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カテゴリ:連載小説
それからは月に一度ほどの割りで谷と逢うように なりました。 あいかわらず夫には大阪の娘のようすを見に行くとか 京都で句会があるとか口実をもうけて出かけましたが、 夫は疑うほどの関心さえも示さないのには、助かりました。 京都での逢瀬は、きまって祇園のホテルをつかいました。 いわゆるありきたりのラブホテルです。 ところが、思わぬことが起こったのです。 あれは谷と密会するようになって半年目の3月のこと でした。 いつものようにホテルを出て、清水寺まで足をのばした ときのことです。 茶碗坂を谷と歩いていると、背後から肩をぽんと叩かれ たのでした。 反射的に振り返ってみますと、なんと夫の患者で、しかも 同じ町内のある奥さんが、笑って立っているではありませんか。 あまりのことに心臓が止まるかと思ったくらいでした。
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Last updated
2006年06月14日 05時27分50秒
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