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カテゴリ:連載小説
夫が他界してから丸2年間というもの私はほとんど 鬱病者のようにすごしてきた。 この深い海底に沈んでいるような逼塞感から、なんとか逃れる 手立てはないものかと思いをめぐらせてみた。 そして思いついたのが、過去になんらかのかたちで 関わった、夫を除く男たちをひとりづつ尋ねてみると いうプランであった。 幸いにして夫は内科病院を残してくれていた。 大学病院から医師をよこしてもらって病院長にすえて おけば、私は理事長としての肩書きがあるから 暮らしに支障はきたさない。 だから、この際思い切って実行してみることにした。 このチャンスを逃したら私はもう二度と立ち上がれない だろう。 私はもう43歳なのだから、いいえ、まだ43歳なのだから。 私は思いつくままに手帳にひとりづつ名前を書き出してみた。 まず第一に浮かんだのは佐多英介の名だった。
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Last updated
2006年06月05日 06時08分25秒
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