで待っていなさい。」

「寝るかも。」
「起きていろ。」
「眠いんです。」
「何時間寝る気だ。」
憎まれ口ばかり叩く、この籠の小鳥がそれでも可愛くて仕方ない。
唇をさっと奪うと背中を軽く叩いて、志信さんは歩いていきました。

ああ。香水が移らない様にしないといけないかな。
まあ、いいや。
大好きなひとと同じ匂いなんて勲章のようだ。

相手におぼれるってこういうこと?
愛ってこんなこと?
アヤは講義のうまいらしい大人から、今日はいろいろ聞いてみようかと想いました。


        幸せなまま・おわり♪

     ありがとうございました!!いつも感謝しています!!!

 もう~~~時間かかりすぎてすみません。アヤを幸せにしたいだけの親心にパンチを。

おまけのSS書けました。



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