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2006年05月12日
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カテゴリ:連載小説

 

 2・26から4日目の2月29日になって未明に討伐命令

 とやらが出て、

 「下士官に告ぐ、今からでも遅くないから原隊へ帰れ。

 抵抗する者は全部逆賊であるから射殺する。

 お前たちの父母兄弟は国賊となるので皆泣いておるぞ」

 ってラジオ放送が流れてねえ。

 今でもその文句を私は空でも言えますわさ。

 旦那、私も一緒になって泣きましたよ、もう。

 それにしても、長橋の身が案じられましてね、

 生きた心地もしませんでした。

 もちろん、長橋になにかがあった時には、と覚悟は

 してはおりましたけれども、ええ、どんな覚悟だって、

 そりゃあ、旦那、野暮天だねえ。

 女には女の心構えってものがありますのさ。

 たかが、芸者ふぜいでも、いえ、芸者ふぜいだからこそ

 やまとなでしこの道を、このからだで見せてやろうじゃ

 ないかえ。

 私は、かねて長橋からあずかっていた短刀を、そう、

 長橋家代々につたわる家宝の短刀を帯に差しており

 ましたのさ。

 ざあっと、まあ、そんな覚悟ですがね、旦那、今じゃあ、

 やまとだましい、なんてどこをさがしてもありゃあしません

 よね。

 その短刀についちゃあ、また、のちに長橋の奥さんとの

 ややこしいいきさつがあるんですがねえ。

 それは、さておいて、あっけなかったですね、動乱はついに

 終わったってわけですよ。

 まるで雪のように、いともあっけなく消えてしまいましたのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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Last updated  2006年05月12日 09時00分03秒
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