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カテゴリ:在宅看護
愛を感じることのできる在宅看護が私たちの使命です。 株式会社アイナースの八木です。
ある方が「早く退院したい。」と毎日のように言ってました。 ご家族は「こんなに良くなってきたのだから、もう少し頑張ればもっと良くなるよ。 そうしたら退院しようね。」と言い続けていました。
ところが一時的に良くなったものの、その後は悪くなって行きます。
いろんなチューブが身体に付けられ酸素吸入も始まりました。 その方は嫌なので無意識にチューブを抜こうとします。
これは危険、ということで手に手袋をされました。 もちろん、ご家族の同意を得て。
ご家族がお見舞いに行く度に、その方は「早くはずして!!」とご家族に訴えます。 手袋をはずそうとすると医師や看護師から 「手袋ははずしてもいいですけど、間違えると死んじゃいますよ。」と言われ、 『死なれたら困る。』のでご家族は手袋をはずせません。
そのうち、その方の病状はさらに悪くなり「早くはずして!!」とも 言えなくなってしまいました。
そして数日後、「この数値が下がると危険です。」と言われました。 数値が下がると気道確保の体位です。 ご家族も数値が下がると手馴れたように気道確保をします。
ご家族は考えました。 意識がないまま、ただ気道確保をして長生きしてそれで幸せなのだろうかと。
ふと気づきました。 その方が家に帰りたがっていた。 手袋をはずしてほしいと言っていた事に。
ご家族は病院に退院させてほしいとお願いしました。 「そんなことしたら死んじゃいますよ。」と言われましたが、 無理やりお願いして退院させることにしました。 酸素と点滴という最小限の治療をすることにして。
その方は、帰りたかったご自宅に帰りました。
手袋ははずしました。
不安な中にもご家族は喜んでいます。 その方もたぶん喜んでいるでしょう。
『もっと早く家に連れて帰ってあげればよかった。』 ご家族みんなの声です。
病院では気道確保ばかりしていたので 家族は何をしてあげたらいいのか分かりません。
ゆっくり身体をさすってあげることも。 声をかけることも。 口の中をきれいにすることも。
「もっと楽なことをしてあげればよかった。」
ご家族で代わる代わる身体をさすったり、声をかけたりしています。
「そうだ!!大好きなシャーベットを食べさせてやろう。」 お孫さんは、いろいろな果物を搾って綿棒に浸して冷蔵庫に入れてシャーベット作りです。 口を水で浸す綿棒の変わりに果物のシャーベットの綿棒です。 「今度は、何味がいい?」 お孫さんも一生懸命話しかけています。
その方は、ご自宅に戻ったら思いのほかお元気です。
もうすぐ誕生日です。
ご家族、親戚が集まれる休日にお誕生日のお祝いをすることなりました。 一日早いお誕生日です。 ご家族、親戚が集まりました。 お孫さんがその方の好きなケーキを買ってきました。
みんなが見守る中その方は穏やかに旅立たれました。
「Happy Birtyday」の歌と共に、家族みんながケーキを一口づづあげました。 末期のケーキです。
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最終更新日
2007年10月10日 21時36分02秒
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