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カテゴリ:連載小説
釣った魚にエサはやらぬどころか、生かさず殺さずが、 由井のやり方だったのです。 当時ミニスカート全盛時代だったのですが、私のスカート丈が 短すぎると言って責めたて、またあるときは口紅が濃いと 言っては怒るのは、若い女の身にとってみれば、苦痛以外の なにものでもありませんでした。 「お前を人目にさらしておくと、ろくな事はないからな」 それが由井の口癖でした。 そのために由井が考えだした対策は、彼の無二の親友である 柏木圭太郎に私を監視させることでした。 柏木は、その年の司法試験に合格したばかりだったのです。 司法試験受験のために留年はしたものの、在学中に五百人中で 一桁台の優秀な成績で合格したという学内きっての秀才でした。 由井とは水戸の中学、高校とずっと一緒にきた仲でした。 その柏木に私の守り役をさせる腹づもりだったのです。 口実は、私が柏木から刑法を教わるということでした。 柏木はまた、刑法の神様ともあがめられていたのです。 「あいつは石頭っていわれるくらい硬い男だからまちがいは ないからな」 油井は満足げにそう言いました。 柏木にだけは心を許していたのです。
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Last updated
2006年04月17日 06時03分49秒
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