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カテゴリ:連載小説
母と由井に付き添われて私は退院しました。 そうそうに母は帰ってしまいましたので 私のアパートには由井は亭主づらをして 居座ってしまいました。 私の両親から結婚の許しを得たわけですから 由井にしてみれば大きい顔をして居座った のでした。 それにしても私にしてみれば、あまりうれしくない 結果でした。 退院ぎわに病室にあった見舞いの果物かごを持ち帰 ってきたのを、由井がなにげなく、そのかごから 林檎を取り出して丸かじりしたのです。 その、がしりという歯の音を聞いたとたん私は 鳥肌がたったのでした。 たまらない嫌悪感に耳をふさぎたくなって 思わず由井をにらみつけてしまいました。 そこには、憎悪の対象にしかならない 男の顔がありました。 私は発作のように由井に言葉を投げつけて しまいました。 「お願いだから、今日はもう帰ってちょうだい。 疲れたから」
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Last updated
2006年06月07日 03時49分45秒
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